【SF小説】感想「深淵の騎士たち」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 608巻)(2020年1月9日発売)

深淵の騎士たち (宇宙英雄ローダン・シリーズ608)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150122644
深淵の騎士たち (宇宙英雄ローダン・シリーズ608) (日本語) 文庫 2020/1/9
エルンスト・ヴルチェク (著), 井口 富美子 (翻訳)
文庫: 284ページ
出版社: 早川書房 (2020/1/9)
発売日: 2020/1/9

【※以下ネタバレ】
 

深淵の都市スタルセンで、アトランは鋼の支配者の正体が旧知のテングリ・レトスであると知り、かれとコンタクトをとろうとするが


スタルセンは深淵作用と呼ばれる謎の影響により孤立していた。時空エンジニアはプシオン性のヴァイタル・エネルギーを流しこんでそれを阻止しようとしたが失敗、変節してグレイの領主となっている。そんなときにあらわれたのが"鋼の支配者"だ。その正体がケスドシャン・ドームの守護者テングリ・レトス=テラクドシャンらしいと知ったアトランとジェン・サリクは、なんとかして鋼の支配者のもとへ行こうとするのだが?

 

あらすじ

◇1215話 鋼の支配者の呼びかけ(エルンスト・ヴルチェク)(訳者:井口 富美子)

 ジェン・サリクは、わざとゲリオクラートに捕まり、生贄としてヴァイタル・エネルギー化されるが、細胞活性装置の力で自我を保ち、エネルギー貯蔵庫と接触して、ヴァイタル・エネルギーのコントロールを掌握した。その結果ゲリオクラートも友愛団も力を失った。

 アトランは「鋼の支配者」ことテングリ・レトス=テラクドシャンに会うために、スタルセン辺境地区に向かうが、レトスが一年半前に一瞬姿を現しただけで、今は行方不明だと知らされる。アトランは都市を守る「スタルセン壁」にレトスがいると考え、壁の最上部を目指した。(時期:~NGZ427年12月8日)

※初出キーワード=スタルセン壁



◇1216話 深淵の騎士たち(エルンスト・ヴルチェク)(訳者:井口 富美子)

 アトランはレトスと出会い、彼が一年半前、カルフェシュの指示で、アトランたちは別ルートで深淵へ派遣されたことを知った。しかしその途中「グレイの領主」たちの待ち伏せを受け、「ヴァジェンダ」の助けでようやくスタルセンにたどり着いたものの、スタルセン壁の一部とならざるを得ず、満足に活動できていなかった。

 アトランは、期限付きで深淵の騎士となることを了承した。グレイ領主の最長老と助修士長は、スタルセン外部の仲間の力を借り、スタルセンを一気にグレイ領域に変えようとしたが、アトランやサリクたちの活躍で撃退され、スタルセンはグレイ力から解放された。レトス、アトラン、サリクは謎の「ヴァジェンダ」を目指すことになり、チェルチとウェレベルが鋼の支配者の地位を引き継ぐことになった。(時期:不明。NGZ427年12月頃)

※初出キーワード=ティラン服


あとがきにかえて

 1990年にドイツ・フランケン地方にホームステイしていた話。


感想

 前半エピソード … アトランたちの大反撃話パート1。サリクが生命エネルギー化されても細胞活性装置の力で自我を保っていられた、とか言い出して、細胞活性装置がもう魔法の機械みたいな扱いになっているのに苦笑。あと、「ドリル」という名前の、名前から想像できる通りの地底を突き進む乗り物が出たのにはウケました。


 後半エピソード … アトランたちの大反撃話パート2。都市の外から毒ガス的なグレイ力が流れ込んでくるものの、ヴァイタル・エネルギーで駆逐して大勝利、という、「光と闇の対決」というか、もう一大魔法ファンタジー話化していましたが、それなりに面白かったので良しとします。


 今回は、妙にツボにはまる描写が多く、
・P178 「騎士がケスドシャン・ドームにこないなら、ドームが騎士のところへ行く」という「こっちが山に行けないなら、山がこっちに来ればいいではないか」的展開
・178 レトスがアトランに騎士になる覚悟を問うと、アトランがにべもなく「ノー」と断るシーン
・P216 深淵の騎士の本来の目的地は、今いる「深淵」だった、とかいう取ってつけたような設定
とかに、妙におかしみを感じました。


 アトランとサリクのお供をしていたチェルチとウェレベルは、最終決戦で死ぬのかとハラハラしていましたが、ちゃんと生き残った上に、鋼の支配者としてスタルセンを仕切る仕事を任されることになって、ハッピーエンドで気持ちよく読了できました。スタルセンでの冒険は暗い展開ばかりでしたが、ラストは明るくて良かった良かった。
 
 
 

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