【SF小説】感想「謎の黒船あらわる」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 676巻)(2022年11月2日発売)

謎の黒船あらわる (ハヤカワ文庫SF SFロ 1-676)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150123853
謎の黒船あらわる (ハヤカワ文庫SF SFロ 1-676) 文庫 2022/11/2
H・G・エーヴェルス (著), ロベルト・フェルトホフ (著), 星谷 馨 (翻訳)
出版社:早川書房 (2022/11/2)
発売日:2022/11/2
文庫:271ページ

【※以下ネタバレ】
 

PIGヒッチ前哨基地の指揮官代行ナレン・ムシャクが、発見した正体不明の施設を探査中に、突然巨大エネルギー爆発が発生した!


PIGヒッチ前哨基地の指揮官代行ナレン・ムシャクが、赤色恒星の第九惑星で発見した正体不明の施設を探査中、突然、巨大エネルギー爆発が発生した。救助のため急行した“グルウェル”の操縦士タシト・ラヴリンが爆発地点で発見したのは、奇妙な六面体。そのなかには透明な棺に似た容器があり、右胸に半円と放射状の線の不思議なシンボルをつけた黄金の宇宙服姿の、人間に似た生物が横たわっていた!その正体は…!?

 

あらすじ

◇1351話 ある銀河の誕生(H・G・エーヴェルス)(訳者:星谷 馨)

 NGZ447年1月下旬。M-33(三角座銀河)では、PIGの一員となっていたトヴァリ・ロコシャンが辺境惑星で未知種族(ハウリ人)の施設を発見後、時空の変動に巻き込まれた挙句、≪ナルガ・プウル≫船内に出現してしまった。一方、銀河系では213万光年離れた宙域に500億個の恒星が出現したことを検知し、仮にラグナレク銀河と命名していた。ティフラーはプシオン・ネットの異常を知り、力の集合体エスタルトゥの状況確認のため、メタグラヴ・エンジン搭載艦を派遣することを決定した。(時期:NGZ447年1月下旬~2月19日)

※初出キーワード=恒星ナコールの目/第九惑星ムシャク。恒星ワーウォック/第二惑星ヒッチ。ラグナレク銀河。



◇1352話 謎の黒船あらわる(ロベルト・フェルトホフ)(訳者:星谷 馨)

 M-33(三角座銀河)。PIGの辺境惑星の基地に正体不明の船団が攻撃を仕掛け、基地を壊滅させた上で、基地跡からハイパートロップ装置の回収を開始した。PIGは艦隊で反撃して船団を壊滅させ、敵がハウリ人という種族で「時間終止作戦」という企てを進めている事を掴んだ。(時期:NGZ447年2月中旬)

※初出キーワード=惑星フィニステレ。ケッケレク種族。時間終止作戦。


あとがきにかえて

・後半エピソードのフェルトホフの文体や、登場したゲストキャラ・ネルヴァ=タンについて。


感想

・前半エピソード 原タイトル:DIE MATERIEQUELLE(意訳:物質の泉)

 銀河間空間に銀河規模の恒星集団が出現する話。

 ドイツ語のサブタイトルは「物質の泉」という意味なのですが、ミスリードにも程があると言うか、これはちょっと酷過ぎ。物質の泉は作品の本筋に何の関係もなく、作中で「もしかして、あの星々は“それ”が進化した物質の泉では?」「多分違うと思う」と触れていた程度ですから。日本語サブタイトル「ある銀河の誕生」の方が10倍マシです。

 さて、はっきりとは書かれていませんが、エーヴェルスの持ちキャラ・カマシュ人トヴァリ・ロコシャンが再登場しました。チート設定で、物語の焦点に都合よくあらわれるインチキにも程があるキャラで、今回も4000万光年を飛び越えて≪ナルガ・プウル≫船内にいきなり到着するという無茶苦茶ぶり。こんなキャラを許していいのか?!

 今回はどうやら過去作品に登場したキャラやその子孫が多数登場しているらしいのですが、誰一人解らない……、マニアならきっちり把握しているかもしれないかもですけど。

 「ナレン・ムシャク」というキャラ、登場人物一覧に必要でした? 「一覧に書いてあるのだから、死んだと思わせて後から出てくるのだろう……」と思ったら、最後まで出てこなかったんですけど?



・後半エピソード 原タイトル:DIE SCHWARZEN SCHIFFE(意訳:黒い船)

 M-33にハウリ人が出現する話。

 つい数回前まで「恒久的葛藤が」「戦士法典が」と騒いでいたのに、もうすっかりそんなことは忘れてしまったように新たな強敵との戦いが開始され、頭が上手く切り替えられません……、以前のように「永遠の戦士との戦いから70年が過ぎて……」と間隔を開けてくれれば、まだすんなりついていけるんですけどね。

 今回はネルヴァ=タンというスプリンガー女性キャラを登場させ、過去や性格などをみっちり描写していたので、今後のレギュラーになるのかと予想していたら、あっさり死亡。フェルトホフのこういう作風は、最初の頃のフォルツの作風によく似ていますね。フォルツも確かベーコン苔事件の際に、あるゲストキャラクターについてみっちり書き込んでおいて、その回で簡単に死亡という話を書いていて、故・松谷健司先生も「あとがきにかえて」ですぐ死ぬとは思わなかったみたいな事書かれてましたし。
 
 
 

675巻~700巻(「タルカン」サイクル)の他の巻の内容・感想は以下へどうぞ

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