【SF小説】感想「ポスビの継承者」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 703巻)(2023年12月20日発売)

ポスビの継承者 (ハヤカワ文庫SF)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150124272
ポスビの継承者 (ハヤカワ文庫SF) 文庫 2023/12/20
H・G・エーヴェルス (著), ロベルト・フェルトホフ (著), 赤坂 桃子 (翻訳)
出版社:早川書房 (2023/12/20)
発売日:2023/12/20
文庫:256ページ

【※以下ネタバレ】
 

タルカン連合の船は百太陽星系に到着し、グーラッドと接触した。しかしローダンらは敵対的なハウリ人と見なされ幽閉されてしまう


「サヤアロンは地獄だ!」ハミラー・チューブは同じ言葉を繰り返す。バス=テトのイルナは、ペドトランスファー能力を用いてこれまでの約700年のあいだに起きた情報を取りだそうとするがうまくいかない。アンブッシュ・サトーらもさまざまな試行を繰り返すが、チューブは支離滅裂であやふやな情報をほのめかすばかりだ。そんななか、銀河系船団は二百の太陽の星に到着。ローダンたち四名が“カルミナ”で調査に向かうが!?

 

あらすじ

◇1405話 ポスビの継承者(H・G・エーヴェルス)(訳者:赤坂 桃子)

 バス=テトのイルナは、タルカン宇宙で行方不明になったオクリルが船内に子供を転送していたことを発見した。やがて銀河系船団はポスビの本星・二百の太陽の星に到着したが、ポスビたちの姿はなく、代わりに大マゼラン星雲出身の種族グラドが惑星を管理していた。ローダンたちはハウリ人と誤解され捕えられるが、強引に脱出し、マット・ウィリーたちの協力で過去の事実を知った。

 500年前、ポスビたちの前にイホ・トロトが現れ、ローダンは必ずどこかで生きているので見つけてくると言い残して旅立った。ポスビたちはその言葉に共鳴し、彼らもローダン捜索のために飛び去ってしまった。残された中央大プラズマは惑星の管理を同盟者のグラドに依頼したが、やがて孤独に耐えられなくなり、グラドとマークスの力を借りて故郷アンドロメダ星雲に帰ってしまった。

 ローダンたちはグラドと友好的に別れ、故郷銀河へと出発した。(時期:NGZ1143年4月15日~23日)

※初出キーワード=特になし



◇1406話 虚無のバリア(ロベルト・フェルトホフ)(訳者:赤坂 桃子)

 銀河系船団は故郷銀河に到着したが、精神を錯乱させる見えないバリアに阻まれ先に進めなくなってしまった。さらに偵察に送り込んだ無人ゾンデは全て爆発してしまい、銀河系は複数の未知バリアで閉鎖されていることが判明した。直後、M-30球状星団の「サトラングの隠者」なる存在が、銀河系を支配する暗黒勢力への共闘を呼び掛けていることが分かった。ローダンたちは惑星サトラングと思しき惑星に到着したが、直後隠者がもう自分は死ぬと連絡して来た。(時期:~NGZ1143年5月10日)

※初出キーワード=M-30球状星団。サトラングの隠者。


あとがきにかえて

赤坂 桃子氏
 10年ぶりにローダンの翻訳に戻ってきたという話。


感想

・前半エピソード「ポスビの継承者」 原タイトル:DIE ERBEN DER POSBIS(意訳:ポスビの相続人)

 ローダンたちが二百の太陽の星に到着したもののポスビは見当たらず……、という話。

 二百の太陽の星が久しぶりに登場。前回登場したのがいつか分からないくらいで、銀河系との位置関係も完全に忘却していたため、慌てて調べ直すことになりました(銀河系から29万8000光年)。

 ローダンたちがポスビの行方を突き止めようとするメインの話はまずまず面白かったのですが……

 サイドストーリーでいつものエーヴェルス風味というかの余計な設定をまた盛り込んできていて、タルカン宇宙のハウリ人の惑星パガルで物質シーソーの爆発と共に行方不明になったトヴァリ・ロコシャンたちの後日談がちらっと描かれています。さすがにあのまま放置するのは夢見が悪かったのかな。

 なんとトヴァリたちと共に行動していたオクリル『ファイター』の子供が宇宙船シマロン内に転移していたという……、さすがに宇宙を超えてではないでしょうから爆発直後にタルカン宇宙でこっそり転送されてきていたということなのでしょうけど、またムチャクチャ言い出したなぁ…… ナート人の騎士とか設定増やしすぎ。



・後半エピソード「虚無のバリア」 原タイトル:BARRIERE IM NICHTS(意訳:虚無のバリア)

 ローダンたちはついに故郷銀河に到着するものの、謎のバリアに遭遇し……、という話。

 メインストーリーだけでは間が持たなかったのか、銀河系船団の一員クアンド・ベルストが精神を病んでいく様が並行して描かれています(本筋には一切関係なし)。昔を思い出させる、なんとも懐かしい風味でした。


その他

 翻訳者として、2014年発売の471巻「マルゴルの大波」で翻訳を卒業した赤坂桃子氏が10年ぶりに翻訳に帰還。カンタロ・サイクルに入ってから翻訳チームを卒業された方々が次々と戻ってきているのは、翻訳者の手当てがつかない緊急事態に、必死に頼み込んで仕事をしているとかそういう事なのか……? 2023年に渡辺広佐・井口富美子の両氏がチームから引退してしまい手が足りなさすぎて非常事態的な……? 心配すぎる。
 
 
 

700巻~750巻(「カンタロ」サイクル)の他の巻の内容・感想は以下へどうぞ

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ローダン・シリーズ翻訳者一覧は以下へどうぞ

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