【ドラマ】感想:海外ドラマ「刑事コロンボ」第37話「さらば提督」

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刑事コロンボ https://www.nhk.jp/p/columbo/ts/G9L4P3ZXJP/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

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perry-r.hatenablog.com
 

第37話 さらば提督 LAST SALUTE TO THE COMMODORE (第5シーズン(1975~1976)・第6話)

 

あらすじ

刑事コロンボ(37)「さらば提督」
[BSプレミアム]2020年12月9日(水) 午後9:00~午後10:36(96分)


刑事コロンボ』旧シリーズ一挙放送!「提督」と呼ばれる造船会社オーナーが殺害される。本作は最後まで犯人が明かされず、コロンボと一緒に推理を楽しめる!


造船会社のオーナーで巨額の財産を持ち、「提督」と呼ばれているオーティス・スワンソンは、社長として実権を握る娘ジョアナの夫チャーリーの経営方針が気に入らず、会社を売ろうとしていた。その夜、帰らぬ人となった「提督」を海へと遺棄するチャーリーの姿があった…。

 
●登場人物
・オーティス・スワンソン … 造船会社オーナー。通称「提督」
ジョアナ・クレイ … 提督の一人娘
・チャーリー・クレイ … ジョアナの夫。
・スワニー … 提督の甥
・ケタリング … 提督の顧問弁護士
・ウェイン … 造船所所長
・クレイマー … 刑事
・シオドア・アルビンスキー … 若手刑事。通称マック


●序盤

 造船会社オーナーのオーティス・スワンソン(通称:提督)は、今は会社の経営を娘婿のチャーリー・クレイに任せていたが、富裕層をメインの顧客にするというクレイの経営方針に不満を抱いていた。一方、クレイの方は、提督が気にくわない自分たちを放り出すため会社を売却するつもりでは無いかと怖れていた。

 夜。クレイは提督の家で死体の側を綺麗に片付けると、一旦車で屋敷を離れ、警備員に時間を尋ねて時間を記憶させる。そのあとこっそり潜水服で海から戻ってくると、提督の死体をヨットに積み、沖に出たところで死体を海に投げ捨て、自分は潜水服で陸に戻る。



●中盤1

 コロンボは提督のヨットが無人で発見されたため、事情を確認するためクレイの家を訪問する。クレイはそしらぬ顔で、提督は夜一人でヨットを操船している最中に不慮の事故で海に投げ出された、という説を披露する。

 コロンボたちは、造船所所長ウェイン、提督直属の技術者リサ・キング、等から話を聞いて回る。

 やがて提督の死体が発見されるが、水を飲んだ形跡がなく、警察は事故死ではなく、殺されてから海に投げ込まれたと判断する。コロンボは潜水服を使ってこっそり提督の屋敷に戻ってくることが可能であることを確認し、クレイに対する疑いを深める。さらにコロンボたちは、提督の屋敷で壊れた懐中時計や口紅を発見し、提督がこの屋敷で殺害されたことを知り、クレイ犯人説を確信する。



●中盤2

 クレイの死体が自宅で発見される。暖炉には何かを燃やした形跡があり、調べた結果提督は会社を売却しようとしていたらしいことが判明する。ジョアナから話を聞くと、提督が死んだ夜もいつものように酔っていて記憶がないという。

 壊れた懐中時計を調べると0時42分で停止していたが、クレイが警備員に時間を聞いたのは0時46分で、4分間で殺人を犯して外に出てくるのは不可能で、クレイは殺人犯ではない様に思われた。



●終盤

 コロンボは事件の関係者の、ジョアナ、スワニー、ケタリング、ウェイン、リサを提督の家に集め、事件の説明を行う。コロンボの考えでは、クレイは殺人者ではなく、彼は「妻のジョアナが提督を殺した」と考え、このままでは提督の遺産をもらう権利が無くなるため、偽装工作を行ったはずだった。

 リサは提督と結婚する予定で、リサは財産を欲していないため、結婚した暁には、提督は娘のジョアナに僅かな金額を残し、それ以外は全て寄付するつもりだった。つまりリサだけは提督を殺す理由が無いため容疑者から外れることになる。

 コロンボは、残った容疑者四人に提督の懐中時計が動く音を聞かせるが、スワニーは驚くものの、他の三人はろくに興味を示さなかった。コロンボは懐中時計は提督殺害時に完全に壊れており、時計屋に修理してようやく動くようになったと教える。時計が壊れたことを知っているのは殺人犯だけ、つまり時計が動いていることを知って驚いたスワニーこそ犯人だった。スワニーはジョアナが提督を殺したように偽装して遺産の受け取りの権利を無くさせ、提督の財産を独り占めしようとしたのだった。


監督:パトリック・マクグーハン
脚本:ジャクソン・ギリス


感想

 評価は○(まあまあ)。

 途中まではいつも通りの倒叙形式だと見せかけておいて、後半突然犯人当て形式に変化してしまうという意表をつく構成の作品だったが、クオリティはなかなかで、結構楽しめた一作だった。


 コロンボ作品は、名作・秀作と評価されているものは、全てお馴染みの「犯人の動機をはっきり描写→殺人→コロンボ登場→結末」という形で作ったものばかりで、逆に、このパターンを外すと大抵の場合ロクな作品になっていない。第1・第2シーズンでは、パターン破り、というより、パターンがしっかり固まっていなかったため、前述のフォーマットに沿っていない作品がやたらあるが、大抵ろくでもない作品ばかりである。


 ところが、本作品は「殺人シーンなし」「途中まで死体が発見されず、警察は殺人かどうか分からない」「途中で犯人と目星をつけた人間が殺されてしまう」「最後まで犯人が解らない」と、パターン破りを連発しているにも拘わらず、これが意外にも面白く仕上がっていて驚かされた。

 いつもとは話の流れが大きく違い、コロンボが「殺人事件の矛盾点を探していく」のではなく、とりあえずあてどもなくあちこちを歩き回り、謎の型紙を見つけたり、提督の遺言状の話を聞いたり、と情報集めをしていくだけなのだが、流れはスムーズで特に退屈することも無く、コミカルなシーンを色々と用意しており、なかなかに楽しく視聴出来た(コロンボプジョーの前側に、コロンボ、クレイ、マックの三人が乗ってぎゅうずめで走り出すシーン等)

 また開始一時間過ぎには、クレイが犯人だと確信した途端にその当人が死体となって発見されるというどんでん返しが待っており、なかなかびっくりさせられた。そしてラスト20分で、豪華な部屋に容疑者全員を集めて、事件の概要を説明していくという「名探偵物」の王道展開が披露されて、と、いつものコロンボとはまるで違う展開だったが、これはこれで非常に楽しめた。


 実はこの作品が他作品と全く違う展開をするのには理由があり、この作品は「コロンボの最終回」として製作されていたそうである。本エピソードは、第5シーズン(1975~1976)の最終話だったが、当初の予定ではコロンボは第5シーズンで打ち切りが決定しており、そのためスタッフは視聴者へのお別れ記念としてスペシャルな内容で製作したとのこと。

 そういう裏事情を知ると、なるほどと思うところが多々あり、まず警察サイドの面々は、いつもはコロンボは単独で活動しているのに、今回は顔なじみのクレイマー刑事と、さらに新顔のシオドア・アルビンスキー刑事(通称マック)がぴったりと寄り添って一緒に行動し、軽妙な掛け合いを演じてくれていた。また。クライマックスでは、豪華な屋敷に容疑者を集めて、主人公が意外な犯人を指摘する、という、「名探偵物」らしい場面を見せてくれた。


 さらに、犯人指摘後、コロンボ、クレイマー、マックが庭に出てきて、のびのびとした感じで雑談する、という場面があり、ここで視聴者へのお別れという姿勢がしっかり表現されていた。この場面で

クレイマー(コロンボが葉巻をうまそうに吸うのを見て)「やめないんですか?」
コロンボ「まだまだ。まだやめられませんよ。もうちょっとだけやらせてもらうよ。もうちょい」

と妙な返事をする。事情を知らないとただの変な会話にしか思えないが、裏が解ると、コロンボ、というかピーター・フォークが「最終回だがまだ続編をやりたいという意思表明をしている」ように見えて、ちょっと面白い。

 また最後はコロンボは唐突に手漕ぎボートに乗り込んで沖合に向かって漕ぎ出し、「どこに行くんですか」と聞かれると「カミさんも乗せてやろうと思って。せめてこのボートに」と言いながら向こうに漕ぎ去っていくというオチとなる。以前見た時には妙な結末だと思っていたが「最終回のつもりだった」と言われれば、実に印象的な上手い幕切れである。

 まあ、実際は、ここで打ち切りにはならず、コロンボはまだ製作され、(第6シーズンはともかく)第7シーズンで傑作を連発するので、ここで終わらなくて本当に良かったとしか言いようがない。


 本作の監督はパトリック・マクグーハンで、28話「祝砲の挽歌」や34話「仮面の男」で印象的な犯人役を演じたあの方。

 若手のマック刑事を演じたデニス・デューガンは、その後俳優より監督として活躍しているとのこと。声を当てたのは、なんと玄田哲章氏。当時30歳くらいだった模様で、声が非常に若いが、氏がこんなイケメンキャラの声を当てていたのにはびっくりである。


 作品のサブタイトル「LAST SALUTE TO THE COMMODORE」は、意訳すると「提督への最後の敬意」。なんだかよくわからないタイトルである。日本語サブタイトル「さらば提督」の方が遥かにましではなかろうか。


その他

 放送時間:1時間36分。
 
 

ピーター・フォーク小池朝雄ロバート・ボーン西沢利明,ダイアン・ベイカー…水野久美,フレッド・ドレイパー…佐藤英夫,ウィルフリッド・ハイド=ホワイト…松村彦次郎,ジョン・デナー…小林修,【演出】パトリック・マクグーハン,【脚本】ジャクソン・ギリス

 

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【ドラマ】感想:NHK番組「星新一の不思議な不思議な短編ドラマ」第10話「白い服の男」(2022年6月7日(火)放送)

星新一の不思議な不思議な短編ドラマ(NHKオンデマンド)

星新一の不思議な不思議な短編ドラマ NHK
https://www.nhk.jp/p/ts/MKP974JQRN/
https://www4.nhk.or.jp/P7468/
放送 NHK BSプレミアム。15分ドラマ。全20回。

www.nhk.jp
www4.nhk.or.jp
【※以下ネタバレ】
 

あの時の”未来”を生きる私たちへ

 

第10話 白い服の男 (2022年6月7日(火)放送)

 

あらすじ

星新一の不思議な不思議な短編ドラマ「白い服の男
[BS4K] 2022年06月07日 午後9:45 ~ 午後10:00 (15分)


ショートショートの神様・星新一の作品群を豪華キャストで映像化!またしても世界大戦を起こした人類は、金輪際戦争を起こさないために真の平和を希求する組織を作ったが…


またしても世界大戦を起こした人類は、金輪際戦争を起こさないために真の平和を希求する組織を作ったが…出演:滝藤賢一 村上虹郎 / 浦山佳樹 林裕太 瀬戸かほ 大島涼花 / 今井朋彦


【出演】滝藤賢一村上虹郎,浦山佳樹,林裕太,瀬戸かほ,大島涼花今井朋彦

 
 幾多の世界大戦を経たあとの近未来。「戦争」について調べることは禁止され、「セ」という言葉を口にする事さえ禁忌となっていた。

 ある日、「特殊警察署」に新しい署員が配属された。白い服を着た署長は自ら新人を案内し、特殊警察の業務を案内して回る。特殊警察は通常の犯罪は取り扱わず、市民を盗聴して「セ」を口にする人間を発見したり、戦争についての記録を所持している者を逮捕したりしている。

 歴史修正係は、過去の書物の内容を調べ、戦争に触れたものについて、修正可能ならば戦争の記述を消し去って書き直し、修正不可能ならば書物を焼却する作業を行っている。過去の人類は戦争を起こさないようにするため軍縮などを行っていたが、そんな手段では戦争を消し去ることは不可能で、そのためまた世界大戦を引き起こしてしまった。二度と戦争を起こさないためには、戦争という概念そのものを消し去らなければならない。

 やがて、署長の元に子供が戦争ごっこをして遊んでいるという報告が届いた。署長は署員に急行を命じ、必要なら射殺するように指示した。<完>


感想

 原作未読(もしくは読んだけど内容を忘れた)


 ディストピア物。実に分かりやすく、自分たちの掲げる「正義」のためなら何をしてもかまわない、という社会を皮肉った作品。星新一は、こんな作品も書いていたのか…… 


 まあ、2020年代にも「アニメ絵は気にくわない、自分が気にくわないからイコール社会的に許されない だから消えてなくなれ」みたいなことを平気で言う人たちがいますよね。原作は1968年に書かれた物ですが、半世紀後を見通した予言の書であったのか。
 
 

https://www.nhk.jp/p/ts/MKP974JQRN/
白い服の男


【脚本・演出】萩原翔【キャスティング】高柳亮博【助監督】家次勲【制作担当】齊藤光司【撮影・照明】辻智彦【録音】藤田秀成【美術進行】きくちまさと【カラーグレーディング】宮下蔵【MA】塚本啓介


白い服の男」1968年(『白い服の男』所収)

 

この番組について


ショートショートの神様”星新一。生涯にわたり発表された1001編を超える作品は、教科書にも掲載され、いまなお読みつがれています。世代を超えて愛されるその魅力は、“宇宙”“ロボット”“悪魔”など不思議でワクワクするSFやファンタジーの要素。また人間や社会に対する「おかしみ」や「皮肉」をまじえた目線。そしてなにより、短くも、あっと驚かされる予測不可能なストーリーです。それは、毒を含んだ寓話なのか、人類への警鐘なのか…。星新一の珠玉の作品を、令和のいま、実写ドラマとして描きます。


放送:2022年4月~8月 BSプレミアム・BS4K同時放送 毎週火曜日 午後9時45分~10時(全20回)


<全話共通スタッフ>
【総合演出】望月一扶【テーマ曲】出羽良彰【タイトル】caico design / sankakuサウンドデザイン】長澤佑樹【音響効果】阿部真也【美術】森健彦【衣装】宮本茉莉【メイク】原さとみ【ポスプロスーパーバイザー】稲村剛義【映像技術】久野星香【制作統括】柴田直之(NHK)鳥本秀昭、川崎直子、西村崇、坂部康二、神林伸太郎(NHKエンタープライズ)、山本玲実、明仁絵里子(テレコムスタッフ

 
星新一ショートショートセレクション
星新一ショートショートセレクション(全15巻セット)

【ドラマ】感想:海外ドラマ「刑事コロンボ」第44話「攻撃命令」

刑事コロンボ完全版 1 バリューパック [DVD]

刑事コロンボ https://www.nhk.jp/p/columbo/ts/G9L4P3ZXJP/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

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第44話 攻撃命令 HOW TO DIAL A MURDER (第7シーズン(1977~1978)・第4話)

 

あらすじ

刑事コロンボ(44)「攻撃命令」
[BSプレミアム] 2021年02月03日 午後9:00 ~ 午後10:14 (74分)


刑事コロンボ』旧シリーズ一挙放送!心理学者が妻の浮気相手を殺害!犯人が映画ファン、特に「市民ケーン」が好き、という設定で映画トリビア満載。


妻を事故で亡くした心理学者エリック・メイスンは、妻の浮気相手だった助手のチャーリー殺害を企てていた。あるキーワードで人を攻撃するように2匹のドーベルマンを訓練したのだ。メイスンはチャーリーを自宅に招いておき、健康診断を受けている病院から電話をかける。電話に出たチャーリーが、犬の前でそのキーワードを口にするよう誘導した。

●序盤

 心理学者エリック・メイスン(犯人)は、自分が飼っている二頭のドーベルマン「ローレル」「ハーディ」に対し、電話のベルを聞くと電話に近寄って臨戦態勢に入り、「薔薇のつぼみ」という言葉を聞くと、それを発した人間に襲い掛かるように訓練していた。

 メイスンは半年前、妻のロレーンを車の事故で亡くしていた。

 ある日、メイスンは同僚のチャーリー・ハンター(被害者)を先に自宅に行かせてから、自宅に電話をかけ、台所にある電話をチャーリーに取らせるように仕向ける。電話のベルを聞いてドーベルマン二頭がチャーリーに接近し、さらにチャーリーはメイスンに「薔薇のつぼみ」と大声で言う様に指示され、その通りにした途端、襲い掛かって来た二頭に殺されてしまう。



●中盤

 コロンボたちは、メイスンの屋敷のゲストハウスに同居している女子学生ジョアン・ニコルズの通報で駆け付け、チャーリーの死を確認する。

 そこに素知らぬ顔でメイスンが戻ってくるが、コロンボは台所の電話の受話器が外れていたことを気にする。電話機の発信音を聞くと、外部からメイスン邸にかかって来たことが解るが、電話していた相手はチャーリーの異常を知りながら当局に通報をしていないため、コロンボはその相手を探そうとしていた。

 コロンボは犬の訓練所を訪ね、犬に対し、特定のキーワードなどで人を襲う様に訓練できることを知る。

 メイスンはローレルとハーディが保護されている警察を訪れ、証拠となる二頭を毒殺しようとするが、コロンボがやってきたため未遂に終わる。メイスンが立ち去った後、コロンボは二頭が電話のベルの音を聞くと殺気立った様子になることを発見する。

 コロンボはメイスンの屋敷の台所の、チャーリーが襲われた辺りの梁に、用途不明のフックが付いていることを見つける。また映画好きのメイスンがどこからか古いスポットライトを拾ってきた事を知り、その出所を探しゴーストタウンと化した町にたどり着く。そこには天井から何かを吊るしたあとと、スピーカーが残されていた。

 メイスンは故チャーリーのオフィスに忍び込み、チャーリーが妻ロレーンと写っている写真を回収するが、実は先にコロンボがやってきていて、手掛かりを見つけようとしていた。コロンボはチャーリーの上着が一着見つからない事を発見していた。

 夜。コロンボはメイスン邸を訪ね、雑談がてらメイスンに自分の心理テストをしてもらう。実はコロンボはその会話を全てカセットテープに録音していたが、その内容を犬に聞かせても反応は無かった。ところが偶然から、全く関係無いと思っていた映画に関する会話を聞かせると犬が狂暴になることを突き止める。



●終盤

 コロンボはローレルとハーディと共にメイスン邸を訪問し、メイスンが妻のロレーンとチャーリーの不倫関係に気が付いており、二人を殺したと指摘する。そしてロレーンの件は立証できなくても、チャーリー殺しは明らかだといって、メイスンの犯行の方法を具体的に説明して見せる。

 コロンボは、メイスンがスピーカーを仕込んだ藁人形を天井からつるし、犬に電話のベルと特定のキーワードの組み合わせで人形を襲う様に訓練し、最終的にチャーリーを殺害させたと指摘する。チャーリーの上着が一着消えていたのは、犬に臭いを覚えさせるためだったとも推測する。

 メイスンはコロンボに全てが見抜かれていると知り、ローレルとハーディに対し「薔薇のつぼみ」というキーワードを発してコロンボを襲う様にけしかけるが、二頭はコロンボを殺すどころかじゃれつくだけだった。コロンボは攻撃命令となるキーワード「薔薇のつぼみ」を突き止めており、訓練士に二頭の訓練をし直してもらい、「薔薇のつぼみ」でじゃれつくようにしていたのだった。メイスンはコロンボに脱帽するほかは無かった。


監督:ジェームズ・フローリー
脚本:トム・ラザルス(原案:アンソニー・ローレンス ANTHONY LAWRENCE)


感想

 評価は○(そこそこ)。

 一応コロンボの基本的なフォーマットは踏襲していて、そこそこには見られるものの、内容が薄く、見終わっても満足感の薄い一作だった。


 今回の事件では、特に深く追求していく謎は無く、「犬がどうして被害者を襲ったのか」というただそれだけを突き止めればよく、コロンボがそこに気が付けばもう事件解決のため、コロンボが細かい証拠を次々と見つけ出し、それを積み上げて事件の全体像を解き明かしていく、といった面白みは全く無かった。

 そして、犬を攻撃に駆り立てる「電話のベル」も「キーワード」も殆ど偶然に見つかってしまうし、その他のメイスンの犯行を示唆する証拠も苦も無くどんどん見つかるので、コロンボ自身が「簡単な事件でした」と言っている通り、事件を解明していく醍醐味は無く、なんとも薄味のエピソードだった。


 最後の最後に犯行を暴かれたメイスンは、犬にコロンボにけしかけて殺させようとするのだが、ここがどうにもおかしい。当初の訓練通りなら、二頭はコロンボではなくキーワードを口にしたメイスンに襲い掛かっていくはずで、この時点で話が破綻している。まあ、メイスンが二通りの訓練をしていて、主の自分が指差しをした場合にはその相手に襲い掛かる、という様に仕込んでいた可能性もあるが、その辺りがあいまいでいまひとつスッキリしなかった。

 また、クライマックスでメイスンに証拠をつきつける際、コロンボはビリヤードをしながら滔々と説明しつつ、ビリヤード台のポケットの中に仕込んでいた証拠を次々とメイスンに取り出させる。この辺りはあまりにも芝居がかっているというか、わざとらしい感じが否めず、この辺りも評価を低くする原因となった。

 あと、メイスン宅に住んでいた女子学生ジョアン・ニコルズが、終盤メイスンに殺されそうになりつつも、コロンボの乱入で命拾いしたあと出てこない。クライマックスで顔を出しても良かったと思うのだが、そのまま忘れ去られてしまっている。


 等等、ストーリーにさほど面白みを感じられず、粗が目に付き、満足感があまりない一作だった。


 メイスンの吹き替えの声が聞き覚えがあるので誰かと思っていたが、平田昭彦氏だと知って納得。「ゴジラ」や「ウルトラマン」や、その他昭和特撮で有名な方だが、吹き替えもやっていたとは知らなかった。


 犬の訓練所でコロンボの相手をしてくれる美人訓練士のコーコラン役を演じていたのはトリシア・オニールという女優。なかなかグッとくる美女なので、他にどんな仕事をしているのかと調べたが、テレビムービーとかがメインのパッとしない経歴だった模様。一番有名な仕事は「殺人魚フライングキラー」というトンデモ映画のヒロインらしく、その他には一応「タイタニック」にも端役で出演しているとのこと。

 本作では、コロンボの愛犬「ドッグ」が久々に登場。コロンボは美人訓練士に自宅の番犬として訓練してもらえないかと頼むが、訓練士は一目見ただけで「奥様がご心配なら空手を教えてあげる方が早いですよ、ではこれで」とあっさり流されているシーンが妙に面白い。

 この作品は、メイスンが映画マニアということで映画ネタがやたら多い。「薔薇のつぼみ」「壁に飾った雪ぞり」「冒頭にちらっと写るスノードーム」「Kの文字が入った門」などは全て「市民ケーン」から来ているのが劇中で明言されていて、一度でも「市民ケーン」を見ていると大ウケ出来るが、その他にもまだ映画ネタが隠されている。

・作品サブタイトル「HOW TO DIAL A MURDER」は、ヒッチコック監督の有名サスペンス映画「ダイヤルMを廻せ!(DIAL M FOR MURDER)」から来ている。ちなみに仮題の時点では「THE LAUREL AND HARDY W.C.FIELDS CITIZEN KANE MURDER CASE」(ローレル&ハーディ、W.C.フィールズ、市民ケーン、殺人事件)というとんでもないタイトルだったとのこと。


・事件を引き起こした二頭の犬の名前「ローレル」と「ハーディ」とは、1920~1940年頃にアメリカの映画界で活躍したお笑いコンビ「スタン・ローレル」「オリバー・ハーディ」から来ている。このコンビは日本では「極楽コンビ」と呼ばれている。


・メイスンの家に写真が飾られていた「W.C.フィールズ」とは、1910~1940年頃にアメリカの映画界で活躍したコメディアン・俳優。当時チャップリンに匹敵するようなポジションだった模様。

その他

 放送時間:1時間14分。
 
 

ピーター・フォーク小池朝雄ニコル・ウィリアムソン平田昭彦キム・キャトラル…宗形智子,トリシア・オニール…藤夏子,ジョエル・ファビアーニ…寺島幹夫,【演出】ジェームズ・フローリー,【脚本】トム・ラザラス

 

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刑事コロンボ完全捜査ブック
 
 
 
 

【ドラマ】感想:海外ドラマ「刑事コロンボ」第39話「黄金のバックル」

刑事コロンボ完全版 1 バリューパック [DVD]

刑事コロンボ https://www.nhk.jp/p/columbo/ts/G9L4P3ZXJP/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

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第39話 黄金のバックル OLD FASHIONED MURDER (第6シーズン(1976~1977)・第2話)

 

あらすじ

刑事コロンボ(39)「黄金のバックル」
[BSプレミアム]2020年12月23日(水) 午後9:00~午後10:16(76分)


刑事コロンボ』旧シリーズ一挙放送!経営不振に陥った美術館の存続をめぐり、館長の姉が理事の弟と対立。借金を抱えた警備員を利用して弟の殺害計画をたてる。


美術館の館長を務めるルースは、理事である弟のエドワードが財政難の美術館を売ろうとしていることを知る。美術館一筋で生きてきた彼女は、借金を抱えている警備員の男を利用して弟の殺害を決意。多額の保険金がかけられた展示品を盗んでくれれば、逃亡費用と旅券を渡す、と男をそそのかす。その夜、美術館に忍び込んできた男を射殺し、さらにそこへ現れたエドワードを、今度は男の銃で撃ち殺す。

●序盤

 ルース・リットン(犯人)は、一族が運営する私設美術館の館長を勤めているが、経営は赤字続きで、理事である弟のエドワード(被害者1)は美術館の売却を提案してきた。ルースは美術館こそが生きがいで、売却を阻止するためエドワード殺害を企てる。

 ルースは美術館の警備員のミルトン・シェイファー(被害者2)を利用することにする。シェイファーは前科者で勤務態度も劣悪だったが、ルースの姪ジェイニーの不倫相手の弟ということで、ジェイニーの推薦でやむなく雇っている男だった。ルースは、シェイファーが美術品を盗んでいる事実を持ち出し、深夜美術館の展示品を盗み出してくれれば、盗難保険の金が入って美術館が救われるといい、見返りに逃亡のための費用と旅券を渡すと持ち掛ける。

 夜。シェイファーは兄の家の留守番電話に連絡し、途中で銃声を入れて自分が殺されたように偽装して高跳びの準備をする。そのあと美術館に忍び込み展示品を盗み始めるが、そこにやって来たルースに射殺される。同じころ、エドワードも美術館にいて美術品の目録を作っていたが、銃声を聞きつけて駆け付けたところ、彼もまたルースに撃ち殺される。



●中盤

 コロンボは、シェイファーの兄から留守電の内容を聞かされ、とりあえずシェイファーを探し始める。すぐに美術館でシェイファーとエドワードの死体が見つかるが、状況としては盗みに入ったシェイファーとそれを発見したエドワードが相打ちになった様に見えた。しかしコロンボはシェイファーが新品の服や靴を身につけ散髪したばかり、と、すぐに旅行にでも行きそうな姿で盗みに入ったことが気にかかる。

 コロンボは、犯行現場の電気が点いていなかったため、シェイファーとエドワード以外の第三者が電気を消して立ち去った事を見抜く。

 コロンボはシェイファーがカリブ海に旅行に行くつもりだった事を突き止めるが、シェイファーの死体は現金も旅券も持っておらず、旅行にしては不自然だった。どうやら第三者の依頼で盗みを行い、報酬を受け取るはずだったように思われた。

 ルースは、コロンボに、二週間前に美術館の展示品の一つが盗まれていたという話をでっち上げ、エドワードが犯人を知っていたらしいというウソを並べ立てる。その後、姉フィリスの娘ジェイニーの部屋に美術品を隠す。警察は家宅捜索を行ってすぐにジェイニーの部屋から問題の美術品を見つけ出し、ジェイニーを殺人容疑で逮捕する。



●終盤

 コロンボはジェイニーが犯人とは考えておらず、釈放して自宅に送り届ける。そして故エドワードがテープに吹き込んで作っていた美術品の目録を再生する。目録の中には「黄金のバックル」が記録されていたが、それこそジェイニーの部屋で見つかった、二週間前に盗まれたはすの品だった。つまり犯行当夜もバックルは美術館にあり、ルースがコロンボに語った説明は全て嘘となる。それを指摘されたルースはあっさり犯行を認め、コロンボエスコートで屋敷を出ていく。


監督:ロバート・ダグラス
脚本:ピーター・S・フィーブルマン(原案:Lawrence Vail ローレンス・ヴァイル)


感想

 評価は○(まずまず)。

 オーソドックスな展開に余韻の残る結末、と、全体的な雰囲気は悪くなかったが、ストーリーの要素が上手く整理されておらず、散漫な印象も与えてしまった惜しい一作だった。


 今回の犯人ルース・リットンは、若い頃に姉に婚約者を奪われ、その後唯一の心のよりどころにしていた美術館も弟に売却されそうになり、そのため売却を阻止するために殺人に走った、という設定で、境遇としては第19話「別れのワイン」の犯人を連想させ、同情の余地が大いにある人物だった。

 そのためか、捜査に来たコロンボと対峙するシーンでも、心理的な対決といった要素は無く、花粉症に苦しむコロンボカミツレカモミール)のお茶を出してくれるなど、友好的な雰囲気に終始しており、犯人とのこういう和やかな関係は悪くなかった。


 しかし、犯行の部分は結構展開が複雑で、警備員のシェイファーを操って犯行計画に組み込むのはちょっと無理が感じられた。特にシェイファーが美術館に忍び込む前に兄に電話をかけ自分が撃たれたように偽装する部分は、留守電だからこそ成立する工作で、もし兄がリアルタイムで電話を取ってしまったら一巻の終わりである。この工作はルースがアリバイを作るためシェイファーに指示した模様だが、この部分など運頼み過ぎである。

 ただし、犯行計画の綱渡り的なところはともかく、コロンボが事件の真相に迫っていく過程はめっぽう面白い。シェイファーが服や靴や時計を新調し綺麗に散髪している事から旅行を予定していたと気が付き、さらに予防注射の跡に気が付いて目的地が海外だと悟り、奇妙なメモが時計のカレンダーを合わせる備忘録だったと思いつき、部屋の電気が消えていたことから第三者の存在を確信する、等々、断片的な状況証拠を元にみるみる真相に近づいていくのは、実に痛快な展開でだった。


 しかし、終盤になると話が変になってくる。コロンボはルースの美術館での殺人を追っていた筈なのに、いつの間にかルースが元婚約者ピーター・ブラントも(カミツレ茶を飲ませて心臓発作を起こさせて)殺したのでは、という話に拡大していき、さらに姪のジェイニーはルースの実の娘かも、という疑惑まで持ち出してくる。シェイファーとエドワード殺しの事件が収束する段階でこんな話を持ち出してこられて、視聴者的には困惑しきりだった。

 さらにコロンボの推測が正しければ、ルースは「実の娘」のジェイニーに殺人の容疑をなすりつけて警察に捕まるように工作したことになり、あまりにも理解しがたい行動で、この辺りで訳が分からなくなってしまった。しかも最終的にはルースはシェイファーとエドワード殺しについては潔く認めたものの、ピーターの死とジェイニーが実の娘かどうか、という点については何も語らないまま立ち去ってしまうのである。

 今回の話は、この「ピーターの死の真相」「ジェイニーの実母は誰か」という点以外にも、「ジェイニーは妻子ある男性と不倫しており、その男性の弟だからシェイファーを雇った」という設定も含めて、本筋に無関係な要素が多すぎ、肝心の事件に集中しずらくなっていた。この辺りについて、もっとシナリオを見直して洗練した内容にしていれば、作品の評価も上がっていたと思うと、実に惜しい感じではあった。


 作品のサブタイトル「OLD FASHIONED MURDER」は、意訳すると「古風な殺人」。作中でルースが古風云々と言われていたところにかけている(筈)。

 本作の原案は「ローレンス・ヴァイル」という人物が担当しているが、実はその正体は「権力の墓穴」や「逆転の構図」などのシナリオを書いたピーター・S・フィッシャーその人で、話の内容がフィッシャーが書いたものから大きく内容を変えられたので別名義を名乗ったとのこと。また、脚本を書いたピーター・S・フィーブルマンは、実は俳優もやっており、本エピソードでは悪徳警備員ミルトン・シェーファーを演じていた。


その他

 放送時間:1時間16分。
 
 

ピーター・フォーク小池朝雄ジョイス・バン・パタン…加藤道子セレステ・ホルム…堀越節子,ジーニー・バーリン…中島葵,ティム・オコナー…加藤和夫,【演出】ロバート・ダグラス,【脚本】ピーター・S・フィーブルマン

 

他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ

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刑事コロンボ完全版 2 バリューパック [DVD]
刑事コロンボ完全版 3 バリューパック [DVD]
刑事コロンボ完全版 4 バリューパック [DVD]
刑事コロンボ完全捜査ブック
 
 
 
 

【ドラマ】感想:海外ドラマ「刑事コロンボ」第38話「ルーサン警部の犯罪」

刑事コロンボ完全版 1 バリューパック [DVD]

刑事コロンボ https://www.nhk.jp/p/columbo/ts/G9L4P3ZXJP/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

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第38話 ルーサン警部の犯罪 FADE IN TO MURDER (第6シーズン(1976~1977)・第1話)

 

あらすじ

刑事コロンボ(38)「ルーサン警部の犯罪」
[BSプレミアム]2020年12月16日(水) 午後9:00~午後10:14(74分)


刑事コロンボ』旧シリーズ一挙放送!犯人役は『スター・トレック』シリーズの“カーク船長”でおなじみ、ウィリアム・シャトナー。声を俳優の山城新伍が担当。


人気TVドラマ「刑事ルーサン」の主演俳優ウォード・ファウラーは、番組プロデューサーのクレアに過去の秘密を握られ、長年にわたりギャラの半分を取られていた。ウォードは撮影所から小道具の拳銃を盗み、クレアが立ち寄った食品店で強盗の仕業と見せかけて彼女を射殺。犯行前に自宅に付き人を招き、彼を利用してアリバイ工作をする。

●序盤

 俳優ウォード・ファウラー(犯人)は、人気テレビドラマ「刑事ルーサン」の主役「ルーサン警部」を演じるスターだが、プロデューサーの一人でかつて愛人関係にあったクレア・デイリー(被害者)にゆすられ、ギャラの半分をピンハネされている。

 ファウラーはクレアから解放されるため殺害計画を実行に移す。
1)覆面と服と銃を撮影所から盗み出す
2)付き人のマークを自宅に呼び、テレビで野球中継を見ながら睡眠薬入りの酒を飲ませて眠らせる
3)覆面強盗に扮して、クレアがサンドイッチを購入している店に押し入り、店長を気絶させてからクレアを射殺する
4)覆面と服を破り捨てて路上のごみ箱に投棄
5)自宅に戻り、マークの腕時計・家の時計の時間を戻しておき、さらにビデオで録画していた中継を再生してからマークを起こし、一瞬しか寝ていなかったように思わせる。そのまま寝てしまったマークの腕時計を正しい時間にセットし直してアリバイを確保。



●中盤

 コロンボはクレア殺しの捜査を開始し、状況から押し込み強盗が、クレアが怯えて逃走したことに逆上して射殺した様に思われた。店主の証言では、犯人の身長はコロンボと同じくらいだった。

 しかしコロンボは撮影所でファウラーと会うなり、これは計画殺人の可能性が高いと指摘し、理由として「現金以外の金目の物(クレジットカード、ダイヤモンドの指輪、ワニ皮のハンドバッグ)を奪っていない」「犯人は冷静に10メートル離れた被害者の心臓を一発で撃ち抜いている」ことを上げる。

 コロンボはファウラーの付き人マークから、犯行当時、ファウラーの家で一緒に野球中継を見ていたという証言を得る。しかし、マークの腕時計はいつもは正しい時刻より5分進めてあるのに、その時は正しい時刻を指しており、マークは1000ドルもする時計が一晩で5分も遅れたと愚痴を言う。

 コロンボは、クレアの夫で、今は別居中のシド・デイリー(番組プロデューサー)からも話を聞くが、故クレアがファウラーに法外なギャラを払う事に積極的だったという不可思議な事実を突き止める。またクレアがかつてファウラーと愛人関係だったことも知らされる。

 コロンボはファウラーに、クレアのドレスの弾痕と体の傷を比較した結果、クレアは手を上げていた時に撃たれたこと、手を上げて走っていた筈はないので犯人は逃走に逆上して撃ったのではないこと、を指摘する。また見つかった犯人の覆面には化粧が付いていた事から犯人は女性かもしれないと示唆する。

 深夜、ファウラーは銃は指紋を消したあと、シドのセーターから抜き取った糸くずを巻き付けて、こっそり撮影所に戻した。

 翌日、コロンボは撮影所のファウラーを訪ね、ファウラーは撮影時にはシークレットブーツで身長を五センチほど高く見せており、本当の身長はコロンボと同じくらいという事を知る。コロンボはファウラーに、犯人の使った覆面や衣装は撮影所のものだったこと、覆面の化粧はプロが使うものだったこと、拳銃だけは撮影所に戻されていたこと、を報告する。ファウラーはルーサン警部になり切り、ルーサン警部の考えでは「ウォード・ファウラー」が容疑者の一人だと言い出すが、コロンボは驚いてみせる。

 コロンボは、ファウラーの過去が公開されていないため尋ねると、ファウラーは本名はチャールズ・キプリングで、カナダ・トロントでまずい立場になっていたところをクレアに見いだされたと言い、コロンボも納得する。

 コロンボはシドを訪ね、クレアの貸金庫から「未届けの大量の株式証券」や「ファウラーからの借用証」が見つかった話を確認する。シドはクレアが殺された時間に秘書のモリ―と一緒に過ごしていたことを白状する。


●終盤

 コロンボはファウラーの自宅に行き、ビデオレコーダー一式を見せてもらう。ファウラーは、またルーサン警部になり切って、コロンボにウォード・ファウラーが有力容疑者なので検討しようと言い出す。コロンボはファウラーに過去を調べたことを明かし、ファウラーの本名はジョン・シュネリングといい、朝鮮戦争の際に軍を脱走してカナダに逃げこんだ人間であること、を説明する。

 ≪ルーサン警部≫は、ファウラーはその事でクレアにゆすられていた筈だが、ファウラーに尋ねるとそれを否定した、と他人のことのように語る。コロンボはファウラーにアリバイがあるのて、やはりシドが怪しいという結論に落ち着く。

 そこにシド・デイリーと秘書が警官に連れられてやってくる。コロンボは、凶器の銃にシドの服の糸くずが付いていたことを指摘しつつも、ファウラーがマークに睡眠薬バルビタールを盛り、ビデオを使ってアリバイを偽装したはずという推理を披露する。

 そして最後にコロンボは凶器の銃には指紋が残っていなかったが、空弾にファウラーの指紋が付いていたことを指摘する。ファウラーはここに至っても芝居がかった態度を止めないが、コロンボは冷たくあしらう。


監督:バーナード・L・コワルスキー
脚本:ルー・ショウ&ピーター・S・フィーブルマン(原案:ヘンリー・ガーソン Henry Garson)



感想

 評価は○(並)。

 取り立てて優れたところは見当たらないものの、話が破綻しているとかいうことはなく、程々には「コロンボしていた」ので、「並」評価が相応しいエピソード。


 ストーリーは、コロンボの定番フォーマット通りに展開するため安心して見ていられたが、いつもの「コロンボが鋭い観察力・推理力で犯人の周到に用意した犯行の真相を暴いていく』という流れではなくく、十二分に残された証拠を拾い集めて犯人にたどり着くだけのため、あまり名刑事感が無かったのはいささか物足りなかった。


 今回の犯人ファウラーは「芝居が仕事の俳優」という設定を差し引いてもかなり変なキャラクターで、コロンボに殺人犯としての疑いをかけられてもいきり立ったりせず、それどころか自分が「ルーサン警部」になり切って、その立場から「ファウラーは怪しい」などと言い出したりするので、この犯人は一体何を考えているのかさっぱりわからなかった。

 普通であれば、コロンボの推理を手伝うふりをして、自分に疑いがかからない様にうまく他人に疑いをかけようとするものだろうし、実際そういう偽装工作もしてはいるが、コロンボと対面して推理談義をするときには、殆ど自白に近いような事を喋ってしまっている。本作のシナリオライターとしては、何か深い意味を込めているのかもしれないが、視聴者的には「この犯人はどうかしていないか……?」としか映らなかった。


 結末も、コロンボがアリバイトリックのキモとなるビデオレコーダーについて決定的な証拠を見つけ出すのかと思いきや、そこは軽く流し、空包に残されていた指紋が決定打になるという拍子抜けの解決なのは、いささか唖然とさせられた。もちろんそれはそれで重要な証拠だろうが、もっと「犯人も視聴者も見逃していた決定的な何か」をコロンボが見つけ出すという様な展開にしてほしかった。


 ということで、一応形としては「刑事コロンボ」だったが、全体に雑さが感じられるというか、製作前にシナリオを見直してほしかった感があるエピソードだった。


 本エピソードの犯人ウォード・ファウラー役を演じたのは、SFドラマ「スタートレック 宇宙大作戦」の主役・カーク船長で有名なウィリアム・シャトナー。もっとも、ファウラーの妙なキャラクター付けのせいで、最初から最後まで変に芝居がかった演技ばかりだったので、何か「浮いている」感が強かった。


 作品のサブタイトル「FADE IN TO MURDER」は、意訳すると「殺人へのフェードイン」。フェードインとは、映像関係の用語で「映像が徐々にはっきりしてくること」という意味だそうで「殺人が始まる」とかそういうニュアンスを込めている模様。


 劇中で、コロンボが撮影所の中で、水の中から飛び出してくるサメの模型を見て「ジョーズのサメだ」と興奮するシーンがあるのはちょっと面白い。本作は1976年10月放送で、映画「ジョーズ」はその前年1975年6月に公開され、この池からサメが飛び出してくるアトラクションは本エピソードの放送前に完成したばかりだったらしい。コロンボがユニバーサルスタジオのアトラクションの宣伝に使われていたという面白い裏話である。

その他

 放送時間:1時間14分。
 
 

ピーター・フォーク小池朝雄ウィリアム・シャトナー山城新伍,ローラ・オルブライト…岩崎加根子,バート・レムゼン…宮川洋一,アラン・マンソン…稲垣昭三,【演出】バーナード・L・コワルスキー,【脚本】ルー・ショウ,ピーター・フィーブルマン

 

他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ

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刑事コロンボ完全版 2 バリューパック [DVD]
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刑事コロンボ完全版 4 バリューパック [DVD]
刑事コロンボ完全捜査ブック
 
 
 
 

【アニメ】感想:アニメ(OVA)「蒼き流星SPTレイズナー ACT-III 刻印2000」(1986年10月21日発売)

蒼き流星SPTレイズナー ACT.3「刻印2000」 [VHS]

アニメ「蒼き流星SPTレイズナー」公式サイト http://www.layzner.net/
放送 BS12。2021年10月15日(金)放送)

【※以下ネタバレ】
 

https://www.twellv.co.jp/program/anime/anime26/page-layzner/
10月15日 26:00~ 「ACT-III 刻印2000」


1999年12月、ル・カインはグラドス軍総督である父グレスコを殺害、その後継者たることを宣言、グラドス本国との連絡を絶った。グラドス創世の秘密を知ることで、信じるものが大きく揺らいだル・カインは、ロアンやジュリアを頼りにするようになっていく。しかし、ジュリアは先住グラドス人の知恵にすがることを決意する。地球を救う切り札であるグラドスの刻印をめぐって、エイジとル・カインが激突する。真の完結編が登場!

 

蒼き流星SPTレイズナー ACT-III 刻印2000 (1986年10月21日発売)

 

あらすじ

 レイズナーはル・カインのザカールの攻撃で大破するが、皮肉にもル・カインに守られてその場を逃げのびた。レジスタンスの元に戻ったエイジは、フォロンに、地球人の開発したニューレイズナーの機体に移るように説得し、フォロンもそれを受け入れる。

 ル・カインは父グレスコがレイズナーの破壊にこだわる理由を問いただし、グレスコはジュリアを連れてこさせグラドス人と地球人が同じ種族であるという秘密を話させる。ル・カインはグラドス人が地球人より優れた種族であるゆえに地球を支配するのは当然と考えていたが、ジュリアの話はその根拠を打ち砕くものだった。

 グレスコは単純なプライドだけを支配の根拠にしているル・カインを未熟と断じ、占領軍司令官の地位からの罷免を告げるが、それに激高したル・カインはグレスコを撃ってしまう。瀕死のグレスコは自分の死の真相などを全て秘密にして、口封じのためジュリアも殺すように命じて死んだ。

 ル・カインはグレスコの後継者となり、自分の理想とする支配を開始し、地球人も優れていればグラドス人と区別なく取り立てるとして、地球人のロアンを高い地位につける。またグラドス本星からの干渉を避けるため、ステーション衛星を破壊し、本星との連絡を絶ってしまった。ル・カインの部下たちには、ル・カインの方針に危惧を抱き、反抗を試みるものもあらわれるが、ル・カインはそれらの者たちを容赦なく粛清していった。


 ル・カインは、ジュリアを殺せずそばに置いていたが、本星から自分の後任の司令官が派遣されることを知り、理想が実現しない苦悩を打ち明ける。しかしジュリアはル・カインの元を去り、エイジと合流して南米クスコに向かう様に指示する。レジスタンスたちは新開発したばかりの地球製SPTに乗り、エイジたちの後を追った。

 レジスタンスたちは、ジュリアから地球人とグラドス人の秘密について知らされる。四万年前、先住グラドス人は弱った生命力を取り戻すため、同種の生命体の生命核を求めて宇宙を探索し、ついに地球で人類の祖先を発見した。先住グラドス人は人類の生命核を取り込み、つまり地球人とグラドス人は同じ種族なのだった。

 先住グラドス人は、未来に地球人とグラドス人が衝突する事態が発生することを危惧し、あるセーフティを用意していた。それが南米クスコの遺跡に隠された「グラドスの刻印」だった。ジュリアは、地球人がグラドスとの絶望的な戦いで不要な血が流れることを憂い、グラドスの刻印を発動させるため遺跡の中に消えた。

 ル・カインはレジスタンスの動きを知り、大軍をクスコに送り込み、レジスタンスたちは圧倒され遺跡までの後退を余儀なくされる。勝利を確信したル・カインは、指揮を副官のロアンに任せるが、グラドスの刻印が浮上し地球から離れる中、突如ロアンがレジスタンスとしての正体を明かし、基地は突入してきたレジスタンスに占拠された。裏切られたことを知ったル・カインは、ザカールに乗り、宇宙へ向かったグラドスの刻印とレイズナーを追った。

 レイズナーとザカールは宇宙空間で対決するが、ジュリアは両機を刻印の中に呼び寄せ、さらに刻印の機能を明かす。刻印は地球とグラドスの間の空間をねじまげ、両星の行き来を遮断するための物だった。ル・カインは激高するものの、結局ジュリアを殺せずに終わる。ジュリアはエイジとレイズナーを刻印の外に出し、刻印発動後、地球で苦しい立場に陥るだろうグラドス人を救う様に言い残して消えた。

 刻印が発動する中、レイズナーは地球に帰還し、エイジとアンナは抱き合って喜び合う<完>


感想

 1985年10月~1986年6月に放送されたロボットアニメ「蒼き流星SPTレイズナー」のOVA。テレビ放送の最終回第38話に当たる話を一時間の尺で作り直した物。

 テレビ放送の方は唐突に打ち切りが決まったため、とにかく話を締めくくるため、最終回の内容が第37話と繋がっておらず、見ていて「はぁ?」というものでしたが、それをきちんと話が繋がるように作り直してあります。見てみると、まだまだ総集編感はあるものの、一応納得できる流れにはなっておりましたね。


 テレビ放送から36年経って、ようやく納得できるオチにたどり着いたですよ。はー、すっきりすっきり。
 
 

蒼き流星SPTレイズナー (HDリマスター版) | アニメ26 | 無料アニメ番組 | BS無料放送ならBS12(トゥエルビ)
https://www.twellv.co.jp/program/anime/anime26/page-layzner/

少年少女たちの成長を描いたTVシリーズ総集編2作と物語を補完する完結編の全3作を放送!
1996年、人類の宇宙進出は火星にまで及んでいた。しかし、輝かしい宇宙開発の陰では米ソ間の冷戦が全世界に緊張をもたらし続けていた。
1996年10月3日。国連主催によるコズミックカルチャークラブに選抜された少年少女が火星に到着した時、謎の機動兵器SPTにより火星基地は攻撃を受ける。窮地に陥った彼らを救ったのは、惑星グラドスから来た少年エイジだった。
グラドスと地球の混血児だというエイジは「地球はグラドスに狙われている」ことを告げに来たのだった。エイジとコズミックカルチャークラブの少年少女たちは、反目しながらも危機を乗り越えるために協力し、地球を目指して苦しい旅に出る。

【キャスト】
エイジ:井上和彦/アンナ:江森浩子/デビッド:梅津秀行シモーヌ:平野 文/ロアン:鳥海勝美/アーサー:鹿股裕司/エリザベス:戸田恵子/ジュリア:横尾まり/ル・カイン:塩沢兼人


【スタッフ】
原作:伊東恒久高橋良輔/監督:高橋良輔/脚本:五武冬史/キャラクターデザイン:谷口守泰メカニカルデザイン大河原邦男/音楽:乾 裕樹

 

2022年視聴映画のあらすじ・感想の一覧は以下のページでどうぞ

perry-r.hatenablog.com
 
 
メロスのように~LONELY
メロスのように~LONELY

蒼き流星SPTレイズナー ACT-1 エイジ1996
蒼き流星SPTレイズナー ACT-1 エイジ1996[井上和彦][Laser Disc]

蒼き流星SPTレイズナー ACT-2 ル・カイン1999
蒼き流星SPTレイズナー ACT-2 ル・カイン1999[井上和彦][Laser Disc]


リアルロボットレヴォリューション 1/48 SPTレイズナー
リアルロボットレヴォリューション 1/48 SPTレイズナー

魂SPEC×HI-METAL R ニューレイズナー
バンダイ(BANDAI) 魂SPEC×HI-METAL R ニューレイズナー

魂SPEC レイズナーMARK II
魂SPEC レイズナーMARK II 全高約14cm ABS&PVC製 フィギュア
魂ウェブ限定 魂SPEC レイズナーMARK II MK-II SPT 魂スペック MK-2 マーク2 超合金魂 プレバン Layzner Soul Of Chogin


魂SPEC×HI-METAL R ザカール
魂SPEC×HI-METAL R ザカール 蒼き流星SPTレイズナー

【テレビ番組】テレビ番組評価[2022年5月分]

キングダム 第4シリーズ

 最新のテレビ番組(アニメ、ドラマ、他)の評価です。
【※以下ネタバレ】

ランキング

※行頭が「◇」は今期クール開始作品、「◆」はそれ以前から継続放送。


●すごく面白い(評価:◎)
 ◇アニメ「キングダム(第4シリーズ)」(4/9~)
 ◇アニメ「はたらく魔王さま!」(2013年:再放送)
 ◇NHK「ダークサイドミステリー シーズン4」(4/14~)
 ◇NHK「ダークサイドミステリーE+」(4/4~)


●まずまず面白い(評価:○)
 ◇アニメ「阿波連さんははかれない
 ◇アニメ「エスタブライフ グレイトエスケープ
 ◇アニメ「カッコウの許嫁
 ◇アニメ「処刑少女の生きる道(バージンロード)
 ◇アニメ「パリピ孔明
 ◇アニメ「ヒーラー・ガール
 ◇アニメ「ブラック★★ロックシューター DAWN FALL
 ◇NHKドラマ「星新一の不思議な不思議な短編ドラマ」(4/5~)
 ◇NHK「漫画家イエナガの複雑社会を超定義」(4/8~)※情報番組


●なんとなく見ている(だけ)(評価:△)
 ◇アニメ「真・一騎当千」(AT-X:5/17~5/31)
 ◇アニメ「BIRDIE WING -Golf Girls' Story-」(AT-X:4/29~)
 ◇アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会(第2期)
 ◆NHKグレーテルのかまど
 ◆NHK「サラメシ」


●視聴中止(評価:×)
 ◇アニメ「可愛いだけじゃない式守さん
 ◇アニメ「骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中
 ◇アニメ「くノ一ツバキの胸の内
 ◇アニメ「恋は世界征服のあとで
 ◇アニメ「サマータイムレンダ
 ◇アニメ「史上最強の大魔王、村人Aに転生する
 ◇アニメ「社畜さんは幼女幽霊に癒されたい。
 ◇アニメ「SPY×FAMILY
 ◇アニメ「であいもん
 ◇アニメ「魔法使い黎明期
 ◇アニメ「勇者、辞めます


※今期お気に入りのアニソン
 無し

コメント

◇アニメ「キングダム(第4シリーズ)」
 鉄板。


◇アニメ「ブラック★★ロックシューター DAWN FALL
 最近珍しいメカ+美少女のアニメ。単発ゲストキャラがいきなりポンと登場しても、そのキャラを使って結構面白くて味のある話に仕上げて来るので、最近評価がグングン上がってきた。


◇アニメ「エスタブライフ グレイトエスケープ」
 結構楽しい。世界観は全く分かりませんが、五人組でわちゃわちゃしているのが面白い。しかし三木眞一郎という実績十分の声優にわんわん言わせているだけってちょっと贅沢すぎでは……?


◇アニメ「カッコウの許嫁
 ヒロイン三人の声に最初は違和感あったものの、だんだん慣れてきました。原作のノリはばっちり再現しているのでなかなか。


◇アニメ「ヒーラー・ガール」
 お仕事物+魔法物+学園物+医療物+歌って踊ってミュージカル、と要素がやたら多いアニメ。凄く良いわけではないけど、何となくイイ。


◇アニメ「パリピ孔明
 序盤を過ぎてKABE大人が出てきた辺りから(原作漫画がそうなのですが)イマイチになってきた。まあ悪くは無いんですけどね。


◇アニメ「処刑少女の生きる道(バージンロード)」
 まあまあ。主人公が暗殺者ということで殺伐としがちですが、そこに巨乳お気楽ヒロインを絡めることで暗黒度を緩和しております。それなりにいける。


◇アニメ「阿波連さんははかれない」
 まあまあ。切ろうかと思ったこともありましたが微妙に楽しいので視聴継続。


カッコウの許嫁
カッコウの許嫁


TVアニメ『ブラック★★ロックシューター DAWN FALL』EDテーマ「Before the Nightmare」
TVアニメ『ブラック★★ロックシューター DAWN FALL』EDテーマ「Before the Nightmare」【BRSDF盤】


ヒーラー・ガール
ヒーラー・ガール


パリピ孔明
パリピ孔明


処刑少女の生きる道
処刑少女の生きる道(バージンロード) - シーズン 1

 

【歴史】感想:歴史番組「ダークサイドミステリーE+」2022年版「超能力の謎を解明せよ!~千里眼事件の光と闇~」(2022年5月31日(火)放送)

透視も念写も事実である ――福来友吉と千里眼事件

ダークサイドミステリーE+ NHK https://www.nhk.jp/p/ts/ZG5NQK3K3P/
放送 NHK Eテレ。毎週火曜夜10時45分~11時15分放送。

www.nhk.jp
【※以下ネタバレ】
 

他の回の内容・感想

perry-r.hatenablog.com
 

驚きと感動の「闇」が、地上波に登場!


BSプレミアムでシーズン4が4月14日(木)スタートする話題の番組「ダークサイドミステリー」。その名作の数々が、コンパクト30分版に見やすくなってEテレに登場!


背筋がゾワゾワ、心がドキドキ、怖いからこそ見たくなる。世界はそんなミステリーに満ちている。世間を揺るがした未解決の事件、常識を越えた自然の脅威、いにしえの不思議な伝説、怪しい歴史の記録、作家の驚異の創造力…。こうした事件・出来事を徹底再検証!


ナビゲーター・栗山千明、語り・中田譲治、テーマ音楽・志方あきこのダークなトライアングルで迫ります。

 

超能力の謎を解明せよ!~千里眼事件の光と闇~ (2022年5月31日(火)放送)

 

内容

ダークサイドミステリーE+「超能力の謎を解明せよ!~千里眼事件の光と闇~」
[Eテレ] 2022年05月31日 午後10:45 ~ 午後11:15 (30分)


「先生!千里眼の女の謎を解いてください」「どんと来~い!」と明治の一流学者たちが超能力解明に挑んだ初の実験・研究。日本中が大騒ぎした意外な経緯と驚きの結末とは?


世界的な大発見!超能力の秘密は「京大光線」?明治日本の科学者たちが謎の力を解き明かした?透視能力「千里眼」をもつ女性を対象に行われた、日本初の科学実験。その記録を詳細に調べると浮かび上がるのは、大発見の喜びの裏に忍び寄る、不正疑惑!派閥闘争!内部告発!混乱のなか日本全体を巻き込んだ騒動は、意外な結末へ。いったい科学者や「千里眼の女」そして日本社会に何が起きたのか?知られざる超能力実験の真相に迫る。

【出演】栗山千明,【語り】中田譲治

 今回は「2021年4月8日放送回」のダイジェスト版。
 ↓

【歴史】感想:歴史番組「ダークサイドミステリー」シーズン3(2021年版)「超能力の謎を解明せよ!~千里眼事件の光と闇~」(2021年4月8日(木)放送)
https://perry-r.hatenablog.com/entry/2021/09/30/024140

perry-r.hatenablog.com

 
 今回のテーマは「千里眼の研究」。


御船千鶴子の透視

 19世紀末~20世紀初頭は、X線放射線など、物理の世界で目に見えないものが実在する、ということが明らかになっていたころだった。


 明治42年(1909年)5月、東京帝国大学の心理学者で催眠を専門とする福来友吉(ふくらい・ともきち)は、熊本にいる千里眼能力者・御船千鶴子(みふね・ちづこ)を研究するように依頼される。千鶴子は催眠術をかけられたことで千里眼能力に目覚めたというのである。


 翌・明治43年(1910年)4月9日、福来は熊本で千鶴子の能力を検証した。その方法は、伏せた名刺50枚の中から一枚を無作為に選び、それを錫の茶壷に入れ、蓋を紙で封印した上で、中の名刺の文字を透視させる、というものだった。千鶴子は集中するためと言って、茶壷を持って一人で隣の部屋に行って後ろ向きに座り、中身を透視した。この実験での的中率は83パーセントで、とても偶然で出る数字では無かった。

 しかし、この実験で透視能力が証明できたとは言い難かった。千鶴子は福来たちに後ろ向きで座って透視するので、茶壷の封印をはがして中をのぞき見したとしても解らないのである。

 そこで福来は実験方法を変え、潰した鉛管の中に名刺を入れ、それをハンダで封印し、その中身を透視してもらう事にした。9月2日、京都で実験が行われるが、千鶴子は全ての透視に失敗した。実験四日目。立会人が全員外出し、福来しか居ないときに、突然千鶴子が実験を願い出てきた。そして封印した鉛管での透視実験にすべて成功。福来は千鶴子の能力が本物だと確信した。



●公開実験

 9月14日。今度は東京で千鶴子の千里眼の公開実験を行うことになり、検証のため、東京帝国大学の元総長にして物理学の重鎮・山川健次郎をはじめとする、物理学・医学・哲学の学者合計9人を集まった。

 実験では、山川が文字を書いた紙を封印した鉛管20個を持ち込み、その中から無作為に一個を選んで千鶴子に渡し、それを透視させた。すると千鶴子は鉛管の中の紙に書かれていた文字「盗 丸 射」を見事言い当てた。ところが、山川は、自分が用意した鉛管にはそのような文字の組み合わせは無かったと言い出し、その場は大騒ぎとなった。

 福来が千鶴子を問いただすと、山川の用意した鉛管では上手く透視できなかったので、昨日福来に練習用にもらった鉛管を透視したと白状した。しかし山川たちは特に気にせず、三日後の再実験では、実験方法を変更し、千鶴子が慣れている茶壷を使った実験を行い、こちらでは千鶴子は全てを的中させた。

 これで千鶴子の能力は学者お墨付きとなり、以後日本全国で千里眼ブームが発生、各地で自称・千里眼能力者たちが次から次から出現する事態となった。



●長尾郁子登場

 11月、福来は香川県丸亀市に住む新たな千里眼能力者・長尾郁子の元に出向いた。郁子は千鶴子と違い、学者の目の前で隠すところなく透視をするということで、福来は郁子は千鶴子よりより優れた千里眼であると考えた。そして、千鶴子より研究がしやすいというメリットがあった。

 ところが、そこに、明治30年に創立したばかりで知名度を欲していた京都帝国大学が割り込んできた。京都帝大は、文科大学心理学科三回生の学生・三浦恒助(みうら・つねすけ)を送り込み、千里眼研究を開始したのである。

 11月19日、三浦は郁子に様々な条件で透視をしてもらい、きちんと形を読み取っていること、色も見分けられること、等を確認した。さらに写真乾板の上に十字型の鉛を貼り付けた物を透視してもらうと、乾板が感光していることが解り、これは郁子が未知の光を放射して透視していることを示唆しているように思われた。

 三浦は12月26日、新聞記者に対し、その光線の事を「京大光線」と命名するようなことを話し、それが記事として出た。しかしその先走りが京都帝大上層部の逆鱗に触れて、全て「三浦が勝手にやったこと」扱いされてしまい、そのまま京大は研究から撤退した。



●念写実験

 福来は、郁子が乾板を感光させられるなら、狙った文字を乾板に焼き付けることができるのではと考え、郁子に「念写」を依頼した。そして12月29日に念写実験が行われ、郁子は依頼した漢字を次々と念写に成功し、福来はこれを「精神写真」と呼び、実験の成功は大々的に報じられた。

 ところが、翌・明治44年(1911年)1月16日、東京帝大の講師で実験を手伝った藤教篤(ふじ・きょうとく)は、郁子の念写は全て手品だと記者の前で批判した。あらかじめボール紙か何かで文字の形を切り取っておき、それを感光させているだけだというのである。郁子は実験の前、慣れるためと称して別室に実験用の器材を保管させておくように指示しており、その間に郁子側の人間が細工する余地はいくらでもあった。

 これを受けて学者たちから批判の声が巻き起こり、福来の味方の筈だった山川健次郎も批判に回ったことで、福来は孤立してしまった。



千里眼研究のその後

 直後、御船千鶴子が原因不明の自殺(24歳)、長尾郁子が病死(39歳)、と、能力者の死が相次ぎ、千里眼研究は事実上終焉を迎えたのだった。


感想

 ホラー小説「リング」の元ネタとして有名な三船千鶴子らの千里眼実験のお話。まあ普通に考えると千鶴子は完全にアウトですよね……

 今回気が付いたのですが、この番組は、BSプレミアムの内容をそのまま切り貼りして短縮しているのではなく、中田譲治氏のナレーションは新たに収録し直していました。結構手間かけているのかも。
 
 

光と闇のナビゲーター 栗山千明
語り 中田譲治
テーマ音楽 志方あきこ

 
 

他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ

perry-r.hatenablog.com
 
 
千里眼事件
千里眼事件―科学とオカルトの明治日本 (平凡社新書)