【SF小説】感想「時の目撃者」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 711巻)(2024年4月20日発売)

時の目撃者 (ハヤカワ文庫SF)

http://www.amazon.co.jp/dp/415012440X
時の目撃者 (ハヤカワ文庫SF) 文庫 2024/4/20
エルンスト・ヴルチェク (著)
出版社:早川書房 (2024/4/20)
発売日:2024/4/20
文庫:272ページ

【※以下ネタバレ】
 

ようやくパウラ・ブラックホールから逃れたローダンらは故郷の天の川銀河に降り立ったが、そこは軍国主義的な世界に激変していた

 

あらすじ

◇1421話 時の目撃者(エルンスト・ヴルチェク)(訳者:嶋田洋一)

 ローダンたちの乗る《ハルタ》はNGZ490年の銀河系に出現してしまい、ギャラクティカーに不審船として攻撃されてしまった。ローダンはタイム・パラドックスを起こさないため、自分たちが未来から来たことは隠し、停滞フィールドに42年間閉じ込められていたという偽のストーリーを共有するが、直後拿捕されてしまった。

 この時代の銀河系は42年前からハウリ人との戦争「百年戦争」を戦い続けていたが、さらに正体不明の種族カンタロも出現し平和を要求してギャラクティカーに攻撃を仕掛けていた。ギャラクティカムはこれらの敵との戦いのため、戦争遂行を最優先する全体主義体制へと移行していた。またギャラクティカーの団結を強めるため、ローダンたちは42年前に戦死した事にされ殉教者として祭り上げられていた。

 ローダンたちは、ギャラクティカムの戦争大臣になったガルブレイス・デイトンと再会するが、デイトンは死んだはずのローダンたちが帰還した事を迷惑がる。さらにローダンたちが何かを隠していることにいら立ち、敵対的な態度を取り始めた。(時期:過去、NGZ490年3月2日~)

※初出キーワード=銀河戦争評議会。百年戦争。電光。電光撃。テンポ型輸送艦。メルツ型宇宙船。惑星ウェスンドIII。



◇1422話 カンタロの日(エルンスト・ヴルチェク)(訳者:嶋田洋一)

 ローダンたちは、ギャラクティカムの政策を決定しているネーサンの判断でテラへの帰還を禁じられ、医療惑星タフンに送られた。その後、デイトンの妨害にも関わらず、この時代にはまだ存命だったワリンジャーや、アダムス、キャプテン・アハブ、皇帝アーガイリスたちと再会した。アハブはカンタロとの接触に成功し、ギャラクティカーとカンタロの和平会談を惑星オリンプで開催する約束を取り付けた。しかし同じころ惑星マルディグラはカンタロの兵器「電光」による「電光撃」で壊滅した。

 ローダンたちは元の時代に戻るため、アダムスたちの協力を得て《ハルタ》を取り戻し、脱出の準備を開始した。オリンプでの会談では、カンタロが一方的にギャラクティカーに自分たちの要求を通達した。《ハルタ》はペルセウスブラックホールに突入して消え、デイトンは今度こそローダンたちは死んだと宣伝した。

 《ハルタ》はブラック・スターロードを通ってパウラ・ブラックホールからNGZ1143年へと帰還した。(時期:過去NGZ490年3月~4月29日)

※初出キーワード=恒星アルガメ/第二惑星ジャンク。


あとがきにかえて

嶋田洋一氏
 趣味のスポーツ吹き矢の話。

感想

・前半エピソード「時の目撃者」 原タイトル:ZEITZEUGEN(意訳:時の証人)

 ローダンたちが今度はNGZ490年の銀河系にタイムスリップしてしまう話。

 ギャラクティカムが戦争遂行を最優先する全体主義国家になっているのが悪夢ですが、さらに久々に登場したデイトンがすんごい嫌な奴になっているのも大ショック!



・後半エピソード「カンタロの日」 原タイトル:DIE TAGE DER CANTARO(意訳:カンタロの日)

 ローダンたちがNGZ490年を脱して元の時代NGZ1143年に戻るまでの話。

 謎の種族カンタロの行動がようやく具体的に語られたことや、超兵器「電光」の描写、そして歴史家ヴァニティ・フェアがローダンかブルの子種をもらった的な描写(笑)、などなど、中身の濃い話でした。

 ところでキャプテン・アハブは何ゆえに銀河系で重要人物として活躍しているのか? 故郷の力の集合体エスタルトゥを立て直す仕事をしているんじゃなかったっけ?

 あと、さりげなくP139で月面脳ネーサンがポジトロニクスからシントロニクスに入れ替えられたことが語られています。そんなに簡単に取り換えられるものなのかしらん?
 
 
 

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【SF小説】感想「あるサイノスの死」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 710巻)(2024年4月5日発売)

あるサイノスの死 (ハヤカワ文庫SF)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150124396
あるサイノスの死 (ハヤカワ文庫SF) 文庫 2024/4/5
H・G・エーヴェルス (著), シドラ 房子 (翻訳)
出版社:早川書房 (2024/4/5)
発売日:2024/4/5
文庫:256ページ

【※以下ネタバレ】
 

パウラ・ブラックホール内の時空の泡に閉じ込められた《ハルタ》船内で、イホ・トロトはローダンにこれまでの驚くべき冒険を語る


宇宙ステーション“永遠”が崩壊し、パウラ星系のブラックホールの事象の地平線下の虚無空間にネットウォーカー船“ハルタ”は押し流された。絶望に包まれた船内で、ローダン一行はイホ・トロトが精神的に過去にさかのぼり、当時なにが起きたかを説明してくれる準備ができるのを待っていた。ブラック・スターロードとはいったいなんなのか、恐るべき力を秘めたミモトの宝石と、ポヴァリスロング王の野望とはなにかを…。

 

あらすじ

◇1419話 あるサイノスの死(H・G・エーヴェルス)(訳者:シドラ 房子)

 ローダンたちの乗る《ハルタ》はブラックホール内で身動きが取れなくなり、その間にイホ・トロトは過去を回想し始めた。

 NGZ445年11月。アブサンタ=ゴム銀河。トロトは“丸太”の調査中に謎の通信を受信し、調査の結果M-87銀河出身のペレヴォン種族の墜落した宇宙船にたどり着いた。ペレヴォンはかつてはM-87の種族の宿敵だったが、世代交代で平和志向となり、今では完全に和解していた。M-87の種族は力の集合体エスタルトゥからの侵略の試みを何度も撃退し、情報収集のためアブサンタ=ゴムへとやって来ていた。

 トロトは残されたメッセージをペレヴォンの王「ポヴァリスロング」に伝えるためM-87に向かうが、正体不明のヒューマノイド「ジュファル・アマ・スンヌー」と行動を共にすることになり、またポヴァリスロング王は人工臓器密売の犯罪組織と関係しているらしいことを知る。

 さらにポヴァリスロング王は“ブラック・スターロードの鍵”と呼ばれる秘宝「ミモトの宝石」を所持していたが、トロトは惑星「ゴンダウァルカン」の「魔術師」ならその秘密を知っていると聞き、すぐさま会いに向かうものの、魔術師は何者かに襲撃されて瀕死の状態でサイノスであることを示して死んでしまった。(時期:NGZ1143年7月頃、過去NGZ445年11月~446年1月頃)

※初出キーワード=ミモトの宝石。ミモト星系。ミモト・ブラックホール。ジュファル・アマ・スンヌー。ドルイソラ銀河(M-87の現地名)。恒星ヤンガル(惑星ヤンヨク)。ガス惑星ガシュダル/衛星ヌシュト。恒星アリオア(第六惑星ゴンダウァルカン)。



◇1420話 スターゲート(H・G・エーヴェルス)(訳者:シドラ 房子)

 トロトの回想の続き。

 トロトは惑星「ヤンヨク」でポヴァリスロング王と会見し、惑星「トフタル」から重要データが納められている「ブラック・キューブ」を回収してくるという依頼を受ける。トロトは苦労してキューブを手に入れるが、時空の異変に巻き込まれ、仕事を終えた時には一年後のNGZ427年2月となっており、その頃にはプシオン・ネットは大崩壊を開始していた。

 ポヴァリスロング王は臓器犯罪組織の一員であることが発覚してその地位を追われ、トロトはミモトの宝石とブラック・キューブの両方を手に入れた。二つを組み合わせると、ブラックホールを利用する銀河間移動システム・ブラック・スターロードの情報が出現し、トロトたちは「ミモト・ブラックホール」に突入した。

 しかしブラックホール内で身動きが取れなくなり、内部に存在した惑星「ミモト」にいた「ミモトの守護者」こと「ハルツィド」と交渉し、宝石とキューブを渡す見返りとしてブラックホールから解放された。しかし、既にその時には194年後のNGZ640年になっていた。

 以後トロトはローダンを探して宇宙をさまよい、最終的にカンタロたちの罠にはまり200年間休眠状態を強いられたのだった。

 やがて《ハルタ》は銀河系内のペルセウス・セクターのブラックホールから通常宇宙に飛び出し、しかも時間を遡ってNGZ490年に到着していた。(時期:過去NGZ446年2月頃~、NGZ1143年7月頃)


※初出キーワード=ブラック・キューブ。連星ヌレッグ=ラッダシュ(惑星トフタル)。ミモトの守護者。惑星ミモト。


あとがきにかえて

シドラ 房子氏
 カフカの小説をもとにしたオペラ「アメリカ」を鑑賞した話。


感想

・前半エピソード「あるサイノスの死」 原タイトル:DER TOD EINES CYNOS(意訳:あるサイノスの死)

 約700年前にトロトがM-87銀河を訪問した時の回想。エーヴェルスらしくもうやりたい放題で、ローダンたちがタルカン宇宙で出会った謎キャラ「ゴジョー・アマ・スンヌー」とつながりがあるらしい「ジュファル・アマ・スンヌー」を唐突に登場させたり、「ゴンダウァルカンの魔術師」が登場したと思ったら速攻退場、しかも正体は意味なくサイノスだった、とか、本筋以外の余分な情報が多すぎた……


・後半エピソード「スターゲート」 原タイトル:STERNENTORE(意訳:スターゲート)

  約700年前にトロトがM-87銀河を訪問した時の回想(続編)。エーヴェルスの暴走は留まるところを知らず、キューブを取りに行ったらいきなりATGフィールドの迷宮に取り込まれるし、ブラックホールの中に恒星系があってさらに正体不明の「ミモトの守護者」が待っていたり、「ジュファル・アマ・スンヌー」が謎を振りまきまくった挙句にいつの間にか消えてしまうし、で、あらすじを追うのも大変でした。
 
 

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【SF小説】感想「永遠への飛行」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 709巻)(2024年3月21日発売)

永遠への飛行 (ハヤカワ文庫SF)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150124361
永遠への飛行 (ハヤカワ文庫SF) 文庫 2024/3/21
クラーク・ダールトン (著), クルト・マール (著), 長谷川 圭 (翻訳)
出版社:早川書房 (2024/3/21)
発売日:2024/3/21
文庫:272ページ

【※以下ネタバレ】
 

ローダン、ブル、ベオドゥ、グッキーらは、43人の選ばれし者と共に《エタニティ》にて飛び立つが、乗員選抜の手順に不審を感じる


ローダンたち六名は、永遠の奉仕者となる“選ばれし者”のベカッスとともに、惑星カッスバンで永遠の船に乗船した。つぎの寄港地のトゥールス3につくまでのあいだに、一行は手分けして船内を探るが、この船はロボット制御された無人船で、約七百名のベカッスしかいなかった。客室は船首部分に、エンジンは船尾部分にあるようだが、金属壁に遮られ通行不能。グッキーは、テレポーテーションで船尾部分へと潜入するが…!?

 

あらすじ

◇1417話 永遠への飛行(クラーク・ダールトン)(訳者:長谷川 圭(初))

 ローダンたちは「永遠の船」の調査を始めるが、船は完全自動制御で船内には各惑星から乗り込んだベカッス種族しかいなかった。やがて船はローダンたちを不審者とみなし、次の寄港地・惑星「パウラII」で船から追い出すが、ローダンたちはパウラIIの宇宙港で数百年前から置き去りにされていたイホ・トロトの宇宙船《ハルタ》を発見した。ローダンたちは《ハルタ》を強引に永遠の船に接続し、一緒に次の目的地へと向かった。(時期:不明。NGZ1143年7月頃)

※初出キーワード=惑星パウラII。



◇1418話 巨人の洞窟(クルト・マール)(訳者:長谷川 圭)

 永遠の船はパウラ星系近傍のブラックホールに突入し、内部に隠されていた宇宙ステーション「永遠」に到着した。永遠の司令官ロングンアタアンはベカッスを遺伝子実験の対象にしており、侵入してきたローダンを殺そうとするが反撃を受けて自爆してしまった。ナックのラカルドーンはローダンに、過去にイホ・トロトがステーション内のエネルギー柱「過去の柱」の向こうに追放されたことを伝え、《ハルタ》はトロト救出に向かった。

 ローダンたちは柱の向こう側「時空の泡」で小惑星を発見し、休眠状態だったトロトと再会した。トロトはローダンがブラックホールに墜落して死んだという噂を調査中、カンタロの罠にはまったのだった。小惑星「アムリンガル」には過去に「超越知性体“それ”の年代記制作者」が作った「アムリンガルの時の石板」があり、エルンスト・エラートたちもここを訪れていた。しかし石板は695年前の時空の異変の際に破壊されていた。

 ラカルドーンとは、かつてソト=ティグ・イアンに仕えていたナック・タワラのことで、タワラの罠でローダンたちは時空の泡の中に閉じ込められてしまった。しかし《ハルタ》が過去の柱を破壊して脱出すると永遠は崩壊し、《ハルタ》は謎の空間「ブラック・スターロード」へと墜落した。(時期:不明。NGZ1143年7月頃)

※初出キーワード=宇宙ステーション永遠。ブラック・スターロード。



あとがきにかえて

長谷川 圭氏
 翻訳チーム加入のあいさつ、ドイツで日本語教室を教えている話。


感想

・前半エピソード「永遠への飛行」 原タイトル:FLUG IN RICHTUNG EWIGKEIT(意訳:永遠への飛行)

 ローダンたちが「永遠の船」を調査する話。既に半ば引退しているダールトン先生にわざわざ書いてもらったのに、ロボット宇宙船とかでバタバタするだけの中身のない話というのはもったいなさすぎる……


・後半エピソード「巨人の洞窟」 原タイトル:DIE HOHLE DES GIGANTEN(意訳:巨人の洞窟)

 ローダンたちが、目的地の宇宙ステーション「永遠」に到着し、カンタロらしい相手と遭遇し、トロトを発見し、アムリンガルの時の石板(の残骸)を発見し、エラートたちの消息を知り、謎のブラック・スターロードに転落する話。

 という風に超中身が濃いエピソード。一話にこんなに要素が詰まっている話なんて第三勢力時代にもそうそうなかった、というレベルの密度で、あらすじがものすごく長くなってしまった。しかし「アムリンガルの時の石板」が出てくるのなら、今回をダールトン先生に書いてもらうべきだったのでは。


その他

 翻訳チームに新メンバーとして、かつて「ローダンNEO」シリーズを翻訳していた長谷川圭氏が加入。これは鵜田良江氏と同じパターンですね。
 
 

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【SF小説】感想「神々の掟」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 708巻)(2024年3月6日発売)

神々の掟 (ハヤカワ文庫SF)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150124353
神々の掟 (ハヤカワ文庫SF) 文庫 2024/3/6
ロベルト・フェルトホフ (著), アルント・エルマー (著), 赤坂 桃子 (翻訳)
出版社:早川書房 (2024/3/6)
発売日:2024/3/6
文庫:272ページ

【※以下ネタバレ】
 

コウモリ型生命体ベガスの乗るアンテナ船が転移によって姿を消す瞬間、グッキーは船がラシュタ星系を目指すことを知り、追跡する


ペルセウス”の乗員メリルはカード占いでサラアム・シインの不吉な未来を予言した。集合地点フェニックス=1を離れ、マゼラン星雲で“シマロン”と合流したのちに、恐るべき出来事に遭遇、シインは歌えなくなってしまうと告げたのだ。動揺するシインにたいし、アトランは“シマロン”を捜し、トスタンの死とローダンへの帰還要請を伝えるよう命じた。歌の師はしかたなく“ハーモニー”でマゼラン星雲へと向かうが…

 

あらすじ

◇1415話 預言者シュプール(ロベルト・フェルトホフ)(訳者: 赤坂桃子)

 大マゼラン星雲。ローダンたちは惑星アイシュラン=ホ近傍で、イホ・トロトの残した映像に映っていた未知宇宙船と遭遇するが、その「アンテナ船」はすぐに姿を消し、さらにグラドたちは船の存在を否定した。しかしローダンたちはアンテナ船が「ベカッス」という種族の船で「ラシュタ星系」に向かったとつきとめ、すぐに追跡した。そしてローダンたちは隠されていたアンテナ船を発見し、オファラー・サラアム・シインが単身調査に乗り込むが、事故で重傷を負ってしまった。グラドはローダンたちにサラアム・シインを引き渡す代わりにラシュタ星系から退去させた。ローダンたちは700年前の古いデータからベカッスの故郷惑星「カッスバン」の位置を突き止めカッスバンへ向かった。(時期:NGZ1143年7月10日~20日)

※初出キーワード=アンテナ船。ベカッス種族。ラシュタ星系(惑星オッパク。衛星アオンタン)。オルサ星系(惑星カッスバン)



◇1416話 神々の掟(アルント・エルマー)(訳者: 赤坂桃子)

 ローダンたちがベカッスの故郷・オルサ星系を訪問すると、ベカッスはローダンたちを種族に宇宙航行技術を与えた神「星間航行者」と誤解し丁重に出迎えた。ローダンたちはその誤解を利用して情報を集め、星間航行者が定期的に「永遠の船」という宇宙船をよこして選抜したベカッスを連れ去り、数年後に記憶を消して送り返していることを知る。直後、永遠の船がカッスバンに到着したため、ローダンたちはベカッスと一緒に船に乗り込んだ。(時期:不明。NGZ1143年7月頃)

※初出キーワード=永遠の船。パウラ星系(惑星パウラIV)


あとがきにかえて

赤坂 桃子氏
 電気ピアノを購入した話。


感想

・前半エピソード「預言者シュプール」 原タイトル:DIE SPUR DES PROPHETEN(意訳:預言者シュプール

 ローダンたちが謎の種族ベカッスを調べる話。

 ロータン一行は695年の未来に押し流され、故郷銀河系には戻れないし、仲間は次々死んでしまうし、と暗い状況に追い込まれているはずですが、今回は何故か緊迫感がまるで無いエピソードでした。まあ行方不明のイホ・トロトの手がかり探しですから、一応話は前に進んでいますが、なんかフェルトホフが持ちキャラのサラアム・シインを活躍させたかっただけの話に思えて……



・後半エピソード「神々の掟」 原タイトル:DAS GEBOT DER GOTTER(意訳:神々の掟)

 ローダン一行がベカッス種族の故郷を訪問する話。まあイホ・トロトの消息探しは良いのですが、ここに来てちょっとストーリーの進行にブレーキがかかったというかそんな感じ。全100回だから二、三回寄り道してもどうという事は無いのですが、もうちょっとテンポ良く話を進めてほしい。
 
 
 

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【SF小説】感想「クロノパルス壁の飛び地」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 707巻)(2024年2月20日発売)

クロノパルス壁の飛び地 (ハヤカワ文庫SF)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150124337
クロノパルス壁の飛び地 (ハヤカワ文庫SF) 文庫 2024/2/20
H・G・フランシス (著), K・H・シェール (著), 岡本 朋子 (翻訳)
出版社:早川書房 (2024/2/20)
発売日:2024/2/20
文庫:288ページ

【※以下ネタバレ】
 

アトランらは、クロノパルスの壁を探索中に発見した飛び地でヘラ星系を見つける。惑星ヘラ1には攻撃的な動植物相が存在していた


クロノパルス壁を探査中、“ラクリマルム”の全シントロニクスが突然クラッシュした。外部からの攻撃と思われるが、原因は不明。周辺宙域を精査すると、なんとクロノパルス壁に開口部が発見された!開口部がつくる通路の先の飛び地には恒星系がひとつあり、ヘラ星系と命名された。ヘラ星系には三つの惑星があり、ヘラ1とヘラ2には生命体が存在した。アトランは“ラクリマルム”と“シグヌス”に調査を命じるが…!?

 

あらすじ

◇1413話 クロノパルス壁の飛び地(H・G・フランシス)(訳者: 岡本 朋子(初))

 アトランたちは銀河系を包むバリア・クロノパルス壁に開口部があり、さらにその奥に飛び地で恒星系が存在することを発見し、調査を開始した。「ヘラ星系」と命名された星系には三つの惑星が存在し、カルタン人のロボットが活動していることが判明したが、やがて開口部が閉じ始めたためアトランたちは一旦撤退した。ヘラ星系には数百年前に遭難して取り残された「ヴェンクセントラリア人」がいたが、アトランたちに救出を求めようとして行き違いになり、結局死んでしまった。(時期:不明:NGZ1143年5月~7月頃)

※初出キーワード=ヘラ星系/惑星ヘラI・ヘラII・ヘラIII。ヴェンクセントラリア人。



◇1414話 最期の旅立ち(K・H・シェール)(訳者: 岡本 朋子)

 ラトバー・トスタンは、過去に肉体に受けたダメージが蓄積し、もはや艦長の任務を果たせないほどに衰弱していたが、それをアトランたちに隠して《ツナミ=コルドバ》でヘラ星系の調査に向かった。そして古いカルタン人の基地で旧知のカルタン人マン・グロの死体を発見するが、カルタン人がどうやってバリアに開口部を作ったのかは不明のままだった。思い余ったトスタンは《ツナミ=コルドバ》から自分とポージー・ブース以外を退艦させ、二人だけで強引にクロノパルス壁の突破を図ったが、失敗して命を落とした。(時期:~NGZ1143年7月10日)

※初出キーワード=なし


あとがきにかえて

岡本 朋子氏
 初登場のあいさつ。


感想

・前半エピソード「クロノパルス壁の飛び地」 原タイトル:ENKLAVE CHRONOPULS-WALL(意訳:クロノパルス壁の飛び地)

 アトランたちがクロノパルス壁の飛び地の星系を調査する話。

 本筋は殆ど進展なしでしたが、ヘラ星系に遭難していた岩の塊みたいな遭難者「ヴェンクセントラリア人」のクアゴン・ターモールがゲストとして登場し、自分の作った人工生物と争いになったり、アトランたちに助けを求めようとしたら「長い間テレパシーしか使っていなかったので言葉の出し方を忘れていた」とかのサイドストーリーがあって、そこそこ面白く読めました。



・後半エピソード「最期の旅立ち」 原タイトル:DER LETZTE AUFBRUCH(意訳:最後の出発)

 ラトバー・トスタンとポージー・プースのコンビが死んでしまう話(涙)

 サブタイトルを見た時点で悲しい事が起きるとしか思えませんでしたが、やはり悲しい事が……、まあこのコンビはタルカン宇宙のエピソードに特化して作られたようなキャラクターでしたので、もう作家チームで不要と判断したのかもしれませんが、それにしてもまさかまさかの退場劇となりました。泣ける。


その他

 翻訳チームに新メンバーとして岡本朋子氏が加入。しかし近年の日本ではドイツ語のプロ翻訳者はほぼ女性だけなの……?
 
 
 

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【SF小説】感想「氷結惑星イッサム=ユ」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 706巻)(2024年2月6日発売)

氷結惑星イッサム=ユ (ハヤカワ文庫SF)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150124329
氷結惑星イッサム=ユ (ハヤカワ文庫SF) 文庫 2024/2/6
ペーター・グリーゼ (著), マリアンネ・シドウ (著), 宮下 潤子 (翻訳)
出版社:早川書房 (2024/2/6)
発売日:2024/2/6
文庫:288ページ

【※以下ネタバレ】
 

リシュタル星系に到達したローダンたちは、ニッキ・フリッケルの誘拐事件を知り、ただちに対策チームを編成して調査を開始した!


ポルレイターとの接触には成功したものの、なんら成果を得られなかった“シマロン”が次の目的地の自由貿易惑星アイシュラン=ホに到着するや、そこで待っていたのは驚愕の事件だった。ニッキ・フリッケルが誘拐されたというのだ。“ソロン”乗員のウィド・ヘルフリッチによれば“四本腕の預言者”の情報をもつ媒体伝達士の研究所を訪ねたさい、何者かに連れ去られたのだという。ローダンはただちに真相究明に乗り出す!

 

あらすじ

◇1411話 氷結惑星イッサム=ユ(ペーター・グリーゼ)(訳者:宮下 潤子(初))

 過去。NGZ448年。銀河系ではシガ星人ジジ・フッゼルがザタラ種族の姉妹コマンザタラやフアカッガチュアと共に暮らしていたが、ジジが不慮の死を遂げたため姉妹は錯乱し、50年間枯れたままだった。50年後、ようやく目覚めた姉妹は銀河系に危機が迫っていることを予知し、苦難の旅の末大マゼラン星雲にたどり着いた。

 NGZ1143年。ローダンは惑星アイシュラン=ホで誘拐されたニッキ・フリッケルの行方を追い、星系外縁の氷の惑星「イッサム=ユ」にたどり着いた。この星で生き延びていたザタラ姉妹は、正体を伏せてローダンに力を貸し、ローダンはニッキ救出に成功するが、犯人の正体も目的も不明のままだった。しかしこの星でイホ・トロトの残した映像が見つかり、彼が謎の場所「過去の柱」を捜索していることが判明した。(時期:NGZ448年、NGZ1143年6月13日~)

※初出キーワード=惑星イッサム=ユ。



◇1412話 マゼランの宙賊(マリアンネ・シドウ)(訳者:宮下 潤子)

 ローダンは惑星アイシュラン=ホのグラド商人から、彼の祖先ナンドゥル・カームの体験談を知らされた。

 過去。局部銀河群の混乱が始まってから約30年後。大マゼラン星雲では、ハウリ人・カンサハリヤ・カンタロの三勢力が三つ巴で戦争を繰り広げ、グラドも戦いに巻き込まれつつあった。商人ナンドゥル・カームは、怪しげな銀河商人キャプテン・アハブから、ギャラクティカーと同盟して銀河系に出現した敵を駆逐すれば大儲けできると持ち掛けられるが、怪しんで話を断る。その後、大マゼラン星雲で活動する宙賊がとらえられ、賊の首領はキャプテン・アハブだった。アハブは半壊した宇宙船に置き去りにされ、その後の消息は不明だった。

 ローダンはアイシュラン=ホにもはや手掛かりが無いと悟り、この星を離れた。(時期:NGZ1143年7月5日)

※初出キーワード=惑星メッジャーロ


あとがきにかえて

宮下 潤子氏
 初登場の自己紹介、1月の能登半島地震へのお見舞い。


感想

・前半エピソード「氷結惑星イッサム=ユ」 原タイトル:EISWELT ISSAM-YU(意訳:氷惑星イッサム=ユ)

 ローダンたちが誘拐されたニッキ・フリッケルの行方を捜索する話。

 なんとビックリ、懐かしの超能力植物ザタラの姉妹が再登場しました。カンタロ・サイクルは、不評だったらしいタルカン・サイクルの設定は一掃して心機一転スタートしたと思っていたので、この再登場は意外でした……、そして今回初めて気が付いたのですが、ジジ・フッゼルとコマンザタラのコンビは、今回の話を書いたグリーゼの持ちキャラだったのですね。エーヴェルス作品におけるギフィ・マローダー/トヴァリ・ロコシャンみたいなものだったのか。
 
 それにしても、カンタロのことも謎の不可視の存在も、なかなか正体がわからず焦れますね。



・後半エピソード「マゼランの宙賊」 原タイトル:DER PIRAT VON MAGELLAN(意訳:マゼランの宙賊)

 ローダンが過去(約670年前)の話を聞かされるという回。

 なんとビックリ(二回目)、懐かしのキャプテン・アハブが、昔話の中ではありますが戻ってきました。力の集合体エスタルトゥに帰還したあとはイジャルコルと一緒に体制立て直しのために働いていると思っていたのですが、また局部銀河群に戻ってなにをしていたのでしょうか? 超越知性体エスタルトゥが帰って来たから時間ができた? エネルプシ・エンジンはとっくに使えないのに4000万光年をどうやって旅してきたのか? 部下のゴンタセトとは何者だったのか? なぜ宙賊をやっていたのか?

 という感じで、最初はすごく面白そうだったのですが、結局キャプテン・アハブの目論見も解らないし、カンタロや謎の不可視存在についての話が進展したわけでもなし、と、謎をふりまいただけの、意外と拍子抜けのエピソードでした。うーん……


その他

 翻訳チームに新メンバーとして宮下潤子氏が加入しました。四年ぶりの新メンバーの登場です。初仕事も無難にこなされており一安心ですね。

 
 

700巻~750巻(「カンタロ」サイクル)の他の巻の内容・感想は以下へどうぞ

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【SF小説】感想「M-3の捜索者」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 705巻)(2024年1月24日発売)

M-3の捜索者 (ハヤカワ文庫SF)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150124299
M-3の捜索者 (ハヤカワ文庫SF) 文庫 2024/1/24
アルント・エルマー (著), クルト・マール (著), 小津 薫 (翻訳)
出版社:早川書房 (2024/1/24)
発売日:2024/1/24
文庫:288ページ

【※以下ネタバレ】
 

サトー・アンブッシュらは《シマロン》搭載のハミラー管から情報を引きだそうとするがハミラー管は密かに操縦権奪取を企てていた


フェニックス=1を出発した“シマロン”は球状星団M-3へと向かった。ポルレイターからこの約七百年のあいだに銀河系でなにが起きたのかを訊きだすと同時に、銀河系に進入するための援助を得るためだ。だがその途上、突然、サトラングで遭遇したのと同じ亡霊船の攻撃を受ける。ローダンはヴァーチャル・ビルダーを起動し、“シマロン”の虚像を作成、敵がそれを攻撃しているあいだにハイパー空間に逃走しようとするが!?

 

あらすじ

◇1409話 M-3の捜索者(アルント・エルマー)(訳者:小津 薫)

 ローダンはM-3球状星団のポルレイター種族の援助を求めるため《シマロン》で出発した。途上、《シマロン》は惑星サトラング近傍で目撃された亡霊船の攻撃を受け、さらに船内のハミラー・チューブが操船を妨害したため危機に陥るが、なんとか切り抜けた。ところが到着したポルレイターの拠点は放棄されており、ローダンは残った施設を管理しているナックからポルレイターの隠遁先である惑星ガットムの場所を教えられる。

 ローダンはガットムでポルレイターと再会し、過去の歴史を知らされた。700年前、ギャラクティカーはハウリ人や謎のカンタロ種族との戦争のためポルレイターに超兵器の提供を要求し、ポルレイターは最初は応じていたものの、エスカレートする要求についに応じることを拒んだ。するとギャラクティカーはポルレイターを攻撃してきたため、ポルレイターはそれを撃退し、ギャラクティカーとの同盟を破棄したのだった。

 ポルレイターはローダンに、過去の事を知りたければ「アムリンガルの時の石板」を探すように示唆すると、ガットム諸共姿を消してしまった。(時期:~NGZ1143年5月26日~6月10日)

※初出キーワード=ボレア星系/惑星ガットム。



◇1410話 宇宙ハンザの特使(クルト・マール)(訳者:小津 薫)

 ニッキ・フリッケルたちは、大マゼラン星雲のグラド種族の自由貿易惑星「アイシュラン=ホ」を目指していたが、亡霊船の攻撃を受け、なんとか逃走に成功した。ニッキたちはアイシュラン=ホで、宇宙ハンザの特使を自称するものの、惑星の責任者への面会は門前払いされる。ニッキはテラナーの末裔である商人パウロッテの協力を得て情報収集を進め、高度な技術を誇るカンタロ種族が700年前の戦争に勝利し争いを終結させたことを知る。しかしその後ニッキは謎めいた陰謀に巻き込まれた挙句、誘拐されてしまった。しかもパウロッテの死体を調べると、生体部品と機械を組み合わせた「ドロイド」だったことが判明した。(時期:NGZ1143年5月22日~)

※初出キーワード=ドロイド。


あとがきにかえて

小津 薫氏
 「モーパッサン 怪奇傑作集」の話。


感想

・前半エピソード「M-3の捜索者」 原タイトル:SUCHER IN M 3(意訳:M-3の捜索者)

 ローダンがポルレイターに会いに行く話。

 久々登場のポルレイターですが、有名な(?)エビ・カニ風の行動体を止めてヒューマノイドボディに切り替えていたというのに意表を付かれました。しかしなぁ、情報をくれる人達ってなぜみんなそのものずばりを教えてくれずに「《アムリンガルの時の石板》を探せ」とか、理解できないようなあいまいなことしか言わないんだろう……(苦笑)



・後半エピソード「宇宙ハンザの特使」 原タイトル:DER DROIDE(意訳:ドロイド)

 ニッキ・フリッケルたちが惑星「アイシュラン=ホ」で情報収集を試みると……、という話。

 今まで、宙航士の先祖から退行してしまった人たちの星とか、破壊されたステーションとか、精神を病んだもののサナトリウムとか、そんなところばかりめぐっていたので、久々に文明の息吹に触れてホッとさせられました。ニッキを誘拐したのはいったい誰だ?

 今回の作品タイトルは、原題の「ドロイド」とか仮題だった「ある商人の話」とかより洗練されているので、悪くないなと思いました。


その他

 カンタロ・サイクル突入後、翻訳チームを卒業した方の復帰ラッシュが続いていますが、本巻の翻訳者・小津薫氏も、2017年発売の547巻「試験惑星チェイラツ」以来の7年ぶりのローダン翻訳です。「あとがきにかえて」に何も書いていないので最初気が付かなかった……
 
 
 

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【SF小説】感想「サトラングの隠者」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 704巻)(2024年1月10日発売)

惑星サトラングの隠者 (ハヤカワ文庫SF)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150124280
サトラングの隠者 (ハヤカワ文庫SF) 文庫 2024/1/10
クラーク・ダールトン (著), エルンスト・ヴルチェク (著), 鵜田 良江 (翻訳)
出版社:早川書房 (2024/1/10)
発売日:2024/1/10
文庫:272ページ

【※以下ネタバレ】
 

《シマロン》に乗るグッキーらは惑星サトラン星系に到着し、助けを求める謎の隠者との接触に成功。その正体は驚くべき人物だった


隔離された故郷銀河をめざす最初の突入が失敗に終わったあと、銀河系船団は恒性へロスの第二惑星サトラングに向かった。“隠者”を名乗る謎の人物からの救難信号を受身したからだ。惑星に到着するや、グッキーは独断でただちに地表へと向かう。信号によれば、その隠者は死の危機に瀕しているらしい。グッキーはさまざまな場所を探すが見つからない。ようやく隠者を発見するが、細胞活性装置を強奪されたその人物は…!?

 

あらすじ

◇1407話 サトラングの隠者(クラーク・ダールトン)(訳者:鵜田 良江)

 ローダンやグッキーたちは惑星サトラングで死に瀕しているはずの「隠者」の捜索を開始した。ローダンは過去の記録から、隠者が銀河系にいた細胞活性装置保持者で、600年前専門家チームを率いて封鎖寸前の銀河系を脱出して惑星サトラングに移住し、銀河系を支配する謎の敵への対抗手段を研究していたと知る。グッキーは隠者と対面し、その正体がジェフリー・アベル・ワリンジャーと知るが、ワリンジャーは細胞活性装置を何者かに盗まれており直後に老衰死してしまった。ローダンたちはサトラングを離れ、ワリンジャーの亡骸を宇宙に葬った(時期:不明。NGZ1143年5月中旬頃)

※初出キーワード=恒星へロス(第二惑星がサトラング)。クロノパルス壁。



◇1408話 永遠のひとしずく(エルンスト・ヴルチェク)(訳者:鵜田 良江)

 ローダンたちは宇宙空間に会合場所「フェニックス=1」を定めたあと、手分けして情報収集を開始した。ティフラーは太陽系から約32万光年に位置するブラックホール「ポイント・シラグサ」近傍の研究ステーションに向かうが、研究者たちはステーションを放棄して姿を消していた。そのあと、ポイント・シラグサ近傍でカルタン人の巨大宇宙船《ナルガ=サント》の残骸の一部が発見され、内部で退行したカルタン人が生存していることが判明した。

 約650年前、M-33のカルタン人たちは混乱から立ち直ると、謎の敵「カンタロ」と戦っているというギャラクティカーを支援するため《ナルガ・サント》を銀河系へと派遣した。ところが銀河系に入ることができず、さらにブラックホールを利用して銀河系に潜入するという計画は失敗し《ナルガ・サント》は破壊されたのだった。

 ティフラーは《ナルガ・サント》の残骸がM-33へと帰還できるように手配したが、ミュータント・イルミナ・コチストワの精神が不安定になっていることを知った。(時期:NGZ1143年5月17日~18日とその前後)

※初出キーワード=ブラックホール・ポイント・シラグサ。集合地点フェニックス=1。リシュタル星系。惑星アイシュラン=ホ。ステーション・シラI~シラVIII。カンタロ種族。


あとがきにかえて

鵜田 良江氏
 ローダンの翻訳に復帰した&翻訳した「グラフィックノベル ベルリン1928-1933」の話。


感想

・前半エピソード「サトラングの隠者」 原タイトル:DER EREMIT VON SATRANG(意訳:サトラングの隠者)

 ローダンやグッキーは惑星サトラングのどこかにいるはずの「隠者」を捜索するが……、という話。

 ひぇぇ、久々に主要レギュラーキャラが退場してしまいました。ワリンジャーと言えば150巻~200巻のM-87サイクルからの付き合いだったのに、退場するときはこんなにあっさり……(涙)、ローダン・シリーズの作者チームは長い付き合いのキャラでもミュータントたちとかアラン・D・マーカントとか実にあっさり消してしまうから、油断も隙も無い……



・後半エピソード「永遠のひとしずく」 原タイトル:EIN TROPFEN EWIGKEIT(意訳:永遠のひとしずく

 ティフラーは情報を求め、ブラックホール・ポイント・シラグサ周辺にある研究ステーションを目指したが……、という話。

 ティフラーたちの話と、どこともわからない謎の場所(まさにディストピア)でのエピソードを交互に進め、やがてそれが《ナルガ・サント》残骸発見と内部で生き延びていた退行カルタン人の話として結び付く、という構成はうまいものがありました。

 ようやく戦うべき敵の名前が「カンタロ」らしいと判明。引っ張りまくったなぁ。

 今回は普段影の薄いミュータント・イルミナ・コチストワがやたら精神不安定的なセリフを連発しており、先行きが心配です……


その他

 本巻の翻訳者として、2022年3月発売の661巻「焦点のビッグ・プラネット」で翻訳チームを一旦卒業された鵜田良江さんがカムバックされました。見知った方が戻ってこられるのは何となくうれしい。
 
 
 

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