感想:NHK番組「風雲!大歴史実験」『川中島の戦い 上杉VS武田 激戦の秘密』

戦史ドキュメント 川中島の戦い〈上〉関東擾乱―戦雲の予兆 (学研M文庫)

風雲!大歴史実験 http://www4.nhk.or.jp/P3924/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

川中島の戦い 上杉VS武田 激戦の秘密 (2017年6月7日(水)放送)

 

内容

川中島の戦い 上杉VS武田 激戦の秘密」NHKBSプレミアム 午後10時00分~ 午後11時00分


戦国の名勝負、武田信玄上杉謙信の第四次川中島の戦い。武田軍8千上杉軍8千、双方の8割が死傷する大激戦。その背景には当時の一大軍事革命があった。戦いの前半、上杉謙信は、信玄の「鶴翼の陣」という必殺の陣形に対し、武器別に部隊編成した「車懸かり」という戦法で武田軍を撃破!一方後半は上杉軍を武田の騎馬隊が追撃大損害を与えた。謎の戦法「車懸かり」そして「武田の騎馬隊」。その真の姿を大実験で検証。


【ゲスト】榎木孝明,村井美樹,【解説】本郷和人,【リポーター】火災報知器,【司会】徳田章


川中島の戦いとは

 川中島の戦いとは、甲斐の武田信玄と越後の上杉謙信が、信濃川中島で五度にわたって激突した一連の戦いを言う。1553年, 1555年, 1557年, 1561年, 1564年の五度の戦いのうち、1561年の第四次の戦いが最大の激戦で、一説によると両軍とも80パーセントの死傷者を出したといわれる。

 戦いの前の状況は、上杉軍が妻女山(さいじょさん)の上に陣取り、武田軍がそれを待ち受けていた。しかし上杉軍が動かないため、信玄は部隊を二つに分け、別動隊を上杉軍の後ろに回し、本隊とで挟み撃ちにしようとした。ところがそれを見破った謙信は、別動隊に攻撃される前に素早く山を下り、信玄率いる本体に襲い掛かった。兵力は武田・上杉共に八千人と伝えられる。



●「鶴翼の陣」対「車懸りの陣」

 信玄は部隊に「鶴翼(かくよく)の陣」を取らせて、上杉軍を待ち受けた。この陣は大将が真ん中となり、そこから左右にジェット機の翼のように少し後ろに下がった形で兵が展開する陣形である。中央部が敵とぶつかると、左右の兵士が両側から相手を包囲するように襲い掛かるものである。

 対する上杉は「車懸(くるまがか)りの陣」で対抗し、武田軍を圧倒したとされるが、どのような陣なのか詳しいことが解っていない。江戸時代の本によれば、大将を中心に部隊が円陣を組んでおり、円の中から第一の部隊が敵に突っ込んで戦い、キリのいいところで引き返して、次に第二の部隊が突入し、と、敵に常に新しい部隊が戦う事で攻撃力が維持されたという。

 ところが実験で試してみると、これが全くうまくいかない。何故かと言うと、上杉軍は待ち受ける武田の大軍に小部隊をぶつける形になってしまうので、兵力の分散・逐次投入となってしまい、何もできないまま次々とやられてしまうだけになってしまった。

 ところが近年、全く別の説が登場している。普通戦国時代の軍は「XX家の部隊」が一つの単位となっており、「XX家部隊」は騎馬・弓・鉄砲・槍などがごちゃ混ぜになっている。しかし、謙信はそれを解体し、鉄砲なら鉄砲だけの部隊、弓なら弓だけの部隊、槍なら槍だけの部隊、という風に兵科別に軍を整理したのではないかというのである。そして、まず鉄砲隊が射撃し、続いて弓部隊が矢を打ち、続いて槍隊が突撃し、という風に兵科別の攻撃を行ったという説が登場している。その攻撃してくる部隊がくるくると入れ替わるさまが「車」ではないかというわけである。

 そして実験でこれをやってみると大成功。鉄砲隊が敵の中央を射撃、続いて弓隊も敵中央を攻撃、とやると効率的に相手を削れ、逆に武田の鶴翼の陣は左右の翼の部隊が遊兵となってしまい、うまく反撃できないまま押し切られることとなった。この結果は武田が押しまくられたという史実と一致する。

 もちろんこれは推測に過ぎず、当時の大名がこんな兵科別の運用という事が現実にできたのか、という疑問は残るが、謙信がそうした可能性は捨てきれない。



●騎馬部隊の追撃の真相

 戦いは後半になると、武田軍の別動隊が到着したため、逆に上杉軍は劣勢となり退却を始めた。その上杉軍を武田の騎馬軍団が蹂躙して大損害を与えたという。

 しかし、騎馬軍団と言っても、フィクションで見るイメージとは違い、現実には馬だけで行動するのではなく、馬一騎の周りに歩兵が数人くっついていて、その単位で行動していた。

 そのため、実験でこの馬+人の単位で追撃戦を行っても、馬は歩兵の速度に合わせないといけないので、とても華麗な追撃戦などは行えなかった。さらに、馬だけにしてみて、横一列で走らせてみても、槍を片手にして馬に乗ると馬をしっかりコントロールできないし、馬は横一列で走ることに慣れていないので、やはりロクな追撃は行えなかった。

 ここで発想の転換。馬は基本的に「縦一列」で走る習性がある。そこで縦一列で追撃戦を行ってみると、後ろの馬は先頭の馬を追いかけるような形になって見事に集団で走り、十分に追撃戦が可能と分かった。

 資料でも、信玄は時として騎馬だけで攻撃を行った、という記録がある。このような騎馬武者だけの攻撃も現実にありえたかもしれない。


感想

 歴史上のエピソードを実験で確かめる番組。今回もめちゃくちゃ面白かった。

 「車懸りの陣」の正体が不明というのは、戦国好きならよく知っている話で、さすがに江戸時代の書物に書かれている「回転しながら敵とぶつかっていく」というのは、いくら何でも空想が過ぎるだろ! というのはわかりますが、「実は兵科別の攻撃だったのでは?」というのは初めて聞く話でした。

 まあ本当にこうだったかは断定はできませんが、実際に実験してみるとそれなりに上手く機能していたので、意外と良い所をついているのかもしれません。


 後半の騎馬の追撃の検証の話は、実験結果が身震いするくらい感激したというか。「馬は横一列では上手く走れない」→「縦一列に走ってみたら結構上手くいった」という実験結果は目から鱗というか、実際にやってみないと解らない話でしたしね。縦一列になった馬がドーっと逃げる車を追撃していくシーンは、これはスゴイって思いましたもん。こういう、現実に馬を走らせて「これなら上手くいく」とか見せられると、机上の考えでどうこういうより遥かに説得力がありました。


 さて、今回もまた当世視聴者向けに、番組の途中で歴史ゲーム風の画面(アニメ風の武将の立ち絵があって、下の方にウインドウで台詞が表示されている)が表示されておりました。お楽しみの声優の人選は「武田信玄石塚運昇」、「上杉謙信阪口大助」、とアニメでは有名な人たち。しかし、さすがに信玄を美系キャラにはしていませんでした(笑) でも、信玄と謙信が互いに相手に「さすが××」とエールを送り合うのは予想通りの展開だったよ(笑)
 
 

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