ダークサイドミステリー NHK https://www.nhk.jp/p/darkside/ts/4847XJM6K8/
放送 NHK BSプレミアム。毎週木曜夜9時放送。
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【※以下ネタバレ】
他の回の内容・感想
本当の謎は、人間の闇
背筋がザワザワ、心がドキドキ、怖いからこそ…見たくなる!
世界はそんなミステリーに満ちている。
未解決の事件、自然の脅威、不思議な伝説、怪しい歴史など、謎と恐怖の正体に迫ります!
内容
侵入率100%!ひとりで世界に挑んだ男 ~伝説の天才ハッカー・アイスマン~
[BSプレミアム]2020年9月26日(土) 午後4:10~午後5:09(59分)
パソコン片手に「世界はひとりでも変えられる」と信じた、若き天才ハッカー。闇社会の4大詐欺サイトを叩きつぶし、FBIとも渡り合った伝説の犯罪者と闇サイトの世界!
あなたの近くに潜むネット詐欺や情報流出のサイバー犯罪。その闇業界でたったひとりの若者が、世界的な4大詐欺サイトをわずか2日で統一、「闇の帝王」となる事件が起きた。天才ハッカー・アイスマン。もとは超絶能力で企業を守る側だった彼は、なぜ闇に落ちたのか?ハッカー同士のバトル!FBIのおとり捜査とのだましあい!知られざる闇サイトの暗闘、ネット詐欺の危険な手口とともに、天才がダークサイドに落ちる悲劇に迫る。
●マックス・バトラー
ハッカーとはコンピューターの達人のこと。そのハッカーの中でも、知識を悪事に利用するものを特に「クラッカー」、または「悪のハッカー」という。
凄腕の悪のハッカー「アイスマン」ことマックス・バトラーは1972年アイダホ州生まれ。両親がコンピューターショップを経営していたため、8歳でプログラミングをマスター。彼の少年だった時代は、ハッカーはネットワークを通じて他人のコンピューターに侵入する「ハッキング」を遊び感覚で罪の意識なくやっており、マックスもハッキングに熱中していた。
ある日、マックスの元をFBIが訪問するが、逮捕するどころか、マックスの能力をFBIに貸して欲しいと申し出てきた。マックスはFBIにスカウトされ、コンピューターへの侵入の痕跡のチェックを行ったり、またセキュリティコンサルタントとして企業のセキュリティの穴を見つけたりしていた。
●転機
マックスが25歳の時ある事件が起きる。インターネットでサイトの名前「XX.com」などという文字と、住所を表す数字を結びつけるソフトを「BIND」(バインド)というが、そのBINDに欠陥があり、悪のハッカーがそれを利用すれば他のコンピューターに自在に侵入できるようになることを発見したのである。もし政府や軍のコンピューターに悪のハッカーが侵入すれば、社会はとんでもない混乱に陥ってしまう。
それを防ぐため、マックスは勝手に政府や軍のコンピューターに侵入し、BINDの欠陥を修正した新しい物に置き換え、数日で作業を済ませてしまった。しかしその際に、自分だけがそのコンピューターに侵入できる隠し扉「バックドア」を残していった。
このことがバレて、28歳の時にマックスは逮捕され、18か月の有罪判決を受けた。
●悪への転落
2002年、マックスは30歳の時に刑期を終えて出所すると、またセキュリティコンサルタントとして働き始めた。ところがマックスが刑務所に入っていた間に、世の中ではインターネットの利用が普及し、企業のセキュリティも格段に向上していた。そしてマックスの能力では、もう軍・政府機関どころか民間企業のセキュリティも破れなくなっていた。
行き詰ったマックスは方向転換し、裏社会でカード情報を売買する犯罪者を相手に、カード情報を盗むことにした。そういった犯罪者にソフトを添付したメールを送り付け、相手がそのソフトをクリックすればコンピューターを乗っ取って情報を盗み出したのである。
マックスはクリス・アラゴンという男と手を組み、マックスがカード情報を盗み、クリスがその情報で偽造カードを作って高額商品を買ってから売り飛ばす、という分担で働いた。マックスの取り分は月一万ドルで、クリスはそれ以上稼いでいたはずだったが、マックスは気にしなかった。
やがてマックスは自分でカード情報売買サイト「カーダーズマーケット」を立ち上げ、たちまち裏社会のカード情報サイトのトップ5に入るところまで成長させた。マックスはこの頃から「アイスマン」という名前を使い始める。冷静な男、あるいは殺し屋という意味である。
●悪のサイトの統一
2005年にはクレジットカード情報がハッキングされる事件が起こり、社会問題になり始めていた。
この頃、マックスは掲示板で「アイスマンはサイト運営は出来てもハッかーとしては二流」と揶揄されているのを読み、怒りのあまり、他のライバル闇サイトを潰して自分の実力を見せつけることを決意した。
当時のライバルサイトは「スカンジナビアンカーディング」「トークキャッシュ」「ダークマーケット」「バウチト」の四つ。
「ダークマーケット」と「バウチト」は同じ人物が管理しており、その管理者がカーダーズマーケットに参加していて、どれも同じパスワード「MSR206」を使いまわしていたので、その相手に成りすましてアクセスできた。また「スカンジナビアンカーディング」「トークキャッシュ」は『SQLインジェクション』という手法を使って侵入した。
そしてライバルサイトの顧客データを丸ごとカーダーズマーケットにコピーし、相手のサイトのデータは丸ごと消して復旧不可能にして、顧客を全部取り込んでしまったのである。所要期間はわずかに二日。この統一劇は一般の新聞でもニュースになるほどだった。
●逮捕
マックスは他のサイトを潰したのは良かったが、おかげで顧客に対応する仕事の量が激増し、手が回らなくなってしまった。そのため、闇サイトの関係者でこれはと思う人材三人に声をかけ、サポートを依頼した。その相手は
「ザ・コラプティッドワン」…サイト運営のエキスパート
「サイロ」…情報収集担当
「マスター・スプリンター」…ポーランドの巨大ネット組織の元リーダー。マックスが最も信頼
しかし、マスター・スプリンターの正体は、犯罪者どころかFBIの捜査官J・キース・ムラースキーだった。ムラースキーはアイスマン逮捕のため、数年前からおとり捜査を行っていたのである。
ところがある日、サイロからマスター・スプリンターが当局の人間だという告発があった。サイロがスプリンターのPCに侵入してみると、FBIとつながりの深いセキュリティ団体の内部資料が見つかったというのである。ところがサイロがスプリンターの代理人を追及すると、何故かそのセキュリティ団体の情報がネット上から消え失せていた。ムラースキーが侵入を察して、ネット上から情報を消し去ったのである。
疑心暗鬼に陥ったマックスは、サイト運営をザ・コラプティッドワンに任せて姿を隠すことにした。しかしその直前、2007年9月5日にFBIに逮捕された。実はザ・コラプティッドワンはシークレットサービスの情報提供者で、その相手にサイトを任せてしまったのである。
さらに、マスター・スプリンターを告発したことでマックスが一番信頼していたカイロも、バンクーバー市警の情報提供者だったのである。サイロはマスター・スプリンターがFBI捜査官と知ったうえで、あえてそれをばらすことでマックスの信頼を得て、隙を見てハッキングを仕掛け、アイスマン=マックス・バトラーと突き止めたのだった。
マックスは、当時のサイバー犯罪史上最長の13年の刑が求刑され、また損害賠償としてカードの再発行費用2750万ドル(25億円)の支払いが命じられた。マックスが好んで使ったパスワードは、子供の頃に見たヒーロードラマの名言「!!One man can make a difference!」(ひとりでも世の中は変えられる)だったという。
感想
悪のハッカー物語。終盤のアイスマン/マックスをFBIが追い詰める展開が面白いのですが、最後のオチ「協力者三人とも実は捜査側の人間でしたぁ~」には笑ってしまいました(笑)
「One man can make a difference」は、調べてみると、どうも「ナイトライダー」の台詞みたいですね。ほーん。
ゲストの人の、「今はもう個人でハッキングする時代ではなくなって、国家がやる時代になっている。マックスは古い時代のあだ花みたいな人」という論評に、なんとも哀愁というかなんというかの気分になってしまいました……
面白かったこの番組も今回で最終回。ネタが尽きていないのなら、是非来年も放送してほしいです。
他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ
perry-r.hatenablog.com
決定版 サイバーセキュリティ: 新たな脅威と防衛策