【歴史】感想:歴史番組「ダークサイドミステリー」シーズン4(2022年版)「“恐怖”はあなたの中にいる エドガー・アラン・ポー 幻想と闇の案内人」(2022年7月7日(木)放送)

ポー傑作選1 ゴシックホラー編 黒猫 (角川文庫)

ダークサイドミステリー NHK https://www.nhk.jp/p/darkside/ts/4847XJM6K8/
放送 NHK BSプレミアム。毎週木曜夜9時放送。

www.nhk.jp
【※以下ネタバレ】
 

他の回の内容・感想

perry-r.hatenablog.com
 

本当の謎は、人間の闇


シーズン4スタートしました!
今年度はなんと、地上波・Eテレで毎週(火)夜10:45放送の、名作の数々のコンパクト29分版と同時期放送です!
背筋がゾワゾワ、心がドキドキ、怖いからこそ見たくなる。世界はそんなミステリーに満ちている。世間を揺るがした未解決の事件、常識を越えた自然の脅威、いにしえの不思議な伝説、怪しい歴史の記録、作家の驚異の創造力…。
人智を超えた謎に迫る「幻解!超常ファイル」のスピンオフ!
栗山千明中田譲治志方あきこのダークなトライアングルに加え、伊藤海彦アナウンサーも参加!

 

“恐怖”はあなたの中にいる エドガー・アラン・ポー 幻想と闇の案内人 (2022年7月7日(木)放送)

 

内容

ダークサイドミステリー「エドガー・アラン・ポー 恐怖と幻想の案内人」
[BSプレミアム] 2022年07月07日 午後9:00 ~ 午後10:00 (60分)


暑い夜、ひんやりしたいあなたへ。幻想と怪奇の傑作短編を多数生みだし、世界中の作家から尊敬される闇のマエストロ・ポーの、驚きの想像力と精密なテクニックを徹底分析!


暑い夜、ひんやりしたいあなたへ。幻想と怪奇の傑作短編を多数生みだした闇のマエストロ、エドガー・アラン・ポー。なぜ170年前の小説家が、現代まで世界中の作家に影響を与え、尊敬されるのか?あなたを心の闇へと引きずり込む、驚きの想像力と精密なテクニックを徹底分析!▽暴走する自己破壊の衝動。世界の果てで襲う究極の神秘。自分が誰かに乗っ取られる恐怖。読者を翻弄するトリック。あなたはもう、闇から逃れられない!


【出演】栗山千明,【ゲスト】桜庭一樹,池末陽子,【語り】中田譲治,【朗読】平田広明,【司会】伊藤海彦

 
 今回のテーマは「作家・エドガー・アラン・ポー


エドガー・アラン・ポーとは

 アメリカの作家・詩人・評論家エドガー・アラン・ポー(1809~1949)。ホラー・SF・探偵小説の始祖と言われ、その後の作家たちに絶大な影響を与えた。


・作品「告げ口心臓」(1843年・ポー34歳)

 語り手「私」の自白らしい場面からスタート。「私」はその老人のことは好きだったが、何故か目が無性に気にくわず、ついに老人を殺そうと決意する。そして夜中に老人の部屋に忍び込もうとすると、老人の心臓の音が鳴り響いて、隣の家に聞こえそうになり、たまらず「私」は老人を殺し、家の床下に埋める。

 やがて、警官たちが、悲鳴が聞こえたという通報で駆け付けて来るが、「私」は悪夢で自分が悲鳴を上げただけと弁解する。そして警官たちが家を調べるが怪しい所はみつからず、「私」は上手く切り抜けたと安堵する。ところが直後何かの音が聞こえ始め、「私」にはそれが床下に埋めた死体の心臓の音だとはっきりわかるのに、警官たちはまるで気が付かないふりをする。耐えきれなくなった「私」は、警官たちに「しらばっくれるのは止めろ、聞こえているのは床下の死体の心臓の音だ」と言う。<完>


 ポーは読者の心をつかむ秘訣として以下のような事を語っている
1)1~2時間で読める短編。長いと、読んでいる間に日常の出来事に邪魔されてしまう
2)独特で唯一の効果を考え、その効果に会う様に全ての出来事や文章を工夫する



●生い立ち

 ポーは1809年アメリカ・ボストン生まれ。2歳で裕福なアラン家の養子となり、高い教育を受けた。しかしトランプ賭博で借金を作り、大学を一年で中退。ボルチモアの叔母のところに身を寄せ、小説・詩・評論を始める。

 ポーがハマったのは「アメリカン・ゴシック」というジャンル。人間の理性や現実のみを重視する風潮に反発し、不思議な事件の恐怖とサスペンスで読者を引きつけ、世界の謎や神秘、人間の内面に迫る物語である。

 ポーは読みやすい短編で読者をひきつけ、1833年・24歳の時に新聞社の文芸コンテストに入選する。


・作品「壜の中の手記」(1833年・ポー24歳)

 語り手「私」は、世の中は合理的に解明できると考える人物。ジャワ島からインド洋に旅立つが、荒天で遭難しどんどん南へ流されていく。やがて大波の中に巨大な帆船が現れ、「私」はその船に乗り込むことに。その船の乗組員は、何故か異様に年老いていて、未知の言葉を喋り、「私」がいないかのように行動していた。

 やがて船はどんどん南に進み、巨大な氷の壁の中の海を進んでいていき、巨大な大渦巻に遭遇するが、船員たちは喜んでいるようだった。そして船は「私」を乗せたまま大渦巻に落下していった。<完>

 ※地球空洞説に基づいたオチということらしい

 ポーは24歳でデビューし、プロ作家の道を歩み出した。



●幻想的な作風

 ポーはペンシルベニア州フィラデルフィアで29歳から5年間を過ごした。ここでポーは名作の数々を生み出した。「アッシャー家の崩壊」「モルグ街の怪事件」「赤き死の仮面」等々。


・作品「ウイリアム・ウィルソン」(1839年・ポー30歳)

 語り手「私」は、死を前にして悪事だらけだった自分の人生を書き残そうとしている。「私」は自分の名を原稿に記することを恥じ「ウイリアム・ウィルソン」という仮名で自分の過去を語りだす。

 「ウィリアム・ウィルソン」は少年時代は学校の寄宿舎で過ごしわがもの顔でふるまっていたが、同じ学校に同姓同名のウィリアム・ウィルソン少年がいた。その少年は「私」と名前も生年月日も入学した日も同じ、容貌や声もそっくり。もう一人のウィルソンは主人公のライバル的な存在で、悪いことをしようとするとそれを邪魔して助言までしてくるが、「私」はそのウィルソンに敵意を抱きつつも憎み切れないものもあった。

 ある夜「私」は、ライバルのウィルソンを懲らしめてやろうと寝室に忍び込むが、その顔を見てショックを受け、そのまま寄宿舎から逃げ出してしまう。

 以後、「私」は様々な悪事を働こうとするが、その度にもう一人のウィルソンが現れて邪魔をしてきた。そして長い長い逃亡の末、イタリア・ローマの仮面舞踏会に、またしてもあのウィルソンが現れた。「私」は激高し、ウィルソンを剣でめった刺しにする。相手は「お前はもう一人の自分を殺した」という<完>


 さて、この物語は『「私」が自分の良心を殺した話』と読めるが……、本当にそうだろうか? 生き残ったのは「もう一人のウィルソン」ではないのか? だとすると、この物語を語っていた「私」とは「もう一人のウィルソン(ウィルソン2)」だったとすると……、この話はウィルソン2の目の前に別のウィルソン(ウィルソン3)」が登場して、最後にウィルソン3が生き残った話……、とすると語り手はウィルソン3でその前にウィルソン4が現れた話で……、と堂々巡りになる、そういう迷宮に閉じ込められたような話なのでは?



●自己破滅志向から生まれた傑作「黒猫」

 1842年・ポー33歳。ポーは精力的に作品を生み出していたが、原稿料は最低レベルだったため、年収800ドル(約120万円)程度。しかも我が強く、チャンスを自ら台無しにするような行動をとったりしていた。そしてポーは酒におぼれるようになり、自制がきかない性格が強くなっていった。


・作品「黒猫」(1843年・ポー34歳)

 主人公「私」は素直で思いやりのある性格。様々なペットを飼っており、特に賢い黒猫「プルートー」がお気に入りだった。だが何年も経つうちに酒におぼれるようになり、妻やペットに暴力をふるい、ついに黒猫プルートーの片目をナイフで抉った挙句、ロープで首を吊って殺してしまう。

 数ヶ月後。「私」は酒場でプルートーそっくりの黒猫を見つけペットにするが、気が付くとその猫は片目が無く、また胸に生えている白い毛はまるで絞首台のように見えた。「私」は恐怖のあまり、妻に暴力をふるう。ある時「私」は妻を殺してしまい、地下室の壁の中に塗り込めて隠蔽し、黒猫はいつの間にか姿を消していた。

 警察は妻の失踪を知り「私」の家を徹底的に調べるが何も見つからない。「私」は勝利に酔うあまり、警官たちの前でわざわざ妻の死体を塗りこめたレンガの壁を叩いて見せるが、次の瞬間壁の中から不気味な声が聞こえてくる。警官たちが壁を壊すと、中から妻の腐乱死体と黒猫が見つかる。「私」は妻の死体と一緒に黒猫を壁に塗り込めていたのだ。<完>



●ポーの最期

 ポーは「黒猫」後も短編小説や詩を発表し続けたが、酒の量も増えていった。そして1849年10月7日。旅先の酒場で泥酔状態で発見され、そのまま死亡した。享年40歳。


感想

 超有名作家だけど、意外と作品は読んだことが無いでしょ、というポーの特集。「黒猫」以外は知らない作品ばかりで面白かったです。なんか「100分de名著」みたいな回だったなぁ(笑)

 しかしポーに影響を受けた日本の作品、ということで「ポーの一族」はともかく「江戸川コナン」は違うと思うなぁ。名前をもらったのは江戸川乱歩の方でしょ?(エドガー・アラン・ポー江戸川乱歩、ではあるけど……)
 
 

光と闇のナビゲーター 栗山千明
語り 中田譲治
テーマ音楽 志方あきこ
司会 伊藤海彦 (アナウンサー)

 
 

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