【ミステリー】感想:歴史ミステリー番組「ダークサイドミステリー」(2020年版)『今熱い!ゾンビ人気の秘密~恐怖と進化の90年~』(2020年8月20日(木)放送)

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ダークサイドミステリー NHK https://www.nhk.jp/p/darkside/ts/4847XJM6K8/
放送 NHK BSプレミアム。毎週木曜夜9時放送。

www.nhk.jp
【※以下ネタバレ】
 

他の回の内容・感想

perry-r.hatenablog.com
 

本当の謎は、人間の闇
背筋がザワザワ、心がドキドキ、怖いからこそ…見たくなる!
世界はそんなミステリーに満ちている。
未解決の事件、自然の脅威、不思議な伝説、怪しい歴史など、謎と恐怖の正体に迫ります!

 

今熱い!ゾンビ人気の秘密~恐怖と進化の90年~ (2020年8月20日(木)放送)

 

内容

ダークサイドミステリー「今熱い!ゾンビ人気の秘密~恐怖と進化の90年~」
[BSプレミアム]2020年8月20日(木) 午後9:00~午後10:00(60分)


今あちこちのエンタメで大人気のゾンビ。ホラー専門キャラがなぜ一般作品で?最初のゾンビ映画から90年、変化し、挫折し、魅力を増した人気の秘密に、明るく楽しく迫る。


あなたが最近見たエンタメ、「死んだ人がよみがえる」が多くありませんか?今、空前のゾンビブーム。10年続く世界大ヒットのゾンビドラマ。ファン投票一位ゾンビアイドルアニメなど、昔はホラー専門だったのに、こんなに一般作品に進出した魅力の秘密とは?登場!世界最初のゾンビ映画。「ゾンビの父」が生んだ魅力3原則?日本発!世界を変えたゾンビ?「ゾンビは人間か?」裁判って?ゾンビ90年の歴史と魅力を楽しく紹介!


【ナビゲーター】栗山千明,【ゲスト】岡本健,山崎圭司,【語り】中田譲治水瀬いのり,【司会】青井実

 
 今回のテーマは「ゾンビ物」


●ゾンビ物の始まり

 2010年代には、ゾンビ物映画は300作品も公開され、ゲーム・漫画・テレビドラマ・アニメとゾンビ物が溢れかえっている。ゾンビはエンタメ業界で大人気である。

 そんなゾンビがエンタメに初めて登場したのは、1932年公開のアメリカ映画「ホワイト・ゾンビ」。カリブ海のハイチを舞台にしたホラー映画だが、登場するゾンビは生気は無いものの外見は普通の人間。この「ゾンビ」たちは、生きている間に悪の呪術師に薬を飲まされ、死んだ後奴隷状態にされてしまった存在、という設定で、現在のゾンビとはかなり違う。この映画のテーマは「他人に意思を操られてしまう恐怖」だった。

 「ホワイト・ゾンビ」は、当時のドラキュラやフランケンシュタインの怪物といったモンスター映画と並んで大ヒットした。

 実はこの映画の元になったのは、探検家ウィリアム・シーブルックが書いたハイチの調査記録本「マジック・アイランド」。映画の前年に発売され大ヒットしていた。ハイチは1915年にアメリカの統治下におかれたが、まだアメリカ人には未知の世界だった。シーブルックは、ハイチで歩く死者ゾンビを目撃したと本に書いている。

 歩く死者など架空の存在……、と思いきや、現実に「ゾンビ」が存在していた。名前をクレルヴィウス・ナルシスという人物で、1962年に死んだはずのナルシス氏が18年後の1980年に故郷に戻ってきたのである。ナルシス氏によれば、それまで遠く離れた農場で意識もうろう状態のまま働かされていたとのことだった。

 ナルシス氏は、18年前に死んで埋葬されたはずだったが、どうも誰かにフグ毒・テトロドトキシンを盛られ仮死状態にされて埋葬された後、掘り起こされて強制労働をさせられていた可能性が高い。



●ゾンビ物の大革命「ゾンビ三原則」

 「ホワイト・ゾンビ」以降もゾンビは登場していたものの、地味なモンスターに過ぎなかった。ところが1968年公開の、ジョージ・A・ロメロが監督した映画「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」で、のちに「ゾンビ三原則」と呼ばれるルールに従ったゾンビが初登場し、ゾンビ物に大革命をもたらした。

 ロメロは幼いころからホラー好き少年で、28歳の時「ナイト~」を監督した。新しいモンスター映画を作ろうとしていたが、低予算の白黒映画でモンスターの着ぐるみを作る余裕すらない。そこで「モンスターが人を襲って死体にする」を逆転させ「死体(メイクした人間)が生きている人間を襲う映画」にしたのである。

 「ナイト~」で初登場した「ゾンビ三原則」とは、「食われたものもゾンビになる」「ゾンビは人を襲って食べる」「ゾンビは頭を破壊されない限り動き続ける」の三つ。


・「食われたものもゾンビになる」
 「ナイト~」では何故死体が動くのかは理由は説明されない。殺された者が原因も解らないまま蘇って人を襲ってくる、という理不尽な恐怖で、それまでのモンスター物とは違う恐怖感覚を生み出した。


・「ゾンビは人を襲って食べる」
 ロメロは知り合いから鶏肉や豚の内臓を譲ってもらったため、映画の中でゾンビがそれを食べるシーンを撮影。それまでの「モンスターが人を食らう」シーンとは別のおぞましい雰囲気が作れた。


・「ゾンビは頭を破壊されない限り動き続ける」
 ゾンビは動きは遅いものの、体への攻撃は無駄で、正確に頭を破壊しないと意味がない。そのため一体一体はたいして脅威では無くても適切に対処しなければやがて取り囲まれて殺されてしまう、という恐怖を生み出した。

 このようにゾンビ三原則は、お手軽にそれまでにない恐怖を生み出したロメロの大発明だった。映画は爆発的ヒットを飛ばし、制作費11万ドルに対し興行収入は3000万ドルを記録した。


 十年後の1978年、ロメロはゾンビ物第二作「ゾンビ」(原題:Dawn of the Dead(死者の夜明け))を発表した。死者が蘇り始めてから三週間たった世界で、主人公たち四人が郊外のショッピングモールに立てこもるものの、ゾンビだけでなく、物資を狙う人間とも戦う羽目になる、というサバイバルホラーだった。

 メイク技術の進歩による数々の残虐シーン、人間ドラマ、等が話題となり、この映画は興行収入5500万ドル(約100億円)の大ヒットとなった。そして1970年代には60作品だったゾンビ映画は、1980年代には135作品と倍増した。



●ゾンビは人間か否か

 ゾンビ物は、1970年代のオカルトホラーやスラッシャー映画と共に一つの流れとなって、幾多の作品が作られていくが、必然的に残虐描写も増えていった。

 ドイツでは、サム・ライミゾンビ映画死霊のはらわた」(1981年)のゾンビに対する残虐描写が、憲法に違反するとして地方裁判所ビデオカセットの回収を命令した。憲法には「暴力表現で、人間に対する残虐・非人道的な描写などは禁止」とあったのである。

 しかしビデオ会社は「ゾンビは人間ではないので、回収命令は憲法の拡大解釈」と訴えた。裁判は憲法裁判所に持ち込まれ、1992年10月に「ゾンビは人間ではない」との判決が下った。しかし憲法は11年後に「人間・人間に似たもの~」と修正された。

 このようにゾンビ物は表現で規制されかねない問題をはらんでいた。また1991年に公開された「羊たちの沈黙」は、サイコホラーという新しいジャンルを切り開いた。一方ゾンビ物は、過去作品の模倣やパロディが増え、人気が凋落していった。ゾンビ物は、1980年代には125作品公開されたのに、1990年代には77作品と半減してしまったのである。



●ゾンビ物の復活

 1996年、ゾンビ物ゲーム「バイオハザード」が発売され大ヒットした。内容は、怪しい洋館に閉じ込められた主人公たちが迫りくるゾンビと戦う、という、オーソドックスなゾンビ物。狭い場所でゾンビの恐怖におびえながら戦うという王道サバイバルホラーで、その後のシリーズも含めて一億本を売り上げる大ヒットとなった。

 また、このゲームを原作にした映画がハリウッドで製作され、これを機にゾンビ映画は復活を果たし、2000年代には300作品も公開されるに至った。


 さらに2010年には革命的テレビドラマ「ウォーキング・デッド」がスタートした。ホラーのキャラクターであるゾンビを、一般向けのテレビドラマで扱うという挑戦だった。「ウォーカー」というゾンビが溢れかえった世界で、生存者たちがあちこちをさまようという内容で、人間同士の争い・裏切りといった人間ドラマが描かれている。また死んだ家族がゾンビになっても撃てるか、といった展開もあり、ホラーが苦手な視聴者も引き付けることに成功した。


 その後も、クリエイターたちは次々と新しいゾンビを生み出した。「全力疾走するゾンビ」「泳ぐゾンビ」「働くゾンビ」「踊るゾンビ」「恋するゾンビ」等々。そして2018年にはゾンビ物の概念を覆すテレビアニメ「ゾンビランドサガ」が放送された。死んだはずの少女たち7人が、謎のマネージャーによって蘇らされ、ローカルアイドルとして佐賀県を救うために活動する、という熱血コメディである。

 ロメロが作り出した近代ゾンビは、クリエイターにより新しい物が次々生み出されている。


感想

 もはや巷に当たり前のように溢れかえっているゾンビをテーマにした回。「ミステリー」というよりは「オタクカルチャー紹介番組」といったノリでしたが、面白かったので問題なし。

 ゾンビ物のスタートから始まって、ゾンビ三原則、ゾンビの衰退とその再生、など、一時間で見事にまとめてありました。まあロメロの「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」や「ゾンビ」を取り上げるのは当然、「バイオハザード」や「ウォーキング・デッド」も予想の範囲内、でしたが、トリに「ゾンビランドサガ」を持って来るセンスは予想外過ぎて最高でした(笑)

 ゾンビ三原則とかお勉強になりましたです(笑)
 
 

光と闇のナビゲーター 栗山千明
MC 青井実 (アナウンサー)
語り 中田譲治
テーマ音楽 志方あきこ

 
 

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ウォーキング・デッド コンパクト DVD-BOX シーズン1
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