【映画】感想:映画「007/ユア・アイズ・オンリー」(007シリーズ12作目)(1981年:イギリス)

007/ユア・アイズ・オンリー [Blu-ray]

BS-TBS|007シリーズ【吹替】 https://bs.tbs.co.jp/movie/007/
放送 BS-TBS。2022年2月6日(日)

【※以下ネタバレ】
 

007シリーズ第12弾。
生身のアクションを最大限に生かしたボンド映画の代表作!


イギリスの情報収集船が低周波ミサイル誘導装置ATACと共に沈没。そして、船の引揚げを依頼された海洋考古学者夫妻も殺害される。事件の鍵を握るのは、謎の大富豪クリスタトス。ボンドは夫妻の娘メリナと共に事件の核心に迫るが……。

 

あらすじ

 冒頭。007/ジェームズ・ボンドは妻の墓参りの後、迎えのヘリに乗り込むが、車いすの謎の男にヘリがコントロールされ、ボンドは絶体絶命の危機に陥る。しかしボンドはヘリの操縦を取り戻すと、車いすの男をヘリの足にひっかけ、煙突の中に突き落とした。


 イオニア海アルバニアの沖合で漁船のふりをして活動していたイギリスのスパイ船「セント・ジョージ号」が機雷に触れて爆沈した。セント・ジョージ号には、イギリスの潜水艦のミサイルをコントロールする「低周波ミサイル誘導装置ATAC/エイタック」の端末が搭載されており、もしエイタック端末が東側の手に渡れば、イギリスのミサイル戦略は崩壊してしまう。

 イギリスは公的には調査できないため、海洋考古学者ハブロック博士に調査を依頼していたが、ハブロック夫妻は何者かに殺されてしまった。ハブロック夫妻の娘メリナの証言で、夫妻殺しがヘクター・ゴンザレスという殺し屋の仕業であると判明し、ボンドはゴンザレスから雇い主を聞き出すためギリシャに向かった。ところがボンドの目の前でゴンザレスは復讐に燃えるメリナに殺害されてしまった。

 ボンドは死んだゴンザレスの屋敷でゴンザレスに大金を渡していた男を記憶しており、その男がロックという名前で、ギリシャの密輸業者に雇われていることを突き止める。さらにボンドは、イギリス情報部の協力者であるギリシャ人大富豪クリスタトスから、ロックはギリシャ人密輸業者ミロス・コロンボの部下だとの情報を受け取る。

 ボンドはコロンボの周辺を調べるうち、殺し屋たちに襲われ殺されそうになるが、別の男たちに助けられる。ボンドを救ったのはコロンボの部下だった。コロンボはボンドに対し、クリスタトスこそがロックの雇い主で、さらに東側と繋がっている裏切り者だと主張した。クリスタトスは、その事実を知るコロンボをボンドに殺させるため、偽情報を掴ませたという。ボンドはコロンボたちと共にクリスタトスの秘密の施設に突入すると、そこにロックがおり、ボンドはロックを殺害した。

 ボンドはメリナと共にハブロック博士が使っていた潜航艇で海に潜り、沈没したセント・ジョージ号の残骸を発見し、内部からエイタック端末を回収した。ところが浮上してみるとクリスタトスの一味が待ち構えており、エイタックを奪われてしまう。

 クリスタトスたちはセントシリル寺院でKGBのゴゴール将軍にエイタックを引き渡す約束を交わしていた。ボンドはオウムの覚えていたセントシリルという言葉からクリスタトスの行方を知り、コロンボの部下たちと共に寺院に突入した。ボンドは奪回したエイタックの端末を崖から放り捨てて破壊し、ゴゴールは収穫なく引き上げた。ボンドはメリナがクリスタトスを殺そうとするのを止めるが、ナイフで切りかかろうとしたクリスタトスはコロンボに殺された。

 最後。ボンドが電話でかかってきたイギリス首相の感謝の言葉を無視して、メリナと甘い雰囲気になったところで〆。
 
 
 

感想

 評価は○(まあまあ)

 11作目「ムーンレイカー」(1979年)に続く「ロジャー・ムーア007」の二年ぶりの5本目。前作ムーンレイカーがほぼSF映画と化していたのに対し、本作は作風を一転させ、シリアスさ・重厚さを打ち出した本格スパイ映画となっていましたが、これはこれでまあ悪くはない作品でした。


 8作目「死ぬのは奴らだ」でロジャー・ムーアがボンドを引き継いで以降、007映画は観客がつい失笑するようなコント的場面をふんだんに入れて、そこはかとないユーモラスさを醸し出す映画に路線変更し、また現実から乖離したSF要素を増やしていっており、

9作目「黄金銃を持つ男」 … 太陽エネルギーを電力に変換する装置ソレックス
10作目「私を愛したスパイ」 … 海中から浮上する巨大施設アトランティス
11作目「ムーンレイカー」 … スペースシャトル、宇宙ステーション

と、かなり「空想科学映画」めいた物に物になっていました。


 しかし本作では製作スタッフが過去の方向性を反省したのか、ロジャー・ムーア007映画史上最も暗くて重い内容に仕上がっています。今までの作品が小中学生向けだったとすれば、本作はそれらの層を切り捨てて「大人の視聴に耐える作品」を志向したように見えました。


 まずストーリーは「イギリスの軍事機密を英ソ両陣営が奪い合うスパイスリラー」に「両親を殺された美女の復讐譚」を絡めた、東西冷戦を背景とした重厚な物となり、過去のムーア007映画で見られたコント要素は一切無し。またボンドの協力者たちがすぐに殺されて簡単にいなくなると思えば、逆にボンドも敵側の殺し屋を特に絡みも無く非情に崖から突き落として殺すなど、とにかく重苦しい内容。

 また、その雰囲気に合わせて、いつもは映画の良いアクセントとなっているQの秘密メカは今回は登場せず、ボンドは事実上愛銃ワルサーPPKのみで敵と戦い抜きます。そのため、Qの出番は、本部でデジタル版モンタージュ写真作成装置を駆使する場面程度でした(ちょっと残念)

 また過去作品ではムーア・ボンドは、移動する先々で出会った美女に手を出して楽しんでいましたが、本作では任務で「伯爵夫人」に接近するために一夜を共にした程度で、変な女遊びは一切なし。ボンドガールのメリナですら手を出さず、映画のラストで手を出したかもしれないと暗示する程度。映画に登場した中で最もストイックなボンドかもしれません。

 まあ、さすがに重厚一辺倒では観客が付いてこれないと思ったのか、派手なカーアクションや雪山でのスキーアクションもありましたが、目を見張るような強烈なスタントシーンがあるわけでもなく、アクセントという程度でした。

 ということで「大人の視聴に耐えるボンド映画」に仕上がってはいましたが、正直「息苦しい」というか……、もちろんあまり羽目を外し過ぎるのも限度がありますが、ここまで真面目に堅苦しいとやや物足りない感じでした。

 娯楽作品として悪くない出来でしたが、見おわってルンルン気分になれるかというとそういう事でもなく……、ハードなボンドを求める層にはともかく、「見ていて楽しい娯楽映画」を期待しただけにちょっとすかされた感じがしました。


おまけ

 1作目からM役を演じていた俳優バーナード・リーは、この作品の撮影前に亡くなったそうで、そのため本作では敬意を表して代役を立てず「休暇中」という扱いにしたとのこと。

 またKGBのゴゴール将軍(ウォルター・ゴテル)は10作目「私を愛したスパイ」・11作目「ムーンレイカー」に続いて三度目の登場で、完全にレギュラー化しています。
 
 映画タイトル「ユア・アイズ・オンリー/For Your Eyes Only」とは、映画の最初の方でボンドに渡された資料に書かれていた言葉で、「読後焼却すべし」と訳されていました。語感に反して全然ロマンティックな意味はない模様。
 

007/ユア・アイズ・オンリー【吹替】
https://www.bs-tbs.co.jp/movie/007foryoureyesonly/


2022/2/6(日)
午後2:00~4:30


◆キャスト
ロジャー・ムーア
トポル
キャロル・ブーケ


◆スタッフ
1981年/イギリス
監督:ジョン・グレン

 

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