【映画】感想:映画「日本沈没」(1973年:日本)

【東宝特撮Blu-rayセレクション】 日本沈没

NHK BSシネマ http://www.nhk.or.jp/bscinema/
放送 NHK BSプレミアム。2020年8月10日(月)

【※以下ネタバレ】
 

日本海溝の異変で日本列島が沈没するという小松左京のベストセラーSF小説を映画化。森谷司郎監督の骨太の演出と特殊撮影を駆使した映像で、大ヒットしたパニック超大作。


70年代に発表されベストセラーとなった小松左京のSF小説を映画化。深海潜水艇わだつみ号の操艇者・小野寺は、海底火山の権威、田所博士らを乗せた無人島の調査で、異変を検知する。そして、近いうちに日本列島が沈没するという田所の主張を裏付けるように、火山噴火や大地震が発生。日本中がパニック状態に陥っていく…。豪華キャスト、森谷司郎監督の骨太の演出、特殊撮影を駆使した映像で大ヒットとなったパニック超大作。

 

あらすじ

 地球物理学者の田所は、小笠原諸島の北にある無人島が一夜で消滅したという異常事態の調査のため、深海調査船の操縦者・小野寺と共に日本海溝へと調査に向かった。そして田所たちは海底に走る亀裂や乱泥流を発見するが、それが何を意味するのかは全く不明だった。

 やがて伊豆半島で大地震と火山の噴火が発生した。山本総理は有識者を集めて話を聞くが、田所は総理に対して今後重大な事態が発生する事を予告し、他の学者からは嘲笑される。しかし総理の後ろ盾であり政財界の超大物である渡老人は田所に注目し、首相に命じて田所を中心とする「D計画」を開始させる。田所は潜水艇の操縦者として小野寺を計画に招く。

 やがて田所たちの必死の調査により、地球の内部でマントルの異常な流れが発生しており、その結果として、最悪の場合、日本列島の大半は海に沈むという予想が導き出される。直後、関東地方に大地震が発生し、この「東京地震」によって関東は壊滅的な打撃を受け360万人が死亡・行方不明となった。

 三か月後。D計画チームは渡老人の元に向かい、日本人の海外への避難のための「D2計画」を開始するように提案する。そして山本総理の決断によりD2計画は承認され、秘密裏に外国の元首たちへの避難民受け入れの交渉が開始された。

 そんな中、田所は突然雑誌に「日本が沈没する」との情報をリークし、さらにテレビに生出演すると自分を批判した科学者とつかみ合いの喧嘩を演じるが、もちろん国民は真剣に取り合う事は無かった。全ては田所が国民にそれとなく最悪の事態を予告するために取った手段で、田所は辞表を提出しD計画を去った。

 やがてD計画チームは詳細な観測データを元に、山本総理に対し、日本は10か月後には消滅するという事実を伝える。総理はマスコミ各社の代表を集め、二週間後に重大発表をする旨を通達した。一方小野寺は阿部玲子という女性と結婚することを決意し、D計画を抜けスイスに移住することを決める。

 ところがアメリカの科学者たちも日本列島の異常を掴んでおり、海外からの情報で日本が沈没するとのニュースが伝わってしまったため、山本首相は予定を二日早めて記者会見を開き、日本の国土に危機が迫っていることを発表した。

 小野寺はこの日の飛行機で玲子と共に海外に旅立つ予定だったが、突然富士山が噴火し、伊豆にいた玲子は混乱に巻き込まれて行方不明となってしまう。この日を境に、世界各国は日本人救出のために船や飛行機を次々と投入し、国民は日本から脱出していった。しかし小野寺は玲子を探し出すため、最後の最後まで日本に残ると決意していた。日本各地では火山の噴火と地震が頻発し、国土は次々と海の下に沈んでいった。


 数か月後、山本総理は、D計画の終了を宣言し、日本に残ると決めた渡老人の元を訪れ最後の挨拶をするが、そこに行方不明だった田所が現れた。山本は田所に共に脱出するように勧めるが、田所は日本と共に死ぬと言ってその誘いを断った。

 最後。小野寺と玲子がそれぞれどこかの国で避難民たちと共に列車に乗っているシーンで〆。


感想

 評価は◎。

 50年以上前の映画なのに、今見てもとにかく面白い。パニック映画の大傑作。


 日本全土が海に沈んでしまうというパニックのスケールの大きさからしてゾクゾクしますが、劇中で一般人視点での愛とか悲劇とかのそういう甘いドラマは全く入れず、ストーリーを「科学者・為政者といった人々が国家の大危機にどう挑むか」に絞っているドライさが実に好みで、とにかく無性に面白かった。


 この映画の主役は、当然藤岡弘、の演じる小野寺だと思っていたのですが、実際に見てみると思いっきり勘違いで、前半は小林桂樹の田所博士が引っ張り、後半は丹波哲郎の山本総理が活躍する、というおっさん映画でした。(藤岡弘、いしだあゆみは、いてもいなくても良いレベルの出番)。

 小林桂樹というと温厚キャラのイメージが強いので、エキセントリックというかの田所教授の演技は驚かされましたし、また丹波哲郎は心霊研究家の変なイメージが強すぎたので、真面目に?総理大臣役を演じているのが不思議な感覚でした。あとメイン級で「特捜最前線二谷英明や「大鉄人17中丸忠雄といった面々がいたのもなんともゴージャス感がありましたね。

 また、原作者の小松左京自身が小野寺の会社の人間役でちらっと映っていたのにウケましたが(あの特徴のある姿なので一目でわかった)、さらに「ニュートン竹内均先生が、総理に講釈する役柄でマントル対流について説明しているシーンも面白かったなぁと。


 さて、さすが50年前の映画というべきか、大地震シーンでの被害の描写はとにかくエグイ。頭上から建物のガラスの破片が降り注いできて、それが女性の顔に突き刺さって血しぶきが吹き出すシーンなんか、21世紀では絶対あり得ない描写でしょう。また避難する人々が、周囲を火災に取り囲まれ、体に火が付いた人が右往左往し、最後には炭になった死体が地面に転がっている描写も、生々しすぎて今の映画ではちょっと見られないシーンです。

 また人死にの描写以外にも、都内の建物が大崩壊したり炎上したり津波が押し寄せたり、自衛隊が駆け付けても殆ど焼け石に水状態なのには見ていてもうすんごい憂鬱になる場面でした。この辺りは東宝特撮の技術が大活躍といったところでしたね。

 日本の各地が火山と地震で崩壊していく描写は、真上から俯瞰した日本列島の模型で焦点となる地区をフラッシュの様な青白い光が瞬くことで表現していたのが上手いと思いました。まあ地震で地面が光るのは理屈上あり得ないのですが「異変が起きている」という事が理屈抜きに解りましたしね。また、実際の火山の噴火や溶岩の流れる映像を随所に挟み込むことで、天変地異の描写にリアリティを出していたのも良しです。


 最後は、小野寺と玲子がそれぞれ別々に、どこに向かうともわからない列車に揺られていく場面が、「日本は無くなってしまった」という事を強烈に印象ずける名演出でした。


 古い映画なので今見て面白いかどうかちょっと不安でしたが、見てみたらそんな心配は一切不要でした。とにかく面白い映画でした。
 
 

日本沈没
[BSプレミアム]2020年8月10日(月) 午後1:00~午後3:25(145分)


【製作】
田中友幸、田中収
【監督】
森谷司郎
特技監督
中野昭慶
【原作】
小松左京
【脚本】
橋本忍
【撮影】
村井博、木村大作
【音楽】
佐藤勝
【出演】
藤岡弘、いしだあゆみ小林桂樹丹波哲郎島田正吾 ほか


製作国:
日本
製作年:
1973
備考:
日本語/字幕スーパー/カラー/レターボックス・サイズ

田所雄介博士:小林桂樹
山本総理:丹波哲郎
小野寺俊夫:藤岡弘
阿部玲子いしだあゆみ

 
 

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