NHK番組「シリーズ・妖しい文学館」の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)
■シリーズ・妖しい文学館 - NHK
http://www4.nhk.or.jp/P3613/
NHK BSプレミアムでの視聴です(放送日:2015年7月30日(木) 21:00〜22:00)。
番組概要
必読の作家・作品にスポットを当てて、その魅力に愉しく迫る文学エンターテインメント。
番組内容
http://www4.nhk.or.jp/P3613/x/2015-07-30/10/22955/
シリーズ・妖しい文学館▽あなたの知らない名探偵・明智小五郎と怪人二十面相の秘密必読の作家・作品の魅力に迫る文学エンターテインメント。2回目は名探偵・明智小五郎を生み出した「江戸川乱歩」。ヒーローなのに実はアヤシイ明智小五郎の本当の姿とは?
http://www2.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2015-07-30&ch=10&eid=22955&f=3613
必読の作家・作品の魅力に迫る文学エンターテインメント。2回目は名探偵・明智小五郎を生み出した「江戸川乱歩」。ヒーローなのに実はアヤシイ明智小五郎の本当の姿とは?
必読の作家・作品にスポットを当て、その魅力に迫る文学エンターテインメント。2回目は「名探偵・明智小五郎」を生み出し、近代日本推理小説の礎を築いた「江戸川乱歩」。スーパーヒーロー・明智小五郎は、実は初期の作品では、真っ先に犯人に疑われるようなアヤシイ人物だった!「明智小五郎」というキャラクターの変遷を読み解き、乱歩が描いた「魔都」東京の姿を追う。【出演】綾辻行人、佐野史郎、高橋源一郎、壇蜜
江戸川乱歩没後50年ということで、乱歩作品の有名キャラクター・明智小五郎と怪人二十面相について、様々な作品を元に、綾辻行人(作家)・高橋源一郎(作家)・佐野史郎(俳優)・壇蜜(女優)が語り合う。
子供向けの「少年探偵団」シリーズにおいては、明智は格好良くて頭が切れるスーパーヒーローの名探偵である。しかし完全無欠過ぎて面白みがない。二十面相の方が人間味が有る。殺人はしない、少年探偵に優しい、お金より美術品、丁寧な予告状、等々。二十面相は日本版ルパンといえるが、ルパンとは違い、明智に負けないといけないという悲哀が有る。
さて、明智のデビュー作「D坂の殺人事件」と、続く「屋根裏の散歩者」では、明智は「少年探偵団」シリーズの姿とは全く違っている。そもそも和服姿だし、無職で、犯罪関係の知識がやたら豊富なオタク、と全く別人なのである。おかげで「D坂」では物語の語り手に犯人として疑われる有様だった。ちなみに、「D坂」の初期稿では、明智は警察に一目置かれる名探偵で、今回も事件の調査を警察から依頼され、愛用のパイプをふかして、云々、というホームズのパクリみたいなキャラだった。
「D坂」が発表された1925年は、第一次大戦が終わり日本が好景気となり、東京に人がどんどん集まっていた。つまり互いに見知らぬ人間たちが犯罪を犯すことになる。田舎での事件は犯人と被害者は知り合い同士だが、都会ではそういう関係が見えなくなった。その見えないつながりを探すのが名探偵という事になる。
「屋根裏〜」では、主人公は知り合いの明智から犯罪の知識を吹き込まれるうち、ロクに知りもしない隣人を殺す事を決意する。動機なき殺人。心の闇。しかしこれ、どう見ても明智が主人公に犯罪を犯すように誘導しているようにしか読めない。悪いのは明智じゃね? 最後の犯人に自白させるときのやり方も結構ひどいし。
その後乱歩は、戦争の負傷で手足を無くした人物が出てくる「芋虫」というエログロ物を書く。これがお上に反戦物だと睨まれて絶版にさせられる。そのうち乱歩の小説は総てけしからんという事でまるごと絶版にされ、10年間絶筆することに。
太平洋戦争が終わり、1949年に乱歩は少年探偵団物「青銅の魔人」で復活する。これは戦後主人が復員してきたばかりの家に、謎の「青銅の魔人」が時計を盗むと予告してくる、というストーリー。魔人が時計を盗む理由は? 物語の中では特に意味は無い。これは「失われた時を取り戻す」という意味なのでは?
感想
作品紹介と、中年探偵団を名乗る三人+壇蜜のトーク、が交互という構成。作品紹介時はイラストをふんだんに使っており、ビジュアル面にも配慮した作品作りは実に良かった。まあ、「D坂」「屋根裏」「青銅の魔人」の総てでオチをばらしているのですが、まあそこは仕方ないか?
予想以上の面白さで大満足。
こちらもどうぞ
「ETV特集」「二十の顔を持つ男〜没後50年 知られざる江戸川乱歩〜」(2015年8月1日(土)放送)
http://d.hatena.ne.jp/Perry-R/20150815/p5