ウルトラセブン 4Kリマスター版 NHK https://www4.nhk.or.jp/P6565/
放送 NHK BSプレミアム。
【※以下ネタバレ】
1967年10月1日に放送が開始された「ウルトラセブン」。当時のフィルムをデジタルスキャンし、4K・HDRでよみがえらせた4Kリマスター版を、NHKが初めて放送する。
第37話 盗まれたウルトラ・アイ
あらすじ
ウルトラセブン 4Kリマスター版(37)「盗まれたウルトラ・アイ」
[BS4K] 2021年12月05日 午前8:00 ~ 午前8:26 (26分)
円盤を追跡していたダンは、マゼラン星人の少女・マヤの襲撃でウルトラ・アイを盗まれてしまう。その隙にマゼラン星から発射された恒星間弾道弾が地球に迫る。
1967年に地上波放送された『ウルトラセブン』を初の4K化・国内初放送!地球に侵入した円盤を追跡していたたダンは、マゼラン星人の少女・マヤの襲撃を受け、ウルトラ・アイを盗まれてしまう。マゼラン星人はセブンの動きを封じ、巨大な恒星間弾道弾を発射して地球壊滅をもくろむ。母星からの迎えを信じて待ち続けるマヤに対し、ダンは母星が彼女を当初から捨て駒としていた事実を告げる。
登場 … マゼラン星人 マヤ
フルハシ・アマギ・ダンは、深夜の山中で謎の物体の落下が目撃されたという知らせをうけ、調査に向かっていた。山に向かったフルハシ・アマギは、美少女が運転するダンプカーとすれ違った後、重傷の男性を発見し、「光の中の女」という言葉を聞き、また火炎の噴射痕を見つける。
二人は山の下にいるダンにダンプカーを止めるように指示するが、ダンプはダンの制止を無視してそのまま走り去り、ダンはポインターで追跡するものの、光る飛行物体に幻惑されてポインターごと崖から転落する。ダンは失神直前、一人の少女が近づいてくるのを見る。ダンはこの少女にウルトラ・アイを盗まれていた。
宇宙ステーションV2では、地上からの不審な電波を傍受するが、その内容は「マゼラン星」宛てに、任務を達成したので迎えを要求するものだった。ウルトラ警備隊は、再度電波が発信されるのを待ち構えていたが、四日後に繁華街・K地区から再度送信されたのを確認する。通信の内容は「迎えはまだか?」だった。
ウルトラ警備隊は電波の発信源の地下のスナックに急行し、ダンはウルトラ・アイを奪った少女を見つけると密かにテレパシーで話しかける。少女はマゼラン星から来たが、地球のような狂った星には侵略する価値など無いといい、すぐに姿を消してしまう。
ウルトラ警備隊は、スナックにあったリズムボックスが通信機になっていると突き止め、そのリズムを宇宙に送信すると、マゼラン星から返事が返ってくる、しかし、その内容は「恒星間弾道弾は既に発射済みであり、迎えに行く時間はない」というものだった。計算の結果、恒星間弾道弾は七時間後の深夜零時に地球に到達すると判明する。
直後、宇宙ステーションV2に巨大なミサイル・恒星間弾道弾が接近し、V2は必死に迎撃するものの、全くダメージを与えられないまま激突され逆に破壊されてしまう。キリヤマはすぐさまウルトラホーク1・2号での迎撃を命令するが、ダンはウルトラ・アイを取り戻すため、命令を無視して基地を飛び出し、再びスナックへ向かう。
ダンは少女と再会し、受信記録を見せ、マゼラン星からの迎えは来ないことを教える。少女はマゼラン星に見捨てられたことを悟り、ダンにウルトラ・アイを返却した。ダンはセブンに変身すると、恒星間弾道弾の内部に突入し、地球に直撃寸前に進路の変更に成功し、宇宙の彼方へと追い払った。
午前零時直前。少女がジュークボックスを操作すると白煙が噴き出し、白煙が薄れた時には少女は消えていた。ダンは急いでスナックに戻ってくるが、少女のブローチが床に落ちているのを見て、彼女が自決したことを悟るのだった。
脚本:市川森一
監督:鈴木俊継
特殊技術:高野宏一
感想
評価は○(なかなか)
宇宙人(の着ぐるみ)が出てこないことで有名なエピソードで、そのため内容には全く期待していなかったのですが、これが意外にも味わい深い好エピソードで驚かされました。セブンのエピソードの中でも上位に評価出来る逸品でしたね。
本作のシナリオを書いたのは市川森一氏。以前に「第29話 ひとりぼっちの地球」という佳作をものにしていて、これは「地球人にもかからず地球で孤独を感じる科学者」をメインに描いていてなかなかの出来栄えだったのですが、本作はそれを上回るクオリティの当たり回でした。
市川氏の回想によれば、この作品は当時予算が尽きて宇宙人の着ぐるみが作れないため、宇宙人が出てこない話を作れと指示されて書いたそうです。そのとんでもない制約が、意外にも名作を生み出す事になったのですから、世の中というものは面白い。
内容は、前述の宇宙人(着ぐるみ)を出せないことで逆に開き直っているというか、ほぼ子供の視聴者を相手にしていないのが印象的。まずセブンの戦うシーンが無い(恒星間弾道弾の機械をいじる場面しかない)、ウルトラ警備隊の隊員たちの派手な戦いも無し、V2とホーク1・2号が恒星間弾道弾に光線を放射するものの全く通用しないというシーンがあるくらいで、戦闘場面は殆ど無し、という地味さ。
その代わり、キャラクターたちの台詞に「ゴーゴー喫茶」「アングラバー」「スナック」等、普段のエピソードなら絶対出てこないような単語が頻出し、また若者たちが地下で踊り狂っているシーンが登場するなど、当時の風俗が様々に描写され、一般ドラマの様な雰囲気です。
また、少女が踊る若者たちを背景にしながら「こんな狂った星を侵略する価値など無い」と言い放ってみたり、ダンがウルトラ・アイ(の偽物)を身につけた大勢に取り囲まれるシュールな場面が有ったり、時計の音が甲高く鳴り響く中でのダンと少女が会話する、など、他のエピソードとあまりにも違う内容は本当に印象に残りました。
終盤には、ダンが母星の裏切りを知った少女に向かって「この星で生きよう。この星で一緒に」と呼びかけたり、少女がジュークボックスの仕掛けで自決したり、少女の最期を知ったダンが「何故、他の星ででも生きようとしなかったんだ。僕だって同じ宇宙人じゃないか」とつぶやいたり、と、もう名セリフ・名場面の連続で、しびれましたね。
このエピソードは、スーパーヒーロー物としては全く見るところが無く、故に子供の頃視聴した際にはそれで面白くないというイメージがしみついたのでしょうが、歳を取ってから見直してみると、全く受け取り方が違いました。ウルトラセブンという枠で放送されたものの、明らかに大人向けのしっかりした内容で、それゆえに放送から50年以上経過した後に見直しても面白い。
こういう作品が何気なく(?)入っているのがウルトラセブンが評価される理由なのでしょうね。まるで期待していなかったので、その反動もあり、素晴らしい満足感でした。
ちなみに、宇宙人の少女は本編では一切名前は出てきません。「マヤ」というのはは、後付けというか隠し設定の模様です。
他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ
perry-r.hatenablog.com
Vol.2
Vol.3
Vol.4
Vol.5
Vol.6
Vol.7
Vol.8
Vol.9
Vol.10
Vol.11
Vol.12