【特撮】感想:特撮「ウルトラQ 4Kリマスター版」第25話「悪魔ッ子」

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ウルトラQ 4Kリマスター版 NHK https://www4.nhk.or.jp/P5138/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

第25話 悪魔ッ子

 

あらすじ

ウルトラQ 4Kリマスター版(25)悪魔ッ子
[BS4K] 2021年09月13日 午後11:15 ~ 午後11:41 (26分)


35mmフィルム原版から4Kリマスター。自動車事故が頻発。被害者は子どもの影を目撃。また必ず何かを紛失していた。魔術団の少女のオルゴールには無くなった小物が!


深夜にかけて、自動車事故が頻発。被害者は一様に幽霊のような子どもの影を目撃し、更には懐中電灯や人形など必ず何かを紛失していた。現場近くにいた魔術団の少女・リリーのオルゴールには現場から無くなった小物が……。もともと35ミリフィルムで制作されていた1966年放送の特撮ドラマを4Kリマスター。だれも見たことがなかった「ウルトラQ」。


【出演】佐原健二,西條康彦,桜井浩子

 
登場 … 悪魔ッ子リリー

 最近、明け方の交通事故が多発していた。

 万城目・由利子・一平・一ノ谷博士は「東洋大魔術団」の公演で、リリーという少女が催眠術をかけられてから箱の中に閉じ込められると、すぐに箱の外に出てきて空中を浮遊する、という出し物を見る。公演の後、一行は空中浮遊のトリックについて話題にするが、一ノ谷博士は、リリィは人体電気が人よりはるかに高く、特別に催眠術のかかりやすい体質なのでは、との予想を披露する。

 公演の後、リリーの父親はオルゴールの音楽に合わせてリリーに催眠術をかけて眠らせる。深夜、警備員が透き通った白い子供の姿を見て驚いて階段から転落する。またトラックの運転手も同じく白い子供を見て事故を起こす。

 毎日新報では、由利子とデスクが謎の白い子供の事件について話題にしていた。現場からは守衛の持っていた懐中電灯や、運転手が子供のために買った人形などが消えていたという。

 万城目と百合子は、一ノ谷博士の研究所で、一平を実験台にした実験を見せられる。人体電気のプラスとマイナスのバランスを崩すと、「シナップスの破壊」という現象が起き、その結果精神と肉体の分離が起きるのだった。博士は万城目が気にしている白い女の子の話を持ち出し、リリーのように幼い頃から催眠術をかけられていると、精神と肉体の分離が起きやすくなる、というヒントを与える。

 万城目たちは再び魔術団の公演に向かうが、浮遊芸の直後、リリーは舞台で倒れてしまう。万城目たちは楽屋で父親がリリーに催眠術をかけて眠らせているのを見て、かけ過ぎは分裂症を引き起こすと警告するが、父親はリリーは術無しでは眠れないと反論する。万城目たちはリリーのオルゴールの中に、懐中電灯の電球やボルトが入っているのを見つける。

 深夜、オルゴールのふたが開いて音楽が鳴りだし、それに合わせてリリーの体から精神が抜け出て外をさまよいだした。リリーは毎日新報のカメラマン・スギモトが乗っているセスナ機の側に現れ、パイロットはパニックに陥ってセスナは墜落してしまう。

 万城目たちは再度リリーの楽屋を訪問し、オルゴールの中に死んだスギモトの結婚指輪が入っているのを見つける。万城目はリリーを問いただすが、知らないうちに物が入っていると言うだけで、また最近は疲れが酷く、目を覚ますと手や顔に血が付いていることがあるともいう。

 一ノ谷博士はその話を聞き、不吉な前兆だと危惧し、もしリリーの精神が肉体を引き寄せるようになったら破滅だと警告する。一行は博士の開発した「超短波ジアテルミー」と共にリリーの元に向かうが、父親から姿が見えないと言われる。

 その頃リリーは分離した幽体に案内されて、母親がいると信じている山へと向かっていた。万城目と一平は車でリリーたちに追いつき、「超短波ジアテルミー」の力で精神と肉体を融合させ、機関車にひかれかけたリリーは万城目に救われた。

 最後。万城目たちが魔術団の公演に行き、リリーと父親が空中浮遊芸をやめ、父親がピエロとして働いているのを見るシーンで〆。


脚本:北沢杏子(原案:熊谷 健) 監督:梶田興治 特技監督:川上景司


感想

 評価は○(まずまず)。

 怪獣・宇宙人は登場せず、幽体離脱というオカルトネタをテーマにしたウルトラQとしては異色のエピソード。全体的な雰囲気は悪くないのですが、満足度はもう一つでした。


 万城目たちが、空中浮遊芸を演じる少女が頻発する事故の犯人ではないかと睨み追及していく、という展開は中々にホラー。容疑者のリリーが幼女で話し方はたどたどしいのに、死人の所持品がオルゴールの中から続々見つかる辺りの不気味さの盛り上げ方も上手いです。目玉である幽体離脱の特撮も、白黒放送であることが却って功を奏していて、見ていて雰囲気があります。

 また、この話は結構無造作に人の死を扱っているのが、それはそれで怖い。まずリリーからペンダントをねだられていた中国人女性・チンさんは「おばあさんの形見なので、私が死んだらあげるよ」と約束した後、いつのまにかペンダントがリリーの物になっていて、チンさんは死んだ事が台詞で説明されるだけ。尺が無いのでチンさんが死ぬシーンは無かったのかもしれませんが、逆に「視聴者も知らないうちに死んで/殺されていた」という展開は中々にショッキングです。

 また22話「変身」で巨人の取材を担当した新婚カメラマン・スギモトさんは、セミレギュラー的な存在だからと安心していたら、セスナの事故であっさり死んでしまい、新婚の指輪はリリーの物にされてしまいました。この辺りの容赦のなさも中々の物でした。


 しかし、催眠術を多用された子供の精神が、眠っている間に肉体からさ迷い出て人死にを引き起こす、というアイデアは秀逸なのですが、その離脱した精神の立ち位置が今一つよくわからないのが惜しかったというか。この精神は、リリーの意識その物なのか、はたまた本人が寝ている間に欲望だけがむき出しになった邪悪な物なのか、という辺りがよく解らないまま話が進んでしまってモヤモヤしました。

 最後は一ノ谷博士が大慌てしているので「精神が肉体に戻ってこれなくなる」という意味で危険なのかと思いきや、「離脱した精神の方が肉体を殺そうとする」というよくわからない展開になってしまいアレアレでしたね。

 結局のところ、催眠術のかけ過ぎでリリーが二重人格的な物になってしまい、別人格の方が離脱していた、という解釈になると思われますが、イマイチそういう説明はなかったような気がします。その辺りを丁寧に解りやすく語ってくれたら、また評価は別になった事でしょう。着想自体は良いので、実に惜しい作品でした。


 ちなみに、エンディングで流れるナレーションは、実は初回放送版と、それ以降版の二種類あるそうで、今回視聴した版では「それ以降版」で

『リリーは悪魔ッ子では無かったのです。もし悪魔がいたとすれば、それはリリーの中にではなくて、それを取り巻く世界が歪んでいたからなのです。ご覧なさい。リリーはすっかり明るさを取り戻し、舞台に無邪気な笑いを振りまいています。』

とハッピーエンドを強調しています。

 ところが初回放送版は

『いったい子供が犯罪を犯すものでしょうか。それも天使のように純真な子供が。しかし、子供がその環境によって、脳組織のバランスを破壊された時、完全な犯罪者となりうるのです。では、また来週まで。』

 と、全く違う怖い感じで締めています。「それ以降版」を聞いて、本編の雰囲気とは釣り合わない甘い台詞で締めるものだなと違和感があったのですが、「初回放送版」なら腑に落ちますね。
 
 
悪魔ッ子(リリー)
X-PLUS 大怪獣シリーズ ウルトラQ編 ワンダーフェスティバル2010冬限定 「悪魔ッ子(リリー)モノクロ版」
 
 

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