感想:ゲームブック(同人)「シュレディンガ・フォークス-パラグラフの迷路」(今野隼史)(2014年5月4日発売)【クリア済】


 ゲームブック「シュレディンガ・フォークス-パラグラフの迷路」(今野隼史)の感想です。

 クリアしての感想です。
シュレディンガ・フォークス パラグラフの迷路

■シュレディンガ・フォークス-パラグラフの迷路
http://frontierpub.jp/books/1405shf3/
Schrodinger Folks - sectional footprints
不確定なライトノベルゲームブック

時間が細切れにされた世界を
脈絡を奪われた少女と巡り、
不確定な物語に突破口を見つけよ。
このゲームブックの形をした
ライトノベルを読むために
ダイスと筆記用具はいらない。
鍵は、思い出の手触りと
消えた猫耳王女、そして
旅の武装女中・・・すなわち
きみが知っている。

■データ(公式)
http://www.amazon.co.jp/dp/B00K6O5Y0G/
シュレディンガ・フォークス パラグラフの迷路 [新書]
今野 隼史 (著, イラスト)
新書: 144ページ
出版社: 密林社; オフセット・初版 (2014/5/19)
ASIN: B00K6O5Y0G
発売日: 2014/5/19

> 時間が切り刻まれた奇妙な世界を冒険して、出口を探す、武装メイドと迷子のファンタジーなライトノベル&ゲームブック
>職業イラストレーターが一人で書いて挿絵も描いた、誰にも遠慮しない奇妙な創作本です。


■データ(個人的補足)

 同人本ですが、アマゾンで取り扱っています。今年の春の「ゲームマーケット」で発売されたようです。サイズは18.5×11.5センチ。右開き。洋書のペーパーバックと同じ作りです。



■あらすじ

 ファンタジー物。《武装女中》の「マコ」は、主の少女「ノノモリ」と旅をしています。ある日、船に乗っていると巨大な怪物が現れ……



■内容紹介/感想

 パラグラフ数118。コピーに「ダイスと筆記用具はいらない」と書かれているとおり、「パラメーター」「サイコロ振り」といった概念は無く、選択肢を辿るだけでOKの、お手軽ゲームブックです(フラグ立てが必要になる箇所も有りますが、メモが必要なほどでもなく、普通に憶えておけるレベルです)。


 「イラストレイターが書いたゲームブック」という事で、手にする前は『もしかするとゲームブックと謳うだけの、ゲームになってない何かなのでは?』と心配していましたが、結果から言えば全くの杞憂でした。序文で「JHブレナンに敬意をこめて」云々と書かれていておおと思わされましたが、実際ブレナン氏リスペクトな作風で、「パラグラフ14番はもちろんバッドエンド」ですし、文体も「やれやれ、ここはもうXXするしかないぞ、マコ」といった感じの、作者が主人公を揶揄するようなタイプで、ブレナン愛が随所から感じられる作品でした。


 世界観は一応「剣と魔法のファンタジー世界」系なのですが、内容はどちらかというと幻想物といったところでしょうか。ある冒険が一区切りつくと、唐突に全く別の場面に移動して次の展開がスタートし、そして主人公たちはそれを何の疑問もなく受け入れて、新たな冒険を始めます。


 物語は基本的に一本道で、殆ど拡散せずに進行します。例え一時的にルートが複数に分かれても、すぐ片方はバッドエンドになって消えたり、あるいは分散したはずがすぐに一本に合流したりしますので、良くも悪くも『どの選択肢を選ぶかによって展開が大きく異なる』ということはありません。


 雰囲気は基本的にコミカル系。主人公で、戦闘のスペシャリストですが女中仕事は苦手なマコが、次々と起こるトラブルになんとか対応していき、作者がパラグラフ毎に「ふう、やれやれ」的なスタンスで茶々を入れていく、という感じです。キャラクターたちは真面目に冒険をしているのですが、作者のツッコミが面白くて全体にユーモラスです。しかし終盤、物語は唐突にシリアスな雰囲気へと移行し、そして、ちょっとイイ感じの結末を迎えます。このあたり、なんか感動系アドベンチャーゲーム/ノベルゲームみたいな構成ですね。しかし、私は「ファイティング・ファンタジー」などののオーソドックスなタイプしかプレイ経験がないので、こういう日本アニメとかゲームとかのテイストを味あわせてくれる作品は斬新でしたし、また楽しめました。


 序盤に説明がありますが、この作品は「隠しパラグラフ」が用意されています。隠しパラグラフとは、例えば『これこれの条件を満たすパラグラフが有れば、パラグラフ番号に100を加えたパラグラフへ飛べ』といった、直接は繋がっていな物のことです。この作品ではそれが実に巧みに使われていて、最終的にマルチエンディング形式になっています。こういうのもなんとなく『ノベルゲームみたいだな』と感じました。


 はっきり言って、プレイ前は全く期待していなかったのですが、これが思わぬ当たり作品でした。プレイ時間はお手ごろですし、難易度も低め、文体は愉快系、それでいて単なるプレナン作品の模倣では無く、独自の味わいが有りました。『主人公が大剣を振り回す武装メイド』といういささかオタッキーな設定ではありますが、そこが気にならないならば、ゲームブッカーには是非手にとって頂きたい一作です。


 こういう好作品が飛び出してくるから、ゲームブック道は本当に止められませんよ。



■その他
・プレイ時間:約2時間30分
・難易度:5段階評価(5が最高)で2
・面白さ:5段階評価(5が最高)で3


シュレディンガ・フォークス パラグラフの迷路

シュレディンガ・フォークス パラグラフの迷路