【SF小説】感想「エスタルトゥ」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 700巻)(2023年11月7日発売)

エスタルトゥ (ハヤカワ文庫SF)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150124248
エスタルトゥ (ハヤカワ文庫SF) 文庫 2023/11/7
クルト・マール (著), 星谷 馨 (翻訳)
出版社:早川書房 (2023/11/7)
発売日:2023/11/7
文庫:272ページ

【※以下ネタバレ】
 

ローダンら銀河系船団は惑星ナルナに到着し、エスタルトゥの5万年にわたる救難活動の全貌を知る! タルカン・サイクル完結篇


NGZ448年2月28日深夜、ローダンとアトランひきいる銀河系船団と、ベングエル・ジュアタフ大船団は、ハンガイ銀河の最後の四分の一と一緒にタルカン宇宙から通常宇宙に遷移した。そして3月1日になるやいなや、突然、ベングエル・ジュアタフ大船団が動きだした。どうやらハイパー通信で“集合の呼びかけ”を受身し、そのシグナルに導かれて、ナルナという惑星へと向かうらしい。ローダンたちもその惑星へと向かうが…

 

あらすじ

◇1399話 エスタルトゥ(クルト・マール)(訳者:星谷 馨)

 NGZ448年2月。ハンガイ銀河第四クオーターの転移は成功し、銀河系船団も共に通常宇宙へと帰還した。直後ベングエル・ジュアタフ合同船団は集結の呼びかけを受信して惑星ナルナに移動し始め、後を追ったローダンたちはナルナでヒルダルからエスタルトゥの過去を知らされる。

 五万年前。エスタルトゥは異宇宙からの救難信号を受けタルカン宇宙に向かったが、前超越知性体的な存在・支配者ヘプタメルと敵対することになり、さらにカンサハリア種族はあまりに遠大な計画に気力を使い果たしていた。エスタルトゥは支配者ヘプタメルに敗北したふりをして姿を隠すと、以後密かにカンサハリア種族を支援し、五万年かけてメエコラー・プロジェクトを完遂させたのだった。

 惑星ナルナでエスタルトゥはついに復活し、オーグ・アト・タルカンは自らの希望でエスタルトゥの一部となった。エスタルトゥは自らの力の集合体へと去り、ローダンたちも惑星ナルナを離れたが、ハンガイ銀河に五次元性衝撃波「構造歪曲」が頻発し始めていた。(時期:NGZ448年2月28日~3月9日)

(「タルカン」サイクル完結)

※初出キーワード=惑星レムノル(ベングエルの母星)



◇1400話 夜空の神々(クルト・マール)(訳者:星谷 馨)

 NGZ448年3月。ハンガイ銀河。銀河系船団は4000万年光年彼方のドリフェルが原因と思しき構造歪曲の嵐に襲われ、未知の星域へと転移させられてしまった。ローダンたちは位置確認のため近傍の惑星に向かい、ハウリ人の分派で退化した「コラ人」と遭遇した。コラ人は遥か過去の大異変を契機に技術も六日間教義も放棄し、夜空に見える14個の物体を「夜空の神々」と崇めていた。やがてローダンたちは「神」とは銀河系船団の宇宙船のことで、船団が時間の停止した「停滞フィールド」に閉じ込められている間に、外部では700年間が経過したことを知った。ローダンたちは現在がNGZ1143年3月であることを確認し、まずかつて《バジス》が待機していたXドア宙域を目指すことにした。(時期:NGZ448年3月10日~1143年3月17日)

(「カンタロ」サイクル開始)

※初出キーワード=恒星マシャルタ・惑星チャットゥ。コラ人。球状星団ラングヴィラアン。停滞フィールド。空間レンズ。停滞ルミネセンス。


あとがきにかえて

・星谷馨氏が本巻で翻訳チームから離れること、翻訳に参加する前に既に350巻「アフィリ―」から編集・全体の統括作業を実施していたこと、について。
・今後の仮題(1401話~1450話)
・既刊リスト(601巻~700巻)


感想

・前半エピソード「エスタルトゥ」 原タイトル:ESTARTU(意訳:エスタルトゥ)

 ハンガイ銀河がついに全て通常宇宙に転移し、エスタルトゥも無事復活、というお話。

 まあサイクル完結編としてそれなりには面白かったのですが……

 ただ、支配者ヘプタメルと五大侯爵をタルカン宇宙に置き去りにしてきてもう二度と会う事は無いだろうと思うと、宇宙の死を早めようとする超越知性体級の存在という設定とはなんだったのかとか、あとエスタルトゥ12銀河に実体化した宇宙船《ナルガ・プウル》はその後どうなったのか、等々、締めくくり方にほころびの多すぎる完結編でした。



・後半エピソード「夜空の神々」 原タイトル:GOTTER DER NACHT(意訳:夜の神々)

 銀河系船団は突如未知星域に実体化してしまい、ローダンたちは位置を特定しようとするが……、というお話。

 これは凄い。過去にも「大群サイクル」で故郷への帰還中に一瞬にして三年を失うという展開がありましたが、今回は経過年数が文字通り桁違い。ローダン一行は呆然となっていましたが、読者の方の衝撃も物凄いです。久々に「サイクルが変わると、背景設定が一新されて、新しい世界観になじむのに時間がかかる」というあの感覚を味わされました……

 しかしアッタヴェノクのベオドゥは銀河系船団についてきていたのか……、何の関係もないのに時間ジャンプに巻き込まれちゃって可哀そう……



・あとがきにかえて

 本巻の翻訳者の星谷馨さんがローダン翻訳チームからの卒業を告知されました。初翻訳は491巻(2015年)ですが、実は350巻「アフィリ―」から編集・全体統括を担当されていたとのこと。664巻以降は翻訳だけ担当されていたとのことですが…… 近年訳語の統一が取れていなかったりするのはそのせい? 今後シリーズはどうなってしまうの? 打ち切り以外に心配する要因がまた一つ増えた……
 
 
 

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