【ゲーム】感想「ファミコン探偵倶楽部 PART II うしろに立つ少女」(1989年:任天堂)

ファミコンディスクシステム ファミコン探偵倶楽部PartII うしろに立つ少女 前編 任天堂

ファミコン探偵倶楽部 PARTⅡ うしろに立つ少女(前後編) | ニンテンドー3DS | 任天堂
https://www.nintendo.co.jp/titles/50010000013891
学校の怪談が謎の事件を巻き起こす――
殺人事件の真相と「うしろの少女」の正体に迫る。


このソフトは、1989年に発売されたファミリーコンピュータディスクシステム用のアドベンチャーゲームです。 探偵助手として、女子高生殺人事件の調査に乗り出した主人公。学校の関係者に聞き込みをしたり、怪しい場所を調べたり……さまざまな方法で情報を集め、事件の真相に迫ります。学校で噂される怪談「うしろの少女」と殺人事件の繋がりとは?

【以下ネタバレ】
 
 

概要

 1989年に任天堂から発売されたファミコンアドベンチャーゲーム。主人公の少年が探偵役となり、女子高生殺害事件を捜査するミステリー系ゲーム。当時の先端メディアだった「ディスクシステム」で前後編に分けて発売された。


あらすじ

 主人公は、中学卒業後、私立探偵「うつぎ・しゅんすけ」と出会い、彼の助手として働くことになった。そして主人公はうつぎから、女子高生「こじま・ようこ」殺害事件の捜査を任される。ようこは殺される一週間ほど前から様子がおかしく、学校の怪談「うしろの少女」の調査にのめり込んでいたという。ようこ殺しと「うしろの少女」には何か関係が有るのだろうか……

 という、殺人事件を捜査する学園ミステリーと、学園ホラーの要素が融合した、独特の雰囲気のゲーム。


ゲームジャンル/システムなど

 ゲームジャンルは「コマンド選択式AVG」で、前作「ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者」(以下「消えた後継者」)のシステムをそのまま流用している。

、具体的には、移動先を指定した後、移動先で「聞く」「調べる」「取る」といったコマンドを選択してストーリーを進めていく、ごくオーソドックスなシステム。セーブデータは一個しか保持できないが、アイテムの取り忘れで行き詰まるような「詰み・ハマり」の要素は無いため、問題なくプレイできる。

 ただし、何も考えずにコマンドを選択していれば先に進めるわけではなく、いくつかの工夫が凝らされている。まず第一に「取る」「調べる」コマンドには、オプションとして十字キーでカーソルを動かして画面上を指定する機能が有り、特定の場面ではキーとなる「何か」を正しく指し示さないと先に進めない。また、ストーリーの節目となる場面では「キーワード」を日本語で入力する必要が有り、単語そのものは難解ではないものの、メモも取らずに漠然とプレイしていれば、はまること請け合いである。

 このような工夫は、コマンド選択式AVGに頭を使わせる要素を加味していて好感が持てるが、途中に3Dダンジョン踏破のシーンが有るのはいただけない。3Dダンジョンは「消えた後継者」にも有った要素だが、前作と違い本作ではダンジョンを歩く必然性が全く無く、蛇足としか言いようがなかったのが残念である。


感想

 評価は○(良)。プレイ時間:9時間40分。

 評価としては『終盤までは素晴らしい内容だっだが、幕引きのやり方を間違ってしまったために名作になりそこなった惜しい作品』である。


 ゲームの目的は、主人公の少年を操って女子高生殺害事件の犯人を探し出すことだが、被害者が学生のため、、捜査は必然的に学校が中心となり、その結果学校を舞台とする「学園ミステリー」となっている。

 主人公は学生では無いものの、学生たちと同世代の若者であり、学校の中で教師や生徒を相手に捜査を進める様は、学園ミステリーの主人公のそのものである。また殺されたようこの親友「たちばな・あゆみ」は、ようこの死の真相を突き止めることを熱望し、そのためには自らを危険にさらすこともいとわない。そんな二人が、やがて事件の真相を突き止めるために協力しあうようになる、という展開は、学園ミステリーの王道ともいえるもので、プレイしていてゾクゾクさせられた。

 またシナリオのボリュームは前作「消えた後継者」を遥かに上回っており、またクオリティも比較にならないほど向上しているのが嬉しかった。「消えた後継者」は、特に序盤はフラグ立てがきつく、関係者間をぐるぐる巡回して、しらみつぶしにコマンドを選択して、ようやくほんのわずかだけ話が進む、というような具合で、プレイのテンポが極めて悪かった。またイベントの順番も順序だっておらず、話がどこに進んでいるのか良く解らず、よく言えば五里霧中、悪く言えば支離滅裂で、プレイしていて閉口させられた。

 ところが本作では、テンポの悪さが劇的に改善されており、「事件発生」→「あゆみと会話する」→「ようこの自宅に行く」→「怪談の話」→「高校に移動」といった具合に、短時間の間に実に気持ちよく話が進んでいく。プレイの所要時間そのものは前作と大差は無いものの、話のテンポが早いため、ストーリーの密度は体感で前作の5倍くらいには達しており、ストーリー展開の速さと面白さが相まって、作品世界に引き込まれるような感覚を覚えた。

 また人物造形も前作よりはるかに上で、前作では登場人物は紋切り型の台詞を発するだけの機械めいた存在に過ぎなかったが、本作ではキャラクター一人一人の台詞に個性が感じられ、ストーリーに深みを与えていた。

 そして何より素晴らしいのが、本作は学園ミステリーでありながら、同時に「学園ホラー」の要素を併せ持つことである。当初はたわいのない怪談の類だと思われていた「うしろの少女」の話が、調査を進めていくうちに、15年前に起きた女子生徒失踪事件が元になっていると解り、少しずつ不気味さが増していく。

 さらにその後も、血まみれの少女を見たという証言や、ようこが死の直前別人のように変わり果てていたという事実、生徒が怪しい影に突き落とされたという事件、等が次々と起きていく。主人公たちが殺人事件の捜査を進めていくことで、同時に怪談「うしろの少女」の真相にも踏み込んでいくことになる、というミステリーとホラーの絶妙な組み合わせには心底しびれてしまった。

 学生が主人公となり、学校で起きる怪奇を調査していく、という作品というと、すぐに、映像化もされた「六番目の小夜子」(恩田陸)や「アナザー」(綾辻行人)などが思い浮かぶ。これらはどちらも非常に好きな作品なのだが、「うしろに立つ少女」もまたそれらの作品と同じ系列に属する、推理とホラーの融合作であり、その雰囲気は絶品だった。


 それだけに、終盤の展開には完全に失望させられた。ひびのの旧姓が「うちだ」であり、15年前に行方不明となった「あさかわ・しのぶ」の幼馴染だった、という重要な事実が明らかになって、いよいよこれからクライマックスに突入するのかと思いきや、突然うつぎが「もう犯人は解っただろう」とか言い出したため、あまりの唐突さに唖然とさせられた。しかもその後は、うらべ校長の自殺を経て、ひびのが聞かれてもいないのに主人公たちに勝手に犯行を自白した挙句、ほぼ自滅して、主人公たちは何もしないまま幕を閉じてしまう。

 狂気をむき出しにしたひびのが夜の学校で追いかけてくるシーンは、恐怖のクライマックスというよりは、単なる茶番のように思えたし、最後に鏡の裏からしのぶの死体が出て来る展開も、取ってつけたような、という印象しか無かった。また捜査に協力してくれたひとみは途中で姿を消してしまうし、さらに「うしろの少女が階段から生徒を突き落とした」という話も、何の説明もないまま投げっぱなしで終わってしまう。これでは連載漫画の打ち切り最終回と大差無く、あまりのやっつけ仕事ぶりに、シナリオライターが仕事に飽きてしまったのかと勘繰りたくなった。

 クライマックス直前までは、「推理物とホラー物の融合」という絶妙な雰囲気に酔っていたのだが、最後の最後になって頭から冷水を浴びせかけられたような状態となり、高揚していた気持ちも醒め果ててしまった。途中までの素晴らしいクオリティが最後まで維持できなかったことが残念でならない。
 
 
ファミコンディスクシステム ファミコン探偵倶楽部PartII うしろに立つ少女 後編 任天堂