【ミステリー】感想:歴史ミステリー番組「ダークサイドミステリー」(2020年版)『闇の世界戦略“ヒトラーのニセ札”事件 ~あなたの知らない紙幣の秘密~』(2020年9月17日(木)放送)


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ダークサイドミステリー NHK https://www.nhk.jp/p/darkside/ts/4847XJM6K8/
放送 NHK BSプレミアム。毎週木曜夜9時放送。

www.nhk.jp
【※以下ネタバレ】
 

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本当の謎は、人間の闇
背筋がザワザワ、心がドキドキ、怖いからこそ…見たくなる!
世界はそんなミステリーに満ちている。
未解決の事件、自然の脅威、不思議な伝説、怪しい歴史など、謎と恐怖の正体に迫ります!

 

闇の世界戦略“ヒトラーのニセ札”事件 ~あなたの知らない紙幣の秘密~ (2020年9月17日(木)放送)

 

内容

ダークサイドミステリー「闇の世界戦略“ヒトラーのニセ札”事件~紙幣の秘密~」
[BSプレミアム]2020年9月17日(木) 午後9:00~午後10:00(60分)


世界を破綻させる力を持つ恐るべき「紙の兵器」=偽札。ヒトラーのドイツが第二次世界大戦で実行した史上空前の偽札作戦の全貌と、国家の威信をかけた紙幣の秘密に迫る。


第二次世界大戦中、ヒトラーのドイツは国際法違反の極秘戦略を発動!敵国イギリスの偽札を大量生産、経済を破綻させ世界経済を塗り替える作戦だ。実行者はナチスきっての謀略のプロ。一方イギリスの紙幣には、偽造防止のワナが100以上。両国の威信をかけた情報戦のゆくえは?偽札作りを強制されたユダヤ人職人の、プライドをかけた抵抗とは?紙幣に隠された驚きの秘密の数々をひも解きながら、空前の事件の人間模様に迫る。


【ナビゲーター】栗山千明,【ゲスト】植村峻,石田勇治,【語り】中田譲治,【司会】青井実

 
 今回のテーマは「ヒトラーのニセ札」事件。


ナチス財宝伝説

 オーストリア・トプリッツ湖にはナチスの財宝が隠されているという伝説が存在した。1959年8月、湖底からイギリスポンド22万枚・現在の価値で25億円分が引き上げられた。しかしそれらは全て偽札だった。ナチスドイツが国家を上げて製造した偽札だったのである。



アンドレアス作戦

 1939年9月、ナチスドイツのポーランド侵攻第二次世界大戦が始まった。10月、イギリスはナチスドイツがイギリスのポンド紙幣の偽造を企んでいることを突き止めた。作戦名は「アンドレアス作戦」。この作戦は、ポンドの市場流通量の30倍・300億ポンドの偽札をばらまいて、基軸通貨としてのポンドの信用を失墜させ、代わってドイツマルクが世界の基軸通貨となることを目指す、というものだった。

 作戦の指揮官は親衛隊(SS)のアルフレート・ナウヨックス。ところがドイツ銀行総裁のヴァルター・フンクは、外国紙幣の偽造は1929年締結の国際条約で禁止されているとして作戦に反対したため、ナウヨックスはドイツ銀行の協力なしに作戦を進めざるを得なかった。



●偽札作り開始

 ナウヨックスは、まず5ポンド紙幣の偽造にとりかかることにした。5ポンド紙幣は1852年から使用されている古い紙幣のため、技術が低く偽造も楽と考えたからである。

 紙幣の偽造は、大きく分けて「1 原料選び」「2 すかし入れ」「3 原版作り」「4 印刷」の四工程が存在する。

 まず原料の分析で、5ポンド紙幣は「トルコ産亜麻・40%」「ハンガリー産苧麻(ちょま)・60%」という配合だと解り、さっそく紙を作ってみたが手触りで本物のなめらかさが全く出てないうえ、本物には紫外線に反応する蛍光物質が含まれていることも判明。また、すかしも本物の5ポンド紙幣の様なシャープさが出せず、と、いきなり最初から行き詰ってしまった。

 しかしイングランド銀行に入り込んだスパイから、紙幣の原料は使用済みのボロ布だという情報がもたらされた。その情報を元に改めて偽札を作ってみると、繊維が使いこまれていて柔らかくなっていたので、手触りを滑らかにできたうえ、同じ理由ですかしもシャープになった。また使い古しの布を白くするため、原料には蛍光増白剤が入っていることも判明。原料とすかしについてはクリアされた。

 ナウヨックスは続いて原版作りを進めさせるが、ここでとんでもないことが判明した。イングランド銀行は、偽札を防ぐため、半年ごとに原版の100箇所近くを修正しており、とてもそれに一々対応できないことが解ったのである。

 ナウヨックスは、1940年4月にスイスの銀行に偽札を持ち込ませ、銀行に鑑定してもらうが、これが本物と判定された。イングランド銀行自体は偽札を防ぐためのシステムを作っていたが、海外の銀行にはその真贋の見分け方の情報を伝えていなかったのである。偽札はイギリス以外の海外の銀行なら流通可能と判明したが、ここで突如ナウヨックスが失脚した。一説には上官の親衛隊大将ラインハルト・ハイドリヒとの対立が噂されているが真相は不明。アンドレアス作戦は1941年秋に休止となった。



●ベルンハルト作戦

 1942年5月。ナチスドイツは改めて偽ポンド作りにとりかかった。責任者は親衛隊のベルンハルト・クリューガーで、作戦名はベルンハルト作戦。この作戦の目的はポンドの価値の失墜ではなく、外貨として武器や物資の購入のためにドイツ自身が支払いに使うためだった。

 クリューガーは機密保持のため、ユダヤ強制収容所の一つ「ザクセンハウゼン強制収容所」に偽札作りの拠点を構え、またユダヤ人の印刷工・彫金師・グラフィックアーティストたちに偽札作りの作業を行わせた。協力すれば衣食住を優遇し命の保証をする代わりに、逆らうなら即刻処刑する、という脅しを行って協力させた。

 ユダヤ人たちは、アンドレアス作戦で作った原版をより正確に修正していった。印刷工アドルフ・プルガーは、ナチスに協力を強制されつつも、密かに抵抗を行った。印刷用のローラーを汚す、原版に傷をつける、5ポンド紙幣の女神ブリアニアのところにワザと穴をあける、など。

 しかしそんな抵抗も虚しく偽札印刷は順調に進み、一億3400万ポンド分が印刷され、そのうち1000万ポンド(560億円)分は使用されたとされる。



●ドル紙幣偽造計画

 1944年秋。ナチスドイツの旗色が悪くなっていった頃、ザクセンハウゼン強制収容所ユダヤ人たちは今度はドル紙幣の偽造を命令される。その目的は戦争に使うのではなく、敗戦を見越してナチスが国外逃亡用の資金に使うためだった。

 プルガーたちは生き延びるために、あえて偽札作りの作業を遅らせ続けた。1945年3月、プルガーたちはザクセンハウゼン強制収容所から連れ出され、別の収容所へと転々と移動させられた。そして5月に印刷機の処分など偽札作りの証拠隠滅が行われ、プルガーたちも処刑されそうになるものの、しかし4月5日に親衛隊員たちがどこかに逃亡して解放され、4月7日にはドイツが無条件降伏した。

 戦後のニュルンベルク裁判では、この偽札作りは罪状には含まれなかった。軍事裁判で裁く罪にはあてはまらなかったためである。


感想

 まさに歴史秘話。あまり知られていない第二次大戦中のナチスドイツの偽札作りを一挙紹介!で、凄く面白かった。また強制収容所で作業を行わされたユダヤ人たちの抵抗の物語なども語られて、そのあたりもためになりました。
 
 

光と闇のナビゲーター 栗山千明
MC 青井実 (アナウンサー)
語り 中田譲治
テーマ音楽 志方あきこ

 
 

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