【ゲームブック】感想:ゲームブック「ロストワールドからの脱出」(山本弘/1990年)(ウォーロック39号掲載)【クリア】

ウォーロック 第39号 特集:ロールプレイメールと郵便でできるゲームたち

http://www.amazon.co.jp/dp/4390800396
ウォーロック 第39号 特集:ロールプレイメールと郵便でできるゲームたち 大型本 1990/2/1
出版社:社会思想社 (1990/2/1)
発売日:1990/2/1

★★【以下ネタバレ】★★
 
 

概要

 社会思想社のゲーム雑誌「ウォーロック Vol.39(1990年3月号)」収録のゲームブック。「現代」を舞台にした秘境サバイバル物。ルールは「ファイティング・ファンタジー(FF)・シリーズ」の物を使用している。


あらすじ

 君は若き探検家で、マスコミにはそれなりに取り上げられているものの、学問的な発見をしたことはなく学会では無名の存在だ。今回、君は南米の密林地帯にある人跡未踏の巨大高地を調査することにしたが、資金は乏しく、自分一人の装備を揃えヘリコプターをチャーターするだけで精いっぱいだった。君を乗せたヘリは高地へと向かったが、突然エンジンに異常が発生し……


ゲームシステムなど

 パラグラフ数は200。システムは、ファイティング・ファンタジー・シリーズ共通の「サイコロを振ってキャラクターの3つの能力(技術点・体力点・運点)を決定」、「必要に応じてサイコロで判定を行い、戦闘や運試しなどを行う」というもの。

 特別ルールとして、戦闘の際に拳銃とショットガンを扱うためのルールが追加されている。


感想

 評価は○(それなりには面白かった)

 ゲーム雑誌ウォーロックに掲載されていたオリジナル作品。面白さはまあまあでした。


 本作はFFシリーズのルールを使っているものの、舞台は「現代」というかなり珍しい作品です。「現代」と言っても発表されたのが1990年ですので30年も前の話ですが、主人公が人跡未踏の地にほぼ身一つで放り出されたという設定ですし、主人公の所持品も拳銃やナイフくらいしかないので、全体として特に古臭さを感じることもなく、今年2023年の話として読んでも違和感はありませんでした。


 本作はタイトルや「外界から切り離された高地が舞台」という設定から、ドイルの小説「ロストワールド」リスペクトなのは明らかなのですが、その方向の「古典的な秘境探検物」を期待していたところ、実際は「遭難後の厳しいサバイバル」を描く方に力が入っていたのでちょっと面食らってしまいました。

 何せ、とにかく頻繁に食事についてチェックされ、もし食料が手元に無ければ体力がどんどん減ってしまいますし、またしばしば恐竜と戦うイベントに遭遇しますが、それも「冒険」というより「食糧の確保」の意味合いが強く、勝っても爽快感があるというより食料が入手出来て嬉しい、というロマンも何もない展開です。さらに冒頭でのヘリの墜落シーンでも、墜落現場からどれだけの荷物を持ち出せたか、という事に相当こだわっていたりします。

 という具合で、序盤は「恐竜が闊歩する古代そのものの世界で主人公が冒険する」というより、とにかくただ生き延びるために必死であがくという感じで、少なくとも中盤に入るまでは心躍る展開とは言い難いものがありました。


 さらにマッピングもかなり辛いものがあり、本文中の記述通りに主人公の移動経路をプロットするとどうしても全体で整合性がとれず、きちんとした移動経路図にならないため、何度も書き直す羽目に陥りました。結局、試行錯誤の末に、「本文の方が間違っている」という結論に達し、幾つかの選択肢では「どちらの方角に進んだか」という記載を無視し、場所と場所の繋がりから図を作成するという手段をとることで、最終的になんとかつじつま合わせをする事が出来ました……



 と、色々不満点もありましたが、中盤以降に入ると雰囲気がグッと変化し、野生の金髪美少女と遭遇したり、古代超文明の遺産を発見したり、と味付けが面白くなってきたので、それより後は結構楽しくプレイすることが出来ました。

 また本作は技巧的にもなかなか凝っており、金髪美少女を手荒く扱うとバッドエンド一直線ですが、彼女と友好的に接してフラグが立つと、以後パラグラフジャンプでハッピーエンドへの道へ分岐するようになっています。言葉の通じない美少女と、目と目を合わせて心を通い合わせることが出来るようになるあたり読者が喜ぶポイントが解っていますね。

 また金髪美少女の名前をどこかで知ることが出来れば、最後にその名前を暗号解読の要領で変換して真の結末のハッピーエンドに到達することが出来るようになっており、この名前を使った仕掛けについては、変換して導き出した答えを見た時には「そう来たか~」と唸らされました。また、ハッピーエンドの内容が実に爽やかで、日本人作者の作品らしく日本人が喜ぶツボを押さえた物となっており、途中までの苦労も最後に報われたという気持ちになれました。

 ということで、途中までは結構辛かったものの、終わってみればなかなかの満足度の作品でしたです。良かった良かった。(^_^)b


おまけ

 どこにもイラストを描いた方の名前が書いていないのですが、どなたなのですかね……? 表紙に描かれている野生の金髪美少女のイラストは結構かわいくて好みなので、どうにも気になります……(33年遅い疑問)