【科学】感想:NHK番組「ダイアモンド博士の“ヒトの秘密”」第7回「農業は人類に何をもたらしたのか」

若い読者のための第三のチンパンジー: 人間という動物の進化と未来

ダイアモンド博士の“ヒトの秘密” http://www4.nhk.or.jp/diamond-hakushi/
放送 NHK Eテレ。全12回。金曜22:00~22:30。

【※以下ネタバレ】
 

世界的ベストセラー『銃・病原菌・鉄』で知られる進化生物学者ジャレド・ダイアモンド博士が、アメリカ・ロサンゼルスで、若者向けに行った特別授業を12回にわたって放送。ヒトと動物の違いと共通点に注目し、言語やアートの本質、夫婦の不思議、そして、なぜ人間の間で格差が拡がってしまったのかを考える事によって、環境破壊や、戦争と大量虐殺など人間が抱えている問題について、解き明かしていく。

 

第7回 農業は人類に何をもたらしたのか (2018年2月16日(金)放送)

 

内容

2月16日金曜
ダイアモンド博士の“ヒトの秘密” 第7回「農業は人類に何をもたらしたのか」


ダイアモンド博士は、「銃・病原菌・鉄」でピュリッツァー賞を受賞した進化生物学者。人間の進化によって現代社会を考察する博士の特別授業を12回にわたって放送。


第7回のテーマは「農業」。狩猟採集の生活から農業への移行は、ヒトの暮らしを大きく変え、文明発展の基礎となった。一方、農業はヒトの体や社会に、大きな問題も引き起こしてきた。農業は人類をどう変えたのか。ダイアモンド博士が生徒たちと明らかにする。


【出演】進化生物学者…ジャレド・ダイアモンド,【声】糸博

 
 
●農業をするのは人だけ?

 過去に、動物もアートめいたものを作ることを見てきたが、実は農業も同じで、人間以外の生き物も農業をする。それはハキリアリ。その名の通り、植物の葉を切って巣に運び、菌を繁殖させて食べ物にする。しかしまあ、人間以外で農業をする生物はハキリアリくらいのものである。



●農業の誕生

 人類は農業を11,000年前に始めた。ところで農業は人間が「発明」したものではなく、狩猟採集民のやっていたことの副産物としてたまたま生まれた。

 例えば、豆はサヤに入っていて熟するとサヤがはじけて豆が地面に飛び散る。しかし突然変異で豆が飛び散らないままサヤに入ったままの実ができることがある。そして狩猟採集民が、食べるためにそのサヤをちぎって採集する。その豆が家の近くに落ちると、今度はサヤがはじけないままの採集しやすい品種が育つ。

 狩猟採集民は遺伝子や品種改良について知っていたわけではないが、そうやって自分たちに都合の良い品種を知らず知らずのうちに育てていった。農作物も家畜も、そういう意図しない偶然で生まれていった。



●農業による生活の変化

 農業により人間の生活は劇的に変化した。狩猟採集と違い、農業で作った農作物は保存しておくことができるので、飢えから逃れられるようになった。また、同一面積で得られる食料の量は、農業が狩猟採集の1000倍から一万倍と効率的。そのため人口は爆発的に増加した。

 また狩猟採集民は全員狩りに出かける必要が有るが、農業は食料を貯蔵できるので、全員が働かなくてもよくなる。分業の誕生。農業で働かない、研究者、兵士、あるいは権力者、を養えう事が出来た。研究者がより優れた武器を開発し軍隊に装備できるので、農業をしている種族の方が狩猟採集民よりも強くなった。人類の歴史は農業に移行した種族が、狩猟採集種族を征服していく歴史であった。



●農業が産んだ問題

 農業は以下のような問題も生んだ。


・伝染病。畑の周りに密集して住むので伝染病が広まりやすい。また伝染病は家畜の病気が人に広まったものが有る。天然痘は「ラクダ痘」が、はしかは「牛痘」が、人に感染するようになったもの。

・余暇が減った。狩猟採集民は狩りから帰ってくればあとは暇だったが、農民は一日中農作物の面倒を見なくてはならない。

・栄養バランスの悪化。狩猟採集民は豊富にたんぱく質を得ることができるが、農民は食べ物が農作物に偏るためバランスが悪い。人類の骨を調べてみると、狩猟採集民は身長が177センチあったが、その後農業生活に移行するとどんどん小さくなって161センチまで縮んだ。人類の体格が狩猟採集民レベルに戻ったのは20世紀に入ってからである。

・単一作物栽培のリスク。もし栽培している農作物に病気が広がると恐ろしい飢饉が発生する。その例が1845年から10年間アイルランドで発生した「ジャガイモ飢饉」で、国民の10パーセントが餓死した。

・格差と不平等の発生。狩猟採集民社会では誰でもが狩人であり、その社会には大した身分の差はない。しかし農業社会では権力者が生まれ、不平等が発生した。

・人口過剰と栄養不足。農業により人口は増加する。しかし(マルサスが指摘した通り)農作物の生産に人口増加が追いつかず、飢えと貧困が無くならない。


 このように、農業の発展は良い事ばかりではない。


感想

 世界史の授業の一時間目みたいな内容の回でした。
 
 

他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ

「ダイアモンド博士の“ヒトの秘密”」内容・感想まとめ

perry-r.hatenablog.com
 
 
文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)