【SF小説】感想「テラナーズ」(ローダンNEO 8)(2018年2月20日発売)

テラナーズ (ハヤカワ文庫SF)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150121699
テラナーズ (ハヤカワ文庫SF) (日本語) 新書 2018/2/20
Hubert Haensel (原著), フーバート ヘンゼル (著), 長谷川 圭 (翻訳)
発売日 : 2018/2/20
新書 : 270ページ
出版社 : 早川書房 (2018/2/20)

【※以下ネタバレ】
 

ワシントンDCでのクレストの裁判は、アルコン人の知識を独占するために大統領が仕組んだ陰謀だった。ローダンたちは異能者と合流し、NASAのパウンダーらとクレスト奪還を開始する。だがクリフォードたち異能者一派もまたクレスト確保のため暗躍する。そして金星からは、怒りのトーラが同胞を救うため地球に迫り…クレストをめぐる争いの行方が、この星とローダンの理想の未来を決める!第1シーズン全8巻完結。

 

あらすじ

 第1シーズン(1~8巻)8作目。原タイトル:DIE TERRANER(意訳:テラナー)。
 
 ローダンたちは、クレスト奪回のためにワシントンDCで行動を開始したが、同じ頃トーラもクレストを救うため宇宙船で地球に向けて帰還しつつあった。ローダンたちは裁判所に侵入したものの、クレストは今度はモンタニー一派に誘拐されてしまった。

 トーラは24時間以内にクレストを返すように要求し、宇宙船で地球各地で破壊を繰り返すが、モンタニーは宇宙船を奪うため、わざわざ自分たちの居場所を教える。リコはトーラの代わりにモンタニーたちと交渉した末に殺されるが、その正体はアルコン人を模したロボットだった。宇宙船はモンタニー一派のミュータント・イワン・ゴラチンの超能力で撃墜されたが、モンタニーはスーの謎めいた超能力で殺された。ローダンたちはクレストを救い出し、無事テラニアに帰還した。(時期:2036年7月14日~16日)


感想

 ようやく第1シリーズ完結編ですが……、「えっ、これで第一期が終わり? 何も終わってない……」という唖然呆然感強し。まあ一応クレストは救い出したし、モンタニーは死にましたが、それだけ。ローダンは相変わらずほぼ何もしていないし、アルコン宇宙船は超科学力の産物にも拘らずミュータントにあっさり撃墜されてしまうし、アメリカは相変わらず警察国家みたいなアレで敵だし……

 リアル志向にして「個人がちょっと異星人の科学力を手に入れた程度では世界は変わらない」という方向にしたのは今風かもしれませんが、面白いというのとは違うよね……、とそういう気分です。第二期で宇宙に飛び出したら少しは変わるのか?
 
 
 

他の巻の内容・感想は以下へどうぞ

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2020年の読書の感想の一覧は以下のページでどうぞ

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テラナーズ (ハヤカワ文庫SF)

テラナーズ (ハヤカワ文庫SF)

 
 

【ミステリー】感想:歴史ミステリー番組「ダークサイドミステリー」(2020年版)『闇の世界戦略“ヒトラーのニセ札”事件 ~あなたの知らない紙幣の秘密~』(2020年9月17日(木)放送)


ヒトラーの贋札 [DVD]

ダークサイドミステリー NHK https://www.nhk.jp/p/darkside/ts/4847XJM6K8/
放送 NHK BSプレミアム。毎週木曜夜9時放送。

www.nhk.jp
【※以下ネタバレ】
 

他の回の内容・感想

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本当の謎は、人間の闇
背筋がザワザワ、心がドキドキ、怖いからこそ…見たくなる!
世界はそんなミステリーに満ちている。
未解決の事件、自然の脅威、不思議な伝説、怪しい歴史など、謎と恐怖の正体に迫ります!

 

闇の世界戦略“ヒトラーのニセ札”事件 ~あなたの知らない紙幣の秘密~ (2020年9月17日(木)放送)

 

内容

ダークサイドミステリー「闇の世界戦略“ヒトラーのニセ札”事件~紙幣の秘密~」
[BSプレミアム]2020年9月17日(木) 午後9:00~午後10:00(60分)


世界を破綻させる力を持つ恐るべき「紙の兵器」=偽札。ヒトラーのドイツが第二次世界大戦で実行した史上空前の偽札作戦の全貌と、国家の威信をかけた紙幣の秘密に迫る。


第二次世界大戦中、ヒトラーのドイツは国際法違反の極秘戦略を発動!敵国イギリスの偽札を大量生産、経済を破綻させ世界経済を塗り替える作戦だ。実行者はナチスきっての謀略のプロ。一方イギリスの紙幣には、偽造防止のワナが100以上。両国の威信をかけた情報戦のゆくえは?偽札作りを強制されたユダヤ人職人の、プライドをかけた抵抗とは?紙幣に隠された驚きの秘密の数々をひも解きながら、空前の事件の人間模様に迫る。


【ナビゲーター】栗山千明,【ゲスト】植村峻,石田勇治,【語り】中田譲治,【司会】青井実

 
 今回のテーマは「ヒトラーのニセ札」事件。


ナチス財宝伝説

 オーストリア・トプリッツ湖にはナチスの財宝が隠されているという伝説が存在した。1959年8月、湖底からイギリスポンド22万枚・現在の価値で25億円分が引き上げられた。しかしそれらは全て偽札だった。ナチスドイツが国家を上げて製造した偽札だったのである。



アンドレアス作戦

 1939年9月、ナチスドイツのポーランド侵攻第二次世界大戦が始まった。10月、イギリスはナチスドイツがイギリスのポンド紙幣の偽造を企んでいることを突き止めた。作戦名は「アンドレアス作戦」。この作戦は、ポンドの市場流通量の30倍・300億ポンドの偽札をばらまいて、基軸通貨としてのポンドの信用を失墜させ、代わってドイツマルクが世界の基軸通貨となることを目指す、というものだった。

 作戦の指揮官は親衛隊(SS)のアルフレート・ナウヨックス。ところがドイツ銀行総裁のヴァルター・フンクは、外国紙幣の偽造は1929年締結の国際条約で禁止されているとして作戦に反対したため、ナウヨックスはドイツ銀行の協力なしに作戦を進めざるを得なかった。



●偽札作り開始

 ナウヨックスは、まず5ポンド紙幣の偽造にとりかかることにした。5ポンド紙幣は1852年から使用されている古い紙幣のため、技術が低く偽造も楽と考えたからである。

 紙幣の偽造は、大きく分けて「1 原料選び」「2 すかし入れ」「3 原版作り」「4 印刷」の四工程が存在する。

 まず原料の分析で、5ポンド紙幣は「トルコ産亜麻・40%」「ハンガリー産苧麻(ちょま)・60%」という配合だと解り、さっそく紙を作ってみたが手触りで本物のなめらかさが全く出てないうえ、本物には紫外線に反応する蛍光物質が含まれていることも判明。また、すかしも本物の5ポンド紙幣の様なシャープさが出せず、と、いきなり最初から行き詰ってしまった。

 しかしイングランド銀行に入り込んだスパイから、紙幣の原料は使用済みのボロ布だという情報がもたらされた。その情報を元に改めて偽札を作ってみると、繊維が使いこまれていて柔らかくなっていたので、手触りを滑らかにできたうえ、同じ理由ですかしもシャープになった。また使い古しの布を白くするため、原料には蛍光増白剤が入っていることも判明。原料とすかしについてはクリアされた。

 ナウヨックスは続いて原版作りを進めさせるが、ここでとんでもないことが判明した。イングランド銀行は、偽札を防ぐため、半年ごとに原版の100箇所近くを修正しており、とてもそれに一々対応できないことが解ったのである。

 ナウヨックスは、1940年4月にスイスの銀行に偽札を持ち込ませ、銀行に鑑定してもらうが、これが本物と判定された。イングランド銀行自体は偽札を防ぐためのシステムを作っていたが、海外の銀行にはその真贋の見分け方の情報を伝えていなかったのである。偽札はイギリス以外の海外の銀行なら流通可能と判明したが、ここで突如ナウヨックスが失脚した。一説には上官の親衛隊大将ラインハルト・ハイドリヒとの対立が噂されているが真相は不明。アンドレアス作戦は1941年秋に休止となった。



●ベルンハルト作戦

 1942年5月。ナチスドイツは改めて偽ポンド作りにとりかかった。責任者は親衛隊のベルンハルト・クリューガーで、作戦名はベルンハルト作戦。この作戦の目的はポンドの価値の失墜ではなく、外貨として武器や物資の購入のためにドイツ自身が支払いに使うためだった。

 クリューガーは機密保持のため、ユダヤ強制収容所の一つ「ザクセンハウゼン強制収容所」に偽札作りの拠点を構え、またユダヤ人の印刷工・彫金師・グラフィックアーティストたちに偽札作りの作業を行わせた。協力すれば衣食住を優遇し命の保証をする代わりに、逆らうなら即刻処刑する、という脅しを行って協力させた。

 ユダヤ人たちは、アンドレアス作戦で作った原版をより正確に修正していった。印刷工アドルフ・プルガーは、ナチスに協力を強制されつつも、密かに抵抗を行った。印刷用のローラーを汚す、原版に傷をつける、5ポンド紙幣の女神ブリアニアのところにワザと穴をあける、など。

 しかしそんな抵抗も虚しく偽札印刷は順調に進み、一億3400万ポンド分が印刷され、そのうち1000万ポンド(560億円)分は使用されたとされる。



●ドル紙幣偽造計画

 1944年秋。ナチスドイツの旗色が悪くなっていった頃、ザクセンハウゼン強制収容所ユダヤ人たちは今度はドル紙幣の偽造を命令される。その目的は戦争に使うのではなく、敗戦を見越してナチスが国外逃亡用の資金に使うためだった。

 プルガーたちは生き延びるために、あえて偽札作りの作業を遅らせ続けた。1945年3月、プルガーたちはザクセンハウゼン強制収容所から連れ出され、別の収容所へと転々と移動させられた。そして5月に印刷機の処分など偽札作りの証拠隠滅が行われ、プルガーたちも処刑されそうになるものの、しかし4月5日に親衛隊員たちがどこかに逃亡して解放され、4月7日にはドイツが無条件降伏した。

 戦後のニュルンベルク裁判では、この偽札作りは罪状には含まれなかった。軍事裁判で裁く罪にはあてはまらなかったためである。


感想

 まさに歴史秘話。あまり知られていない第二次大戦中のナチスドイツの偽札作りを一挙紹介!で、凄く面白かった。また強制収容所で作業を行わされたユダヤ人たちの抵抗の物語なども語られて、そのあたりもためになりました。
 
 

光と闇のナビゲーター 栗山千明
MC 青井実 (アナウンサー)
語り 中田譲治
テーマ音楽 志方あきこ

 
 

他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ

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ヒトラーの贋札 悪魔の工房
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ヒトラー・マネー
ヒトラー・マネー
 
 
 

【特撮】感想:NHK番組「4Kで進化するウルトラセブン」(2020年9月13日(日)放送)

エンターテインメントアーカイブ ウルトラセブン (NEKO MOOK)

ウルトラセブン』が4Kリマスターで登場! ウルトラセブン 4Kリマスター版 |NHK_PR|NHKオンライン
https://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=24927

【※以下ネタバレ】
 

内容

ウルトラセブン Blu-ray BOX I

https://www2.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2020-09-13&ch=10&eid=27443&f=etc
4Kで進化するウルトラセブン
[BSプレミアム] 2020年9月13日(日) 午前11:17~午後0:00(43分)


ウルトラセブン」4Kリマスター版のBS4K放送に合わせて、「ウルトラセブン」の魅力を紹介。また当時の撮影スタッフや出演者らが4K化で進化したポイントを語る。


ウルトラセブン 4Kリマスター版』の放送を記念した特別番組。4K HDRの見どころ映像を交え『ウルトラセブン』の魅力を当時のキャスト・スタッフとともに振り返る。さらに『ウルトラセブン』のファンとしても知られるダウンタウン松本人志さんが独自の視点から魅力を語るほか、『ウルトラセブン』に影響されたクリエイターや文化人の方々のインタビューから、その魅力の原点を浮き彫りにする。


【出演】森次晃嗣ひし美ゆり子古谷敏,満田かずほ,鈴木清,池谷仙克種田陽平松本人志

 
 9月末からNHK BS4Kでウルトラセブンの「4Kリマスター版」が放送されるにあたっての前宣伝特番。


●セブンの魅力

 まずウルトラセブンという番組の魅力の紹介。


・ポイント1 宇宙人たち

 宇宙人たちが個性的でユニーク。伝説のメトロン星人回とかペガッサ星人とかを紹介。


・ポイント2 葛藤するヒーロー

 セブンは地球人ではなく傍観者。その視点で見るからギエロン星獣のエピソードでは人間のエゴが描き出される等々。


・ポイント3 特撮/美術

 精密なミニチュアもセブンの魅力の一つ。美術総監督の成田亨の力。メカも建物の中も全部グレーでまとめて非日常性を醸し出している。当時海外に売り込む予定があったため、無国籍風の世界観となった。


・ポイント4 アイデア

 体の一部が武器になるアイスラッガーとか、カプセル怪獣とか、アイデアが斬新。


・ポイント5 ダンとアンヌ

 ダンとアンヌの人間ドラマ。最終回の正体告白シーンをメインに紹介。ちなみにアンヌの髪型がやたら変わるのは、演じていたひし美ゆり子のアイデア。きれいに映りたいと毎回毎回試行錯誤していたとのこと。



●4Kリマスタープロジェクト

 円谷プロの4Kリマスター作業を紹介。16ミリフィルムを補強してからスキャンし、まず傷やごみを修正。続いて「グレーディング」という作業で色を復元。グレーディング作業で、宇宙空間の描写で、光っている星で今まで見えなかったものがフィルムには映っていたことが判明したりした。

 しかし全てをはっきりさせるのではなく、例えば潜水艦が水中を進むシーンでは、あえてぼんやりさせることで水中らしさを出しているので、そこをくっきりさせるとかえって逆効果。そのあたりは当時の撮影の関係者に意見を聞いて調整していく。



●4Kリマスター版の見どころ

・怪獣の質感
・メカの細部
・人物の肌
・光

 等がよりくっきり見える。メトロン星人回ではアパートにダンが乗り込んだ時、今までは窓は真っ白に見えていたが、4K版では窓の外の光景が見える。


感想

ウルトラセブンアルバム―空想特撮シリーズ (ファンタスティックコレクション)

 4Kウルトラセブン放送の前の特番。前半が作品の魅力、後半が4K化でここが凄くなったアピール、の二部構成。ナレーションは、文字では表示されなかったけれど、もうNHK番組じゃ常連の林原めぐみ閣下だと思われます。

 合間のインタビューでは、森次晃嗣ひし美ゆり子古谷敏といったおなじみの面々が番組内容にコメントする他に、「この世界の片隅に」の片渕須直監督やら、何故かダウンタウン松本人志やらアナリストの森永卓郎まで出てきて「セブンは凄かったよねー」と語っていました。

 まあ、正直ウルトラセブンは何回見たかわからん! というくらい見まくっているので、4K化したくらいじゃなぁ……、という気持ちでしたが、いざメトロン星人回とかダイジェストで見せられると、またむらむらと見たくなっちゃったじゃないかぁ(笑)


 まあ10年後(2030年)くらいには4Kテレビが普通に普及しているはずなので、そのころに又放送してほしいですね(気が長い)
 

https://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=24927
(事前特番)
「4Kで進化するウルトラセブン


【放送予定】
9月13日(日)[BSプレミアム]前11:17?後0:00


ウルトラQ』『ウルトラマン』に続く円谷プロダクションの「空想特撮シリーズ」第3弾である『ウルトラセブン』。「ウルトラマンシリーズ」でも随一の人気を誇り、最高傑作との呼び声も高い『ウルトラセブン』が4KHDRでリマスターされ、9月29日からBS4Kで放送されることが決定しました。


新たに発見された『ウルトラセブン』の魅力を当時の撮影スタッフとともに振り返ったり、モロボシ・ダン役の森次晃嗣さんやアンヌ隊員役のひし美ゆり子さんから当時のエピソードを伺います。さらに『ウルトラセブン』ファンとしても知られるダウンタウン松本人志さんが独自の視点からその魅力を熱く語り、あの『この世界の片隅に』の監督である片渕須直さんは『ウルトラセブン』の深い作品性について語ります。


【出演】
森次晃嗣ひし美ゆり子、古谷 敏、満田かずほ(※「かずほ」は「禾」へんに「斉」)、鈴木 清
池谷仙克(美術)、種田陽平美術監督
松本人志ダウンタウン)、片渕須直本広克行森永卓郎、髙寺成紀

 
ウルトラセブンベストブック―空想特撮シリーズ (B.MEDIA BOOKS)
大人のウルトラセブン大図鑑 (マガジンハウスムック)
Ultraseven: Complete Series [Blu-ray]
 
 
 

【推理AVG】スマホゲームだけど「和階堂真の事件簿」というゲームが面白そう【レトロ風味】

エジプト十字架の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

2020年9月14日 20:30
1983年という設定を最大限活かした秀逸なミステリー!推理アドベンチャー「和階堂真の事件簿」レビュー|ゲーム情報サイト Gamer
https://www.gamer.ne.jp/news/202009140062/

www.gamer.ne.jp
 
 スマホゲームですが、面白そうな作品のレビューが見つかりました。
 

スカシウマラボが制作したスマートフォン向け推理アドベンチャー「和階堂真の事件簿 - 処刑人の楔」をレビュー。1980年代という舞台を最大限活かしたその魅力について紹介する。


「和階堂真の事件簿 - 処刑人の楔」は、スカシウマラボが制作したスマートフォン向け推理アドベンチャーゲーム。首が切り落とされた連続殺人という猟奇的事件を解決する本格ミステリー作品だ。

この事件に挑むのが、主人公である和階堂真警部。彼の武器は、地道な聞き込み捜査と推理。プレイヤーは和階堂を操作し、手がかりの獲得と事件の推理を行っていく。

1980年というレトロな時代を、粗めのドットで描いているため、本作は全般的にレトロな雰囲気が漂っている。しかし、ゲームシステムまでレトロなわけじゃない。本作のゲームシステムはアドベンチャーゲームとして比較的モダン。「逆転裁判」以降取り入れられることが多くなっていった、「探索」と「推理」を分けるスタイルが取られている。

ここまで触れた通り、本作は1980年代という世界観をビジュアル面、シナリオ面で最大限に活かした作品だ。筆者はアドベンチャーゲームである前にミステリーとして秀逸な作品だと感じた。それが無料。無料だから広告表示こそ行われるが、それも推理に失敗した場合のみとなっており、スマートな見せ方だと思う。推理ゲーム好きならプレイしないのはもったいないぞ。

 
 絵が良い。やはりドット絵は郷愁を誘うというか、最近のしゃらくさい3D絵よりはるかにグッとくる。そして話もなんか面白そう。問題はスマホを持ってないのでプレイできない事くらいかぁ(笑)
 
 
サウンドアドベンチャー オホーツクに消ゆ
ポートピア連続殺人事件
 
 
 

【TRPG】何故TRPGでクトゥルフ物がダントツの人気なのか?の理由

新クトゥルフ神話TRPG ルールブック (ログインテーブルトークRPGシリーズ)

TRPGシステムの人気ランキング(やりたいTRPG)|TRPGオンラインセッションSNS
https://trpgsession.click/ranking-system.php

trpgsession.click

 
 というページを見ると、

1位 クトゥルフ神話TRPG 得点 13214pt
2位 シノビガミ 得点 4370pt
3位 ソード・ワールド2.0 得点 4364pt
4位 ダブルクロス 得点 3071pt
5位 パラノイア 得点 2955pt

 とトップのクトゥルフが二位にダブルスコアどころか三倍以上の点数で独走しています。過去、1980~90年代は王道は剣と魔法のファンタジー路線であって、クトゥルフは「その他の選択肢の一つ」に過ぎなかったのに、今は何故こんなに絶対不動の人気なのか……?


クトゥルフが人気のワケ


 と首をひねっていたのですが、面白い分析を見つけました。
 ↓

クトゥルフ神話TRPG人気の謎を探る - 妄想科學倶樂部
https://docseri.hatenablog.jp/entry/2018/01/18/001237

docseri.hatenablog.jp

クトゥルフ神話TRPGの人気爆発以降にTRPGに入ってきた新しいプレイヤーに話を聞いていると、どうもオールドプレイヤーとは少し違った遊び方が見えてくる。

たとえばニコ動のTRPG動画をざっと見ると、「知名度の高いキャラにプレイヤーを仮託した」リプレイ(あるいはリプレイ風)動画がいくつも出てくるが

その結果としてTRPGに求められる遊び方にも変化が生じているようだ。キーワードは「なりきり」と「ウチの子再現」である。

「なりきり」とは要するに、オリジナルではなく既存作品に登場するキャラをPCとして作成し、そのキャラを演じることに重きを置くスタイルだ。

「ウチの子再現」の方は、主に同人界隈を中心とした遊び方である。
仲間内で画や漫画、あるいは文章などで発表したオリジナルキャラである「ウチの子」(中略)その延長線上に、「ウチの子をPCとして登場させてTRPGを遊ぶ」という形式がある。

なりきりにせよウチの子再現にせよ、ゲームよりも先にまず完成されたキャラ設定があり、それをTRPGのシステムに応じたフォーマットに流し込む遊び方だ。ここで重要になるのはシステムや世界設定の魅力などではなく「どの程度のキャラ再現性を有するか」であり、むしろ独自の個性は邪魔とさえ言える。

この部分に、現代社会のごく普通の人を幅広く扱えるように作られたクトゥルフ神話TRPGはうまく嵌まったのだろうと思う。常軌を逸した特殊能力などはなく、しかしオカルト的技能や戦闘技術などのちょっとしたアクセントは盛り込むことができ、シンプルでわかりやすい。その上で「クトゥルフの神格/神話生物」という使いやすいフックがあり、正気度ロールというアクシデント機能だけでハプニングの面白さが演出できる、癖がなく手軽に遊べる身内向けのゲーム。

冒頭にて「クトゥルフ神話TRPGでなければならない理由が見えてこない」と書いたが、むしろ「強い理由がないからこそ、クトゥルフ神話TRPGが最適だった」のだ。

 
 今時のこういう遊び方に、一般人キャラが作りやすいクトゥルフがどんぴしゃりだったと。ふーむ、最近の流行のプレイの仕方を知らないのでどれだけ当りかはわかりませんが、「最近ホラーが熱い! だからクトゥルフが人気」とか言われるよりは腑に落ちますな。
 
 
クトゥルフ神話TRPG入門 るるいえびぎなーず (ログインテーブルトークRPGシリーズ)
 
 

感想:海外ドラマ「刑事コロンボ」第24話「白鳥の歌」

刑事コロンボ完全版 1 バリューパック [DVD]

刑事コロンボNHK BSプレミアム BS4K 海外ドラマ https://www9.nhk.or.jp/kaigai/columbo/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ

perry-r.hatenablog.com
 

第24話 白鳥の歌 SWAN SONG (第3シーズン(1973~1974)・第7話)

 

あらすじ

刑事コロンボ』旧シリーズ一挙放送!人気カントリー歌手トミー・ブラウンは、自分の過去の弱みを握る妻エドナとコーラスガールを殺害する。


人気カントリー歌手トミー・ブラウンは、収益のすべてを信仰団体に寄付してしまう妻エドナを憎んでいた。彼女は、トミーがかつて未成年だったコーラスガールを暴行した弱みを握っているのだ。トミーは公演に向かう自家用飛行機の墜落事故をよそおい、エドナとコーラスガールを殺害。一人パラシュートで脱出した彼を、エドナの弟が告発したことからコロンボが捜査に乗り出す。

●序盤

 人気カントリー歌手トミー・ブラウンは、私生活の全てを妻のエドナに支配され、公演の収益も全てエドナが信仰する宗教団体「魂の十字軍」に寄付させられていた。エドナは、かつてトミーが刑務所に入っていた時、仮出所を助ける条件で結婚を強いてきたため、トミーは全くエドナを愛していなかった。

 しかしトミーは、三年前、コーラスガールのメアリーアンがまだ16歳だった時に手を出したという事実をエドナに握られており、もし逆らえば警察に通報されるため、言いなりになるしかない状態だった。

 トミーは自由になるため、エドナとメアリーアンの殺害を決意し、ラスベガスからロスアンゼルスに移動する自家用機に二人を同乗させた後、睡眠薬入りのコーヒーを飲ませて眠らせ、魔法瓶を捨ててから、自分は持ち込んでいたパラシュートで脱出する。そして飛行機の墜落現場の側に着地すると、倒木のうろにパラシュートを隠し、自分は飛行機の側に倒れて事故で奇跡的に助かったというふりをする。



●中盤

 エドナの弟ルークは、姉の死はトミーによる殺人だと告発したため、コロンボが形式通りの調査を行うことになった。コロンボは飛行機の墜落現場で、ハイロット用のシートベルトのロックが外れていたこと、パイロット用の鞄の中身に灰が無くおそらく空っぽだった事、を発見する。トミーは訪ねてきたコロンボに二点を質問されるが、どちらも当り障りのない回答で切り抜ける。

 コロンボはラスベガスの空港で、トミーが飛行機に鞄の他に魔法瓶を持ち込んだ事実を聞き出す。コロンボは再度トミーに会い、魔法瓶について確認するが、トミーは焦りつつも、事故のショックで遠くに飛んで行ってしまったのではないかと言い抜ける。また二人は朝鮮戦争に従軍した時の話をする。コロンボは、トミーが「魂の十字軍」の礼拝堂建設に金を出すのを中止したことも突き止める。

 コロンボは軍隊にトミーの兵隊時代の軍歴を調査に行き、パラシュートをたたむ係だったことを知る。そのあと、エドナとメアリーアンの死体を解剖させ、睡眠薬バルビタールが大量に検出されたことを確認する。トミーは睡眠薬のことを聞かれ、二人は酔い止めのために飲んだのだと苦しい言い訳をする。

 コロンボは「魂の十字軍」に調査に行き、服を作るために買い込んであった大量のナイロンの布が見当たらないという話を聞く。そして消えた布のサイズでパラシュートを作ったとすれば、パイロット用の鞄に綺麗に収まる事を確認する。また、トニーのコンサートで歌われるコーラス曲が編曲されており、それはトニーの指示で、メアリーアンが死ぬよりも前に、彼女の歌が必要ないように変えられていた事を突き止める。

 コロンボはトニーが隠したパラシュートを見つけるため、トニーにわなを仕掛けることにする。



●終盤

 コロンボは、トニーに会い、もう一切の疑惑は無いと言ってトニーを安堵させる。しかし同時に、消えた魔法瓶のコーヒーの中には大量の睡眠薬が入っていたらしいので、誰かがトニーの命を狙って睡眠薬を入れたに違いないと断定する。そして、証拠として魔法瓶を見つけるため、徹底的な山狩りを始めるつもりだと教える。さらに、トニーの身の安全を守るため護衛を付けるとも言う。コロンボは、山狩りという言葉でトミーを焦らせ、パラシュートを回収に行かせるつもりだった。

 ところがトミーは焦るどころか、余裕の体で、今後数か月の公演旅行があるので、午後にはロスアンゼルスを離れてサンフランシスコに行くと言い、コロンボが見張る中、本当に飛行機に乗って飛び去ってしまう。

 深夜。トニーは墜落現場の近くに車で乗りつけ、隠していたパラシュートを見つけて運び出すが、車の前にコロンボが待っていたので驚愕する。コロンボはトニーが飛行機に乗る際にレンタカーのキーを持っていたのに気が付き、すぐにロスアンゼルスに舞い戻ってくるつもりなのに気が付き、待ち伏せしていたのだった。

 パラシュートを見られてもう言い逃れのできないトミーは、おとなしくコロンボと一緒に車に乗り込む。トミーはコロンボに殺人犯と同乗するのは怖くないのかと尋ねるが、コロンボはトミーはそんな恐ろしい人間ではないというのだった。
 
 
監督 ニコラス・コラサント
脚本 デイビッド・レイフィール(原案:スタンリー・ラルフ・ロス)


感想

 評価は◎(優)。

 過去には何度もNHK地上波で放送していた、言うなればコロンボを代表する様な作品の一つ。NHKが2018年に実施した人気投票では、信じられないことに全69作品の内でベスト20にも入らなかったが、個人的には大好きなエピソードである。


 音楽業界には全く疎いので調べるまでは知らなかったのだが、犯人トミー・ブラウンを演じたジョニー・キャッシュは、現実でもカントリー歌手、しかも「人気歌手」どころか、音楽業界の歴史に残る伝説級の人物だったそうである。また歌手活動の傍らで俳優としても活動していたそうで、それでコロンボ出演が実現したらしい。ジョニー・キャッシュと劇中のトミーは、前科があるところから人気カントリー歌手になるといった経歴が共通しているので、脚本家はジョニー・キャッシュ出演を前提に当て書きしていたのかもしれない。


 ストーリーは王道の展開で、コロンボは最初は単なる飛行機事故として捜査を開始するものの、やがてシートベルトの開いていたロックや空っぽだったパイロット用の鞄、消えた魔法瓶、といったバラバラの要素を繋ぎ合わせることで、徐々にトミーの犯罪の全体像をあぶり出していく。その過程が丹念かつ丁寧に描かれており、見ていて話の流れに無理がない。また墜落現場で、事故調査担当のパングボーンが、最初はコロンボを軽く見ていたものの、すぐに観察力に感心するシーンなどもあり、視聴者として満足度が高い一作に仕上がっていた。


 犯人であるトミー・ブラウンは、コンサートを開けばファンが楽屋まで押しかけて来る大人気歌手だが、その割にはおごり高ぶったところが無く、コロンボにも友好的に接してくれる、なかなかの好人物である。また、コロンボも自分も朝鮮戦争(1950年~53年)には一兵卒として参加したという共通体験があることを知ると、その話で一緒に盛り上がったりするなど、さっぱり「憎い犯人」という感じがしない。さらに、コロンボが曲の編曲を変えたことに気が付くと、素直に称賛したりしてくれるなど、最後まで良い人のイメージだった。他の作品では、大抵物語終盤になると、コロンボと犯人の間でギスギスした空気が流れるのと比較すると、この作品は最後まで穏やかな雰囲気で、そういったところも好きな理由である。


 なにより好きなのは、ラストの、犯行がバレて観念したトミーに、コロンボが一緒に車に乗ろうというシーンで、

トミー「人殺しと二人きりで、危険を感じないかね?」
コロンボ「ちっとも。あなた、そんなに怖い人じゃありません (※コロンボがカーラジオを付けると、トミーのヒット曲が流れる) あたしが逮捕しなくても、いずれ自首されたでしょう」
トミー「ああ、君の言う通りなんだ。こうなって何か肩の荷が下りた気がする」
コロンボ「ね? (※カーラジオを指さしつつ) これほどの歌が歌える人に悪い人はいませんよ」

というやり取りのあと、画面が止め絵となり、そこにトミーの歌が流れ続ける、という流れが本当に心にしみる。実に心に余韻の残るラストである。


 作品のサブタイトル「白鳥の歌SWAN SONG」は、英語では「臨終の歌」あるいは「詩人・作曲家などの最後の作品」という意味がある。トミーが歌手であることに、殺人を犯したということを「臨終」に関連付けたのかもしれないし、あるいは「逮捕されるまでの最後の歌手活動」みたいな意味もあるのかもしれない、など、色々想像できる、なかなかに良いサブタイトルだと思う。



 さて、おなじみのコミカルシーンは、今回は三つ。一つはエドナたちの葬式にコロンボが到着すると、葬儀屋のグリンデル氏がコロンボを捕まえて、延々葬式の売り込みをする場面。グリンデル氏を演じたのはヴィトー・スコッティという俳優で、第19話「別れのワイン」ではレストランのマネージャー、第20話「野望の果て」では紳士服店の店長、で、それぞれコミカルな演技を見せていたが、今回も葬式は生きているうちに予約しておかないと、と売り込んでくるあたりが妙に面白かった。ちなみに彼の登場シーンは本筋とは全く関係がないため、以前の放送ではカットされていたようで、今回の放送(2020年9月)で初めてお目にかかった。

 二つ目はコロンボが軍の高官(Colonel Mayehoff/メイホッフ大佐?)を訪ねてトミーの軍歴を聞き出す一幕。偉いさんがトミーの顔写真を見せられて「ベトナム戦線だった。この顔はよく覚えとる」と言い切った後、コロンボに「朝鮮戦争のときなんですけど……」と訂正されてちょっと困った顔になったり、コロンボが「この旗」というのを「それは旗ではない! 軍旗である!」と忌々しそうに訂正したり、「27平方フィート」「ヤードに換算すると………」「それくらいわかるだろう、3平方ヤードだ!」とか呆れたように言ったり、と、やり取りがコントの様だった。

 三つめは、魂の十字軍の服を作る係のおばあさんで、「コロンボってイタリアの名前でしょ。うちの主人もイタリアが半分入っていたの、そりぁ暖かい人でねぇ」とか「(コロンボ:捜査で来たんです)まぁ? 私って容疑者ですの?」とか、コロンボが何か言うたびに話が妙にずれていってしまい、いつもは自分の方が話を脱線するコロンボが、この時ばかりは自分から話を正しい方に戻す役目を強いられているのが愉快だった。


その他

 放送時間:1時間39分。
 
 

#24 白鳥の歌 SWAN SONG
日本初回放送:1974年


カントリー・ミュージック界の大御所ジョニー・キャッシュが犯人役を演じたことでも話題に。ドラマ内で犯人のトミーは、キャッシュ自身の代表曲「Sunday Morning Coming Down」を歌っている。


出演
コロンボ・・・ピーター・フォーク小池朝雄
トミー・ブラウン・・・ジョニー・キャッシュ(外山高士)
エドナ・・・アイダ・ルピノ麻生美代子
パングボーン・・・ジョン・デナー(小林修
J・J・・・ソレル・ブーク(大山豊)
ルーク・・・ビル・マッキニー(伊武雅之)


演出
ニコラス・コラサント


脚本
デイビッド・レイフィール

 

他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ

perry-r.hatenablog.com
 
 
刑事コロンボ完全版 2 バリューパック [DVD]
刑事コロンボ完全版 3 バリューパック [DVD]
刑事コロンボ完全版 4 バリューパック [DVD]
刑事コロンボ完全捜査ブック
 
 
 
 
 

【コミック】ハーレクインオリジナルの表紙が山口美由紀先生だった

ハーレクインオリジナル10月号

ハーレクインコミックス|ハーレクイン
https://www.harlequin.co.jp/hqc

www.harlequin.co.jp

 
 本屋で何気なくレディコミのハーレクインオリジナル10月号の表紙絵を見て、「あれー、見慣れたタッチだなぁ……」と思ったら、やっぱり山口美由紀先生の絵だった (;゚Д゚)エエー
 
 初連載の「V-K☆カンパニー」からいきなりすんごい面白くて、その後も活動をウォッチしてきたのですが、ハーレクインの方に来ていたとは知らなかった……、まあ、ハーレクインで描いている人たちって藤田和子・宗美智子・JETなどの諸先生、つまり「キャリア30年以上が当たり前」みたいな人たちばかりなので、そういう意味では納得かなぁと。
 
 
赤毛のアデレイド (ハーレクインコミックス)
幻のシャトオ (ハーレクインコミックス)
仮面の女 (ハーレクインコミックス)
 
 

【SF小説】感想「ヴァジェンダへの旅立ち」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 624巻)(2020年9月3日発売)

ヴァジェンダへの旅立ち (宇宙英雄ローダン・シリーズ624)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150122962
ヴァジェンダへの旅立ち (宇宙英雄ローダン・シリーズ624) (日本語) 文庫 2020/9/3
H・G・フランシス (著), H・G・エーヴェルス (著), 星谷 馨 (翻訳)
発売日 : 2020/9/3
文庫 : 281ページ
出版社 : 早川書房 (2020/9/3)

【※以下ネタバレ】
 

アトランたちの一行は、光速でも二カ月かかるヴァジェンダをめざすことに。しかしその途中、乗車したゴンドラが破壊工作され……


領主ムータンとのテクノトリウム攻防戦も終わり、アトランたち深淵の三騎士とオービターや駆除部隊の一行は、ジャシェム二名の提供するゴンドラで一路、ヴァジェンダをめざすことになった。光速でも二カ月という道のりだが、急がなければならない。グレイ領主たちが総攻撃を開始したらしく、ヴァジェンダから救難信号がとどいたからだ。ところが、出発から一週間後に突然、ゴンドラが何者かによって強制着陸させられた!

 

あらすじ

◇1247話 ヴァジェンダへの旅立ち(H・G・フランシス)(訳者:鵜田 良江・星谷 馨)

 深淵の地。アトランたちと駆除部隊は、ジャシェムが提供した移動機器「ゴンドラ」に乗り込み、二光月離れたヴァジェンダ目指して出発した。二ヶ月後、アトランたちはヴァジェンダ近傍までたどり着くが、既に高位のグレイ領主「領主判事」の一人「クラルト」率いる軍勢がヴァジェンダを包囲していた。クラルトは深淵の騎士たちに寝返るように提案してくるが、騎士たちは拒否してヴァジェンダへ向かった。(時期:NGZ428年10月頃~12月1日)

※初出キーワード=アウセ人、スツェセ人、樹冠蚊種族、ルラ・スサン/深淵遊泳者、影帽子軍、領主判事、グレイ議場、ウサーフ種族



◇1248話 ガラスの迷宮(H・G・エーヴェルス)(訳者:鵜田 良江・星谷 馨)

 アストラル漁師のギフィ・マローダーは、エレメントの十戒の孵化基地から二百の太陽の星に転送機で移動したはずが、何故か深淵の地の、グレイ領主の支配下にあるニー領へと出現してしまった。同じころ、アトランたちはヴァジェンダへとたどり着くが、防衛側の「影法師軍」と、背後から迫るグレイ軍団に挟み撃ちにされ、全滅の危機に陥ってしまう。(時期:不明:NGZ428年12月頃)

※初出キーワード=ガラス迷宮、ディドル=サンスカリの精神剣


あとがきにかえて

 鵜田良江氏が担当。
・ドイツ版ローダンのゲスト作家「アンドレアス・ブラントホルスト」の紹介
コンラッド・シェパードが7月20日に亡くなったという話


感想

 前半エピソード … 原タイトル:AUFBRUCH ZUM VAGENDA(意訳:ヴァジェンダへの旅立ち)。

 アトランたちがジャシェム帝国を旅立ってヴァジェンダにつくまでのエピソード。劇中で四回トラブルが発生しますが、うち三回まではグレイ領主も時空エンジニアも関係していない、本筋とは全く無関係なイベントだった、というのには意表を突かれました……

1回目:ゴンドラが墜落。誰かの破壊工作? アウセ人とスツェセ人の戦場に墜落して一揉め
2回目:ゴンドラが樹冠蚊種族のちょっかいで墜落。なんとか交渉して離陸。
3回目:ゴンドラがグレイ軍団の破壊工作で墜落。領主判事と対話
4回目:ヴァジェンダ目前で謎の泡に襲われる。ウサーフ種族の襲撃。交渉して解放された。

 と、殆どのトラブルはグレイ領主とは無関係だったという……、最終盤にヴァジェンダにとりつこうとしたら妨害が入った件は、さすがに時空エンジニア側のちょっかいだと思ったら、これも全然関係ないウサーフ種族の攻撃だったので唖然呆然。意地でも本筋を進めまいとするじらし方が凄いというかなんというか。



 後半エピソード … 原タイトル:DAS GLASLABYRINTH(意訳:ガラスの迷宮)。

 エーヴェルスのオリジナルキャラ・アストラル漁師のギフィ・マローダーがまさかの再登場!!というビックリエピソード。エレメントの十戒相手に大暴れしたあと、611巻の1221話「オクストーン人と提督」をもって姿を消していたので、すっかり存在を忘れていたのですが、深淵エレベーターを使わないとこれない筈の深淵の地に、理屈も何も無く現れてしまいました。

 しかも、謎の存在「シヴァ」の助けを借り、しょっぱなからグレイ領主の最高幹部・領主判事に化けて相手を愚弄するという、なんともけた外れの活躍を見せてくれます。深淵の地について早々のアトランたちが大苦労していたのがバカみたいです…… 作者が持ちキャラをこんなに強めに設定して縦横無尽に活躍させるのは反則なのでは……

 P236の描写によると、スタルセン・ムータン・シャツェンの全てがグレイ領主の支配下にはいった模様。深淵の騎士たちがあれだけ苦労してグレイ力を追い払ったのが全く無駄だったという……、やるせない展開です。

 グレイ領主の最高幹部・領主判事は「クラルト」「ライーク」「トレッス」「フフリー」「ジョルケンロット」「ストークラーク」の計六人ですが、ライークがP254であっさり脱落したのには仰天しました。いくら何でも簡単に死に過ぎじゃないですかね?
 
 
 

600巻~650巻(「クロノフォシル」サイクル)の他の巻の内容・感想は以下へどうぞ

perry-r.hatenablog.com
 

2020年の読書の感想の一覧は以下のページでどうぞ

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