感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第85話(シーズン4 第7話)「潜水艦での出来事」


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【※以下ネタバレ】
 
シーズン4(79~104話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のページでどうぞ
海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン4」あらすじ・感想まとめ
 

第85話 潜水艦での出来事 Submarine (シーズン4 第7話)

 

あらすじ

ナチス親衛隊の隠し財産の行方を知る、釈放寸前の元親衛隊員。ネオ・ナチの再興のための資金を押さえるため、IMFチームは潜水艦を使ったトリックを繰り出す。

※DVD版のタイトルは「海の底で口を割れ!」。


【今回の指令】
 ナチスドイツでヒトラー親衛隊(SS)隊員だったクルーガー・シュテルマン(Kruger Schtelman)は、戦犯として東ヨーロッパ共和国(The East European Republic)の刑務所で25年服役していたが、三日後に釈放される予定である。シュテルマンは、SSが占領した国から強奪した、いわゆる「SS資金」の隠し場所を知る唯一の人物である。ヨーロッパの新生ナチ(neo-Nazis)は、シュテルマンからその資金の在処を聞き出そうとしている。IMFは新生ナチよりも早くSS資金の所在を突き止めなくてはならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、パリス、バーニー、ウィリー
 ゲスト:トレーシー、無名の劇団員たち(「ハートフォード・レパートリー劇団」所属)


【作戦の舞台】
 東ヨーロッパ共和国


【作戦】
 東ヨーロッパ共和国は、シュテルマンからSS資金の隠し場所を聞き出そうと、尋問の専門家サドナー大佐に尋問を繰り返させていたが、シュテルマンはまったく口を割らなかった。

 IMFはシュテルマンが尋問場所から刑務所に護送される途中を急襲し、シュテルマンを眠らせて近くの倉庫に運び込む。そこには潜水艦の内部のセットが用意されており、IMFはシュテルマンをセット内に運び込んだ後で目覚めさせ、潜水艦の中にいるように信じ込ませる。

 パリスは新生ナチのSS将校、フェルプスは潜水艦の艦長、を演じ、シュテルマンに対し、潜水艦はSS本部のあるスカンジナビアに向かっていると説明する。しかしパリスは、シュテルマンが既にサドナー大佐にSS資金の隠し場所を漏らしてしまったに違いないと疑いをかけ、それを聞いたシュテルマンは誰にも話してないと怒る。

 やがてIMFは、潜水艦がサドナー大佐が差し向けた駆逐艦の攻撃で、深度50メートルの海底に着底したまま動けなくなった、というふりをする。フェルプスはシュテルマンに、もうイチかバチかで海面まで泳いで脱出するしかないが、シュテルマンの歳ではまず助からないだろう、と冷たく宣告する。

 シュテルマンは、このまま資金の隠し場所を漏らした裏切り者と誤解されたまま死にたくないので、フェルプスがちゃんと資金があるかどうか確かめてくれといって、銀行の口座番号(スイスナショナル銀行77326)を教える。それを聞いたフェルプスは潜水艦から脱出したふりをしてセットを抜け出し、他のメンバーと共に撤収の準備を開始する。

 同じころ、サドナー大佐は、シュテルマンたちが遠くに逃亡したと思い包囲網を敷いていた。しかし全く見つからないので、実は相手は最初の現場のすく傍に隠れているのではと思いつき、倉庫に向かう。しかしIMFメンバーは警官に化けて、駆け付けてきたサドナー大佐たちの目の前を堂々立ち去って行った。

 シュテルマンは潜水艦から脱出するが、実は全てがセットだったと知り驚愕する。そこにサドナー大佐たちが現れたので、自分はサドナー大佐の罠にかかったのだと思い、サドナーを祝福する。しかしサドナー大佐はその言葉を聞いて、何者かが既に口座番号を聞き出したことを悟り、自棄になって大笑いする。最後、IMFメンバーが車で逃走するシーンで〆。


監督: ポール・クラズニー
脚本: ドナルド・ジェームス


感想

 評価は○。

 巨大なセットを使用してターゲットを騙し目的を達成する、というIMFの得意な手が炸裂するエピソードで、面白さはまずまずだった。


 今回のエピソードは、様々な要素が過去に放送された物から流用されている。思いつくだけでも「重要人物としてナチの戦犯が登場する」「ナチスドイツの隠し資産をネオナチが利用しようとする」「巨大な閉鎖空間に相手を閉じ込めて、極限状況を演出して精神的に追い込む」「セットが乗り物で、機械的に動かしていかにも移動しているように偽装する」などなど。しかし、要素要素は過去エピソードの使いまわし感もあったが、ストーリー自体は新鮮味があって、なかなかの当たりの部類だった。

 今回の目玉となるのが、IMFが用意した、潜水艦の内部を模したセットである。実際のところ、潜望鏡などがあり艦長が詰めている指令室、その前の魚雷発射管室、指令室の隣のベッドが置いてある小部屋、の三つしかないのだが、このわずか三つの小部屋の閉鎖空間で上手くドラマを展開していた。

 このセットは油圧で全体を傾かせて潜水しているように偽装したり、微妙に揺らして海底に着底した時の動きを演出したり、スイッチ一つで爆発音を流したり、と、結構凝った作りである。その反面、意外にローテクなところも多々あり、潜望鏡から見える海の上の光景は「壁のスクリーンに映写しているフィルム映像」だったり、爆雷攻撃の時の振動は、一人がハンマーで外壁を思いっきり叩いた後、もう一人が木材をてこにしてセットをグラグラ動かして、攻撃を受けた時の効果を発生しているなど、見ていて思わず笑ってしまう。まあ、こういうローテクな部分は、視聴者を楽しませるためにわざとこうしているのであろう。

 しかし、倉庫に置いてある設定のこのセットの「外側」もやたら巨大であり、見ているだけでお金がかかっていそうである。スパイ大作戦は毎回予算超過が問題になっていたというが、たった一回のためにこんな大きなものを作っていれば、それはそうなるだろうと納得してしまった。

 今回のIMFの助っ人となる女性エージェントはトレーシー(リー・メリウェザー)。このシーズン4の準レギュラー的なキャラクターだが、今回はあまり活躍する場面が無く、序盤に死にかけのスパイとして意味不明のうわ言を延々口にした後、非情な艦長の(という設定)フェルプスに、まだ息があるのに魚雷発射管に詰められて海中に放り出されるキャラ、を演じただけだった。セットから退場した後は、バーニーの助手として効果音を発生させたりしていたが、あまり意味のある役柄ではなかったという感じである。

 今回は、IMFが作戦を遂行している間も、サドナー大佐たちがシュテルマンを探して包囲網を縮めてきており、IMFはただシュテルマンを騙すだけではなく、時間との闘いという要素もある、という点が良いアクセントになっていた。また騙された事に気が付いたシュテルマンが割と淡々としていたのに対し、出し抜かれてしまったサドナー大佐がやけくそになって大笑いするラストはなかなか印象的であった。

 このエピソードのサブタイトルの原題「Submarine」は潜水艦の意味。もちろん今回の舞台となった潜水艦のセットの事を指している。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが大きな倉庫(荷物の出し入れが行われている)に歩いて入り、事務所的な部屋に入室した後、机の上の小箱から大きめの封筒とオープンリール式テープレコーダーを取り出す。フェルプスはテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なお、このテープは自動的に消滅する」といい、テープから煙が吹き上がる。


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。写真の人物クルーガー・シュテルマンは、戦犯として25年の刑期を終え、三日後に東ヨーロッパ共和国の刑務所から釈放される。シュテルマンは第二次大戦中、SS(エスエス)、つまりヒトラー親衛隊が、占領各国からかすめた、いわゆるSS資金の所在を知る唯一の人物であり、一方、ヨーロッパの新生ナチの組織は、この莫大な資金をあてに行動を起こそうと計画している。

 そこで君の使命だが、新生ナチに先んじて、このSS資金の所在を突き止めることにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 

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