【SF小説】感想「シラVIIの盗賊」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 730巻)(2025年2月6日発売)

シラ7の盗賊 (ハヤカワ文庫SF)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150124701
シラ7の盗賊 (ハヤカワ文庫SF) 文庫 2025/2/6
マリアンネ・シドウ (著), アルント・エルマー (著), シドラ 房子 (翻訳)
出版社:早川書房 (2025/2/6)
発売日:2025/2/6
文庫:272ページ

【※以下ネタバレ】
 

ティフラーの協力でモトの真珠の新たなファイルを開くことに成功する。そこにはローダンの、行方不明の妻の情報が含まれていた!


シラグサ・ブラックホール特異点から、無残にも破壊された“ソロン”の残骸が突如出現した。ダオ・リンはただちに救助に向かい、ただ一人生き残ったニッキ・フリッケルを救出する。ニッキからローダン一行がペルセウスブラックホールでカンタロの罠にはまり攻撃されたことを聞き、このシラグサのブラックゲートがペルセウスにつながっていることを確信する。アノリーを中心に、スターロードを発見すべく奮闘するが…

 

あらすじ

◇1459話 シラVIIの盗賊(マリアンネ・シドウ)(訳者:シドラ房子)

 NGZ1144年7月。シラグサ・ブラックホール内。ティフラーたちは銀河系から漂着した宇宙船の残骸から瀕死のニッキ・フリッケルを救出し、ローダンたちがカンタロに大敗したことを知った。ギャラクティカーはモトの真珠内にはエルンスト・エラートがローダン宛てに残した機密情報が残されていることを突き止めた。カルタン人たちはダオ・リン=ヘイに故郷への帰還を要求し、ダオ・リンとその腹心ゲ・リアング=プオのみがモトの真珠と共に後に残った。

 やがて銀河系にいるナックのラカルドーンとの通信が確立し、ラカルドーンはブラックホール近傍のステーション・シラVIIに何か重要なものが有ると示唆した。ティフラーたちは調査するものの成果はなく、しかも突然現れた幽霊のような存在に襲撃され、ゲ・リアング=プオは殺され、イルミナ・コチストワの細胞活性装置が盗まれた。ティフラーたちはスターロードを利用して銀河系への移動に成功したが、スターロード内で一年を失い、到着した時にはNGZ1145年7月となっていた。(時期:NGZ1144年7月頃~1145年7月28日)


※初出キーワード=無し



◇1460話 エラートのメッセージ(アルント・エルマー)(訳者:シドラ房子)

 NGZ1145年7月。銀河系。ガルブレイス・デイトンの死から七ヵ月後。ローダンたちとカンタロの戦いに進展はなく、また謎の敵「モノス」の正体も不明なままだった。しかしティフラーの船団が帰還したことで、ローダンたちはカンタロについての情報と共にモトの真珠を手に入れた。ローダンたちはモトの真珠からエルンスト・エラートが残したメッセージを取り出すことに成功した。

 過去。エラートはキトマから行方不明のゲシールを見つけることが銀河系を救うことになることを知らされ、宇宙を放浪した。しかし深淵の騎士の拠点惑星クーラトではレトス=テラクドシャンに銀河系救援を求めるものの相手が強大過ぎるとして拒否され、さらにジェン・サリクの細胞活性装置が何者かに盗まれたことを知らされた。エラートは「アマゴルタ」という何かがゲシールの手がかりになるとの予想を残していた。

 アノリー種族は「アマゴルタ」はブラック・スターロードの建設者が目指した場所の名前であることを教え、また親戚種族であるカンタロへ連絡を取りたいと希望した。(時期:NGZ1145年7月26日~)

※初出キーワード=モノス(謎の敵の仮名)。惑星シスタ(旧名:惑星シシュター)。アリネット衛星。アマゴルタ。


あとがきにかえて

シドラ房子氏
 ドイツ・ヘルゴラントに行った話。


感想

・前半エピソード「シラVIIの盗賊」 原タイトル:DER DIEB VON SIRA-7(意訳:シラVIIの盗賊)

 ティフラーたちはシラグサ・ブラックホール近傍のステーション・シラVIIで幽霊のような相手と遭遇し……、という話。

 話の密度が恐ろしく高く、ニッキ・フリッケル救出、カルタン人たちの退場、ローダン宛てのメッセージの発見、幽霊の出現、まさかのゲ・リアング=プオ死亡、イルミナの細胞活性装置盗難、スターロードでまた一年失くす、と、目まぐるしいにもほどがある話でした。

 それにしてもニッキ・フリッケルの(レギュラーの座に対する)生命力が物凄い。ワリンジャーやデイトンという細胞活性装置所持者すらどんどん消されている厳しいサイクルで、ブラックホールに突き落とされてもまだ生きているとは……

 ところでイルミナ・コチストワの「超能力が有るから細胞活性装置は不要」という説明が今一つ納得できない。超能力を使うには生命力が必要で、生命力を得続けるためには細胞活性装置が必要なのでは……?



・後半エピソード「エラートのメッセージ」 原タイトル:ELLERTS BOTSCHAFT(意訳:エラートのメッセージ)

 ローダンたちはモトの真珠からエルンスト・エラートの残したメッセージを発見し……、という話。

 前半部を占めたカンタロ高官誘拐作戦が実は何の意味もない話で、肝心なエラートからのメッセージは終盤のほんの少しだけだったという予想外の話。しかし意外と重要な描写が多く、

・銀河系を支配する存在は深淵の騎士ですらしり込みする相手である
 →ロードの支配者、または「モノス」は、超越知性体かそれクラスの強敵であることをにおわせている

・惑星クーラトの深淵の騎士のドームにジェン・サリクが残した細胞活性装置も盗まれていた
・“それ”は過去数百年姿を見せていない
 →騎士のドームまで忍び込めるとは、もしかしたら“それ”が細胞活性装置を回収しているのか? という伏線をにおわせている

 など「その視点は無かった」という設定がどんどん出てきて面白かったです。
 
 
 

700巻~750巻(「カンタロ」サイクル)の他の巻の内容・感想は以下へどうぞ

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ローダン・シリーズ翻訳者一覧は以下へどうぞ

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