【ゲームブック】感想:ゲームブック「フリーウェイの戦士」(イアン・リビングストン/1986年)【クリア】

フリーウェイの戦士‾ファイティング・ファンタジー (13)

http://www.amazon.co.jp/dp/4390111566
フリーウェイの戦士 ファイティング・ファンタジー (13) 文庫  1986/12/1
I. リビングストン (著), 佐脇 洋平 (著), イアン・リビングストン (著)
出版社:社会思想社 (1986/12/1)
発売日:1986/12/1
文庫:200ページ

★★【以下ネタバレ】★★
 

君の任務はサン・アングロ製油所に行き、ニュー・ホープに石油を運んで戻ってくることだ。君には重武装ダッジ・インターセプターがあたえられるが、それでも旅が平穏であるとは考えられない。君は…。サイコロ二つと鉛筆、消しゴムさえあれば、冒険の旅に出ることができる。つぎつぎと襲いくる強力な敵を、君はたおすことができるだろうか。

 

概要

 「ファイティング・ファンタジー(FF)・シリーズ」13作目。終末世界を舞台にしたカーアクションSF物。イアン・リビングストン初のファンタジー以外のジャンルの作品。


あらすじ

 2022年、新種の伝染病の蔓延によって瞬時に文明は崩壊し、暴力が支配する世界が到来した。わずかに生き延びた人間は、要塞化した町に立てこもり文明を再建しようという者たちと、暴力と破壊を好む者たちに分けられた。ニュー・ホープに暮らす君は、サン・アングロ製油所に小麦の種を届け、代わりに一万リットルの石油を持ち帰るという任務を与えられた。だが二つの町の間には無法者たちが徘徊している。君は武装したダッジ・インターセプターを駆り、見事任務をやり遂げることができるか!?


ゲームシステムなど

 パラグラフ数は380。システムは、ファイティング・ファンタジー・シリーズ共通の「サイコロを振ってキャラクターの3つの能力(技術点・体力点・運点)を決定」、「必要に応じてサイコロで判定を行い、戦闘や運試しなどを行う」というもの。

 特別ルールとして「格闘戦」「射撃戦」「車輛戦」の三種類の戦闘ルールを使用する。


感想

 評価は○(いま一つ)

 FFシリーズ13作目。イアン・リビングストンが初めてファンタジー以外のジャンルに挑んだ作品で、テーマが面白そうなので期待していたのですが、正直評価はいま一つでした。


 本作は、ゲームブックとしての作りは手堅くまとまっており、そちらの印象は悪くありません。

 まず本作独自の拡張ルールとして戦闘ルールが「対人格闘」「対人射撃」「車に乗った状態での戦闘」と三種類も用意されていますが、適用が煩わくなるような複雑さはなくシンプルにまとめられていて、プレイを阻害するようなことはありませんでした。

 またストーリーの構成も、リビングストンが過去に手掛けてきたファンタジーの迷宮探索物をそのまま応用したもので、「武器を手に迷宮を奥へと進んでいく」を「武装車両を駆って迷宮のような道路を進んでいく」に、「モンスターとの戦い」を「無法者たちとの戦い」に、「魔法のアイテムの入手」を「工具やガソリンの入手」に、と単純に置き換えているだけなので、お馴染みの感覚でストレスもなく気軽にプレイできました。特に道路の地図を作っている時には、迷宮のマッピング同様に楽しい時間を過ごせましたね。

 ということで、カーアクション物という新規ジャンル初挑戦の作品として上手く作られていました。


 しかし……、本作は、旅の途中で発生するイベントがとにかくつまらない。ほぼ「無法者が襲ってきたので戦え!」とそれだけなので、面白みも何もありません。またその戦いも、やたら運試しと技術点比べが多く、読者が能動的に何かを選ぶという選択肢が少ないため面白みに欠けました。

 序盤に、無法者たちがニュー・ホープ評議会の委員長シンクレアを誘拐するというイベントが発生し、これは今後の大きなストーリーに展開するのかと期待していたのですが、これもすぐにあっさり解決してしまい、その後につながらなかったのには失望させられましたね。

 はっきり言えば、この作品はほぼ「旅の途中で無法者をなぎ倒す」しかすることがありません。確かに暴力が支配する世界という設定ですので、そういう傾向の作品であることは了解していましたが、もう少し大きなストーリー的な物を用意してほしかった、という不満が残りました。

 まあ、名手リビングストンであれば、ファンタジー系の作品なら想像力のままに、新規のモンスターや魔法のアイテムや不可思議な現象などをちりばめた魅力的な話を用意することができたでしょうに、(執筆時点から見て)近未来の2022年が舞台のSFでは地に足の着いた、ある意味地味なイベントしか思いつけなかったのでしょう……、という事情を理解しつつも、もう少し何とかしてほしかった気がしました。シンクレアを解放できても出来なくても結末は変化なし、というのも投げやりっぽかったし。


 本作は、ゲームシステムや構成は手堅く、意地の悪い引っ掛けフラグもほぼ無く、マッピングも簡単。という事で、難度的にはお手頃な作品でしたが、しかし「プレイして楽しい作品」ではなかったですね。リビングストンは、やはりファンタジー作品でこそ持ち味が生きる作家なのだなと実感させられた一作でした。
 
 
 

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