感想:NHK番組「フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿」第11回『宇宙に魂を売った男』


Von Braun: Dreamer of Space, Engineer of War (Vintage)

フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿 http://www4.nhk.or.jp/P3442/
放送 NHK BSプレミアム(毎月最終木曜日 21:00~22:00 放送)。

【※以下ネタバレ】
 
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「フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿」内容・感想まとめ
 

第11回 『Case11 宇宙に魂を売った男』 (2017年3月30日(木)放送)

 

内容

フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿「宇宙に魂を売った男」


科学の知られざる姿に迫る知的エンターテインメント。人類初の月面着陸を成し遂げたアポロ計画の中心人物として科学史に名を刻むドイツ出身の天才科学者ヴェルナー・フォン・ブラウン。しかし彼には、戦中はナチス、戦後はアメリカのロケット兵器開発に従事して大陸間弾道ミサイルを作り上げ多くの犠牲者を生みだした、もうひとつの顔があった!変節を繰り返し大国を手玉にとりながら夢に向かってつき進んだ科学者の、隠された闇!

 今回は人類初の月着陸を成し遂げた「アポロ計画」の中心人物ヴェルナー・フォン・ブラウンの光と闇に迫る。


●月にとりつかれた男

 フォン・ブラウンは1912年ドイツ生まれ、幼いころからSFなどの影響で月旅行に興味を持ち、1930年には同好の士の集まり「ドイツ宇宙旅行協会」に参加し、ロケット研究に参加する。しかしアマチュアの集まりである協会では所詮大したことは実現できなかった。

 フォン・ブラウンはロケット研究に軍を利用することを思いつく。当時のドイツは第一次世界大戦で敗れ、兵器の保有を厳しく制限されていた。しかし最新のロケットを利用した兵器は制限の外で、フォン・ブラウンはロケットの兵器化の可能性を売り込み、1932年・20歳の時に軍に技術者として入隊、1937年・25歳の時には開発チームのリーダーとなっていた。フォン・ブラウンは技術者としてだけでなく、人を率いるリーダーとしての素質も兼ね備えていた。

 1939年に第二次世界大戦が勃発。フォン・ブラウンたちが開発した弾道ミサイル「V2」は、ロンドンやパリへの攻撃に使われ、数万人の人間を殺した。またフォン・ブラウンはV2生産のため捕虜収容所の人間を使うことを思いつき、適した人間を工場に放り込んだが、劣悪な環境で捕虜は次々と死んでいった。

 しかし、フォン・ブラウンはのちに、「上からの命令に従っただけで、自分の研究が軍事利用されるとは夢にも思わなかった」云々と証言している。



●ドイツからアメリカへ

 1945年になると、ドイツは連合国軍に押しまくられ敗北は目の前だった。フォン・ブラウンは仲間たちに、次はアメリカで研究しようと提案、研究所を捨てて家族&V2号の部品と共にアメリカに投降した。アメリカはドイツのロケット技術を持ってきてくれたフォン・ブラウンたちを大歓迎した。フォン・ブラウンたちは、今度はアメリカのために核兵器を搭載可能な弾道ミサイル「レッドストーン」を開発している。

 1957年10月、ソ連は世界初の人工衛星スプートニク一号を打ち上げ、アメリカにショックを与えた。フォン・ブラウンは軍に対して、60日以内に人工衛星を打ち上げて見せると豪語し、1958年1月にエクスプローラー1号の打ち上げを成功させた。

 しかし、今度はソ連は1961年にガガーリンによる有人宇宙飛行を達成してしまう。ケネディ大統領は負けじと10年以内に人類を月に送り込むと宣言し、アポロ計画がスタートし、フォン・ブラウンはサターンロケットの開発責任者となった。

 アポロ計画にはアメリカの予算の4パーセント・二兆円を超える巨費がつぎ込まれた。フォン・ブラウンは、計画への国民への理解を得るため、ウォルト・ディズニーに宣伝を依頼したり、宇宙旅行を啓もうする記事を書いたりした。

 1969年7月。アメリカはアポロ11号で友人月着陸を成功させ、フォン・ブラウンは英雄となった。そして1977年に65歳で亡くなった。彼の最後の言葉は自分が宇宙を旅しているようなつぶやきだったという。


感想

 今回は、アポロ計画となると必ずセットで出て来る有名人のフォン・ブラウンのお話なので、特に目新しいことはなし。『最初はナチスにめっちゃ協力してミサイルを作っていました』とかも、「知られざる悪行」ではないですしねぇ。また人生の最後は悲惨だったという事も無いし……


 と、今回は私的にはブラックさが足りなかったなぁという印象です。もっともっとひどい話をテーマとして発掘してきて「こんなひどい話が合って良いのか……」と絶句するような内容でこその「フランケン」だと思うのですよ。
 
 
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