【特撮】感想:特撮「ウルトラセブン 4Kリマスター版」第30話「栄光は誰れのために」

ウルトラセブン Vol.1 [DVD]

ウルトラセブン 4Kリマスター版 NHK https://www4.nhk.or.jp/P6565/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

1967年10月1日に放送が開始された「ウルトラセブン」。当時のフィルムをデジタルスキャンし、4K・HDRでよみがえらせた4Kリマスター版を、NHKが初めて放送する。

 

第30話 栄光は誰れのために

 

あらすじ

ウルトラセブン 4Kリマスター版(30)「栄光は誰れのために」
[BS4K] 2021年10月17日 午前8:00 ~ 午前8:26 (26分)


ウルトラ警備隊に仮配属されたアオキ。ダンに異常なライバル心を燃やす彼は、警戒中にプラチク星人の宇宙戦車を発見するが報告をせず、一人で手柄を立てようとする。


1967年に地上波放送された『ウルトラセブン』を初の4K化・国内初放送!地球防衛軍の野戦訓練が実施されることになった。その前日、ウルトラ警備隊に仮配属された隊員候補のアオキは、自身の優秀さを誇示し、ダンに対し異常なライバル心を燃やす。そしてパトロール中にプラチク星人の宇宙戦車を発見した彼は報告を伏せ、一人で手柄を立てようとする。


【出演】中山昭二森次晃嗣ひし美ゆり子毒蝮三太夫阿知波信介古谷敏

 
登場 … プラスチック怪人 プラチク星人

 冒頭。飛来した戦車のような物体が地表に降り立つ。


 地球防衛軍は翌日ホシガハラ一帯で野戦訓練を行うことになったが、同じタイミングでウルトラ警備隊にアオキ隊員が仮配属されることになった。アオキは他の隊員たちにライバル心をむき出しにしており、戦闘機による訓練でダンやキリヤマの乗る機体に実弾攻撃を加える程だった。

 直後、ホシガハラに奇妙な震動が確認され、ダンとアオキが調査に向かうが、アオキは一人で先行し、砂山に未知の戦車のような物体が出現したのを目撃する。アオキは早速攻撃を加えるが、追いついて来たダンに手柄を取られないため、適当に攻撃しただけだと誤魔化す。

 ダンの報告を元に、翌日の野戦訓練は計画通り行うものの、ダンたちは砂山の調査を行う、ということになった。アオキは訓練で敵役をつとめる無人戦車を無線コントロールするマグマライザーに発信機を取り付け、電波で宇宙人の注意を引き、やってきたところを倒そうと考える。

 翌日、野戦訓練が開始されるが、マグマライザーは宇宙人に乗っ取られ、無人戦車は実弾で隊員たちに攻撃を仕掛けてきた。しかも宇宙人の戦車も現れ、隊員たちは挟み撃ちに会い、危機に陥る。アオキはマグマライザー奪回を進言し、ダンと共に突進するが、反撃を受けて倒れてしまう。

 ダンはマグマライザーに突入するが、宇宙人(プラチク星人)と遭遇し、セブンに変身してプラチク星人を倒した。ダンは瀕死のアオキの元に駆け寄り、宇宙人を倒したことを知らせると、アオキは宇宙人の存在を知りながら、手柄のため隠していたことを告白する。そしてプラチク星人の骨が立ち上がると、骨を撃ち倒し、これが償いだと言ってこと切れた。


脚本:藤川桂介
監督:鈴木俊継
特殊技術:的場 徹


感想

 評価は○(人間ドラマパートは良いが……)

 地球防衛軍内部の人間ドラマをメインに据え、宇宙人の侵略話は添え物程度、という異色回ですが、人間ドラマパートはそれなりに楽しめるエピソードでした。


 今回のゲストキャラ・アオキ隊員は上昇志向の塊で、これから同僚・上司になるかもしれないウルトラ警備隊の隊員たちにライバル心を剥き出しにして、ダンたちの乗るジェット機を本気で撃ち落としにかかるなど、客観的に見てやる気があるを通り越し、行動が異常です。

 そのため迷惑をかけられたダン・フルハシ・アマギたちは苦い顔ですが、マナベ参謀は、その騒ぎの後でも注意するどころか、「こういう張り切り男だ」で軽く済ませているのには驚かされます。さすが、侵略宇宙人と激しい戦いを繰り広げる地球防衛軍の上層部、懐が広い。

 野戦訓練の前、アオキがマグマライザーに乗り込み、中にいた隊員と会話する際には、アオキはそれまでとは違ってフレンドリーな感じを見せており、少なくとも平隊員たちからは「出世頭で自分たちの誇り」という風に扱われているのが解ります。もっともアオキは、にこやかに会話をしながら、その隊員たちを犠牲にすることで成り上がろうとしていたわけで、余計にたちが悪いというか……

 当然、アオキの、味方を犠牲にしても自分が栄光をつかめればいい、という考えは天罰が下ってしまって速攻で殉職・退場となったわけですが、こういう生々しい人間ドラマを描く話もある、というのもセブンの魅力の一つと言えるかもしれません。この人間ドラマのくだりは、結構良かったと思います。


 しかし、特撮(セブンと宇宙人との戦い)パートが良くない……

 今回の侵略者「プラチク星人」は、地球防衛軍の野戦訓練に乗じて攻撃を仕掛け、地球人側をかなり苦しめたそれなりの強敵でした。しかし、今回のエピソードの焦点は地球人側の人間ドラマに有ったため、地球人に名乗りを上げるタイミングも無く、名前も地球に来た理由も何一つ語ることも無くウルトラセブンに敗北してしまう、という影の薄い役回りでありました。


 今回のセブンとプラチク星人のバトルシーンの演出は、プロレスから影響を受けたと思しく、

・プラチク星人はセブンが登場すると土下座っぽく謝罪して油断させ、セブンが背を向けて飛び立とうとするとプラスチック液(?)噴射で卑怯なだまし討ち

・リング下にみたてたと思われる砂山の向こう側にセブンとプラチク星人が姿を消し、しばらくしてリング/セットに二体で戻って来るとダブルノックダウン状態

など、善玉レスラー対悪役レスラーのような戦いが展開されました。しかしセブンが侵略宇宙人にちょっと謝罪されただけで戦闘を中止するとか、ちょっとあり得なさ過ぎる描写で、シリアスな人間ドラマパートとかみ合っておらず、ちょっといただけませんでした。
 
 ちなみに様々な宇宙人のデザインで有名な成田亨氏は、このプラチク星人のデザインを最後に円谷を退社していたそうです。つまり、セブンのこれ以降の宇宙人・怪獣のデザインでは成田氏では無かった……、今回初めて知りました。


 今回の話で一つおかしいのは、最初の方でダンはアオキと共に砂山で宇宙人の戦車が逃げ出していくシーンを見たはずなのに、終りの方ではアオキだけしか戦車を目撃していないことになっている事です……、うーん?


 今回のゲストキャラ・アオキ隊員を演じたのは、のちに「仮面ライダーV3」のライダーマン・結城丈二や、「大鉄人17」のチーフ・キッドを演じて、昭和特撮ファンにはお馴染みの山口暁氏。本エピソードを見て、山口暁氏のその後を調べたら、なんと1986年に41歳の若さでガンで亡くなっていたそうで、ちょっとショックでした……
 
 
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