【SF小説】感想「星々の息子たちの島」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 640巻)(2021年4月28日発売)

星々の息子たちの島 (ハヤカワ文庫 SF ロ 1-640 宇宙英雄ローダン・シリーズ 640)

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星々の息子たちの島 (ハヤカワ文庫 SF ロ 1-640 宇宙英雄ローダン・シリーズ 640) 文庫 2021/4/28
H・G・フランシス (著), エルンスト・ヴルチェク (著), 鵜田 良江 (翻訳)
出版社 : 早川書房 (2021/4/28)
発売日 : 2021/4/28
文庫 : 280ページ

【※以下ネタバレ】
 

首席テラナーの座を辞したティフラーの後任を決める選挙が本格化するなか、ストーカーは選挙戦を裏で操るため陰謀を企てていた。


パラ露をめぐり、テラナーとカルタン人に新たな対立が生まれていた。パラ露を奪取したカルタン人らは損害を受けつつも、追跡をかわし惑星スコラに避難。その海に浮かぶ“星々の息子たちの島”に強行着陸し、損傷した船の修理をはかる。しかしそこは敵意に燃えるスコラ人最大の軍事力集結地でもあった。スコラ人との戦闘、さらにテラナーたちとの抗争も続くなか、カルタン人の庇護者ダオ・リン=ヘイは新たな決断をする!

 

あらすじ

◇1279話 星々の息子たちの島(H・G・フランシス)(訳者:鵜田 良江)

 三角座銀河(M-33)の種族カルタン人は、1000年前に超光速飛行を開始し、勢力圏を拡大していった。やがて430年前、ろ座銀河からもたらされたパラ露はカルタン人の女性に超能力を発現させ、カルタン人の社会はエスパーを中心とする体制へと変貌した。

 NGZ430年。カルタン人は三角座銀河での異種族マーカルとの戦争を終結させ、パラ露回収のために26年ぶりにろ座銀河に進出した。彼らはハンザ商館を襲撃し、収集されていた大量のパラ露を奪って逃走するが、宇宙船のエンジンの不調のため、三角座銀河への帰還は不可能となってしまった。指揮官ダオ・リン=ヘイは、宇宙ハンザとギャラクティカムの対立を利用するため、あえて銀河系へと向かう事を決めた。(時期:不明:NGZ430年)

※初出キーワード=マーカル種族、恒星グウネン、恒星ヌジャラ、プシコゴン


◇1280話 陰謀の達人(エルンスト・ヴルチェク)(訳者:鵜田 良江)

 銀河系。アダムスは銀河系から力の集合体エスタルトゥ向けの商品の輸出を計画していたが、ストーカーが非協力的なため、船団「ハンザ・キャラバン」の準備は秘密裏に実施していた。LFTでは新主席テラナーにシーラ・ロガードが選出され、アダムスは宇宙ハンザをギャラクティカムの一組織にすることを決めた。ストーカーは、パラ露がエスタルトゥに持ち込まれれば、敵対する「ゴリム」に利用されることを危惧し、輸出を阻止しようとしており、銀河系を目指していたカルタン人と接触し、彼らにアダムス誘拐を依頼した。(時期:NGZ430年3月18日~24日とその前後)

※初出キーワード=トシン

あとがきにかえて

・クロノフォシルサイクルでは「エレメントの支配者=カオターク」と扱われていたが、あとから違うということになったので日本語版は色々変えておいた
・ローダン読者がフォネティックコードのローダン版を作っていた
・過去の日本語版を色々読んでいる
という話


感想

・前半エピソード 原タイトル:INSEL DER STERNENSOHNE(意訳:星々の息子たちの島)

 カルタン人たちを主役とするエピソード。『超能力者を擁する主人公たちが、技術的には遥かに進んでいる種族を相手に大活躍して相手をきりきり舞いさせる』というのは、初期の第三勢力の頃のテラナーの姿そっくりです。昔アルコン人とかにやったことを、2000年後に別種族にやられてしまう、という展開は趣深いというかなんというか。

 ハンザ商館襲撃とカルタン人の歴史解説の辺りは良いのですが、ストーリーに全く関係ないスコラ人との戦いとか、崩壊した基地の残骸での怪物との戦いとか、無駄な話が多いのはどうも……

 P18では、カルタン人が「紅茶」を飲んでいる(笑) まあ、経験を積んだローダン読者なら、ここは「カルタン人が(テラナーの)紅茶(に相当する飲み物)を飲んだ」と、適時補うのは当然のことですね。



・後半エピソード 原タイトル:MEISTER DER INTRIGE(意訳:陰謀の達人)

 なんか色々な要素が盛りだくさん。普段のローダンなら(?)新主席テラナー選挙の話だけで一回使いそうなものですが、そこに久しぶりのアンソン・アーガイリスの登場やら、エレメントの支配者の恋人シーラ・ロガード再登場やら、宇宙ハンザとギャラクティカムの合体やら、ストーカーとカルタン人の夢の同盟やら、もう目いっぱい詰め込んだ感じ。まあ話が薄いよりは濃い方がいいですけど。

 ところで、アーガイリスのマスクの一つ「ランスロット・ビッグス」とは、「宇宙人ビッグスの冒険」(ネルソン・ボンド)に登場するあの彼の事なのでは?
 
 
 

600巻~650巻(「クロノフォシル」サイクル)の他の巻の内容・感想は以下へどうぞ

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ローダン・シリーズ翻訳者一覧は以下へどうぞ

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