【ゲームブック】感想:ゲームブック「ツァラトゥストラの翼(文庫版)」(岡嶋二人/1990年)【クリア】

ツァラトゥストラの翼 (講談社文庫)

http://www.amazon.co.jp/dp/406184671X
ツァラトゥストラの翼 (講談社文庫) 文庫 1990/5/1
岡嶋 二人 (著)
出版社:講談社 (1990/5/1)
発売日:1990/5/1
文庫:409ページ

★★【以下ネタバレ】★★
 
 

この本は一頁から順には読めません。あなたにささやきかける陰の声に対するあなた自身の選択と決断に従って物語が作られていきます。宝石“ツァラトゥストラの翼”を盗んだ犯人を追って、ただ一つの正解をめざしてスタートして下さい。岡嶋二人が贈る、数千万、数億通りの変化が楽しめる究極のミステリー。

 

概要

 推理作家「岡嶋二人」が手掛けた推理ゲームブック。1986年2月に発売された本の文庫版。1986年版は作中に登場する暗号の答えが本の中に記載されておらず、解けない場合は講談社に問い合わせる必要があったが、文庫版は答えを記載した袋とじが巻末に付けられている。


あらすじ

 本の読者であるあなたに、本の中の登場人物である探偵が話しかけてきた。彼は探偵事務所の所員で、ボスから命じられた、大富豪が殺害され高価な宝石「ツァラトゥストラの翼」が盗まれた事件の捜査に力を貸してほしいという。あたたは探偵に指示を出し、見事事件を解決できるか!?


ゲームシステムなど

・パラグラフ数 … 460
・主人公の能力値 … 無し
・サイコロ振り … 無し
・フラグチェック … 有り

 サイコロ振り等は無い分岐小説タイプ。特定のパラグラフを通過するたびにチェックリストでアルファベットのA~Zにチェックしていき、その後の選択肢で「もしAをチェックしていればパラグラフ***番へ、していなければパラグラフ***番へ」という形で分岐先が指定される。

 最大の特徴として、中盤に暗号解読があり、ある暗号文を解読しないとその先に進めなくなる。


感想

 評価は○(なかなか面白かった)。

 江戸川乱歩賞の受賞歴のある、発売当時(1986年頃)の人気推理作家・岡嶋二人が本気で書いた、推理作家による本格推理ゲームブック。面白さはなかなかでした。


 ストーリーは、殺人&盗難事件を探偵の立場から捜査していく、という推理モノの王道パターン。しかも、小説家が書いたゲームブックにもかかわらず、パラグラフ構成に素人じみたところが無く、ベテランゲームブック作家が手掛けたのかと思う程に良く出来ていて、ゲームブックとしての質は一級品でした。


 しかしまあ、本作をクリアするのは本~当に大変でした。


 まずフローチャートを書くのが本当に難しい。探偵物だから当然ではあるのですが、「関係者に話を聞く」とか「どこそこに移動して捜査する」という場合の選択肢がとにかく多い! 関係者は10人近くいるし、移動できる場所も同様の数なので、フローチャートを書いていても一気に大量に分岐してしまい、爆発的に膨れ上がっていくチャートを見て半分泣きそうになっていました。

 また、チャートの分岐がコンピュータープログラムのそれに近く、何度もループして同じところに戻ってきてはループを抜けるまであれこれ行うとか、あるいは「容疑者を尋問する」「犯人を推理する」といった部分が一種のサブルーチンになっていて色々な場所から呼び出せるようになっていたりするので、普通の一本道フローチャートに慣れた身では上手くチャートを書ききれず、綺麗にまとめようと試行錯誤して何度も書き直したりしたので、手間がかかりましたね。

 また、本作に限らず「記号や文字によるフラグチェック」があるゲームブックではおなじみの辛さなのですが、分岐で「もしAをチェックしていればパラグラフ***番へ、していなければパラグラフ***番へ」という場合でもしAをチェックしていたら即死エンドだった場合、「Aをチェックしたのは一体いつどこだったのか」がすぐわからないので、どこからやり直せばいいのか即分からない。目を皿のようにしてフローチャートを丹念に見渡して、ようやく「あっ、ここだったのか」と確認して、そこからやり直さないといけなかったので非常に面倒くさかった……


 また本作品最大の謎である暗号の解読もかなり意地が悪かったですね。数字の羅列である暗号文を読んだだけでは絶対に解けず、あるアイテムと組み合わせて初めて読むことが出来るのですが、その「アイテム」の候補が10個くらいあり、その中から正しい物をノーヒントで選び出さないといけないのです……、そんなんわかるか!!(笑)

 しかしまあ、どのアイテムかを特定できれば、あとの解読自体は結構簡単でした(結構自慢したい)。暗号文に使われている数字を全てリストアップし、それをヒントのアイテムと見比べれば誰でも自然に答えは思いつきますよね~(再度自慢)

 でもまあ、暗号を解読できても、まだまだ作者の仕掛けた罠が山のように残っていて「おお、ようやくクリアか?」とぬか喜びさせられてバッドエンド、という失望を何度体験したことか……


 それだけにようやく真のエンドに到達できた時は小躍りしたのですが、ラストパラグラフの内容のあまりにあっけなさにちょっとガクッと来ました。もう少し祝福してくれても良かったんじゃないですかね?


 しかし作品の評価は上々で、解きごたえもありプレイしていて楽しい作品でした。あまり有名な作品では無いようですが、本作は隠れた名作と言って良いと思います。


参考:1986年版

http://www.amazon.co.jp/dp/4061924516
ツァラトゥストラの翼 (スーパーシミュレーションノベルス) 単行本 1986/2/1
岡嶋 二人 (著)
出版社:講談社 (1986/2/1)
発売日:1986/2/1
単行本:460ページ

 

追記(2023/03/19)

作者ご本人からコメント頂きました~ヽ(´▽`)ノ


  
 

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ツァラトゥストラの翼 (スーパーシミュレーションノベルス)