【歴史】感想:歴史番組「ダークサイドミステリー」シーズン4(2022年版)「心霊と恐怖の仕掛人 中岡俊哉 ~昭和オカルトブームの舞台裏~」(2022年5月19日(木)放送)

コックリさんの父 中岡俊哉のオカルト人生

ダークサイドミステリー NHK https://www.nhk.jp/p/darkside/ts/4847XJM6K8/
放送 NHK BSプレミアム。毎週木曜夜9時放送。

www.nhk.jp
【※以下ネタバレ】
 

他の回の内容・感想

perry-r.hatenablog.com
 

本当の謎は、人間の闇


シーズン4スタートしました!
今年度はなんと、地上波・Eテレで毎週(火)夜10:45放送の、名作の数々のコンパクト29分版と同時期放送です!
背筋がゾワゾワ、心がドキドキ、怖いからこそ見たくなる。世界はそんなミステリーに満ちている。世間を揺るがした未解決の事件、常識を越えた自然の脅威、いにしえの不思議な伝説、怪しい歴史の記録、作家の驚異の創造力…。
人智を超えた謎に迫る「幻解!超常ファイル」のスピンオフ!
栗山千明中田譲治志方あきこのダークなトライアングルに加え、伊藤海彦アナウンサーも参加!

 

心霊と恐怖の仕掛人 中岡俊哉 ~昭和オカルトブームの舞台裏~ (2022年5月19日(木)放送)

 

内容

ダークサイドミステリー▽心霊と恐怖の仕掛人・中岡俊哉~昭和オカルトの舞台裏~
[BS4K] 2022年05月19日 午後9:00 ~ 午後10:00 (60分)


謎と不思議の1970年代、子どもたちがビビりながら熱中した《心霊写真集》を大ヒットさせた中岡俊哉とは何者か?豊富なアイデアで時代を築いた、ふしぎ探求人生に迫る。


「怖えー!」「すげー!」かつて子どもたちは《心霊写真》で大盛り上がり!放課後の話題を独占した心霊写真集の作者・中岡俊哉とは何者なのか?怖いのにやめられない!読者を夢中にさせる驚きのテクニックとは?心霊作家の原点は少女雑誌?恋とオカルトの意外な関係?打倒ユリ・ゲラー!中岡が挑んだテレビ超能力対決の行方は?時代の空気をとらえメディアと共に心霊ブームを生み出した作家の、知られざるふしぎ探求の人生に迫る。


【ナビゲーター】栗山千明,【ゲスト】横浜国立大学教育学部教授…一柳廣孝國學院大學文学部 教授…飯倉義之,【語り】中田譲治,【司会】伊藤海彦

 
 今回のテーマは「心霊と恐怖の仕掛人 中岡俊哉」。


●心霊写真の仕掛け人

 1974年頃から日本に一大オカルトブームが到来した。超能力、UFO、ノストラダムスの大予言、未知の生物、そして心霊現象etcが大流行。特に心霊物は、テレビでは朝から心霊物が放送され、漫画では心霊漫画が連載され、映画は「エクソシスト」「オーメン」などがヒット、そして心霊写真本が大流行。その仕掛け人が作家・中岡俊哉である。


 中岡俊哉が手掛け1974年以降刊行された「恐怖の心霊写真」シリーズは、シリーズ累計150万部を売り上げる大ヒットとなった。

 「恐怖の心霊写真」シリーズは、一冊当たり60枚以上の写真が掲載され。さらに中岡の発明が盛り込まれていた。

発明1「鑑定・解説による説得力」
 写真一枚一枚に中岡による詳細な解説がつけられていて「この霊は三年前に死んだ人で~」などと書かれている。中岡は「これは撮影ミス」とかいうことは書かなかった。

発明2「キャッチーな専門用語 地縛霊・浮遊霊」
 「地縛霊」「浮遊霊」といった言葉を発明した。地縛霊は土地に因縁がある霊。浮遊霊は土地ではなく人につく霊。

発明3「私たちの周りは霊だらけ」
 心霊写真は「シミュラクラ現象」つまり点が三つあると人の顔に見えるという人間の錯覚から生まれると思われるが、中岡は木の葉の影とかなんでもかんでも心霊写真とした。当時は高度経済成長期でカメラが普及し始めており、誰もが「過去に撮った写真に心霊写真があるのでは」と必死で探した。



少女フレンドと実話怪談

 実は中岡はブーム以前の1964年からオカルト分野に関わっていた。それは日本初の週刊少女漫画雑誌「少女フレンド」での連載である。当時は週刊誌の創刊ブームで、大人向け週刊誌の他に、少年漫画誌、少女漫画誌が次々と創刊されていた。

 そして中岡が少女フレンドで連載したのが、実話という触れ込みの、ちょっと怖くて不思議系の話(挿絵入り)の「世にもふしぎな事件」だった。詳細な日付や地名でリアリティを出しつつ、その場で見てきたような臨場感のある描写で大人気となり、四年間で100話もの話を連載。この結果、中岡は実話怪奇物の人気作家となった。



●中岡の生い立ち

 中岡俊哉は1926年(大正15年)東京生まれ。本名は岡本俊雄。祖父は浪曲師の桃中軒雲右衛門。

 中国大陸に渡り、終戦満洲で迎えると、その後日本向けのラジオ局のアナウンサーとなる。その一方で、趣味で中国の怪談奇談の収集を行い、全部で二万話を集めたという。

 昭和33年(1958年)・32歳の時に帰国し、四年後の昭和37年(1962年)に手持ちの怪奇話を少女フレンドに持ち込んだところ編集者に気に入られて連載を獲得する。



●何故少女漫画誌で怪談がウケたのか?

 実は恋愛と恐怖は共に「ドキドキする」という点で似ている。恐怖を恋と勘違いする「吊り橋効果」が有名。当時の少女漫画雑誌にはまだ恋愛ジャンルというものが無く、少女読者たちはドキドキを求めて怪談を読んだのかもしれない。



●中岡の作風の変化

 1968年頃から、少女漫画誌で戦後生まれの漫画家たちがデビューし恋愛物を書くようになると、中岡は代わって学年誌や少年漫画誌で連載を持つようになり、売れっ子ライターとなった。作風は少女漫画時代から変わり、写真を豊富に多用し自ら体験した出来事を語る形式となった。当時怪奇系の作家で自分で取材する人はおらず、画期的な作風だった。



●テレビへの進出

 中岡はさらに1964年頃から爆発的に普及していたテレビにも進出した。「ショック!」という番組は、俳優の川口浩を司会・現地レポーターに起用し、世界中の不思議を次々と紹介し、中岡はその番組のブレーンとなって協力した。そして中岡自身も取材で海外に行き、世界中にまだまだ不思議な人や物事が実在すると知った。



●スプーン曲げの衝撃

 1974年(昭和49年)3月7日、テレビが日本中をオカルトに叩き込んだ。テレビでユリ・ケラーがスプーンを曲げるパフォーマンスを行い、視聴者からの「自分もスプーンを曲げた」という電話がスタジオに殺到したのである。この番組を仕掛けたのは高視聴率男・矢追純一だった。

 しかし中岡はこの番組には関わっておらず、またユリ・ゲラーのスプーン曲げが超能力なのか手品なのかはっきりと検証していないことに不満を覚えた。中岡は1971年に既に超能力に関する本を出しており、テレビで超能力を取り上げるなら、もっと科学的に研究する必要性を感じるように作るべき、と考えた。

 そこに別のテレビ局のプロデューサーから「もっと科学的に超能力を取り上げる番組を作りたい」との打診があり、中岡が協力することになった。そして透視能力で行方不明者を探すという触れ込みの、オランダ人ジェラルド・クロワゼットを日本に呼び、生放送で能力を披露してもらうことになった。またスタジオでも透視の実証実験を行い、多角的に超能力を証明していく予定だった。

 1976年(昭和51年)5月3日、生放送二日前ににクロワゼットが日本に到着し、行方不明者透視や検証実験が行われた。ところが5月5日・生放送当日に衝撃的な事態が勃発した。番組スタッフがクロワゼットの予言した場所で、行方不明者の遺体を発見したのである。当日の放送の予定は大幅に変更され、視聴率は30.5%をたたき出したものの、中岡が企画した超能力の検証実験などは大幅カットされてしまった。



●ワイドショーと心霊写真

 1974年(昭和49年)頃、中岡がテレビで活躍したのは超能力分野だけでは無かった。朝から放送されるワイドショー(小川宏ショー)に心霊写真のコーナーがあり、中岡が出演して番組内で心霊写真についてコメントしていた。また当時は様々なワイドショーで同様の心霊写真コーナーがあった。

 心霊写真はブームとなり、中岡の元には毎日30~40通もの心霊写真入りの郵便が届き、中岡はそれを一つ一つ鑑定していたという。

 しかし、やがて番組に「霊能者」が登場するようになり、心霊写真ブームは終わっていった。



●その後

 1970年代が終わるとオカルトブームも収束したが、中岡は人間の不思議な能力についての研究を続け、公演や研究会で発表した。

 しかし、中岡がけん引したオカルトブームは1980年代に入ると意外な形で悪用された。自称霊能者が悪霊がついているといって高価なツボや数珠を売りつけるなどの詐欺「霊感商法」を働き、社会問題となった。中岡自身は、自分がこんなものと一緒に見られてはたまらないと立腹していたという。

 晩年の中岡はヒーリングパワーの研究に没頭していたという。2001年・74歳で死去。


感想

 オカルトブームのド直球世代なのですが、この中岡氏の名前は知らなくてなんたる不覚、という感じ。UFOディレクター矢追純一とは違って今は忘れ去れらている人を取り上げて一本作ったのはナイスでした。

 あと、今回は、ユリ・ゲラーの生放送とか、本当に遺体が見つかってしまったクロワゼットの生放送とか、小川宏ワイドショー(懐かしい!)で心霊写真コーナーとか、当時の熱狂ぶりが生々しく蘇ってきてすんげぇ懐かしかった。

 

光と闇のナビゲーター 栗山千明
語り 中田譲治
テーマ音楽 志方あきこ
司会 伊藤海彦 (アナウンサー)

 
 

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