感想:海外ドラマ「刑事コロンボ」第19話「別れのワイン」

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放送開始50周年 刑事コロンボNHK BSプレミアム BS4K 海外ドラマ https://www9.nhk.or.jp/kaigai/columbo/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ

perry-r.hatenablog.com
 

第19話 別れのワイン ANY OLD PORT IN A STORM (第3シーズン(1973~1974)・第2話)

 

あらすじ

異母弟リックが所有するワイナリーの経営をまかされ、ワイン作りにすべてを捧げるエイドリアン。しかしてっとり早く金が欲しいリックは、大手の酒造会社にワイナリーを売ると宣言。口論となり激高したエイドリアンは、リックを激しく殴打。気を失った彼をワインセラーに運び、空調を切って置き去りにしたままニューヨークへと旅立った。数日後、帰宅したエイドリアンは遺体を海へと投げ落とし、ダイビング中の事故に偽装する。

 
 エイドリアン・カッシーニは、カッシーニ酒造の経営者として高級ワインの生産に力を注ぎ、業界で高い評価を得ていた。会社はエイドリアンの父が立ち上げた後、エイドリアンの異母弟リックに遺産として残されたが、遊び人のリックは酒造りに全く興味が無いため、経営を兄エイドリアンに任せ、自分は兄に金をせびって生活していた。

 ところがある日曜日、リックが会社に現れ、エイドリアンに、四度目の結婚を控えて大金が欲しいので、会社を大手酒造会社に売却すると言い出す。エイドリアンは自分の25年にわたるワイン作りがこんな形で終わらせられることに激高し、リックの頭を殴って失神させる。そのあと息のあるリックを縛り上げて会社のワインセラーに放置し、空調を切ると、そのまま商談のためニューヨークに行ってしまう。

 一週間後。帰宅したエイドリアンは、リックが死んでいるのを確認すると、リックの車を海岸に運び、さらにリックにスキューバダイビングの恰好をさせて海に投げ込み、事故死を偽装する。

 やがてリックの死体が発見され、頭部の傷から海に飛び込んだ際に頭をぶつけ、そのまま窒息死したと判断された。しかしコロンボは、リックが死んだ火曜日が雨だったことから、雨の日にわざわざ泳いだ事、また雨なのに車のほろが降りたままだった事、に疑問を抱く。さらに解剖の結果、リックが死ぬ前の二日間何も食べていなかったことも判明する。

 コロンボは、リックが日曜日に会社に来たところは目撃されていたが、出ていくところを見た者はいない、という点に注目していた。ところが秘書のカレンは、コロンボに、日曜日にリックが工場から出ていくのを見た、という嘘の証言を行う。それを聞いたコロンボは、エイドリアンの疑いは晴れたと言い、お詫びのためエイドリアンとカレンに食事を御馳走する約束をする。

 翌日の夜。コロンボはエイドリアン行きつけのレストランに二人を招待し、豪華な食事やセンスの良いワインの選択でエイドリアンたちを喜ばせる。そしてコロンボは最後に超高級ワインを注文するが、エイドリアンは一口飲んだだけでワインが40度以上の高熱で酸化して駄目になっていると気が付き、激怒し店を出てしまう。コロンボはついでの様に、エイドリアンがニューヨークに行っている間に、ロスアンゼルスでも気温が40度を超えた日が有ったと言い、エイドリアンは顔色を変える。

 帰り道、カレンは、エイドリアンをかばうためコロンボにニセの証言をしたと告白し、その代償として自分と結婚して尽くせと脅迫する。

 エイドリアンはワインセラーを調べ、保管していた貴重なワインが全て高熱のため駄目になっていることを知り、瓶を海岸に運ぶと崖から捨て始めるが、そこにコロンボが現れる。コロンボは、エイドリアンがワインセラーの空調を切ったため、気温が40度を超えた日にワインセラーの中のワインが全て駄目になったことを指摘する。

 エイドリアンは自分のトリックが全て見破られていることを悟り、何故気が付いたのかと聞くが、レストランでエイドリアンが飲んだワインはコロンボがエイドリアンのワインセラーから持ち出したものだった。エイドリアンは自分自身で、ワインが高熱に晒されたこと、つまりワインセラーの空調を切ったことを認めてしまっていたのだった。

 コロンボはエイドリアンを車に乗せて警察に向かうが、途中で停車した際、車内で二人で乾杯する。

感想

 評価は○(かなりいい)。

 コロンボ歴代作品の中でも屈指の良い雰囲気の話で、見ていて気持ちが良くなる、個人的にはかなり評価が高いエピソード。


 この作品が好きなのは、コロンボと犯人の間エイドリアンの関係が、本来なら敵対してしかるべきなのに、最初から最後まで友好的なムードに満ちているところである。コロンボは最初はワインの知識はゼロだったものの、エイドリアンと対等に会話するため、専門家からワインの知識を仕入れ、エイドリアンを驚かす。さらにその後も勉強を続けて、食事のシーンではワインの選択でエイドリアンを感心させるレベルにまで成長する。エイドリアンは、そのコロンボの猛勉強ぶりを素直に称賛する。

 こんな風に劇中でのコロンボとエイドリアンの対峙する場面は、警官と容疑者によるピリピリした心理戦は展開されず、それどころか微かな友情といった物が感じられ、至極和やかな空気に満ちている。コロンボ作品では、犯人がコロンボを見下していたり、コロンボも負けずに犯人に心理的な追い込みをかけてみせたり、といった展開が定番だが、この作品ではそういう要素が皆無で、最初から最後まで落ち着いた気持で視聴できるのが嬉しい所だった。

 こうした二人の関係だからこそ、最後にエイドリアンがコロンボワインセラーの事を持ち出された時点で即座に犯行を認めたのも自然に見えた。また最後に二人が車の中で乾杯をするシーンは、逮捕された犯人と護送中の警官とは思えないムードで、実に秀逸な幕切れで印象に残った。


 この作品は、ミステリーとしてはわりと単純で、コロンボは車のほろの件や、死体を解剖して胃が空っぽだった事から、特に苦労も無くエイドリアンにたどり着いている。そしていつもの如く罠を仕掛けるが、それも犯行の決定的な証拠を見つけるという物では無く、どちらかというとエイドリアンに自供を促すきっかけを作るために行った、という感が強い。

 このように、本作品は「ミステリー」としてはあまり深みは無いが、全体を貫く雰囲気、コロンボとエイドリアンの交流、など、人間ドラマとしては素晴らしい物が有り、何度見ても飽きない作品である。


 終盤にコロンボがレストランで超高級ワインの「フェリエ・ヴィンテージ・ポルトの1945年物」を注文し、最終的にはこのワインが事件を解決に導くことになったが、調べてみると、このワインは現実に存在しており、正確には「フェレイラ・ヴィンテージ・ポルト(Ferreira Vintage Port)」といい、「フェレイラ」はポルトガルのワインメーカーの一つで、「ヴィンテージ・ポルト」は素晴らしい収穫の年のみに作られるワインの事である。そして1945年は現実に20世紀屈指の大当たりの年だったそうである。エイドリアンは、このワインはコロンボにはとても払えないほど高価だとコメントしていたが、いったいどのくらいの価格だったのだろうか。


 エイドリアン役ドナルド・プレザンスは、「007は二度死ぬ」「大脱走」「ミクロの決死圏」などで有名な俳優。また秘書カレンを演じたジュリー・ハリスは「エデンの東」でジェームズ・ディーンの相手役を演じた。原案を書いたラリー・コーエンは、ホラー映画の監督としても有名。


 サブタイトルの原題「ANY OLD PORT IN A STORM」とは、英語の慣用句「ANY OLD PORT IN A STORM」(嵐の中の古い港=窮余の策)から来ている。これだけだと意味が解らないが、「OLD PORT」は古いワインの意味もあるので、想像をたくましくすれば「窮余の一策として、古いワインを使った」ということになり、コロンボの事件解決の手段を意味しているように思われる。日本語タイトル「別れのワイン」はもちろんラストシーンから来ており、これはこれでいい題名だと思う。


備考

 放送時間:1時間35分。


 本作品は、NHKが2018年に実施した「あなたが選ぶ!思い出のコロンボ」という企画で、全69作中第1位にランキングされた。
 
 

#19 別れのワイン ANY OLD PORT IN A STORM
日本初回放送:1974年
BSプレミアム2019年3月30日(土)午後4時25分~


シリーズ屈指の名エピソードとしてこの回を挙げるファンも多い。監督のレオ・ペンはドラマ『逃亡者』など数多くのTVシリーズを演出。エイドリアン役は映画『007は二度死ぬ』での悪役が有名なドナルド・プレザンス


出演
コロンボ・・・ピーター・フォーク小池朝雄
エイドリアン・カッシーニ・・・ドナルド・プレザンス(中村俊一)
カレン・・・ジュリー・ハリス(大塚道子)
ジョーン・・・ジョイス・ジルソン(北島マヤ
リック・・・ゲイリー・コンウェイ(加茂嘉久)
ファルコン・・・ダナ・エルカー神山卓三


演出
レオ・ペン


脚本
スタンリー・ラルフ・ロス


原案
ラリー・コーエン

 

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