感想：海外ドラマ「X-ファイル　シーズン3」第１７話「プッシャー」

　ドラマ「X-ファイル　シーズン3」(全24話)の感想です。
（※以下、今回の話の結末まで書いてあります。ネタバレにご注意ください）

■ディーライフ/Dlife X-ファイル　シーズン3
http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s3/

　BSデジタル放送「Dlife」での視聴です｡

第１７話　プッシャー　PUSHER

■あらすじ

http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s3/
EP17 プッシャー
念じるだけで相手を自殺させることができるという、特殊な能力を持つ男プッシャーがモルダー捜査官に挑戦する。彼の能力を使った犯罪は、はたして実証できるのだろうか。

　お題は「超能力（マインドコントロール）」。

　FBIに「プッシャー」を名乗る男から、自分が連続殺人事件の犯人だという電話が入る。それらの事件は全て自殺として処理されたものばかりだったため、イタズラとも思われたが、当事者しか知りえない情報が含まれていたため逮捕することになった。だが「プッシャー」は、言葉で他人をマインドコントロールし、自在に操る能力を持っていた。

　モルダーたちは犠牲を払いつつプッシャーを逮捕し、正体が「ロバート・パトリック・モデール」という男だと突き止めた。ところがただでさえ証拠が無い上に、モデールは裁判官にも暗示をかけたため、モデールは無罪放免になってしまう。

　モデールは能力を使ってFBIに侵入すると、モルダーの人事記録を持ち出して逃走する。モルダーたちは不法侵入でモデールを逮捕することに決め、病院に立てこもったモデールを包囲する。モデールは脳腫瘍に犯されており、それが超能力を発現させたのだと推測された。そして世間に注目される人間になりたいという自己顕示欲を満たすため、犯行を繰り返していたのだった。

　モルダーはモデールによってロシアンルーレットの対決を強要されるが、なんとか暗示を打ち破りモデールを撃つ。モデールは命は取り留めたものの、超能力を使うため脳腫瘍の治療を一切行なっていなかったため、昏睡状態に陥る。もうモデールが目覚めることは無いだろう。

監督 : ロブ・ボウマン
脚本 : ビンス・ジリガン

■感想

　評価は○。

　X-ファイルではおなじみの、超人的能力を持つ犯罪者との対決エピソードだが、他人を自在に操る能力者が登場する割には、話のスケールが意外と小さく、ちょっと期待はずれ。

　モデールの超能力は、対象の人間に何気ない言葉を話しかけ、段々と影響下に置いていく、というもの。使い方（？）は、こちらに向かってくるトラックを心理的に見えなくさせ、そのまま車を突っ込ませて事故を起こさせるという遠回りな物から、ガソリンを被らせた上にライターで点火させて自殺に追い込む、という直接的な物まで、多様な活用法がある。また手書きで「通行許可証」と書いた紙を見せただけで、相手にそれが正規の許可証だと思い込ませるなど、声を介さなくても使える能力の様でもある。

　こういう能力があれば、もう大量殺人でも盗みでもやりたい放題だと思われるのだが、モデールは意外にも堅実で、自分に迫ってくる捜査官たちを死に追いやる程度、という展開がいささか物足りない。もっとも、モデールが能力をフルに使って、テレビ放送で見ている全員に暗示をかけるとか実行してしまったら、それこそFBI捜査官二人でどうこう出来る事態ではないので、話をセーブしたという事だろうか。

　モデールは日本の武術かぶれという設定で、「RONIN（浪人）」という雑誌を愛読し、略称代わりに「OSU（押す）／プッシュの事）と名乗り、モルダーとの対決シーンでは日本の武士の心構えを唐突に説きだす、というのが、日本人視聴者から見るとなんとなく面白かった。

　今回はモルダーとスカリーの親密な描写が多く、深夜の張り込みでスカリーが居眠りをしているときに、モルダーが指で頬を突いて起こすシーンと、最後モデールの病室で二人が指をぎゅっと絡めるシーン、の二つにはニヤリとさせられた。

　プッシャー／モデールの吹き替えはベテラン大塚芳忠氏。

■一言メモ

　冒頭モデールがスーパーで買い物をするときに、レジ前に置いてあったタブロイド新聞「WORLD WEEKLY INFORMER」を手にとって立ち読みします。これはアメリカの「ムー」的な物らしく、表紙がシーズン2の２話「宿主」に出てきたウズムシ男だという怪新聞。さらに見出しには、「HE'S BACK！ Flukeman found washed up in Martha's Vineyard」（彼が戻ってきた。フルークマンがマーサのブドウ園で発見される）と書いてあるという……、そりゃモデールも失笑しますわ。