【SF小説】感想「美しき女アコン人」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 625巻)(2020年9月17日発売)

美しき女アコン人 (宇宙英雄ローダン・シリーズ625)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150122970
美しき女アコン人 (宇宙英雄ローダン・シリーズ625) (日本語) 文庫 2020/9/17
H・G・エーヴェルス (著), トーマス・ツィーグラー (著), 星谷 馨 (翻訳)
発売日 : 2020/9/17
文庫 : 288ページ
出版社 : 早川書房 (2020/9/17)

【※以下ネタバレ】
 

ヴァジェンダの中枢ガラスの迷宮で、そこを守護する影法師軍に攻撃され、苦戦するアトランたち。その前にある女性があらわれた!


アトランたち深淵の三騎士とオービターや駆除部隊の一行は、ヴァジェンダ中枢にある"ガラスの迷宮"に到着する。だが、そこを守護する深淵種族ルラ・スサンは、三人の騎士オーラに気づかないでいた。ルラ・スサンひきいる影法師軍の実体化したホログラムの軍勢と、領主判事のグレイ軍団にはさまれて、アトランたちは苦戦する。危機におちいったアトランの前に、謎めいたアコン人女性、バス=テトのイルナがあらわれた!

 

あらすじ

◇1249話 美しき女アコン人(H・G・エーヴェルス)(訳者:星谷 馨)

 アトランたちはヴァジェンダを守る影法師軍に追い詰められるが、謎のアコン人女性「バス=テトのイルナ」に助けられ、またギフィ・マローターもアトランたちに合流した。アトランたちはヴァジェンダを守る種族「ルラ・スサン」がもう一人しかおらず、さらに時空エンジニアがヴァジェンダのヴァイタル・エネルギーを、自分たちが立てこもる光の地平に吸い上げていることを知る。直後ヴァジェンダは陥落し、アトランたちは捕虜としてニー領に連れていかれるが、すぐに脱走した。

 アトランは、イルナはアコン人ではなく、サーレンゴルト人でカッツェンカットの姉であることを知る。イルナは十戒の敵によって全く別の体を与えられ弟を殺す道具にされたが、弟を救おうと宇宙をさ迷ううち深淵にたどり着いたのだった。マローダーはイルナと共に通常宇宙を目指して去り、アトランたちは光の地平へ向かった。(時期:不明:NGZ428年12月頃)

※初出キーワード=バス=テトのイルナ、大いなるものたち



◇1250話 時空エンジニア(トーマス・ツィーグラー)(訳者:星谷 馨)

 深淵の騎士三人とホルトの聖櫃は光の地平へとたどり着いた。アトランたちは聖櫃が時空エンジニアの偵察員ではなく、単なる追放者だと知るが、それでも聖櫃の力を借り、背後から迫るグレイ軍団を引き離して、ついに時空エンジニアと対面した。

 時空エンジニアは時空を自在に操る不死の種族で、15万人がトリイクル9再建のため深淵の地にやってきた。しかし彼らは失敗を繰り返して次々と深淵に飲み込まれ、さらにグレイの領主と化して深淵の地に舞い戻ってきたのだった。時空エンジニアは無力を悟って光の地平に引きこもり、今や種族の残りは5人しかいなかった。

 時空エンジニアは、近い将来トリイクル9が深淵に帰還し、深淵の地は破壊されて住民は全滅することを予見していた。彼らは深淵の地を救うための計画を立てており、アトランとサリクはそれに従い、見かけ上グレイ生物となり領主判事の仲間に加わった。(時期:不明:NGZ429年2月1日とその前後)

※初出キーワード=なし


あとがきにかえて

・作中に出てくる「老いたロバ」という表現の説明や、詩の出典について
コロナウイルス蔓延の昨今について
・今後の仮題(1251話~1300話)


感想

 前半エピソード … 原タイトル:AUF DEM WEG ZUM LICHT(意訳:光あるほうへ)。

 作者のエーヴェルスがやりたい放題やってしまったエピソード。自分のオリジナルキャラの、ギフィ・マローダー、時の子供シヴァ、バス=テトのイルナ、謎の存在ラーチ、たちだけで話をどんどん進めてしまい、主役の筈のアトランたちは彼らにひたすら翻弄されるだけ……、こんな話の作り方をして良いんでしょうか?

 ラーチは何者で何がしたかったのかもわからいまますぐ死んでしまうし(多分その後の謎解きとかは無いと思われる……)、イルナは実はカッツェンカットの姉でしたとかの仰天告白をするし、本来のストーリーよりエーヴェルスのオリジナルキャラ周りの話の方が量が多い有様。とどめで、終盤のアトランたちが領主判事の元から逃げ出して以降の展開を「ニー領じゅうを逃げ回り」云々と四行くらいで済ませているし、と、この回はベテラン作家にしか許されないような暴走ぶりでした。


 後半エピソード … 原タイトル:DIE RAUM-ZEIT-INGENIEURE(意訳:時空エンジニア)。

 今まで何度かアトランたちを助けていたホルトの聖櫃が、実は特命を受けた偵察員でもなんでもなく、ただの仕事が出来ずに解雇されて追い出された放浪者だった、という衝撃展開からスタート。時空エンジニアの過去語りは、まあ今までにも断片的に各所で語られていた事の集合体だったので、あまりおおっと思う要素は無しでした。

 それにしても1250話と、これから後半の新展開スタート!という回の割には、もう深淵編は終わりという雰囲気なのですけど……
 
 
 

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