【SF小説】感想「氷結惑星イッサム=ユ」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 706巻)(2024年2月6日発売)

氷結惑星イッサム=ユ (ハヤカワ文庫SF)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150124329
氷結惑星イッサム=ユ (ハヤカワ文庫SF) 文庫 2024/2/6
ペーター・グリーゼ (著), マリアンネ・シドウ (著), 宮下 潤子 (翻訳)
出版社:早川書房 (2024/2/6)
発売日:2024/2/6
文庫:288ページ

【※以下ネタバレ】
 

リシュタル星系に到達したローダンたちは、ニッキ・フリッケルの誘拐事件を知り、ただちに対策チームを編成して調査を開始した!


ポルレイターとの接触には成功したものの、なんら成果を得られなかった“シマロン”が次の目的地の自由貿易惑星アイシュラン=ホに到着するや、そこで待っていたのは驚愕の事件だった。ニッキ・フリッケルが誘拐されたというのだ。“ソロン”乗員のウィド・ヘルフリッチによれば“四本腕の預言者”の情報をもつ媒体伝達士の研究所を訪ねたさい、何者かに連れ去られたのだという。ローダンはただちに真相究明に乗り出す!

 

あらすじ

◇1411話 氷結惑星イッサム=ユ(ペーター・グリーゼ)(訳者:宮下 潤子(初))

 過去。NGZ448年。銀河系ではシガ星人ジジ・フッゼルがザタラ種族の姉妹コマンザタラやフアカッガチュアと共に暮らしていたが、ジジが不慮の死を遂げたため姉妹は錯乱し、50年間枯れたままだった。50年後、ようやく目覚めた姉妹は銀河系に危機が迫っていることを予知し、苦難の旅の末大マゼラン星雲にたどり着いた。

 NGZ1143年。ローダンは惑星アイシュラン=ホで誘拐されたニッキ・フリッケルの行方を追い、星系外縁の氷の惑星「イッサム=ユ」にたどり着いた。この星で生き延びていたザタラ姉妹は、正体を伏せてローダンに力を貸し、ローダンはニッキ救出に成功するが、犯人の正体も目的も不明のままだった。しかしこの星でイホ・トロトの残した映像が見つかり、彼が謎の場所「過去の柱」を捜索していることが判明した。(時期:NGZ448年、NGZ1143年6月13日~)

※初出キーワード=惑星イッサム=ユ。



◇1412話 マゼランの宙賊(マリアンネ・シドウ)(訳者:宮下 潤子)

 ローダンは惑星アイシュラン=ホのグラド商人から、彼の祖先ナンドゥル・カームの体験談を知らされた。

 過去。局部銀河群の混乱が始まってから約30年後。大マゼラン星雲では、ハウリ人・カンサハリヤ・カンタロの三勢力が三つ巴で戦争を繰り広げ、グラドも戦いに巻き込まれつつあった。商人ナンドゥル・カームは、怪しげな銀河商人キャプテン・アハブから、ギャラクティカーと同盟して銀河系に出現した敵を駆逐すれば大儲けできると持ち掛けられるが、怪しんで話を断る。その後、大マゼラン星雲で活動する宙賊がとらえられ、賊の首領はキャプテン・アハブだった。アハブは半壊した宇宙船に置き去りにされ、その後の消息は不明だった。

 ローダンはアイシュラン=ホにもはや手掛かりが無いと悟り、この星を離れた。(時期:NGZ1143年7月5日)

※初出キーワード=惑星メッジャーロ


あとがきにかえて

宮下 潤子氏
 初登場の自己紹介、1月の能登半島地震へのお見舞い。


感想

・前半エピソード「氷結惑星イッサム=ユ」 原タイトル:EISWELT ISSAM-YU(意訳:氷惑星イッサム=ユ)

 ローダンたちが誘拐されたニッキ・フリッケルの行方を捜索する話。

 なんとビックリ、懐かしの超能力植物ザタラの姉妹が再登場しました。カンタロ・サイクルは、不評だったらしいタルカン・サイクルの設定は一掃して心機一転スタートしたと思っていたので、この再登場は意外でした……、そして今回初めて気が付いたのですが、ジジ・フッゼルとコマンザタラのコンビは、今回の話を書いたグリーゼの持ちキャラだったのですね。エーヴェルス作品におけるギフィ・マローダー/トヴァリ・ロコシャンみたいなものだったのか。
 
 それにしても、カンタロのことも謎の不可視の存在も、なかなか正体がわからず焦れますね。



・後半エピソード「マゼランの宙賊」 原タイトル:DER PIRAT VON MAGELLAN(意訳:マゼランの宙賊)

 ローダンが過去(約670年前)の話を聞かされるという回。

 なんとビックリ(二回目)、懐かしのキャプテン・アハブが、昔話の中ではありますが戻ってきました。力の集合体エスタルトゥに帰還したあとはイジャルコルと一緒に体制立て直しのために働いていると思っていたのですが、また局部銀河群に戻ってなにをしていたのでしょうか? 超越知性体エスタルトゥが帰って来たから時間ができた? エネルプシ・エンジンはとっくに使えないのに4000万光年をどうやって旅してきたのか? 部下のゴンタセトとは何者だったのか? なぜ宙賊をやっていたのか?

 という感じで、最初はすごく面白そうだったのですが、結局キャプテン・アハブの目論見も解らないし、カンタロや謎の不可視存在についての話が進展したわけでもなし、と、謎をふりまいただけの、意外と拍子抜けのエピソードでした。うーん……


その他

 翻訳チームに新メンバーとして宮下潤子氏が加入しました。四年ぶりの新メンバーの登場です。初仕事も無難にこなされており一安心ですね。

 
 

700巻~750巻(「カンタロ」サイクル)の他の巻の内容・感想は以下へどうぞ

perry-r.hatenablog.com

ローダン・シリーズ翻訳者一覧は以下へどうぞ

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