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感想:NHK番組「シリーズ江戸川乱歩短編集Ⅱ 妖しい愛の物語」第1回「何者」

推理 ドラマ

何者 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

シリーズ江戸川乱歩短編集Ⅱ 妖しい愛の物語 http://www4.nhk.or.jp/P3860/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

エロスと幻想が交錯する独特の作風で、“日本ミステリーの父”とよばれる江戸川乱歩。初期の傑作短編を気鋭のクリエーターたちが映像化する第2シリーズ。第1回「何者」第2回「黒手組」第3回「人間椅子」。日本初といわれる“本格探偵小説”の中で、日常に潜む人間の本性が深く描き込まれている。悩める三角関係からの自演殺人、暗号から解き明かされる愛の逃避行、そして、背筋も凍る“歪んだ愛のカタチ”…シリーズを通して明智小五郎を演じてきた満島ひかりが、「人間椅子」では初めて妖艶な女流作家を演じる。

 
※第2シリーズ「妖しい愛の物語」の他のエピソードはこちら→ 第2回 黒手組 | 第3回 人間椅子
 

第1回 何者 (2016年12月26日(月)放送)

 

あらすじ

シリーズ江戸川乱歩短編集Ⅱ 妖しい愛の物語 第1回「何者」
12月26日月曜 午後11時15分~ 午後11時45分


満島ひかりが名探偵・明智小五郎を演じて話題となったシリーズ第2弾。自宅で撃たれて入院した若者(若葉竜也)が、事件の謎を推理。明智小五郎と対決することに…。


江戸川乱歩の短編小説を気鋭のクリエーターたちが映像化する。演出は佐藤佐吉。私(平井“ファラオ”光)は、鎌倉に住む結城(若葉竜也)の家に逗(とう)留していた。えたいの知れない赤井という男(明智小五郎満島ひかり)も出入りしている。ある夜、書斎で結城が足首を撃たれた。庭に残った足跡は、井戸から来て井戸へ戻って消えている。警察は盗賊と判断、入院した結城はベッドの上で探偵よろしく事件の謎を推理するが…。


【出演】満島ひかり,若葉竜也,池上幸平,平井“ファラオ”光,真野恵里菜,麿赤兒,野口雅弘,吉行由実,宮本正也,斉木しげる

 1929年の夏。「私」は大学の友人「甲田伸太郎」とともに、甲田の友人「結城弘一」の鎌倉の邸宅に招かれる。弘一は陸軍少将の息子で、来年には軍隊に入ることになっていた。弘一は探偵小説や現実の事件について興味を抱くマニアで、やはり屋敷に出入りしている「赤井」という男と探偵談義を繰り広げたりしていた。弘一は、巷で有名な明智小五郎という探偵については軽蔑しきっていた。

 ある夜、弘一は自室で何者かによって片足の甲を撃ち抜かれ、部屋からは金時計など多くの金製品が消え失せていた。警察は盗み目的の賊が侵入し、弘一を撃った後、金製品を盗んでそのまま逃走したと考えるが、なんと足跡は庭の井戸からスタートして屋敷に来た後、屋敷から井戸の中に消えていた。

 入院中の弘一は、探偵気取りで警察相手に推理を披露し、甲田が犯人だと指摘する。実は弘一は自分の許嫁をめぐって甲田と三角関係にあり、過去に取っ組み合いのけんかをした事すらあったという。弘一の推理によれば、甲田は弘一を銃で撃った後、外部からの侵入者がいたように井戸と屋敷の間に足跡をつけ、さらに偽装のため金製品を盗んだ、という。

 警察が弘一の推理に従って庭の池をさらってみると、盗まれたはずの金製品がそっくり見つかり、しかもそれを包んでいたハンカチには「S・K」のイニシャルがあったため、警察は甲田を容疑者として捕まえる。

 やがて退院した弘一の前に赤井が現れ、弘一こそが今回の事件の犯人だと指摘した。池の底から見つかった金製品を包んだハンカチの結び目は縦結びになっていたが、弘一も同じ結び方をする癖があった。また弘一の推理では、甲田が賊の犯行と思わせるため足跡をつけ金製品を池に放り込んだことになっていたが、弘一も全く同じことをする機会があった。赤井は弘一に対し、「自分で自分を撃てば犯人とは思わないだろう」と考えていただろうが、そんなものは小説家の空想である、と嘲る。

 弘一は赤井に対し、何故自分を傷つけてまで自作自演をする必要があったのかと食ってかかるが、赤井は犯行の動機を二つ示す。一つは恋のライバルの甲田を陥れて排除すること、もう一つは自分の足を撃ち不自由になることで軍に入らずに済むようになる、というものだった。赤井は弘一が一石二鳥を狙って今回の犯行に及んだと断定する。

 観念した弘一に、赤井は、自分が弘一が日頃小ばかにしていた探偵の明智小五郎で、別件で弘一の父親の依頼を受けていたため屋敷に出入りしていたのだ、と教える。呆然となった弘一を残して明智は立ち去っていった。


感想

 評価は〇。

 三部作の第一話。今年1月にBSプレミアムで放送した「シリーズ江戸川乱歩短編集 1925年の明智小五郎」(全3作)の続編で、それなりには良く出来ている話だったが、ちょっと物足りなさも感じてしまった。

 第一シリーズ三作品は、どの話も、ストーリーは原作小説に忠実なものの、明智小五郎役を『女優』の満島ひかりが演じるほか、奇妙奇天烈というかシュールというかの演出が山盛りで、ストーリーよりそのエキセントリックさが強烈に印象に残る作品群だった。

 今回の「何者」もそのような変なノリは(それなりには)健在ではあったが、第一シリーズ三作と比較すると奇妙さは控えめで、物足りなかったと言わざるを得なかった。まあ、確かに

・「私」役の俳優が何の説明も無く最初から最後まで水兵の恰好(しかも半ズボン)で通している
とか

・「私」が甲田の取調室の天井裏から取り調べの様子をこっそり見下ろしている
とか

明智小五郎が推理を説明する際に唐突に「フヒッ、フヒヒヒヒッ」と不審な笑いを漏らす
とか

・明智の顔に全く意味もなく青い塗料が付いていて、時間が経つたびに広がっていく
とか

 それなりに変なところはあったものの、第一シリーズと比べると踏み込みが足りない、という印象だった。そのあたり、残り二作品では満足させてくれることを願いたいものである。


※第2シリーズ「妖しい愛の物語」の他のエピソードはこちら→ 第2回 黒手組 | 第3回 人間椅子
 
※全エピソードの一覧はこちら→「シリーズ江戸川乱歩短編集」あらすじ・感想まとめ