【映画】感想:映画「007/ムーンレイカー」(007シリーズ11作目)(1979年:イギリス)

007/ムーンレイカー [Blu-ray]

BS-TBS|007シリーズ【吹替】 https://bs.tbs.co.jp/movie/007/
放送 BS-TBS。2022年1月30日(日)

【※以下ネタバレ】
 

007シリーズ第11弾。
スペースシャトルに乗って遂に宇宙へ飛び出したボンド!


イギリスへ空輸中のスペースシャトルムーンレイカー”が何者かに盗まれた。調査に向かったボンドは、ムーンレイカーを開発した謎の科学者ドラックスに接近。彼は人類抹殺の科学兵器を開発、新帝国を作り上げようとしていた……!

 

あらすじ

 冒頭。イギリス空軍がジャンボジェット機スペースシャトルを輸送中、不審な二人組がシャトルに乗り込み、エンジンを点火して発進してしまう。ジャンボは噴射炎を浴びて爆発炎上し、そのまま墜落した。イギリスは墜落現場を調査した結果、破片はジャンボ機の物だけだっため、シャトルムーンレイカー」はジャックされたと正しく推測し、Mは007/ジェームズ・ボンドムーンレイカーの行方を捜索するように命じる。

 ボンドはムーンレイカーを制作したアメリカの大富豪ドラックスを訪問するが、いきなり殺し屋に殺されかける。ボンドはドラックスの隠し金庫を調査し、ベネチアで作られているガラス製品の設計図を見つける。

 ボンドはイタリア・ベネチアに飛び、そこで美貌のCIA諜報員グッドヘッドと出会う。彼女もまたドラックスを追っているらしかった。ボンドはドラックスの秘密研究所を発見し、そこで生産している猛毒物質のサンプルを入手することに成功する。ところが翌日ボンドがMとグレイ国防相を連れて来ると、研究所は消え、ドラックスの私室になっていた。 恥をかいたグレイはボンドをクビにするように命じ、Mはボンドに表向き休暇を取るように指示する。

 ボンドは研究所にあった荷物がブラジル・リオあてだったため、リオに飛んだ。ドラックスは殺し屋ジョーズを雇い、ボンドに差し向けるものの、ボンドは危機を切り抜ける。やがてQからはボンドが回収した物質は猛毒の神経ガスで、アマゾンの奥地にのみ生息する植物由来の物と確認する。ボンドはアマゾン奥地に向かうが、密かに建設されていたドラックスの秘密施設に連れてこられる。そこには5機のムーンレイカーが打ち上げられる直前だった。

 ボンドとグッドヘッドはドラックスに殺されかけるが、脱出するとシャトルの乗員になりすまして宇宙に上がり、シャトルはドラックスの建設した巨大な宇宙ステーションにドッキングした。ドラックスの目的は、自分の選抜した優秀な人間のみを宇宙ステーションに退避させ、地上に残った人間は神経ガスで皆殺しにして、自分が頂点となる新しい世界を作る事だった。ムーンレイカーを奪ったのは、自分が用意していたシャトルに欠陥が見つかり代替機が必要になったためだった。

 ボンドとグッドヘッドはステーションがレーダーに見つからないようにしている妨害装置を破壊し、たちまちステーションに気が付いたアメリカはシャトルで兵士を宇宙に打ち上げた。やがてドラックスは神経ガスを詰め込んだ容器を地球に向けて打ち込み始めた。

 ドラックスはジョーズにボンドとグッドヘッドを殺すように命じるが、ボンドはジョーズにドラックスは理想的な人間しか生かしておく気が無い事を悟らせ、ジョーズは自分と恋人がその基準を満たしていないと気が付く。ジョーズはボンドとドラックスの味方に回り、さらにそこにアメリカのシャトルから兵士たちがステーションに襲来し、大乱戦となった。ボンドはドラックスを殺し、ステーションは破壊されたが、シャトルアメリカの兵士とジョーズ、恋人は脱出した。

 ボンドとグッドヘッドは毒ガスの容器を破壊するため、レーザー砲付きのシャトルで出発し、全てを撃ち落とした。最後、Mたちがボンドをねぎらうためにシャトルに連絡を入れると、ボンドとグッドヘッドが裸で抱き合っているシーンが映り大困惑する。それに気が付いたボンドは通信を切り、シャトルが宇宙を飛んでいるシーンで〆。
 
 
 

感想

 評価は○(ハチャメチャ映画)

 10作目「私を愛したスパイ」(1977年)に続く「ロジャー・ムーア007」の二年ぶりの四本目。前作で「ロジャー・ムーアが主演の007映画」のポイントを掴んだ製作陣が、前作を超えようと張り切った結果、勢いが付きすぎて「ハチャメチャ」になってしまった一作。ボンド映画としてはどうかとは思いますが、娯楽映画としてならなかなか悪くない一本でした。


 ストーリーは、ボンドが世界各国を飛び回って名所を堪能しつつ、ときおり発生する生命の危険は軽やかに切り抜け、合間合間に美女とイチャイチャしながら、悪党の陰謀を暴いていく、という、前作で確立したフォーマットが見事に踏襲されています。宇宙に飛び出すというクライマックスの展開はいささかアレですが、そこまでの大人しく(?)世界各国を飛び回っている間のストーリーは、まっとうなアクション映画として楽しめる良い感じに仕上がっていました。

 ところで、今回ボンドはMからムーンレイカーの行方を捜すように命じられたのですが、よくよく考えると、実はボンドは全然ムーンレイカーの行方を追っていない事が解ります(笑) ボンドは最初にドラックスのところにいって、この大富豪が何か悪事を働いているらしいことを掴み、以後色々調べていくのですが、手に入る手掛かりは一切ムーンレイカーと繋がっていないという…… これでは、ボンドが最終的にドラックスの悪事を暴いたとしても、ドラックスがムーンレイカーの行方など全然知らなかったらどうするつもりだったのか?(笑) まあ、最終的には強運でムーンレイカーの元にたどり着きましたが、もうこれ「結果オーライ」以外の何物でもない(笑)


 さて、終盤では、ボンドはスペースシャトルで宇宙に飛び出す(!)のですが、悪の本拠は宇宙空間に浮かぶ巨大宇宙ステーション(笑) そのような物は1979年はおろか、現代2022年になってもまだ実現されていません。宇宙空間で影の中から巨大ステーションが浮かび上がる辺りから「おいおい」という感じだったのですが、俳優たちが無重力を描写するため、わざとぎこちなく動く辺りはもう苦笑物でした(笑)

 さらにそのあと、ドラックス側の兵士とアメリカのスペースシャトルで運ばれて来た米軍兵士が「光線銃」で撃ちあいをするというシチュエーションで爆笑しました(笑) その際の銃の発射音が「スターウォーズ」の銃の効果音とほぼそっくりだし(笑) この辺りになるともう完全にSF映画になっていて、以後はもう我慢しきれずに笑い転げていました(笑) いくら当時宇宙SFブームだからと言って、これはちょっと(笑) 

 あまつさえ、最後の最後は、ボンドがレーザー砲を積み込んだシャトルを操り、地球に落下しようとする毒ガスの容器を狙い撃つという、もう「何の映画なんだよ?」という展開に突入してしまい、さすがにここまで行くとちょっとアレでしたよね(笑)


 と「宇宙編」(?)の展開はいささか、というかかなりアレでしたが、地球で謎を追っている間はめっぽう面白かったです。基本的には「ボンドが新しい場所に移動する→殺し屋が襲ってくる→簡単に切り抜けて次へ」の繰り返しでしたが、テンポよく仕上がっていたうえ、アクションシーンのスタントが物凄い。

 リオのロープウェイの屋根の上に上がって格闘するシーンも常軌を逸していましたが、それ以上にすさまじかったのが冒頭に展開される「ボンドが小型ジェット機から身一つで突き落とされ、空中で悪党に組み付いてパラシュートを奪い取る」というシーン。

 1979年の映画ですから、当然CGなどは一切使用しておらず、スタントマンが、生身でリアルに空中でこのアクションを演じて、カメラマンもリアルにダイビングしながらそれについていっている訳で、昔の人たちはなんて凄い事をしていたんだろうと感服するばかりでした。終盤の宇宙でのアレな展開のため軽く見られがちな本作ですが、スタントの凄さも文句なしの超一級ですね。

 ちなみに、英語サイトで調べたら、ボンド役のスタントマンは、厚さ一インチしかない特製のパラシュートを背広の下に隠してアクションしていたそうです。そうか、そういうからくりだったのか。40数年ぶりに謎が解けた。


 ロジャー・ムーア007映画では、コント要素が強めに打ちだされているのが特徴ですが、前作では凶悪さがウリだった殺し屋ジョーズが本作ではお笑い色を強くしており、

・冒頭 ボンドをジェット機から突き落とし、空中で格闘戦を仕掛けるものの、パラシュートの紐(?)を引っ張ったら怪力で引き千切ってしまい、パラシュートを開けないまま地上に落下

・リオでロープウェイでボンドを襲うものの、逃げられてしまい、自分だけロープウェイの乗り物ごと駅に衝突

・アマゾンでボートでボンドを襲うものの、滝が近づくとボンドはハンググライダーで脱出し、自分だけボートごと滝から転落

 等のピエロめいた役柄になっています。もっとも、それが終盤ドラックスを裏切ってボンドの味方になるための伏線だったわけで、無駄なコントシーンでも無かったというのが良かったかな。


 お笑いと言えば「ボンドがベニスのゴンドラに乗っていると敵に襲撃され、漕ぎ手は死亡。すかさずボンドがスイッチを入れるとゴンドラからスクリューが飛び出して高速で逃走し、さらに港にくるとホバークラフトになって観光客たちの前を突っ走る」という一連のシーンも、アクションでハラハラというより、次々と飛び出す面白ギミックを楽しむコント場面と化していましたね。それにしても、秘密諜報部員が素顔と秘密メカを大衆にさらしていいのか?(笑)


 あと、笑ったのがエンディングのスタッフロールで、英語でロケ地が書いてあったのですが「ITALY, BRAZIL, GUATEMALA, U.S.A. and OUTER SPACE!」……、って、「宇宙」でなんかロケしてないだろ!(笑)  あと、イタリアの秘密研究室でドアのロックを開ける暗証番号を押すとメロディーが鳴る(!)のてすが、これがSF映画未知との遭遇」で有名なあのメロディーだし(爆笑)


 最後は、しれっとジョーズと恋人は助かっているし、ボンドは地球滅亡の危機から人類を守ったし(笑)、めでたしめでたしでした。まあ「ドクター・ノオ」からえらく遠いところまで来てしまいましたが、「007の伝統と誇り」みたいなものにこだわらないなら、これはこれでわりといける映画だったと言えましょう。
 
 

https://www.bs-tbs.co.jp/movie/007moonraker/
007/ムーンレイカー【吹替】


2022/1/30(日)
午後2:00~4:30


◆キャスト
ジェームズ・ボンドロジャー・ムーア広川太一郎
グッドヘッド…ロイス・チャイルズ(藤本喜久子)
ドラックス…マイケル・ロンズデール石塚運昇
コリン…コリンヌ・クレリー(田村聖子
ジョーズリチャード・キール(小谷津央典)
M…バーナード・リー藤本譲
マネーペニー…ロイス・マクスウェル(泉裕子)
Q…デスモンド・リュウェリン(白熊寛嗣)


◆スタッフ
1979年/イギリス
監督:ルイス・ギルバート

 

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