刑事コロンボ|NHK BSプレミアム BS4K 海外ドラマ https://www9.nhk.or.jp/kaigai/columbo/
放送 NHK BSプレミアム。
【※以下ネタバレ】
他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ
第31話 5時30分の目撃者 A DEADLY STATE OF MIND (第4シーズン(1974~1975)・第6話)
あらすじ
刑事コロンボ(31)「5時30分の目撃者」
[BSプレミアム]2020年10月28日(水) 午後9:00~午後10:14(74分)
『刑事コロンボ』旧シリーズ一挙放送!患者と愛人関係にあった精神科医が愛人の夫を殺害。さらに催眠療法で彼女が自殺したように見せかける。
催眠療法を研究する精神科医のマーク・コリアーは、患者のナディアと愛人関係にあった。ナディアの別荘で彼女の夫と鉢合わせしたコリアーは、殴りかかってきた夫を暖炉の火かき棒で撲殺。その後、警察に矛盾だらけの証言をするナディアが邪魔になり、彼女を催眠療法で操ってベランダから飛び降りるように仕向ける。
●序盤
精神科医マーク・コリアーは、担当している患者で人妻のナディア・ドナーと関係を持っていた。ある日、コリアーはナディアの待つ彼女の別荘へ向かうが、別荘には妻の浮気に感づいた彼女の夫カールが待ち構えていた。コリアーはナディアにつかみかかったカールを止めようとして、誤って火かき棒で撲殺してしまう。
コリアーは、ナディアとカールがいるところに強盗が押し入ってきてカールを殺したという架空の事件を思い付き、ナディアにはその話を警察にする様に言い含める。そして自分は車で別荘を離れるが、その際、目の不自由な男性を轢きかける。
●中盤
ナディアは暗くなった夜7時に警察に連絡し、コロンボたちが捜査にやってくるが、ナディアはコリアーに言われた通りの嘘の説明をする。そこに精神的に参っているナディアを落ち着かせるためコリアーが到着し、コロンボはコリアーと顔を合わせる。翌朝、コロンボは再度ナディアを訪ね証言を確認する。
昼。コロンボはコリアーに会い、ナディアの証言には矛盾があると説明する。ナディアの証言では強盗たちは車の故障を理由に家に押し入ってきたというが、強盗たちは別荘に車で乗り付けており、その際のヘッドライトを見落とすはずがなく、ナディアたちは強盗たちの言い分はおかしいと気がついて当然だった。それを聞いたコリアーは、コロンボにナディアをポリグラフ(ウソ発見器)にかけるべきとアドバイスする。
そのあとコリアーはナディアに催眠術で「合言葉を聞いたらマンションの窓から下のプールに飛び込む」という暗示をかける。また彼女の部屋には強盗が持ち去ったという設定の宝石を残しておく。
夜。コリアーの家にコロンボが現れ、コリアーや客人たちに捜査中の事件について話す。コロンボは別荘内にライターの石が落ちており、ドナー夫妻は煙草を吸わず、覆面強盗たちも煙草を吸いようがないことから、別荘内にはナディアの証言には出てこない煙草を吸う人物がいたはずだと説明する。その間にコリアーはナディアに電話をかけて合言葉を告げ、それを聞いたナディアはプールで泳ぐつもりで窓から飛び出し墜落死する。
コロンボはナディアの部屋に盗まれたはずの宝石が有ったことを知る。また、彼女が全裸で死んでいる事、ベランダに服を畳み貴重品は靴下に入れていたこと、から当人は泳ぐつもりだったのではと推測する。さらに電話の受話器が外しっぱなしだった事にも注目する。
コロンボはコリアーに会い、ナディアが死んだことを告げると、カールは驚いて見せた後、ナディアがカール殺しの犯人で、それを理由に自殺したに違いないと言い出す。コロンボは、カールが死んだ日の夕方頃のコリアーのアリバイが無い事からコリアーを疑っているとあからさまに告げるが、コリアーは何の証拠も無いと涼しい顔でしらを切る。
●終盤
コロンボはカールの殺された別荘にコリアーを呼び出し、コロンボはナディアの死体から催眠療法に使う薬アモバルビタールが検出された事を理由に、コリアーが催眠で自殺に追い込んだに違いないと言い切るが、コリアーは何の証拠も無いとせせら笑う。
しかし、コロンボはカール殺しの日の午後5時30分にコリアーを見た目撃者がいるといって、モリスという男性を連れてくる。モリスは間違いなくコリアーを見たと証言するが、コリアーはモリスは盲目なのでそもそも目撃者になりようがないと笑いとばす。そしてモリスに本を読ませて盲目であることを示そうとするが、モリスはすらすら本を読み始めたため、コリアーは愕然とする。
実はコロンボが引き合わせたのはデイビット・モリスという普通に目が見える人物で、殺人当日コリアーが出会ったのはデイビットの弟で、よく似た容姿の目の不自由なダニエルだった。コロンボはコリアーがデイビットが目が不自由だといったのは、当日コリアーが目の不自由なダニエルの姿を見ていたからで、コリアー自身こそが真の目撃者だという。
監督 ハーベイ・ハート
脚本 ピーター・S・フィッシャー
感想
評価は△(いただけない)。
傑作揃いの第4シーズンのラストを飾る作品だが、結末があまりにもあまりすぎて脱力物の凡作エピソード。コロンボシリーズの脚本家として好作品を連発したピーター・S・フィッシャーの、シリーズ最後の作品がこれというのが悲しい。
凡作ではあっても、ある程度の形にはなっているので、初期の第1・第2シーズンの頃のやたらひねったような作品と比較すれば、相対的には出来は良く、それなりには楽しめた。
しかし、第一の殺人からして計画殺人ではなく、突発的に起きた殺人で、慌てて後始末の計画を立てた、という始まり方からして面白みに欠けており、実際そのあとナディアは矛盾だらけの証言をしてコロンボに簡単に疑いを抱かれてしまっている。この辺りは、コロンボの王道展開「犯人が緻密に計画した犯罪に対し、コロンボが些細なほころびを見つけ出していく」という流れが堪能できず、どうにも物足りなかった。
またコリアーがナディアの口を封じるために行うのが催眠術を使用した殺人、というのも、何かリアリティに乏しく、コロンボの世界観にもう一つそぐわない感が有り、このあたりの展開にも抵抗があった。
そして何より、ラストのコロンボがコリアーに仕掛けた罠の内容があまりにもあまりである。コロンボはモリス兄弟の容姿が似ていることを利用して、コリアーが事件当日午後5時30分に別荘から出ていったことを証明したつもりでいるが、コリアーが後から「何かの勘違いでモリスが目が不自由だと勘違いしただけ」としらを切ったら反論しようがない。
また、もしコリアーがおとなしく当日午後5時30分に別荘にいたことを認めたとしても、当日そこにいたというだけの話なので、コリアーがカールを殺した証明にはならず、それ以上の追及は不可能。ということで事件は全く解決しない訳で、オチになっていない結末というのは、ドラマとして失格では無かろうか。そもそもこの脚本にGOサインが出たことが大問題という気がする。
本作の結末部分のアイデアは、原作者のリチャード・レヴィンソンがシナリオのピーター・S・フィッシャーに提供したとのこと。劇的で印象には残ったが、事件の解決に結びついていないなど、あまり良い使われ方をしていないわけたが、フィッシャーが他の人からアイデアを貰ったものの、それを生かす上手い事件を組み立てられなかった、ということなのだろうか。もしかすると、今までに好作品を連発しすぎて、最後の最後にネタ切れになったのかもしれない。
作品のサブタイトル「A DEADLY STATE OF MIND」は、意訳すると「致命的な心の状態」となり、何が何だかよく解らない。その点日本語タイトル「5時30分の目撃者」は、ラストになると意味が解る、実に秀逸なタイトルである。
被害者ナディア・ドナーを演じたレスリー・ウォーレンは、テレビドラマ「スパイ大作戦」の第5シーズン(1970~1971年)で、レギュラーのダナ・ランバートを演じていた女優。今回初めてその事に気が付いた。また今回はクレイマー刑事が久しぶりに顔を出していたのが、ちょっと嬉しかった。
その他
放送時間:1時間14分。
#31 5時30分の目撃者 A DEADLY STATE OF MIND
日本初回放送:1976年
タイトル「5時30分の目撃者」これが意味するところとは・・・。ラストにその謎がとけるという秀逸なタイトル。コリアー役のジョージ・ハミルトンは、役さながらに実生活でもプレイボーイだった。
出演
コロンボ・・・ピーター・フォーク(小池朝雄)
マーク・コリアー・・・ジョージ・ハミルトン(小林勝彦)
ナディア・・・レスリー・ウォーレン(渋沢詩子)
カール・・・スティーブン・エリオット(大平透)
アニタ・・・カレン・マックホン(北村昌子)
クレイマー・・・ブルース・カービイ(杉田俊也)
演出
ハーベイ・ハート
脚本
ピーター・S・フィッシャー