【SF小説】感想「ヴァジェンダへの旅立ち」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 624巻)(2020年9月3日発売)

ヴァジェンダへの旅立ち (宇宙英雄ローダン・シリーズ624)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150122962
ヴァジェンダへの旅立ち (宇宙英雄ローダン・シリーズ624) (日本語) 文庫 2020/9/3
H・G・フランシス (著), H・G・エーヴェルス (著), 星谷 馨 (翻訳)
発売日 : 2020/9/3
文庫 : 281ページ
出版社 : 早川書房 (2020/9/3)

【※以下ネタバレ】
 

アトランたちの一行は、光速でも二カ月かかるヴァジェンダをめざすことに。しかしその途中、乗車したゴンドラが破壊工作され……


領主ムータンとのテクノトリウム攻防戦も終わり、アトランたち深淵の三騎士とオービターや駆除部隊の一行は、ジャシェム二名の提供するゴンドラで一路、ヴァジェンダをめざすことになった。光速でも二カ月という道のりだが、急がなければならない。グレイ領主たちが総攻撃を開始したらしく、ヴァジェンダから救難信号がとどいたからだ。ところが、出発から一週間後に突然、ゴンドラが何者かによって強制着陸させられた!

 

あらすじ

◇1247話 ヴァジェンダへの旅立ち(H・G・フランシス)(訳者:鵜田 良江・星谷 馨)

 深淵の地。アトランたちと駆除部隊は、ジャシェムが提供した移動機器「ゴンドラ」に乗り込み、二光月離れたヴァジェンダ目指して出発した。二ヶ月後、アトランたちはヴァジェンダ近傍までたどり着くが、既に高位のグレイ領主「領主判事」の一人「クラルト」率いる軍勢がヴァジェンダを包囲していた。クラルトは深淵の騎士たちに寝返るように提案してくるが、騎士たちは拒否してヴァジェンダへ向かった。(時期:NGZ428年10月頃~12月1日)

※初出キーワード=アウセ人、スツェセ人、樹冠蚊種族、ルラ・スサン/深淵遊泳者、影帽子軍、領主判事、グレイ議場、ウサーフ種族



◇1248話 ガラスの迷宮(H・G・エーヴェルス)(訳者:鵜田 良江・星谷 馨)

 アストラル漁師のギフィ・マローダーは、エレメントの十戒の孵化基地から二百の太陽の星に転送機で移動したはずが、何故か深淵の地の、グレイ領主の支配下にあるニー領へと出現してしまった。同じころ、アトランたちはヴァジェンダへとたどり着くが、防衛側の「影法師軍」と、背後から迫るグレイ軍団に挟み撃ちにされ、全滅の危機に陥ってしまう。(時期:不明:NGZ428年12月頃)

※初出キーワード=ガラス迷宮、ディドル=サンスカリの精神剣


あとがきにかえて

 鵜田良江氏が担当。
・ドイツ版ローダンのゲスト作家「アンドレアス・ブラントホルスト」の紹介
コンラッド・シェパードが7月20日に亡くなったという話


感想

 前半エピソード … 原タイトル:AUFBRUCH ZUM VAGENDA(意訳:ヴァジェンダへの旅立ち)。

 アトランたちがジャシェム帝国を旅立ってヴァジェンダにつくまでのエピソード。劇中で四回トラブルが発生しますが、うち三回まではグレイ領主も時空エンジニアも関係していない、本筋とは全く無関係なイベントだった、というのには意表を突かれました……

1回目:ゴンドラが墜落。誰かの破壊工作? アウセ人とスツェセ人の戦場に墜落して一揉め
2回目:ゴンドラが樹冠蚊種族のちょっかいで墜落。なんとか交渉して離陸。
3回目:ゴンドラがグレイ軍団の破壊工作で墜落。領主判事と対話
4回目:ヴァジェンダ目前で謎の泡に襲われる。ウサーフ種族の襲撃。交渉して解放された。

 と、殆どのトラブルはグレイ領主とは無関係だったという……、最終盤にヴァジェンダにとりつこうとしたら妨害が入った件は、さすがに時空エンジニア側のちょっかいだと思ったら、これも全然関係ないウサーフ種族の攻撃だったので唖然呆然。意地でも本筋を進めまいとするじらし方が凄いというかなんというか。



 後半エピソード … 原タイトル:DAS GLASLABYRINTH(意訳:ガラスの迷宮)。

 エーヴェルスのオリジナルキャラ・アストラル漁師のギフィ・マローダーがまさかの再登場!!というビックリエピソード。エレメントの十戒相手に大暴れしたあと、611巻の1221話「オクストーン人と提督」をもって姿を消していたので、すっかり存在を忘れていたのですが、深淵エレベーターを使わないとこれない筈の深淵の地に、理屈も何も無く現れてしまいました。

 しかも、謎の存在「シヴァ」の助けを借り、しょっぱなからグレイ領主の最高幹部・領主判事に化けて相手を愚弄するという、なんともけた外れの活躍を見せてくれます。深淵の地について早々のアトランたちが大苦労していたのがバカみたいです…… 作者が持ちキャラをこんなに強めに設定して縦横無尽に活躍させるのは反則なのでは……

 P236の描写によると、スタルセン・ムータン・シャツェンの全てがグレイ領主の支配下にはいった模様。深淵の騎士たちがあれだけ苦労してグレイ力を追い払ったのが全く無駄だったという……、やるせない展開です。

 グレイ領主の最高幹部・領主判事は「クラルト」「ライーク」「トレッス」「フフリー」「ジョルケンロット」「ストークラーク」の計六人ですが、ライークがP254であっさり脱落したのには仰天しました。いくら何でも簡単に死に過ぎじゃないですかね?
 
 
 

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