感想:アニメ「キャプテンフューチャー」第52話(最終回)「光と闇の彼方へ」

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東映チャンネル | キャプテンフューチャー http://www.toeich.jp/program/1T0000010881/201705
放送 CS放送東映チャンネル。全52話。1978年~1979年作品。

【※以下ネタバレ】
 

第52話(最終回) 光と闇の彼方へ (「人工進化の秘密」より)

 

あらすじ

 15作目「人工進化の秘密!」編・第4回(全4回)

 キャプテンフューチャーたちは筏で北黒洋を渡り、結晶山にたどり着くと、ついにプリズムピークを発見した。そしてプリズムピークのふもとに隠されていた研究施設に入り、施設の中でカプセルで眠っている男女を見つけ出す。

 そこにフューチャーたちを尾行してきたノートン一味が現れるが、一味はフューチャーたちに反撃され、がけから転落して全滅してしまった。

 施設に戻ったフューチャーたちの前に、眠りから覚めた男女が現れ、自らをクホルとアタと名乗る。二人は人工進化を開発した科学者だった。その昔、二人は植民惑星に人間を適応させるため人工進化の技術を開発したが、帝国の支配者たちは技術を悪用し、奴隷として使用するために半獣人を生み出していった。そのことに民衆は反発し、やがて帝国を二分する戦争が始まった。クホルとアタは、いつか戦いが終わった後、人々が自分たちを起こしに来ることを期待して眠りについたのだった。

 クホルとアタは自分たちを目覚めさせたのがデネブ人ではないことを知り、帝国がもはや存在しないことを悟っていた。そして自分たちの技術が半獣人たちを生み出した償いとして、半獣人たちの遺伝子を元に戻そうと提案する。

 しかし、たとえ処置を施したとしても、その結果が反映されるのは彼らの次の世代からであり、半獣人たちが人間に戻ることはできないのだった。半獣人たちはその事実にショックを受けつつも、子供たちが人間に戻れることを喜び、事実を受け入れた。

 フューチャーたちはコメット号で全ての半獣人をプリズムピークに運び、クホルとアタは彼ら全員に遺伝子を元に戻す処置を施した。その後、クホルたちは自分たちの故郷が有る「闇の彼方」へと戻ると告げる。フューチャーたちはその場所を尋ねるが、彼らは場所を伏せたまま宇宙船で立ち去って行った。サイモン教授は「闇」とは銀河間空間を指していると考え、デネブ人たちの故郷は銀河系から離れたアンドロメダ星雲だろうと推測する。

 フューチャーたちは半獣人たちに別れを告げ、コメットで地球へと帰還したのだった。<完結>


脚本:安藤豊弘

感想

 ちょっと泣かせる回で、終盤に半獣人たちが「自分たちは人間に戻れなくても、子供たちが人間として生まれるならそれでいい」と言う場面はホロっと来ましたよ。

 しかし……、今回でこの番組は最終回なのですが、グランドフィナーレと言うかそういうことを全くやらず、いつも通り「今回の冒険はこれでおしまい」という形でさらっと終わってしまったので、このアニメが終わった気がしない……、まるで来週も新しい話が放送されるような雰囲気で、しかしもう続きはない、という事実に胸を締め付けられるようです……


総括

 1978~79年放送のアニメで、もう懐かしさしか感じない作品だと思っていたら、予想以上に面白くて大満足でした。

 時は未来、所は宇宙。光すら否(ゆが)む果てしなき宇宙へ、愛機コメットを駆るこの男。宇宙最大の科学者であり冒険家、カーティス・ニュートン。だが人は彼をキャプテン・フューチャーと呼ぶ

 エドモンド・ハミルトンSF小説をアニメ化した宇宙冒険活劇で、小説一冊を4話かけて放送するというスタイルのアニメ。人類が超光速航法で銀河系各地に進出している時代を舞台に、毎回毎回カーティスが、頼りになる仲間三人(フューチャーメン)と共に、悪事を企む犯罪者と対決したり、宇宙的大事件に立ち向ったり、という冒険談が描かれました。


 このアニメは、権利か何かの関係でテレビ放送後39年間もソフト化されず、そのため「子供の頃に見たあの番組をもう一度見たい……」という気持ちが膨れ上がり続けていました。それだけに、テレビ放送が行われると知って、心の中のハードルを上げすぎたために、いざ実物を見たら期待と実物のギャップに落ち込む、かとも思っていたのですが……、結論から言うと全然そんなことは無かったです。


 もちろん昭和アニメですので、まず絵は粗くて、2010年代のアニメを見慣れていると、もう失笑レベルではありました(バンクの多用とかも目立ちましたし)。メカデザインも当時東映が同時に作っていた「銀河鉄道999」あたりと互換性があるというか、そのままという感じで、今となっては古臭さしかありません。

 またストーリー展開もこなれていないというか、スローモーと感じることが多々あり「今のアニメに見劣りしない」なんてことは口が裂けても言えない内容ではあります。そこは認めざるを得ません。

 し・か・し、それを補って余りあるくらい話が面白かった。原作小説はレベルはピンキリで、外れの話も有るのですが、原作シリーズ最初期の頃の、「宇宙帝王」だの「破壊王」だの「銀河系の魔術師」だのといった悪漢たちと戦う話は大好きで、それらを映像化したエピソードはホントに面白かった。原作はかなり荒唐無稽ではあるのですが、そのノリをままやっていて、見ていてワクワクしましたよ。大体、今はこういう宇宙冒険活劇なんてジャンルは死滅してますから、そういうことも有って余計に楽しかったし。

 昭和アニメを知らない世代だと、あの古い絵だけで受け付けられないかと思いますが、昭和世代は2010年代のこ綺麗な絵から昭和アニメの荒っぽい絵まで全てを順番に体験してきて、どの段階の絵でも対応可能なので、このアニメも実に楽しく視聴できました。

 まあ「懐かしさ」というフィルタがかかっているという事は否定できませんが、それを差し引いても面白いアニメだったと思います。「昔は面白かったけど、今見てみたら箸にも棒にもかからなくて失望した」とかいうことにならず、21世紀に見ても十分に楽しめた、という事実が嬉しかったなぁ。
 
 

アメリカのSF作家エドモンド・ハミルトンの原作をアニメ化したSFアニメの傑作。科学者ニュートン夫妻の遺児カーティスはキャプテンフューチャーと名乗り、<生きている脳>サイモン教授とロボットのグラッグ、アンドロイドのオットーの三人とともに宇宙の正義と平和のために戦うのだった。全52話。



http://www.toei-video.co.jp/BD/captainfuture.html
●キャスト
キャプテンフューチャー広川太一郎
ジョーン・ランドール:増山江威子
サイモン教授:川久保潔
オットー:野田圭一
グラッグ:緒方賢一
ナレーター:神太郎



●スタッフ
原作:エドモンド・ハミルトン(翻訳:野田昌宏
設定製作:須藤和一
製作:今田智憲
企画:田宮武、栗山富郎
製作担当:吉岡修、武田寛
音楽:大野雄二
主題歌:作詞 山川啓介 作曲 大野雄二 うた(1話―31話)ヒデ夕樹 ピーカブー (32話―最終話)タケカワユキヒデ ピーカブー
チーフディレクター勝間田具治
キャラクター設定:野田卓雄
脚本:辻真先金子武郎神波史男 ほか
演出:佐々木正広、森下孝三、高山秀樹 ほか
作画監督森利夫、青鉢芳信、落合正宗 ほか
東映アニメーション
[1978年11月~1979年12月NHKにて放送]

 
 

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