【SF小説】感想「永遠の世界」(ローダンNEO 24)(2020年2月20日発売)

永遠の世界 (ハヤカワ文庫SF)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150122717
永遠の世界 (ハヤカワ文庫SF) (日本語) 文庫 2020/2/20
Frank Borsch (原著), フランク ボルシュ (著), 鵜田 良江 (翻訳)
発売日 : 2020/2/20
文庫 : 260ページ
出版社 : 早川書房 (2020/2/20)

【※以下ネタバレ】
 

クレストたちとローダンたちのチームは、それぞれが半球の惑星ワンダラーに到着し、皆は遂に"それ"と対面する。第3シーズン最終章!


一万年前の地球にて、アルコン人のアトランティス基地の滅亡を目撃したクレストらは、海底ドームの転送機から永遠の命の星であるワンダラーに到着し、この地の主“それ”の従者であるホムンクに迎えられた。一方、ローダンらもまた、惑星アンブルから“それ”の諜報者カルフェシュの船に密航し、ワンダラーに到る。全員が一堂に会したこの地にて、“それ”が永遠の命を与えるのは、一体誰か!?第3シーズン全8巻完結篇。

 

あらすじ

 第3シーズン(17~24巻)全8作の8作目。原タイトル:WELT DER EWIGKEIT(意訳:永遠の世界)。

 クレスト、タチアナ、トルケル=ホンは、転送機でついに永遠の命の惑星ワンダラーに到着し、ロボット・ホムンクから「栄光に値する者」として出迎えられた。そして、ホムンクの主人である“それ”を待つように指示される。

 一方、ローダンたちは諜報者カルフェシュの宇宙船に密航し、やはりワンダラーに到着した。カルフェシュはかつてローダンたちに命を助けられた恩義から、彼らの密航を見逃しており、ワンダラーへの逃走を手助けした。

 やがてローダンたちとクレストたちは合流し、そこに惑星の主人である高次存在“それ”が出現した。ローダンは“それ”がフェロン人が暗黒時代に突入することを防がなかったことを初めとする、良心に欠けた行為を面罵した。

 “それ”はその事を意に介さず、ローダンに永遠の命を送ると申し出るが、ローダンは拒否した。その結果、永遠の命を与える装置「細胞活性装置」はクレストの物となり、装置の力でクレストのガンは消滅した。ローダンたちはカルフェシュの宇宙船で、自分たちの時代の地球へと帰還した。


感想

 第三シーズン最終巻。ついに永遠の命の惑星の主“それ”と対面するクライマックスですが……、“それ”の性格がめちゃくちゃ悪そうだった(笑) どう考えてもオリジナル版とは違い、人類の導師という感じではない。こんなキャラから永遠の命をもらったら、代償に何を要求されるのか解ったものでは無い雰囲気で、ローダンが自分では細胞活性装置を受け取らなかったのも、その辺りを計算してそう(笑)

 と、不穏な雰囲気を漂わせつつ、第三シーズン完結。そしてドイツでの刊行はまだまだ続いていますが、日本語版の刊行はこれで打ち切り(T△T)


 いつものように、色々な事を放り出して「終わってないままのシーズン終了」のため、継続事項が山盛りで、
・何故“それ”は不死をばらまいているのか?
・惑星アンブルがワンダラーになった経緯は?
・惑星トラムプとワンダラーの関係は?
・クイニウ・ソプトールはワンダラーで何を体験しておかしくなったのか?
・エリック・マノリはどこに消えたのか?
・ファンタン星人の隠された秘密とは?

 等は日本版の読者には永遠の謎(?)となってしまいました……、うーん。早川書房も罪作り。


 というわけで、モヤモヤした物を残しつつの完結となりました。うーん。


総括

 ドイツ語版はもちろん日本語版でも約半世紀の歴史を持つローダン・シリーズ。さすがにもう読者は古参ばかりで新規の読者獲得は望めない、ということで、新しい読者を開拓するためリブート・シリーズとして始まったのが「ローダンNEO」。

 企画的にはハリウッドの映画、内容的はやはりアメリカのテレビシリーズ、といった趣の作品で、オリジナルシリーズが痛快娯楽作品なのと比較して、リアルな展開、深みのある人間描写、等で差別化を図っていたわけですが…… ついに最後まで馴染めませんでした。

 リアリティ重視のため痛快さの無い重いエピソード群、くどいくらいのキャラクターの内面の描写の多さ、ごく普通の人で群像劇の中の一人にすぎないローダン、超能力が大して役に立たないミュータントたち、スローモーこの上ないストーリー展開、等、どこを切っても好きになれる要素が無かった……

 ドイツのウケ具合はともかく、私には夢中になれるシリーズではありませんでしたね。残念です。


参考

 第四シーズン以降の展開についてはこちらで軽く触れられています。
 ↓

2019/07/18 11:45
【第3シーズン7/18刊行開始記念】《ローダンNEO》おさらいその4:本国で刊行の200巻までの展開を紹介する、井口忠利氏による第17巻『テラニア執政官』の解説を掲載!
https://www.hayakawabooks.com/n/ne88113c15db1

www.hayakawabooks.com
  
 

他の巻の内容・感想は以下へどうぞ

perry-r.hatenablog.com
 

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perry-r.hatenablog.com
 
 

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