感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第124話(シーズン5 第20話)「暗号名「キタラ」」

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【※以下ネタバレ】
 
シーズン5(105~127話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン5」あらすじ・感想まとめ

 

第124話 暗号名「キタラ」 Kitara (シーズン5 第20話)

 

あらすじ

人種差別政策の続くアフリカ某国。捕まった自由運動のリーダーを助け出すため、薬と特別な電球、そして写真の加工… 見事なトリックで白人優位主義者の大佐に、実は自分が黒人であったと思い込ませようとする。


人種差別政策の続くアフリカ某国。捕まった自由運動のリーダー、暗号名『キタラ』。彼の正体がバレる前に助け出すため、薬と特別な電球、そして写真の加工…見事なトリックを使って、彼を捕らえた白人優位主義者の大佐に、実は自分が黒人であったと思い込ませることで、救出作戦を展開するが…。

※DVD版のタイトルは「暗号名"キタラ"」。


【今回の指令】
 西アフリカの植民地ボカモ(Bocamo)では、過去一世紀以上にわたり厳しい人種差別政策が行われている。先日、ボカモの自由運動のリーダーである暗号名「キタラ」(code name Kitara)ことジョン・ダーシー(John Darcy)が、地方長官コーラー大佐(Colonel Alex Kohler)に捕まってしまった。もし大佐にダーシーの正体がばれれば、自由運動は指導者を失い崩壊してしまう。IMFはダーシーを救出し、またコーラー大佐の圧政を終わらせなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、パリス、ダナ、バーニー、ダグ
 ゲスト:無し


【作戦の舞台】
 西アフリカの植民地ボカモ


【作戦】
 冒頭、コーラー大佐たちがジョン・ダーシーを捕まえ、お前がキタラで、軍が輸送していた金塊を盗んだ犯人だろうと決めつけるが、ダーシーは否定する。

 フェルプスがテープの指令を受け取る。

 IMFは、フェルプスとダグが中央から来た軍人、ダナが大佐を取材に来た雑誌記者、という設定でコーラー大佐に接触する。フェルプスは、ダーシーが盗んだ金塊を早く取り戻したいので、ダーシーを拷問で殺しては何にもならない、と文句を言うが、コーラー大佐は気にも留めない。

 コーラー大佐は記者役のダナに、自分が孤児から立身出世してここまで来たと言い、祖父と幼い頃の自分が写った写真を見せる。フェルプスたちは雑談で、自分を白人だと思っていた男がある病気で隔世遺伝が発現し、一夜にして黒人になってしまい、財産を没収されたという嘘話を持ち出す。ダナは大佐にこっそりと日焼けしやすくなる薬を盛る。一方、バーニーは大佐の屋敷に忍び込み、大佐愛用の滅菌装置のランプを特殊な物に取り換えてから、泥棒のふりをして捕まる。

 翌朝、コーラー大佐が目覚めると、薬とランプのせいで肌が真っ黒になっていたため大佐は驚き、病気だと言って部屋に閉じこもる。フェルプスは、大佐の副官の前でコーラーは怪しいと言い、二年前に大佐の妻が妊娠中に事故死したのも大佐が殺したのではないのか、とあからさまに疑う。コーラー大佐は軍医役のダグをこっそり呼んで薬で治せないかと聞くが、ダグはそんなことは禁止されていると突き放す。

 バーニーはダーシーが入れられてる牢の隣に入り、モールスで会話して、金塊の隠し場所を聞き出し、それをフェルプスに伝える。フェルプス無人の小屋の中に金塊が隠してあることを見つける。

 やがてダナがコーラー大佐を訪ねてきて、事情は知っていて重要な話があると言って、大佐をパリスが経営しているという設定の古物商に連れていく。そこには大佐の祖父が写った写真が有ったが、祖父の姿は黒人だった。さらにパリスは大佐が持参した写真の祖父のところに薬を塗り、まるで黒人の写真を薬で白く見せていたようにふるまう。

 続いてIMFは大佐を薬でもうろうとさせた後、パリスが大佐の祖父の姿に変装し、大佐に向かってお前を白人にしてやった、と語り掛ける芝居を見せる。そして大佐を目覚めさせるが、大佐はこれで自分が実は黒人だったと信じ込んでしまう。

 そこに大佐の部下たちが現れ、大佐を逮捕しようとするが、パリスが銃を持ち出して大佐を逃がし、金塊が置いてある小屋に連れて行ってここに隠れるように言う。しかしすぐに大佐は捕まってしまい、フェルプスはコーラー大佐こそがキタラの正体で、だから金塊の隠し場所も知っていたし、今まで捕まらなかったのだ、と断言する。

 最後、フェルプスたちは兵士たちに、バーニーとダーシーを尋問するので中央に連れて行くと言い、金塊も自分たちの車に積み込ませる。ダグはダーシーに、コーラーの日焼けは一週間で治るだろうという。そしてIMFが車で立ち去るシーンで〆。


監督: マレー・ゴールデン
脚本: マン・ルービン


感想

 評価は(まあ)○。

 今回のエピソードは第五シーズンでは珍しくなった「テープの指令→計略の実行→最後は車で立ち去る」という王道展開話で、内容は小粒だとは言え、一応IMFらしい活動をしているので、そこそこには満足できた。

 今回の話は、人種差別が行われている国で、人種差別している方のトップが一晩で被差別側に転じてしまう、という、一種の寓話的、というか道徳的な話だった。日本人視聴者としては「差別はいけない」という程度の感想だが、未だ人種差別が横行するアメリカで、しかも約50年前(このエピソードは1971年放送)に、この内容がどう受け取られたのか、ちょっと想像がつかない。

 IMFは計略のため、「一晩で白人が黒人になってしまうことがある」という話をでっちあげ、それをターゲットのコーラー大佐に信じ込ませる。はっきり言って、設定だけ聞くと殆ど大ボラのバカ話だが、これを巧みな計略で信じ込ませてしまう、という展開がスパイ大作戦らしくて、往年の楽しさが少し蘇ったような気分だった。

 ストーリーの展開としては、30分過ぎまでは「大佐の肌が黒くなった」とただそれだけしか起きず、IMFの狙いが全く見えないので、かなり退屈極まりない。しかし終盤15分頃になると、IMFがニセ写真やパリスの一人芝居などで大佐に自身が黒人だと信じ込ませる一方、フェルプスが部下たちに大佐は色々怪しいと吹き込み、狙い通りの状況を作り上げるあたりからようやく面白くなった。

 しかしまあ、大佐の髪の毛が無い事とか、妊娠中の妻が事故死してしまったことなどまで、「大佐が自分が黒人だと隠すため」と主張するのは、ちょっとえげつないという気もする。

 最後、パリスがコーラー大佐を逃がしてやる振りをして金塊の隠してある小屋に連れて行き、フェルプスが「やはり大佐がキタラだったのか!」とか言い出すあたりで、ついにIMFの計画の全貌が判明して、ちょっとニヤリとしてしまった。

 オチも結構楽しく、IMFが副官たちにコーラー大佐をキタラだと信じ込ませた後、自分たちでバーニーとダーシーを尋問すると言って車に乗せ、さらに金塊まで持って行ってしまう。しかもダグは、「コーラー大佐の日焼けは一週間ほどで治る。その後は大佐も部下たちも赤くなったり青くなったりだ」とかいうのも中々面白かった。

 今回のサブタイトルの原題「Kitara」とは、もちろんダーシーの暗号名だが、キタラとは何かというと、古代ギリシアの弦楽器の事である。結構しゃれた暗号名だと言えよう。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが車でやってきて、屋外公会堂の前にいる男に合言葉を話しかける。男が立ち去ると、フェルプスは何かの入れ物(大きな皿的な何か)の中に隠されていた袋を取り出し、中から大きめの封筒とオープンリール式テープレコーダーを取り出す。フェルプスはテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「成功を祈る」と言ってそのまま終わってしまい、フェルプスはテープを近くの焚火の中に放り込んで処分する。
(※第106話(シーズン5の第2話)「薬物汚染を食い止めろ!」のシーンの一部使いまわし)


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。ジョン・ダーシー、それは暗号名を「キタラ」という人物で、過去一世紀以上にわたる厳しい人種差別政策に喘いでいるアフリカの植民地ボカモにおける自由運動のリーダーである。ところがそのダーシーが、非情と圧政をもって鳴る地方長官コーラー大佐に捕まってしまった。もしコーラー大佐の苛烈な追求によってダーシーの正体が明らかになれば、自由運動はその指導者を失って、挫折のやむなきに至らざるをえない。

 そこで君の使命だがダーシーを救出し、コーラー大佐の圧政に終止符を打つことにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。成功を祈る。 
 
 

シーズン5(105~127話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

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