【SF小説】感想「次元監獄の虜囚」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 679巻)(2022年12月21日発売)

次元監獄の虜囚 (ハヤカワ文庫SF SFロ 1-679)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150123918
次元監獄の虜囚 (ハヤカワ文庫SF SFロ 1-679) 文庫 2022/12/21
マリアンネ・シドウ (著), H・G・エーヴェルス (著), 工藤 稜 (イラスト), 星谷 馨 (翻訳)
出版社:早川書房 (2022/12/21)
発売日:2022/12/21
文庫:272ページ

【※以下ネタバレ】
 

パラ露の爆燃によるカタストロフィで、タルカニウムでは大多数のエスパーが死亡し、数少ない生存者もプシ錯乱におちいっていた!


40億粒のパラ露の爆燃によるカタストロフィの影響は、その震源地である四星系植民国家タルカニウムでもっとも悲惨だった。大多数のエスパーが死亡し、わずかに生き残った女たちも脳内にプシ・エネルギーが過剰供給され、プシ錯乱と呼ばれる狂気におちいっていた。惑星フベイにいたグッキーたちは、この悲惨な状況をなんとか改善すべく(ナルガ・プウル)のプロジェクト調整者バオ・アト・タルカンに救援を依頼するが…

 

あらすじ

◇1357話 カタストロフィの爪痕(マリアンネ・シドウ)(訳者:星谷 馨)

 NGZ430年1月末のパラ露の爆燃により、タルカニウムは壊滅した。グッキーたちは巨船《ナルガ・プウル》の指揮官バオ・アト・タルカンに救援を要請するものの、バオから事実上無視される。ところが《ナルガ・プウル》内で破壊工作者が暗躍し始めたため、バオはグッキーたちが犯人探しをするという条件で、タルカニウムの援助を開始した。4月。破壊工作者が見つからないまま、《ナルガ・プウル》は何者かに乗っ取られ未知目標への航行を開始した(時期:NGZ447年1月末頃~4月4日)

※初出キーワード=無し



◇1358話 次元監獄の虜囚( H・G・エーヴェルス)(訳者:星谷 馨)

 トヴァリ・ロコシャンは、《ナルガ・プウル》内で捕らえられ眠らされていたが、二ヵ月後に覚醒し、逃走の末に船内にいたアトランたちと合流した。同じ頃《ナルガ・プウル》は、ハウリ人「トレン」と、彼に従う「ブルー・ナック」種族に掌握されている事が判明し、船は惑星エトゥスタルに到着した。トレンの目的は、タルカン宇宙から転移したハンガイ銀河の代わりに、エスタルトゥ12銀河の恒星をタルカン宇宙に転移させることで、そのためにシングヴァ種族と同盟を締結した。アトランたちは一旦《ナルガ・プウル》を脱出し、トヴァリ・ロコシャンはイルナのいるM-33へと向かった。(時期:NGZ447年4月4日~)

※初出キーワード=ヘクサメロンの預言者/“最後の六日間”の預言者。ゼロ命令。トルルタル種族。テクノ寄生体。ブルー・ナック種族。トレン。


あとがきにかえて

ミヒャエル・エンデの小説「モモ」の話


感想

・前半エピソード 原タイトル:NACH DEM HOLOCAUST(意訳:ホロコーストのあと)

 壊滅したタルカニウムの復興回。マリアンネ・シドウの久々の担当エピソードで、この人の作風として、相変わらず無駄に(?)力が入っているというかで、今回は災厄を生き延びたタルカン人少女スー・エル=キョンを中心に、タルカニウムの壊滅や生存者の悲惨な暮らしぶりなどをみっちり描いています。それにしても、パオ・アト・タルカンは、偉そうな口を利くわりに事態に全く対応できておらず、ほぼ無能指揮官にしか見えません……



・後半エピソード 原タイトル:IM DIMENSIONGEFANGNIS(意訳:次元監獄にて)

 乗っ取られた《ナルガ・プウル》内で、アトランたちと、トヴァリ・ロコシャンが、それぞれ冒険する話。エーヴェルスの独自キャラのトヴァリ・ロコシャンが、相変わらず無双というか好き勝手にというかの大活躍をしており、アトランの存在感が薄れそうなくらい。

 今回ハウリ人が披露した技術力(数百万の恒星系を異宇宙に転移させる)を見る限り、彼らが技術的にギャラクティカーより何万年も先行していることは明らかで、その力の差は「太陽系帝国 対 島の王たち」とか「銀河系種族 対 ラール人」とかの頃の比ではありません。が、その割に、劇中で全然歯が立たない敵という描写は無いんですよねぇ……、どうもハウリ人の扱いが曖昧でいけませんな。
 
 サブタイトルの「次元監獄」云々は、トヴァリの守護神ルログが《ナルガ・プウル》内の次元監獄とやらに捕らわれているだのなんだのという、つまり本筋とは一切関係ないことでした……
 
 
 

675巻~700巻(「タルカン」サイクル)の他の巻の内容・感想は以下へどうぞ

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ローダン・シリーズ翻訳者一覧は以下へどうぞ

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