感想:小説「第二の銃声」(2011年)(アントニイ・バークリー)


 小説「第二の銃声」(アントニイ・バークリー)の感想です。

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■データ(公式)
http://www.amazon.co.jp/dp/4488123074/
第二の銃声 (創元推理) (創元推理文庫) [文庫]
アントニイ・バークリー (著), 西崎 憲 (翻訳)
文庫: 405ページ
出版社: 東京創元社 (2011/2/12)
ISBN-10: 4488123074
ISBN-13: 978-4488123079
発売日: 2011/2/12

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■データ(個人的補足)

推理小説
・原題は「THE SECOND SHOT」。1930年作品。
・「毒入りチョコレート事件」等で有名な素人探偵ロジャー・シェリンガムが活躍するシリーズのひとつ。

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■あらすじ

 1930年。高名な推理作家の屋敷で、客たちが犯罪劇を演じ、推理作家たちがその真相を突き止める、という余興が行なわれる。しかし二発の銃声の後、被害者役の男は本当に射殺死体と化していた。被害者は品性下劣なプレイボーイで、関係者の大半から憎悪されており、ほぼ全員に殺害の動機があった。その中でも犯人役の客は、警察に重要容疑者として追及されたため、旧知の素人探偵ロジャー・シェリンガムを呼び寄せ捜査を依頼するが・・・

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■感想

 バークリーというと、長い間「『毒入りチョコレート事件』の人、終り」という認識でしたが、どうやら最近は再評価されて創元推理文庫やその他の会社からどんどん翻訳が出ているようで、この作品も1994年に他社から発売されていたものが今年創元推理文庫で復活したそうです。

 バークリーは推理小説を「単なる謎解き物語」に終らせず、いろいろな実験をした人で有名(らしい)で、この作品もまさにそういうパターンの作品です。基本的に重要容疑者の主人公の一人称形式で物語が語られますが、推理物というより、関係者間の愛憎を描く人間ドラマという感じで、探偵シェリンガムの活躍は添え物程度で、あんまり推理物していません。そしてその調子でラス前まで進んで、シェリンガムの流れるような説明で「これが真相だ」という解決宣言で一旦終るのですが、そのあまりの釈然としなさぶりに「これのどこが名作だ!」と唸り声を上げたくなりました。ところがその後の「エピローグ」で、アッと驚く結末が提示されて、そこでようやく評価が腑に落ちました。

 いわゆる「本格推理小説」ではありませんが、「名探偵が難事件を推理する」という枠組みの中で変った方向性を模索した作品として、まあ一読の価値があるかもしれませんね。

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■評価

(5段階評価の)4点。

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