感想:オカルト検証番組「幻解!超常ファイル ダークサイド・ミステリーE+(プラス)」『江戸のUFO? うつろ舟事件』(2020年11月30日(月)放送)


江戸「うつろ船」ミステリー

幻解!超常ファイル ダークサイド・ミステリーE+(プラス) https://www.nhk.jp/p/ts/R88ZYP985X/
放送 NHK Eテレ。毎週月曜午後7:25~午後7:50(25分)

www.nhk.jp
【※以下ネタバレ】
 

他の回の内容・感想

perry-r.hatenablog.com
 

超常現象の謎を楽しみながら、その正体を徹底検証!
BSプレミアムで大好評を博したシリーズが、地上波・Eテレの夜に出現!
2014年に放送した総合テレビ版から名作をセレクト。最新情報などを加え再構成。
みなさんの心に引っかかっている謎と神秘と不思議の真相に迫ります!

光と闇のナビゲーター 栗山千明
語り 中田譲治
テーマ音楽 志方あきこ

 

江戸のUFO? うつろ舟事件 (2020年11月30日(月)放送)

 

内容

幻解!超常ファイルE+(プラス)「江戸のUFO?うつろ舟事件」
[Eテレ]2020年11月30日(月) 午後7:25~午後7:50(25分)


江戸時代に空飛ぶ円盤と異星人が現れた?絵画に残された円形の乗り物と謎の美女…日本の「うつろ舟」事件と、西洋絵画に描かれたUFOの謎を、最新研究で明らかにする!


地球には昔から異星人が来訪していた?江戸時代の絵画に残る、謎の物体「うつろ舟」と美女乗組員、解読不能の宇宙文字?一方ヨーロッパでは何枚もの宗教画にUFO?不思議な絵から始まる、歴史、美術、文学、民俗、宗教の知的好奇心を総動員する壮大な謎解きの旅。▽近年「うつろ舟」の絵は日本各地から発見され、研究が進んでいる。情報拡散に暗躍する忍者?黒幕は有名な伝奇小説作家?美女乗組員は実は神様?宇宙文字の正体は?


【出演】栗山千明,【語り】中田譲治

 
●うつろ船事件

 1803年(享和三年)2月22日正午。茨城県鹿島灘の海岸に円盤型の船が漂着し、中から異国風の美女が出てきた。美女は箱を持っていた。乗り物の中には奇怪な文字が刻まれていた。村人たちは面倒ごとを避けるため、女を乗り物に乗せそのまま海に送り返してしまった。



●馬琴の創作か?

 この話は事件から22年後に江戸で開かれた、一流の文人たちが奇妙な話を持ち寄って語り合う「兎園会(とえんかい)」で披露された。主催者は「八犬伝」の作者「曲亭(滝沢)馬琴」で、馬琴とその息子が「うつろ舟の蛮女」というタイトルで発表したという。

 この話は長らく馬琴の創作だと考えられていたが、近年、同時代の資料で、この事件について書かれた「瓦版」(=新聞)や伝聞を書きとめたメモなどが見つかり、事件が馬琴一人の創作では無い事が明らかになってきた。これらの資料を比較すると、それぞれ微妙に異なっているものの、「円盤形の船のディティール」「箱を持った女」「四つの異形文字」というポイントでは一致していた。



●うつろ舟は空飛ぶ円盤か?

 民俗学者柳田國男は、1926年(大正15年)に発表した「うつぼ舟の話」という論文の中で、「古来日本には海を超えて漂着し、人々に何かをもたらした神々の伝承が多い。そして神々の乗り物を『うつぼ舟』と呼んだ」としたうえで、「謎の文字は世界のどこの文字でも無いのだから、この話自体がでっち上げなのは明白」と結論付けた。

 ところが第二次世界大戦後になると「空飛ぶ円盤」ブームが到来し、その結果「地球上にない文字だからこそ、この舟は宇宙から来た」という説が登場した。果たしてうつろ舟は宇宙から来た空飛ぶ円盤だったのか?



●宗教画に描かれた円盤

 日本のうつろ舟のように、ヨーロッパの昔の宗教絵画にもUFOらしきものが描かれていることが多々ある。やはり異星人は昔から地球に来ていたのか?!


・キリストの処刑を異星人が見ていた!

 コソボ共和国にある14世紀に建てられたデチャニ修道院には、内部に無数の壁画が描かれている。その中のキリストの磔を描いた絵には、左右の空に小型のUFOに乗っている異星人の姿が描かれている!!


聖母マリアの背後に迫る楕円型UFO!!

 イタリア・フィレンツェのヴェッキオ宮殿博物館が所有する15世紀の絵画には、聖母マリアが描かれている。ところがマリアの背後・絵の右上の空にあたる部分には、光を発する黒い円盤が描かれている!!


・ビームを発射する巨大UFO!!

 イギリス・ケンブリッジ大学付属フィッツウイリアム美術館が所蔵する絵画には、空を飛ぶ円盤から地上に向けて四本の光を放つ場面が描かれている。これは何らかの転送ビームではないのか!?


 しかし、真相は異星人の乗り物でも何でもなく、

 キリストの処刑を描いた「キリストの磔刑(たっけい)」でUFOに見えるのは、左上が「太陽」・右上が「月」を、それぞれ擬人化したもの。キリストの磔刑時には、昼間にも関わらず夜のように暗くなったという描写があり、そのため宗教画には太陽と月を描くことがよくあるという。

 マリアを描いた「聖母子と幼子聖ヨハネ」(フィリッポ・リッピ)でも、右上に見えるのは「月」で、また左上をよく見ると太陽が描かれているのが解る。これもキリストの磔刑を暗示しているのだという。

 さらに「キリストの洗礼」(アールト・デ・ヘルデル)は、UFOに見えるのは天界に開かれた扉で、そこにいる鳩の姿の精霊から、光が地上にいるイエス・キリストに降り注いでいる。これはイエスが神の声を聴いているシーンを描いている。

 これらの絵は、宇宙人の乗り物ではなく、当時の人々の宗教観を描いていたのである。



●うつろ舟事件の検証

 この話を調べている研究者は、各種の資料を比較し、瓦版の中で「去亥」(さるい)の年と書いてあるのに注目した。「亥」は十二支のひとつで、事件の有った1803年のこと。十二支は12年で一周し次の亥の年は1815年なので、つまり1815年以前に書かれたということを意味しており、1807~8年頃に書かれたと推測している。

 研究者は、瓦版に描かれた女性とよく似た雰囲気の女性の描かれたお札を見つけ出した。その女性も鹿島灘に流れ着いたといわれているが、その人物の名は『金色姫(こんじきひめ)』。海の向こうから鹿島灘に流れ着き、一帯に養蚕を伝えたとされる女神だった。しかも金色姫は片手にカイコの入った箱を持っている。うつろ舟事件は、この金色姫伝説を元に作られたと推測される。

 さらにお札の作者名は「曲亭陳人(きょくていちんじん)」と記されているが、これは曲亭(滝沢)馬琴の別名である。1825年に馬琴の書いた「兎園小説」と、馬琴が書いたと思われるお札がある。ということは、そもそもの大元である瓦版も馬琴が書いたのではないのか……?



●新資料出現!!

 ところが、2014年1月、馬琴が全てを捏造したという仮説を揺るがす資料が見つかった。当時の忍者が主君のために書いた報告書の中にうつろ舟の話が見つかったのである。

 ジャーナリスト皆神龍太郎氏は、この新資料では、異形文字の二番目と三番目が縦に半分ずつずれるように書かれていることに注目し、これは漢字のへンとつくりのように一つの文字だったのではと考えた。そして、それを組み合わせた文字を記した「浮世絵」に行き当たった。うつろ舟が来たとされるのと同じころに描かれた絵「六郷渡」の周囲には、「蘭字枠」という、江戸時代に流行したオランダ語をベースにした模様が描かれていた。皆神氏は、この蘭字枠のなかに、うつろ舟に描かれていたとされる四文字に相当するものを見つけ出した。

 また、その新資料の中には、今まで謎だった舟の漂着場所が「舎り浜」(しゃりはま)と記載されており、当時の地図にも書かれている現実に存在した場所と解った。


 つまりうつろ舟事件は、馬琴の完全なでっちあげ、とは言えなくなってきている。真相は未だに謎である。


感想

 日本のUFO事件として有名な「うつろ舟」話を徹底検証。どうせ一から十まで滝沢馬琴の作ったフィクションでしょ?……、とは言えなくなっているのが面白い。フェイクではなく、こういう「本物のミステリー」は心底ワクワクしますよねぇ。こういう感覚を求めてオカルトスキーやっているんですよね。
 
 
 

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