笑わない数学 NHK https://www.nhk.jp/p/ts/Y5R676NK92/
放送 NHK総合。全12回。
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【※以下ネタバレ】
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パンサー尾形貴弘が難解な数学の世界を大真面目に解説する異色の知的エンターテインメント番組! 「リーマン予想」「フェルマーの最終定理」「連続体仮説」「四色問題」「ガロア理論」「abc予想」「確率論」「P対NP問題」「カオス理論」「ポアンカレ予想」「暗号理論」「虚数」・・・。天才数学者をも苦しめてきた数々の難問、そして美しくも不思議な知の世界を、1回30分ワンテーマ、ギャグ封印で、トコトン分かりやすく掘り下げる!
MC 尾形貴弘 (パンサー)
第12回(最終回)「ガロア理論」(2022年9月28日(水)放送)
内容
笑わない数学 「ガロア理論」
[総合] 2022年09月28日 午後11:00 ~ 午後11:30 (30分)
パンサー尾形貴弘が数学の難問を大真面目に解説する「笑わない数学」。最終回のテーマは「ガロア理論」。革命下のパリ、20歳の天才青年が残した遺稿が数学を変えた!
19世紀前半、パリの若き革命家として知られたエヴァリスト・ガロア。王政打倒に励むかたわら、「第2の数学の夜明け」とも呼べる偉大な理論を誰にも理解されることなく孤独に育んでいた。死の前夜に書き上げた遺稿は、のちに現代数学の扉を開くことになる。心が震えるほど美しく、それでいて抽象的でとらえどころのない理論の核を今回ビジュアル化。カギを握る「対称性」という概念とは?不遇の天才ガロアの物語と共に紹介!
【司会】尾形貴弘
1832年5月30日、パリで革命家エヴァリスト・ガロアが決闘のため二十歳で命を落とした。そのガロアが死の前夜に書き残したのがガロア理論だった。
●解の公式にまつわるドタバタ劇
2次方程式「axの2乗+bx+c=0」には解の公式があり、これにabcの数字を当てはめれば答えが出る。たとえば「1xの2乗-5bx+6=0」の答えは「2と3」である。
さて、3次方程式の解の公式を史上初めて発表したのは、16世紀イタリアの数学者&賭博師&ペテン師として知られるジェロラモ・カルダーノである。
実はカルダーノの前に、フォンタナとデル・フェッロという人物が既に解の公式を発見していたが、それを秘密にしていた。というのは当時は数学者の間で数学勝負が行われており、それに勝つために公式を秘密にしていたのである。
公式が知りたいカルダーノは、まずフォンタナに「他人には教えない」という約束で公式を教えてもらった後、次にデル・フェッロの義理の息子に頼んで計算ノートを見せてもらった。そして、カルダーノは、これでもうフォンタナとの約束は守る必要はないと、解の公式を本で発表してしまい、公式は「カルダーノの公式」と呼ばれることになった。
さらにカルダーノの弟子フェラーリは、フォンタナの考え方を参考にして4次方程式の解の公式を発見する。怒ったフォンタナはカルダーノたちに数学勝負を挑むものの惨敗し、財産を失った挙句に悲惨な死を遂げたとされる。
●もう一つの数学の夜明け
さて、4次方程式の解の公式は見つかったものの、それ以降300年経っても、5次方程式や6次方程式の解の公式は見つからなかった。その理由をはっきり解き明かしたのが「ガロア理論」で、「もう一つの数学の夜明け」とでもいう知の大変革だった・
一つ目の数学の夜明けは、太古人類が数を認識したことだった。リンゴ三個と三回巻きつけられた縄はどちらも「三」という数字だという事を発見し、人類は数字を見つけ出した。そして「もう一つの数学の夜明け」とは具体的には「対称性」についての発見だった。
●対称性とは
対称性とは「見た目が変わらない動かし方」のこと。例えば立方体の向かい合った面に軸を通し、それを90度回転させても見た目は同じ。その軸の刺し方は24通りもある。また立方体とは異なる「正八面体」も、立方体と同じ対称性をもっている。つまり、立方体と正八面体は形は違っても「対称性」はイコールということになる。
●図形と方程式の対称性
数学者たちは、やがて「図形」と「方程式」との間にも共通する対称性があることに気が付いた。例えば、
図形「一本の棒」
→中心を軸に左右を回転させても見た目は変わらない、という対称性を持つ。
方程式「2次方程式」
→「xの2乗-5bx+6=0」は「(x-2)(x-3)=0」と表現でき、「2」と「3」の数字を入れ替えても何も変わらない。
↓
つまり、2次方程式は一本の棒と同じ対称性「S2」を持っているということになる。
これと同じ考え方で、図形「正三角形」と方程式「3次方程式」は同じ対称性「S3」を、図形「正四面体」と方程式「4次方程式」は同じ対称性「S4」を、それぞれ持っていることがわかる。
●なぜ「5次方程式の解の公式」が見つからないのか
数学者たちが2,3,4次の方程式の解の公式を発見する際には、式を元に行き当たりばったり的な方法で解をもとめていた。
ガロアはそれとは全く異なり、方程式と図形の対称性を元に考え、「方程式がもつ対称性の構造が美しく整っている場合だけ解の公式が存在する」→「五次方程式の対称性は美しくないので解の公式は無い」という事を発見した。(※5次方程式に解の公式が無いならば、6次以上の方程式にも解の公式が無いことは簡単に証明できる)
ガロア理論は、フェルマーの最終定理の証明にも、abc予想の望月教授の論文にも使われる、現代数学に欠かせない理論である。
●ガロアの最期
ガロアがガロア理論に関する論文を執筆したのは17歳の時だったが、送った論文は二度も紛失のため受理されず、理工科学校を受験した際も数学の解釈で試験官と口論になり受験に失敗。三度目に送った論文も、理解できないという理由で突き返された。やがてガロアは革命運動にのめり込んでいき、1832年5月30日、パリ郊外で決闘のため命を落とした。
ガロアは決闘前夜遺書として自分の理論を書き記して友人に送っており、ガロアの死後友人たちによってガロア理論は出版された。しかし数学界がガロア理論を理解するのには、その後数十年の時間が必要だった。
感想
今回はガロア理論の話。ガロアの生涯は劇的なので「超天才で、二十歳で決闘で死んで、その前夜に理論を書き残していた」という話はムッチャクチャ有名であちこちでとり上げられるのですが、その理論が具体的にどういう物なのか、という事になると、難しすぎるので誰も説明しませんでした(笑)
今回の話は、そのガロア理論を、初歩の初歩でも説明しようとした史上初めての例なんじゃないでしょうか? スタッフの人、頑張りましたね。
総括
評価は○(面白かった)。
数学の色々なテーマを30分でサクッと説明してくれる教養番組。学生時代に数学は泣きたくなるほど苦手でしたが、その反面「フェルマーの最終定理」とか「素数」とか、その手の数学ウンチク話は大好きなので、この番組もドストライクでした。
この番組、あちこちで話題になってはいたものの、「お笑い芸人の尾形が笑いを封印しているのが面白おかしいwww」みたいなピント外れの感想ばっかりでなんかモヤモヤしてました。
そんなことはどうでも良くて、小難しい数学の話を、ド素人が見ても「ははぁ、なるほど」と何となく納得させてくれる構成の妙が素晴らしい番組でしたね。この手の初心者啓蒙系のものは、科学雑誌の「ニュートン」が大得意としていたのですが、この番組はニュートンの特集の映像版というかで、数学者が監修しているだけに、きちんと真面目にしっかりした内容に仕上がっていて、毎回物凄く楽しかったです。