【ゲームブック】感想:ゲームブック「悪魔に魅せられし者(ザ・タワー・オブ・ドルアーガ第1巻)」(鈴木直人/1986年)【クリア】

悪魔に魅せられし者 (創元推理文庫―スーパーアドベンチャーゲーム)
悪魔に魅せられし者

http://www.amazon.co.jp/dp/4488903029
悪魔に魅せられし者 (創元推理文庫―スーパーアドベンチャーゲーム) 文庫 1986/8/1
鈴木 直人 (著)
出版社:東京創元社 (1986/8/1)
発売日:1986/8/1
文庫:322ページ

★★【以下ネタバレ】★★
 
 

あなたは長い冒険の旅の末、ドルアーガの塔にたどりつきました。あなたの名はギルガメス。王国の人々に戦士ギルとして慕われ敬われている英雄です。この塔のなかに住みついている悪魔、ドルアーガは、天上界から王国に愛と平和をもたらしていたブルークリスタルロッドを塔のどこかに隠してしまいました。あなたの恋人カイは、この盗まれたブルークリスタルロッドを取り戻すため塔に潜入しましたが、逆に囚われの身となってしまいました。あなたはカイを救い出し、ブルークリスタルロッドを取り戻さなければなりません。人気コンピュータゲームのゲームブック版三部作堂々の開幕編!

 

概要

 1984年にアーケードゲームとして登場し、1985年にはファミコンゲームとして大ヒットした、ナムコRPG風アクションゲーム「ドルアーガの塔」のゲームブック。全三部作の第一巻。


あらすじ

 あなたは王国に仕える騎士ギルガメスだ。あなたは長い冒険の旅の末、悪魔ドルアーガが棲みつく巨大な塔へとたどり着いた。かつて、ドルアーガは天上界の秘宝ブルークリスタルロッドを奪い去り、60階からなる巨大な塔のどこかに隠してしまった。さらに、あなたの恋人の巫女カイはロッドを取り戻すため塔に潜入したものの、ドルアーガに捕らわれの身となった。あなたは、この「ドルアーガの塔」に乗り込み、ブルークリスタルロッドと愛するカイを取り戻さなければならない。


ゲームシステムなど

 パラグラフ数は500。主人公のパラメーター(戦力・防御力・体力)有り、サイコロ振り有り、持ち物管理あり、のオーソドックスなゲームブック。主人公ギルには成長要素があり、戦闘して勝利すると経験値が加算され、戦力を上昇させることが可能。

 本作は三部作の第一巻のため、塔の1~20階が攻略対象。


感想

 評価は○(まあまあ)。

 1984年にゲームセンターに登場し、1985年にファミコンに移植され大ヒットした有名ゲームのゲームブック。原作物にも関わらず、まずまずの出来栄えでした。


 本作は、原作ゲームの特徴である「モンスターの徘徊する迷路のようなフロアを探索し、鍵を見つけて上の階へと登っていく」という部分の再現に見事に成功しています。

 塔のフロアは8×8のブロックで構成された正方形で、内部は複雑な迷路を構成していますが(例外有り)、移動はほとんどの場合に双方向移動が可能のため、一旦進んだ後、そこから元の場所に戻ってくることが出来ます。そのため、思うがままにギルガメス(ギル)を操り、あちらこちらと歩き回らせていくらでも迷路を探索できるのです。

 その結果、プレイ感覚は、ゲームの画面の前でコントローラーを操作しているようであり、コンピューターゲーム版のプレイが脳裏によみがえってくるほどでした。全く異なるメディアであるコンピューターゲームの雰囲気を実に上手く紙の上に落とし込んでいるので、この点は感心させられましたね。


 ただし「双方向移動可能」であることは、同時に「パラグラフの大半を移動に関する物に使ってしまっている」という事も意味しており、そのため「総パラグラフ数500・総ページ数300P以上」という結構なボリュームの作品にも関わらず、発生するイベントはいささか少なめで、そこは物足りなさを感じさせました。殆ど何も起きないフロアをひたすら手間暇かけてマッピングして、なんとか鍵と階段を見つけて、ようやく上の階に進む、という事を繰り返していると、楽しさより面倒くささの方が強かったことは否めません。
 
 しかしまあ、そもそも原作ゲームもイベント満載というタイプの作品ではないので、これはこれで原作の雰囲気を出している、と考えるべきなのかもしれませんけどね……



 「ドルアーガの塔」というと、ゲームのパッケージ絵などでお目にかかる二等身の可愛らしいギルが有名で、なんとなくコミカルなイメージがあります。しかし本作は、システムこそ原作のプレイ感を良く再現していますが、雰囲気に関しては全く別物になっています。イラストレーター虎井安夫氏の描く、なんとも薄暗いイラストが作品の描く空気をよく表しており、つまるところ原作ゲームとは全く別物なのですが、これはこれで「有り」でした。

 (数少ない)イベントは、塔の中で捕らわれている人間たちと出会ったり、モンスター専用のレストランに潜入したり、闘技場に入り込んだり、魔女と出会って交渉したり、と、オリジナル要素満載で、つまり本作は「ゲームシステムは原作に忠実にしつつ、雰囲気・展開は全くの別物」という、作者の鈴木直人氏の二次創作のような物となっています。

 しかし、その雰囲気・展開が、プレイしていて楽しかったので「原作からの逸脱」はさっぱり気になりませんでした。特に、悪魔ドルアーガが美形青年の姿で早々と登場してきて今後の対決を盛り上げるとか、戦士クルスが「ここは俺が敵を食い止めておくので、お前は先に行け!」とか言ってくれる展開とかは、まさにありがちなのですが、読んでいてメチャクチャ燃えましたからね。

 という事で、プレイに作業感がやや強かったものの、終盤の展開は劇的で今後に期待を持たせてくれたので、最終的な評価はまずまずというところに落ち着きました。続編のプレイが楽しみな第一作でした。 
 
 

おまけ

 13階の壁画の謎がなかなか解けず、「35年前のゲームに行き詰ってしまうのか……?」と絶望しかけました。あの謎難しくないですかね……?
 

第二巻「魔宮の勇者たち」感想

perry-r.hatenablog.com
 
 

2023年の読書の感想の一覧は以下のページでどうぞ

perry-r.hatenablog.com

 

 
悪魔に魅せられし者 ドルアーガの塔 (幻想迷宮ゲームブック)
悪魔に魅せられし者 ドルアーガの塔 (幻想迷宮ゲームブック)