【数学】感想:NHK番組「笑わない数学 第2シリーズ」第3回「1+1=2」(2023年10月18日(水)放送)

笑わない数学(NHKオンデマンド)

笑わない数学 NHK https://www.nhk.jp/p/ts/Y5R676NK92/
放送 NHK総合

www.nhk.jp
【※以下ネタバレ】
 

パンサー尾形が難解な知の世界を大真面目に解説?!

 

第3回「1+1=2」(2023年10月18日(水)放送)

 

内容

笑わない数学 第2シリーズ 1+1=2
[総合] 2023年10月18日 午後11:00 ~ 午後11:30 (30分)


パンサー尾形貴弘が数学の難問を大真面目に解説する「笑わない数学」。テーマは「1+1=2」。本当に1+1=2は正しいのか?数学者たちの苦悩と意外な結末とは!?


当たり前だと思える事柄でも数学は厳密に証明しなくてはならない。とことん基礎にさかのぼって根拠を固めなくては。19世紀以降、そんな問題意識に目覚めた数学者たちは、1+1=2は正しいのかにさえ疑いの目をむけ、完全無欠な数学を目指し懸命に格闘した。だがその後、数学の危機とも言える不気味なパラドックスに気づいてしまう。はたして数学は完全無欠な学問になるのか? パンサー尾形による「2+3=5の証明」も必見!


【司会】尾形貴弘

 
●1+1=2は正しいか

 19世紀。「非ユークリッド幾何学」というジャンルが見つかったことで、数学者たちは「証明する必要もないくらい当たり前のこと」と考えてきたことが本当に当たり前かどうか確信が持てなくなってきていた。

 例えば「1+1=2」は当たり前だと考えられてきたが、この計算は本当に正しいのか?



●1+1=2を証明するための準備

 数学者ジュゼッペ・ペアノ(イタリア)は1+1=2を証明するため、誰が見ても明らかな単純な事柄からスタートした。

 まず、
 ・「“数”(自然数)という集まりが存在する」
 ・「0は“数”である」
 ・「aが“数”なら、aの次も“数”である」
 とした。


 さて、ここで数の集まりは
「0」→「0の次」→「(0の次)の次」→「((0の次)の次)の次」→……
 と並んでいることになる。しかしいちいちこんな呼び方をしていては面倒くさいので、

「0の次」は「1」と呼ぶ
「(0の次)の次」は「2」と呼ぶ
「((0の次)の次)の次」は「3」と呼ぶ
 ・
 ・
 とする。


 次に「足し算」とは何なのかも明確にする。
・「aとbが“数”ならば、a+bというものも“数”である」(数と数を足したら数になる)
・「a+0はaに等しい」(0というものを足しても変わらない)
・「 a + b の答えは「a+b」とする。そして「a + "bの次"」の答えは「「a+b」の次」」※

※ややこしいけど仮に「aは2」「bは3」とすると
 「2 + 3」の答えは→「2+3(=5)」
 「2 + 3の次(=4)」の答えは→「2+3」の次(=6)



●1+1=2の証明

 以下1+1=2を証明する。

まず
 1は「0の次」だから
 ↓
 1 + 1 = 0の次 + 0の次 … (1)


次に
 「a + bの次 = (a + b)の次」だから、この式に「a = 0の次」「b = 0」を代入すると
 ↓
 0の次 + 0の次 = (0の次 + 0)の次 … (2)


 (1)の右側と(2)の左側は等しいから
 ↓
 1 + 1 = 0の次 + 0の次 = (0の次 + 0)の次 … (3)


ここで
 「a + 0 = a」だから、この式に「a = 0の次」を代入すると
 ↓
 0の次 + 0 = 0の次 … (4)


 (3)と(4)から
 ↓
 1 + 1 = 0の次 + 0の次 = (0の次)の次 … (5)


最後に
 (0の次)の次は「2」と決めてあるので(5)に代入して
 ↓
 1 + 1 = 0の次 + 0の次 = 2


 これで証明終了。



ヒルベルト・プログラム

 19世紀、数学者たちは数学のあらゆる分野を基礎から見つめ直し、絶対矛盾の無い数学へと構築し直そうとしていた。この動きの中心となったのが「現代数学の父」と呼ばれた大数学者ダフィット・ヒルベルト(ドイツ)で、この基礎固めを「ヒルベルト・プログラム」と呼ぶ。



ラッセルのパラドックス

 ところが数学者・哲学者バートランド・ラッセル(イギリス)は1902年にヒルベルト・プログラムに矛盾が入り込む可能性を指摘した。

 たとえ話として「ある村に一軒の散髪屋がある。自分でヒゲをそらない男性は店主がヒゲをそる。自分でヒゲをそる男性は店主はヒゲをそらない」という場合に、

・もし店主が自分のヒゲを自分でそるなら→「自分でヒゲをそる男性は店主はヒゲをそらない」に矛盾する
・もし店主が自分のヒゲを自分でそらないなら→「自分でヒゲをそらない男性は店主がヒゲをそる」に矛盾する

と、どちらに仮定しても矛盾してしまう。「ラッセルのバラドックス」。



●決定的打撃

 アリストテレス以来の天才と呼ばれた数学・論理学の巨人クルト・ゲーデルオーストリア)は、25歳の時にヒルベルト・プログラムに決定的な打撃を与える論文を発表した。その内容は


・「初等的な自然数論を含むω(オメガ)無矛盾な公理的推論は不完全である」


 これを簡単に言えば
・「どれだけ慎重に数学の基礎を固めたとしても、その基礎からは決して証明できない難問が必ず存在する」
 というものだった。「不完全性定理

 これは完全無欠な数学を完成させることは不可能という事を意味していた。


感想

 今回は視聴前に予想した通り「ヒルベルト・プログラム」と「不完全性定理」の話でした。

 それにしても数学者って面倒くさいことを考えるものだなぁと(笑) みかん一個持ってきてそこにもう一個追加したら二個になるの明白なのに、それを「うーむ、これは正しくないかも?」とか言い出すとは(笑)
 

参考

新しい数学の世界をつくったゲーデル不完全性定理を探検してみよう!
https://www.asahi.com/ads/math2022/

www.asahi.com
 
 

この番組について


パンサー尾形貴弘が難解な数学の世界を大真面目に解説する異色の知的エンターテインメント番組! 「リーマン予想」「フェルマーの最終定理」「連続体仮説」「四色問題」「ガロア理論」「abc予想」「確率論」「P対NP問題」「カオス理論」「ポアンカレ予想」「暗号理論」「虚数」・・・。天才数学者をも苦しめてきた数々の難問、そして美しくも不思議な知の世界を、1回30分ワンテーマ、ギャグ封印で、トコトン分かりやすく掘り下げる!


MC 尾形貴弘 (パンサー)
語り 合原明子 (アナウンサー)

 

 

ヒルベルト――現代数学の巨峰 (岩波現代文庫)
ヒルベルト――現代数学の巨峰 (岩波現代文庫)
ゲーデル 不完全性定理 (岩波文庫)
ゲーデル 不完全性定理 (岩波文庫)