【映画】感想:映画「白い巨塔」(1966年:日本)

白い巨塔 [DVD]

NHK BSシネマ http://www.nhk.or.jp/bscinema/
放送 NHK BSプレミアム。2023年9月29日(金)

【※以下ネタバレ】
 

山崎豊子の代表作であるベストセラー小説を田宮二郎主演で映画化。大学医学部の教授の座をめぐって暗躍する人々を通して医学界の腐敗を描く山本薩夫監督の社会派ドラマ。


山崎豊子の代表作であり、医学界の腐敗を鋭く描いたベストセラー小説を田宮二郎主演で映画化した傑作社会派ドラマ。大阪の浪速大学医学部では、東教授の定年を前に次期教授の座をめぐる権力争いが水面下で行われていた。最有力候補はエリート助教授・財前五郎だが、財前を嫌う東は別の大学から優秀な医者を招き入れようと画策、病院内はさまざまな思惑が交錯する…。豪華キャストの名演技、山本薩夫監督の骨太の演出も魅力的。

 

あらすじ

 浪速大学医学部付属病院・第一外科の助教授・財前五郎田宮二郎)は、食道外科手術の権威として若くして名声を得ていた。

 財前の上司である第一外科部長の東(あずま)教授(東野英治郎)は、半年後の三月には定年退官の予定で、その後任として財前が教授に昇格し第一外科部長の地位を得るのはほぼ確定とみられていた。ただし、財前が教授の地位を得るためには、医学部の教授31人が投票する教授選に勝つ必要があった。

 東は財前の技術は認めつつも人間としては毛嫌いしていたため、財前を勝たせないように他の大学から自分の後任を呼び寄せることを画策し始める。そして東都大学の高名な船尾教授(滝沢修)に適切な人材を推薦してもらうことになった。

 一方、財前もまた東の思惑を察し、妻の父親で関西医師会副会長の要職を務める財前又一(石山健二郎)の力を借り、医学部長兼第一内科部長の鵜飼(うがい)教授(小沢栄太郎)たちの買収を開始した。


 財前陣営と東&船尾陣営がそれぞれ教授たちの取り込み工作に力を入れる中、財前が食道噴門癌の手術を行った患者の予後が芳しくなかった。第一内科の助教授・里見脩二田村高廣)は、財前に何度も患者の容体に注意するように促すものの、教授選で頭がいっぱいの財前は部下に適当な指示をだすだけだった。

 そしてついに教授選が行われ、財前側の買収工作が実って財前は見事教授の座を射止めた。財前たちが勝利に歓喜する一方、意中の候補が敗北し失意の東は定年を待たずして浪速大学を退官した。


 ところがその直後、財前が手術をした患者が死亡し、遺族は財前の誤診のせいだとして訴訟を起こした。鵜飼は財前が浪速大学の名誉を汚したと罵り、辞表を出すように強要するが、財前は自分と鵜飼は一蓮托生だと開き直る。やがて裁判が始まり、財前が医師としての注意義務を果たしていたか否かが争点となった。里見は医師としての良心に従い、遺族側に有利な証言を行った。

 最終的に裁判に権威者の船尾が呼び出され所見を述べることになり、東はこれで財前の敗訴は確定とほくそ笑む。ところが船尾は厳しい言葉を並べつつも、結局は財前に責任は無かったという結論を出し、財前は裁判に勝利した。船尾は、国立大学の教授が誤診をしたと認めれば自分たち大学医学部の教授の権威に傷がつく事から、教授選のことはおいて財前に味方したのだった。

 財前が喜色満面で鵜飼に勝訴の報告をする一方、里見は鵜飼から報復人事として浪速大学を追い出され地方の病院の教授に転任を命じられる。そして里見が辞表を書き、浪速大学を去るシーンで幕を閉じる。


感想

 評価は○(面白かった)

 「白い巨塔」と言えば医療ジャンルの金字塔的作品として、原作発表後から10~15年おきくらいに映画・テレビドラマ・テレビスペシャルといった感じで映像化されていますが、その第一弾がこの映画で、半世紀以上前の古い作品にも関わらずこれが面白かったです。

 原作のストーリーは多数の登場人物が入り乱れる結構複雑な物なのですが、それを見ていて混乱しないスッキリした内容に仕上げており、二時間半の長尺映画にも関わらず、医師たちの陰謀劇を最初から最後まで堪能できました。

 それにしても、この映画の医者たちのアレっぷりが酷い。教授選に実弾(お札)が飛び交うし、やたら芸者遊びするし、整形外科の野坂教授(加藤武)なんか財前側と東側の両方共に良い顔をして得しまくっているし、とロクな事をしない。さらに最後に船尾が財前を厳しく糾弾するのと思ったら「世間に大学教授が誤診をするとか思われたら困るから」とか言って財前に有利な証言をするし……

 そしてオチが(知っていましたけど)財前が偽証で勝訴して大喜び、逆に真面目に遺族のことを考えた里見が大学から追放、というヒドすぎるもの。これはないわー。当時キネ旬で一位になったそうですが、わかるという感じ。義憤に駆られてこれは人に勧めずにはいられない内容です。

 ということで(オチには腹が立ちましたが)映画としては一級品でした。

おまけ

 この映画は1966年作品にも関わらず白黒映画です。何故かと思ったのですが、多分手術シーンのせいですね。財前が手術をするシーンとか、死体を解剖するシーンとかがあり、メスで皮膚を切るところから始まって内蔵を縫い合わせるところとか多々あるので、カラーで映したらグロ映像祭りになってしまいますからね……
 
 

シネマ「白い巨塔」<レターボックスサイズ>
[BSプレミアム] 2023年09月29日 午後1:00 ~ 午後3:31 (2時間31分)


【製作】
永田雅一
【企画】
財前定生、伊藤武
【監督】
山本薩夫
【原作】
山崎豊子
【脚本】
橋本忍
【撮影】
宗川信夫
【音楽】
池野成
【出演】
田宮二郎東野英治郎田村高廣滝沢修小沢栄太郎加藤嘉船越英二藤村志保、小川眞由美 ほか
【注】
山本薩夫監督の「薩」の字は、右側の上は「立」ではなく「文」になります。環境によって正しく表示できない場合があります。


製作国:
日本
製作年:
1966
備考:
日本語/白黒/レターボックス・サイズ

 

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白い巨塔