【ゲームブック】感想:ゲームブック「魔宮の勇者たち(ザ・タワー・オブ・ドルアーガ第2巻)」(鈴木直人/1986年)【クリア】

魔宮の勇者たち (創元推理文庫―ドルアーガの塔)
魔宮の勇者たち

http://www.amazon.co.jp/dp/4488903037
魔宮の勇者たち (創元推理文庫ドルアーガの塔) 文庫 1986/10/1
鈴木 直人 (著)
出版社:東京創元社 (1986/10/1)
発売日:1986/10/1
文庫:358ページ

★★【以下ネタバレ】★★
 
 

艱難辛苦を乗り越えて、やっとドルアーガの塔の21階までたどり着いたギルガメス。とはいえ冒険の旅はやっととば口に着いたばかりだ。ギルも成長をとげはしたが、21階から上に出現するモンスターたちは手ごわいものばかり、そう簡単には倒せない。だけどご安心、ギルには強力な味方も現われる。さあカイを救い秘宝を取り返す旅に出発だ。スーパーアドベンチャーゲームドルアーガの塔》第2巻!

 

概要

 1984年にアーケードゲームとして登場し、1985年にはファミコンゲームとして大ヒットした、ナムコRPG風アクションゲーム「ドルアーガの塔」のゲームブック。全三部作の第二巻。


前巻までの内容

ゲームブック】感想:ゲームブック「悪魔に魅せられし者(ザ・タワー・オブ・ドルアーガ第1巻)」(鈴木直人/1986年)【クリア】
https://perry-r.hatenablog.com/entry/2023/01/06/231745

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あらすじ

 あなたこと騎士ギルガメスは、秘宝ブルークリスタルロッドと愛するカイを取り戻すためドルアーガの塔に乗り込み、苦闘の末に遂に21階までたどり着いた。しかし、最上階までにはまだまだ遠く、この先も長い苦難の道のりが待ち構えている。あなたはその試練を乗り越え、悪魔ドルアーガの元までたどり着かなければならない。


ゲームシステムなど

 パラグラフ数は500。主人公のパラメーター(戦力・防御力・体力)有り、サイコロ振り有り、持ち物管理あり、のオーソドックスなシステム。主人公の成長要素があり、戦闘して勝利すると経験値が獲得でき、一定の数値に達する度に戦力が上昇する。

 本作は三部作の第二巻のため、塔の21~40階が攻略対象。


感想

 評価は◎(面白かった)。

 1984年にゲームセンターに登場し、1985年にファミコンに移植され大ヒットした有名ビデオゲームゲームブック。前作「悪魔に魅せられし者」(以下「一巻」)の評価は、正直言って「まあまあ」程度で、それほど感心はしなかったのですが、本作はうって変わって面白さがパワーアップしていて、プレイしていてすっかり引き込まれてしまいました。


 面白くなった要因は、なんといってもイベントが盛りだくさんになったこと、これに尽きます。


 一巻は、序盤から中盤にかけては、原作ゲームと同様に「迷路を歩き回り、どこかに置いてある鍵を見つけ、それを使って上の階への階段を解放する」という展開で、確かに原作ゲームの雰囲気は出てはいましたが、それを何回も繰り返していると正直飽きてしまいました。合間に時々イベントは発生しましたが、せいぜい宝箱の中からアイテムを見つける程度で、原作準拠の展開だとしても、さすがに中身が無さ過ぎました。

 まあ、さすがに終盤に入ると、捕まっている人を解放するとか、謎解きとか、等、がそれなりに用意されていましたが、さすがに遅かった感が否めませんでしたね。


 ところが本作では、その退屈だった点が徹底改善されており、一巻で何回も使われた「鍵を見つけて先に進む(だけ)」というパターンを完全に排し、各フロア毎にそれぞれ趣向を凝らしたイベントが用意されていたので、プレイしていて本当に楽しくて仕方ありませんでした。

 スタートする21階からいきなり複数の店での買い物が待っているし、また階段は最初から自由に使用可能、それどころか特定の階層では複数階を行き来できるエレベーターまで用意されている、など、愚直に一階毎に攻略していくという縛りがなくなり、自由度がかなり高くなっていました。

 さらに、特定の階では、あらかじめ一つ上の階でアイテムを入手してから戻ってこないとクリアできないイベントが有ったり、果ては飛行船に乗り込んで塔から飛び出し地上に降りて冒険する(※そしてまかり間違うと、もう一度塔の一階から登って来る羽目になる(笑))などという信じられないようなイベントも待ち受けていたりして、本作では一階毎に何が起きるのかが楽しみで仕方ありませんでした。

 さらに嬉しかったのは、途中で他の冒険者と遭遇し、意気投合してパーティーを組んで冒険するようになる、という展開が用意されていたことですね。一巻でも、終盤に冒険者クルスがギルの援護をしてくれるという熱い展開がありましたが、本作ではその要素がパワーアップし、以前から手紙などで存在を匂わせていた魔術師メスロンが遂に登場、さらにドワーフの「盗賊王」ことタウルスも仲間となり、三人で敵に立ち向かう構図となりました。ゲームブックはその性質上一人で孤独に戦うことが多いため、仲間とのチームプレイは楽しかったですね。

 塔の中の様子も、作者鈴木直人氏のオリジナリティ満載で、もちろん危険な敵との戦いが何度も待ち受けているものの、遭遇するのは敵ばかりではなく、店が並んでいてギルたちが自由に買い物が出来たり、酒場で情報収集出来たり、占い師が普通に店を出していたり、等々、悪の本拠地に乗り込んだというよりは、街を探索するシティアドベンチャーの様な趣きでした。これらは正直、「悪魔が作った塔」という設定とはそぐわない要素ではあるのですが、これはこれで面白かったのも事実で、鈴木氏のセンスを感じさせました。


 これらの独自要素により、本作は原作のビデオゲームとはすっかり離れた独自の世界となっており、共通しているのは「キャラクターの名前」と「60階の塔を登っていくという展開」程度でしたが、これはこれでゲームブックとしてはめちゃくちゃ面白かったので、完全にOKでした。


 ということで、本作は一巻と比較して面白さが三倍増くらいになっており、プレイして大満足の出来栄えでした。こうなると最終巻となる第三巻も楽しみで仕方ありません。
 

第三巻「魔界の滅亡」感想

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2023年の読書の感想の一覧は以下のページでどうぞ

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魔宮の勇者たち ドルアーガの塔 (幻想迷宮ゲームブック)
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