【SF小説】感想「銀色人の基地」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 557巻)(2017年11月21日発売)

銀色人の基地 (宇宙英雄ローダン・シリーズ557)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150121524
銀色人の基地 (宇宙英雄ローダン・シリーズ557) (日本語) 文庫 2017/11/21
H・G・フランシス (著), クルト・マール (著), 原田 千絵 (翻訳)
文庫: 271ページ
出版社: 早川書房 (2017/11/21)
発売日: 2017/11/21

【※以下ネタバレ】
 

4隻の銀河系船団の船の乗員が、アルマダ工廠の銀色人に拉致されていた。彼らを助けるため、ローダンは基地への潜入をはかった!


《バジス》はようやくM-82銀河で銀河系船団の僚船のシュプールをつかむことができた。カラック船《フロスト》とコグ船《パーサー》《オサン》《ロッポ》を発見したのだ。ところが乗員たちは、銀色人と呼ばれるアルマダ工兵ショヴクロドンのステーションに拉致され、その意のままに働かされていた。ショヴクロドンはアルマダ中枢への反逆をくわだてているらしい。ローダン一行は仲間を助けにステーションへ向かったが!?

 

あらすじ

◇1113話 銀色人の基地(H・G・フランシス)(訳者:原田 千絵)

 銀色のヒューマノイドアルマダ工兵」のショヴクロドンは、アルマダ中枢への反逆を企んでおり、テラナーを補助種族として利用するつもりだった。ローダンとミュータントは基地に突入し、テラナーを救出する一方、ショヴクロドンを捕えようとする。しかしショヴクロドンは単身逃亡し、基地は破壊された。(時期:不明。NGZ426年6月頃)

※初出キーワード=キルス(種族)、ゲナン、恒星ハンマー



◇1114話 ヴィシュナの呪い(クルト・マール)(訳者:原田 千絵)

 ノルガン・テュア銀河では、コスモクラートに仕える研究者たちが、超コンピューター「ヴィールスインペリウム」の再建に取り組んでいたが、謎の美女「ベリーセ」が出現しヴィールスインペリウムを強奪してしまった。ベリーセとはかつて存在したコスモクラートの裏切り者「ヴィシュナ」の一部分だった。

 遥かな過去、初代ヴィールスインペリウムはコスモクラートと混沌の勢力の戦いのために使用されていたが、ヴィシュナはその力を悪用するためヴィールスインペリウムとの一体化を図り、ヴィールスインペリウムは防御のために自爆した。その後コスモクラートはヴィールスインペリウムの一部分の再建を始めたが、同時にヴィシュナも復活し、その顕現がゲシール、スリマヴォ、ベリーセたちだった。

 コスモクラート勢力によるヴィールスインペリウムの破壊は失敗した。ベリーセは、テラナーに対する攻撃を予告してから、ヴィールスインペリウムと共に姿を消した。(時期:不明。NGZ426年6月頃)

※初出キーワード=ベリーセ、ヴィシュナ


あとがきにかえて

 原田千絵氏が本巻で翻訳チームを去るため、お別れのあいさつ。


感想

 前半。先の話(1112話)とは一転、今度はテラナーが宇宙基地の中を暴れまわって銀色人ことアルマダ工兵のショヴクロドンを追い回す展開。ただし、基地の中には、ショヴクロドンも気が付かないうちに「ゲナン」という糸の集合体的な巨大生物が、壁の裏などそこら中にはびこっている、という無駄な設定。そして超能力を阻害するゲナンのせいでグッキーやラスは捕まって戦線離脱したためにローダンたちが大苦戦、という、今一つ本筋から脱線したエピソードとなっているのがもう一つでした。しかし、最後のショヴクロドンの捨て台詞、「恒星ハンマーを使って、お前らを殺してやる」云々にはしびれました。絶妙な伏線です。


 後半。様々な設定がてんこ盛りの重要エピソード。今まで引っ張り続けていたヴィールスインペリウムが遂に完成したものの、悪のコスモクラート・ヴィシュナが強奪し、さらにテラナーへの攻撃を宣言して姿をくらますという、ゾクゾクする展開となりました。

 初代のヴィールスインペリウムは一つの銀河クラスの大きさだった、という設定がなんとも壮大なイメージです。銀河に匹敵する大きさのコンピューターとは! ところで再建された第二世代ヴィールスインペリウムは、P160で「五光年の直径」で「太陽系と同等の規模」とされていますが、明らかに「五光時」の間違いですね。多分マールがうっかり筆を滑らせたのでしょう。

 今回登場した謎の美女ベリーセと、今までに謎を振りまいてきたゲシール・スリマヴォの全員が、コスモクラートの顕現だった、という謎解きがなされました。100話くらいかけての伏線解決とは、なんともスケールがでかい。

 「リンガ・フランカ」(P196)とは、別にローダン・シリーズの用語ではなく、「国際共通語」という意味の英語だったそうで……、初めて知りました。
 
 
 

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