今年の三月に亡くなられた作家の佐藤大輔氏。氏が小説家になる前は、ウォーゲーム(※)のデザイナーだったというのは多分有名な話なんだと思いますが(小説を読んだことが無いのでその辺りが有名なのか、知られざる過去なのかよく解らない)、この人が「ロールプレイングゲーム」のデザインをしたというのはわりと知られていない部類の話じゃないかなぁ、とふと思い出しました。
※ウォーゲーム
「ギレンの野望」みたいな戦争ゲームを、ボードゲームでやると思っていただければ間違いないです。凄く手間暇がかかりそうですって? 正解です。
佐藤氏の事だから、テーブルトークRPGといっても、並みのテーマではなく「現実とは異なる架空の太平洋戦争中の兵士になるゲーム」でもデザインしそうな雰囲気ですが……、意外にも題材は、割とオタッキーな感じのSFアクションものでした。タイトルは「東京モンスターバスターズ」。
東京モンスターバスターズ
「東京~」は1990年に翔企画から発売されたSF-TRPGです。前年の1989年に有名な「ソード・ワールドRPG」が発売され、TRPGブームが加速し始めていた時期の作品です。ウォーゲームメーカーだった翔企画も一発あててやれ、という事だったのでしょうか。しかし佐藤大輔氏にデザインを依頼した理由が全く分からないけど。
http://www.suruga-ya.jp/product/detail/607055375001
「東京モンスター・バスターズ」は、近未来、現界と異界・現実と非現実が交錯し、奇怪なモンスターが蠢く魔都となった東京での冒険とサバイバルを体験することを目的としたSFロールプレイングゲームです。初心者でもすぐにマスターが出来るように付けられている内容物は、これまでのRPGでは考えられなかったものばかり。これらを用いれば、誰でも「東京モンスター・バスターズ」のメンバーたち=プレイヤーを冒険へ導くことができます。
※テーブルトークRPG(TRPG)とは、ゲーム機などのコンピュータを使わずに、紙や鉛筆、サイコロなどの道具を用いて、人間同士の会話とルールブックに記載されたルールに従って遊ぶ“対話型”のロールプレイングゲーム(RPG)です。
ゲームのパッケージや内容物はこちらのサイトが参考になります。
↓
東京モンスターバスターズ: 積みゲーバカ一代
http://halbarad.seesaa.net/article/412153862.html
ゲームの内容は、おぼろげな記憶によれば、舞台はもちろん東京で、時期は(発売年から見て近未来の)1993年。東京に何か時空震的な物が発生して、「未来に建設するはずの建物が現れた」とかめちゃくちゃな状態になり、さらに明らかに異界の生物が続々と出現してきた、という状態。
キャラクターはTMB(東京モンスターバスターズ)という組織に雇われた傭兵的な物になって、銃を振り回してモンスターをブッ倒していきます。モンスターの体には、この世界には無い貴重な物質が含まれているので、回収すれば金になる、という設定。
世界観はなんか面白そうですよね。少なくとも漫画か何かのネタにできそうです。もっともこのゲーム、全然話題になりませんでした。当時は翔企画が小さな会社だから販売力が弱かった、という程度に捉えていたのですが、どうもそうではなかった模様……、ずばりダメゲーだったぽい……
ゲームの評価
・システムと世界観の詰め、及び、その説明が甘い。
小説を買ったら、本文が殆どなくて、「導入部書いたんで、後は想像力にお任せします。え? 設定? それも想像力にお任せしますよ」と言われているようなものだと思います。
これで、ルールブックなどで、世界設定が詳しく説明されていたなら、異界突入後の展開などをオリジナルで考える事も出来たけれど。
TRPG初心者に向けて、とマニュアルやそこに収録のリプレイには書いてありますが、到底、初心者では広げようがないと思いました。
ボードにコマを載せて、戦闘して終わり、な中途半端なボードゲームな感じでしょうか。
ネットを見てみると、このページの内容が一番詳細かつ辛辣ですが、他でもちょこちょこ見てみる限り、システムがいまいちだったという事で間違いないようです。翔企画は追加セット「魔界空母ミッドウェイ」なる作品を予告していたのですが、発売されずに終わり、佐藤氏はその後まもなく小説家デビューしてしまいました……
あの佐藤氏がこんな仕事もしていたという事で、なんとも言えぬ気持ちになります。まあゾンビマンガの「学園黙示録」の原作もしていたくらいだし、こういうのもこなせる人だったという事ではありましょう。